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 仮称、赤の広場に着いた。

 これまでと同じ手順で出入り口を通過し、緑の回廊を進んでみたら。


 そこは洞窟でした。

 但しスケルトンが出てきた西側出口と異なり、岩肌に人為的な痕跡は見出せない。

 やや下に傾斜して洞窟が続いていた。

 結構洞窟の規模は大きい。

 MPバーが気になるが思い切ってヴォルフを召喚して戦力を拡充した。


 先へと進んでいく。

 岩盤は強固であり落盤の心配はないようだ。

 フラッシュ・ライトで照らされた岩盤の表面にはいくつか地下水が吹き出ている箇所もあるが。

 水量が少ないものの足元に水が下へと流れていく。

 そしてその流れがなくなったあたりで洞窟も平らに進むようになった。


 さて。

 ここで遭遇する魔物は何か。

 不安もあったが楽しみだったのに。

 最初の獲物がこいつだった。



 ゴブリン Lv.1

 魔物 討伐対象 アクティブ状態



 弱そう。

 でもこの数はどうなのよ。

 群れです。

 数えるのは最初から放棄しましたとも。

 ただ群れの中にレベルが高めの奴がいることも確認してある。

 一番上でレベル4が1匹だけいた。


 こいつら、何を洞窟でやっていたかといえば、壁の岩を食ってました。

 食うのか。

 掘るんじゃなくて。


「ゲヒッ」「グガッ」「グビビビ」


 意味の通じない声を上げてこっちを威嚇してくる。


「ガアッ!」


 ヴォルフが威嚇すると全てのゴブリンが黙り込んだ。

 何十匹もいるのにメンタル弱過ぎだろ。


 それはそれとして。

 ゴブリンの群れと戦ってみた。

 ゴブリン共にまともな武装をしている個体はいない。

 棍棒代わりの木の枝やら投石で攻撃してくるのだ。


 ジェリコにはゴブリンの群れの中央に陣取らせて暴れさせる。

 両翼で押し包むように戦線を構築した。

 後衛のアデルとイリーナに攻撃が及ばないようにする為だ。

 この2人の弓矢もこの魔物相手には十分通用している。

 何匹かが戦線を突破する奴もいたのだが、トグロが足に絡み付いて転がすので心配せずに済んだ。


 オレはと言えば。

 ジェリコとは別の意味で殺戮マシーンと化してました。

 いや、ゴブリンって本当に弱いです。

 イビルアントの方が手強いですから。

 下手するとオレの拳の一撃で昇天してしまう奴までいる。

 なんか出現させる魔物の順番、間違ってないか?

 なんにせよ呪文でMPを消費せずともほぼ一方的に戦えるのは助かっている。



「やっと全滅しました」


「弱くてもこう多いと堪らんな」


「弓矢がやっと役に立ちました」


 まあ感想はそれぞれだな。

 手分けして剥ぎ取りナイフを突き立ててみたら、嫌な事実が発覚した。


 石だ。


 石しか剥げない。



【素材アイテム】石ころ 品質E- レア度1 重量0+

 石ころ。

 投擲でのみ武器判定あり(AP+0 破壊力2 射程10)



 いや、もうね。

 剥ぐ作業の時間を返せって思いました。

 オレだけで10匹以上剥いだと思うが、悉く石ころとか何なの?

 だが当りが極少ない確率でもあるとなると話は別だ。

 イリーナが剥いだものの中に2個だけ利用価値のありそうな石があったのだ。



【素材アイテム】石灰石 原料 品質C レア度2 重量1

 炭酸カルシウムを主成分とする岩石。

 結晶質ではないので大理石ではない。



 炭カルか。

 色々と使われてる材料だが、それなりのレア度になっている。

 100%石ころだったら二度とアイテム剥ぎをしないのだが。

 当りがあるかもしれない、と考えるとやらざるを得ない。


 罠だ。

 運営の罠だな。


 当りがもしあったら、と思わせるのも罠だ。

 ワイルドドッグのように実は、というのも罠だ。

 これは一体どっちなのか。

 進めてみないと分からない事だ。


 気になるものはどうしても気になる。

 これも性なのだろう。

 石ころは放置して先に進もう。



 洞窟は所々で側道のように抉れた部分があるのだが、その全てがすぐに行き止まりだった。

 どうもゴブリンが食い散らかした跡のようだ。

 なんと迷惑な。


 メインとなる洞窟経路は分かり易い所を辿って来たのだが。

 またもゴブリンの群れだ。

 但しその規模はさっきのものより遥かに少ない。

 その中に一匹だけ変な奴がいた。

 ゴブリンに見えるが羽根のようなもので頭部を飾っている。

 


