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 では。

 夜向けの布陣としましょう。

 キールは残して帰還させます。

 召喚するのは?

 ヴォルフ、テロメア、フローリン、赤星です。

 赤星は本格的に主戦力として期待したい。

 それにヴォルフには先達としてキールを指導して欲しいものです。

 ヴォルフはシルバーウルフ、キールはブラックウルフと違ってますけどね。

 ま、似たようなものだろう。



 では。

 出発しましょう。

 見送りは近松だけでした。

 他の召喚モンスターは狩りに出向いているのだろう。




 いや。

 見送りに来ていたようだ。

 防柵の外、恐らくは召魔の森の有効範囲の縁にいる。

 その傍らに獅子吼、逢魔、雷文。

 おお!

 見送りか?

 だが黒曜が見えないんだが。



 いや、いるな。

 ほぼ真上から舞い降りてきた。

 オレの肩に、である。



 見送り、とは思えない感じがする。

 明らかに緊張している。

 警戒、だな。

 獅子吼達ばかりか、ヴォルフもその緊張が移っていくかのようなんだが。



「待て」


 言葉にも出ちゃいました。

 出さなくても分かってるみたいです。

 それでも手で制止しないと飛び出してしまいそうだ。

 特にキールだ。

 まだ召喚したてだから?

 状況が分からないうちに突っ込んじゃいけませんよ?




 少し、待ってみた。

 闇の中から何かが近寄ってくるのが分かる。

 ノクトビジョンが効いていた。

 森の中、星空という僅かな光源しかないが、ある程度判別出来る。

 人影。

 モンスター、ではないな。

 それも1つではない。

 7名?

 いや、もっといるようだが。


 別方向からも人影。

 いや、あれは?

 半人半蛇の魔物。

 ラミア、だな。

 続いてオオカミ。

 体表の毛並みの色はハッキリと判別できないが、明るさから見てグレイウルフであるかもしれない。

 そして鵺。

 頭上