 ゴブリンサモナー Lv.2

 魔物 討伐対象 アクティブ状態



 【識別】してみるとサモナーって。

 サモナー対サモナーか。

 ゴブリンしかいませんが召喚モンスターはどこにいるのか。


 いや、どうやらいたようだ。

 狼のヴォルフとうーちゃんは気付いていた。

 天井にいる。

 フラッシュ・ライトで照らされた天井は奇妙に輝いているように見えた。

 何かが光を反射しているのだ。



 スライム Lv.2

 魔物 討伐対象 アクティブ状態



 ス、スライム?

 TVゲームでは雑魚扱いのモンスターだが、テーブルトークでは厄介な相手だった奴だ。

 どっちだ。

 雑魚なのか。

 厄介な方か。


 そのスライムは地面に落ちるとジェリコに襲い掛かってきた。

 ジェリコも拳で迎撃する。

 拳が直撃。

 だが魔物のHPバーは全く減る様子がない。

 厄介な方だ。


 呪文を選択して実行する。

 だがすぐに呪文が使える訳ではない。

 ゴブリン共の嘲笑するような鳴き声が耳に痛い。


『後ろの連中の牽制を頼む』


 アデルとイリーナにウィスパーで指示を出しておいてオレはスライムに向かう。

 厄介な方であれば定番の対処法がある。

 さすがに界面活性剤はないが、火種なら作れる。


「パイロキネシス!」


 スライムに掌をかかげて火を付けてみた。

 どうだ。

 燃え広がる様子はないが、ジェリコを覆うようにしていたスライムが急激に収縮する。

 そのまま地面に落ちて、楕円形になった。


 反応はあった。

 でもHPバーはまるで減っていない。



「ファイア・シュート!」


 何だ?

 オレのすぐ隣から聞こえてきていた。

 アデルの声だ。

 目の前にいたスライムに棒状の炎の矢が突き刺さっている。

 そしてそのままスライムは炎上し始めた。

 何やら白い煙を発しながら勢い良く燃えている。

 しかも匂いが凄い。

 何やら体に悪そうな成分がありそうだ。


 次の呪文を選択して実行する。

 オレのMPバーも残り少ないがここは出し惜しみなしだ。

 燃え続けるスライムを警戒しながらゴブリン達の様子を窺う。

 こっちを襲ってくる気配はない。


『全員、深追いさせるな』


 そうウィスパーで指示しておく。

 ヴォルフを始めとした召喚モンスター達がジェリコの位置まで戻ってくるのを確かめて呪文を発動した。


「エアカレント・コントロール!」


 スライムが燃えて出てくる煙をゴブリン共の方向に一気に流し込んだ。

 どうだ?

 ゴブリンがいきなり踊るかのように悶え苦しみ始めた。

 次々と洞窟の奥へと逃げて行く。

 どうやら鼻が利くみたいだな。

 定番の反応なのもいい。

 少しだけ運営に親近感を感じる。


 それにしてもだ。

 アデルは火魔法がレベル3にアップしてたみたいだな。


「アデルちゃん、新しい呪文?」


「そ。さっき戦闘でエンチャント使った後にレベルアップしてた!」


「そうだったんだ。あ!」


「イリーナちゃん?」


「私も土魔法がレベルアップしてる」


「やったね!」


 そうか。

 どうやら二人とも着実に強くなっているみたいだな。

 つかオレの火魔法はまだレベル3になっていない訳だが。

 魔法技能を取得し過ぎた弊害がこんなに身近に起きてしまったか。



 スライムが焼け落ちた跡には透明な球体が残っていた。

 どこかで見覚えがある模様が中に見える。

 そう、細胞核に似ている。

 大昔に生物の授業で見た顕微鏡写真のものだ。

 これに剥ぎ取りナイフを突き立てたらいいのかね?


 で、剥ぎ取った結果がこれだった。



【素材アイテム】変性岩塩(魔) 品質C レア度3 重量0+

 魔法の力が宿った岩塩。

 普通の塩としても使える。



 なかなかのレア度だ。

 さすがに唯の塩として使う選択肢はないだろう。

 何か生産系で利用する事が前提となっているアイテムに違いない。


 さて。

 どう進もうか。

 オレのMPバーはもう大して余裕がない。

 アデルとイリーナは雰囲気こそいいがMPバーは半分を割り込んでいる。

 連戦は避けたい。

 いや、連戦はいいのだが、未知の魔物が出るかもしれない場所が良くない。

 出てくる魔物が強いが、何が出てくるか分かっている森の迷宮の方が精神的に余裕が出来るだろう。



「概ね感覚が掴めた。もうMPも余裕がないし戻るか」


「レギアスの村まで戻りますか?」


「夕飯にはまだ早いからな。キノコとブランチゴーレム相手に少し稼いでから戻るか」


「賛成!」


 うむ。

 キノコとブランチゴーレムには悪いが少し稼がせて貰おうか。



 森の迷宮の入り口近辺にまで戻った。

 仮称、青の広場だ。


 いつでもレギアスの村方向に脱出できる位置でキノコとブランチゴーレムを相手に連戦である。

 ブランチゴーレムに関してはアデルの火魔法も試してみた。

 ファイア・シュートはパイロキネシスに比べると接触するほどに近づく必要がない。

 威力は言うまでもなく比較にならなかった。

 お話にならない。

 感覚だけで言えば、レベル3の攻撃魔法で比較すると一番強いのではないか。

 いや、光魔法のコンフューズ・ブラストはまだ試していないんだが。


 MPの余裕がほんの少しできた。

 でも視覚を確保する方を優先する必要がある。

 コンフューズ・ブラストを試すのは明日以降にするか。


 フラッシュ・ライトの効力が切れそうになるのを機にノクトビジョンに切り替える。

 闇魔法がまだレベル1に留まっているからだ。

 オレ、アデル、イリーナ、ジェリコと順次呪文をかけていくと、狙い通りに闇魔法レベルが上がった。



《これまでの行動経験で【闇魔法】がレベルアップしました!》



 うん。

 いい感じだ。

 光魔法のフラッシュ・ライトを使っていると遭遇率が高めなのは分かっている。

 本来はどんどんと魔物を呼び寄せて稼ぎたい所なんだが、MPが少なめの今はこっちのほうが都合がいい。

 よし。

 狩りを続けるか。



 キノコ相手に鬱憤を晴らすかのように戦い続けた。

 ブランチゴーレムはジェリコを中心に戦えばどうにかなる。

 それに投げ技が面白いように決まっていた。

 何故かノリノリである。

 ただやりすぎだったかもしれない。


 《アイテム・ボックス》が一つ、満杯になった。


 原木が重過ぎる。

 燃やせば炭になるんだが、そこまで手を回せない。

 アデルの火魔法だって延々と使える程MPに余裕はないのだ。

 悩ましすぎる。


 結局、レギアスの村には早めに戻ることにした。

 狩りはいいが獲物の処分が勿体無い気がするし。



 レギアスの村に到着。

 ウッドゴーレムは森の迷宮を出た際に帰還させてある。

 今のオレのお供はヴォルフとジーンだけだ。


 レギアスの村の中はまだ日が高いせいもあって冒険者の姿は大して見かけない。

 その代わりにNPCの姿が多い。

 皆が何かしら荷物を背負って往来している。


 屋台に露店が立ち並ぶ路地も同様であった。

 冒険者の姿は少ない。まあ村の外で狩りをしているのだろうし当たり前なんだが。

 NPCは結構往来していて露店で色々と買い物をしているようだ。

 料理を売る屋台は閑散としている。


 いや、どこの屋台でもその裏側では仕込みが始まっている。

 優香もまた仕込みの最中であった。


「アデルちゃん、イリーナちゃん、お帰りなさい」


「帰還したよ!」


「戻りました」


「キースさんもお帰りなさい」


「どうも」


 露店でNPCの応対をしているレン=レンと不動には目礼しておく。

 リックと篠原が裏で荷物を整理しているようだ。

 そのリックと篠原がオレ達を屋台裏のテーブルに招いてくれている。



「森の奥はどうでした?」


「そうだな。まずは獲物は全部出しておくか」


「お願いします」


 次々と《アイテム・ボックス》から獲物を取り出していく。

 やはり原木が重い。

 木工職人の篠原が目を剥いている様子が分かった。

 そして炭も多い。

 変性岩塩(魔)も少々物議を醸す代物だろうが、本命は別にある。


 マジックマッシュルームだ。


「これは」


「ちょっと危ない代物に見えますね」


「ここの面子だと加工は無理かな?」


「ファーマーはレムトと港町に集中してるのが痛いな」


「薬師と錬金術師もだよね」


「ランバージャックの彼と会うのは明日だ。そこでも相談かな」


「リック、フィーナさんには?」


「メッセで連絡しておくよ」


 生産職の方々であっと言う間に方針が定まると、次々と事態が動いていった。

 リックともフレンド登録し、リックがフィーナさんに宛てたメッセージも送って貰っている。

 律儀、というのがリックの第一印象だったが、言動ともにやはり律儀であった。


 持ち込んだアイテムは全部リックに売る事にした。

 同時にかなり早めの夕飯にする。

 出来合いのサンドイッチを優香に出して貰って腹を満たした。


「あの、キースさんはMP回復するまでどうします?」


「うん?まあここで時間を潰すのもいいかな」


「私とアデルで優香ちゃんの手伝いをしたいんですが」


 ほう。

 そういえば二人とも【料理】スキルあるんだっけ。


「勿論いいとも」


「ありがとうございます」 


 いや、優香がお礼を言うような事でもないから。

 色々と世話になっているなら当然ってもんです。


 リックがアイテムの買取価格を計算する合間、ヴォルフの喉元を撫でて愛でながら待つ事にした。

 アデルとイリーナの召喚モンスターもオレの周囲に集まってきている。

 狼2匹に虎2匹、コウモリと蛇に囲まれて、それぞれの手触りを楽しめるのだ。

 ふむ。

 アデルがチラ見しているが気にしない。

 彼女はモフモフが好きなのだろうがオレの感性はかなり異なる。

 蛇のトグロの肌触りが一番いい。

 鱗の感触もいいが、やや冷たく感じる所もいい。


 首元にトグロを巻き付かせて愛でながらモフモフも楽しんだ。

 いや、撫でるのをせがんでくる召喚モンスター達にサービスし続けた。

主人公 キース

種族 人間 男 種族Lv6

職業 サモナー(召喚術師)Lv5

ボーナスポイント残22


セットスキル

杖Lv4 打撃Lv3 蹴りLv3 関節技Lv3 投げ技Lv3

回避Lv3 受けLv3 召喚魔法Lv6

光魔法Lv3 風魔法Lv4 土魔法Lv3 水魔法Lv3

火魔法Lv2 闇魔法Lv2(↑1)

錬金術Lv3 薬師Lv3 ガラス工Lv3

連携Lv5 鑑定Lv5 識別Lv5 耐寒Lv2 掴みLv4

馬術Lv4 精密操作Lv4 跳躍Lv1 耐暑Lv3


装備 カヤのロッド 野兎の胸当て+シリーズ 雪猿の腕カバー 

   野生馬のブーツ+ 雪猿の革兜 背負袋

   アイテムボックス×2


所持アイテム 剥ぎ取りナイフ


称号 老召喚術師の弟子(仮)、森守の証、中庸を望む者

   

召喚モンスター

ヴォルフ ウルフLv5

残月 ホースLv3 お休み

ヘリックス ホークLv3 お休み

黒曜 フクロウLv3 お休み

ジーン バットLv3

ジェリコ ウッドゴーレムLv2 お休み


同行者

アデル&みーちゃん&うーちゃん

イリーナ&三毛&トグロ

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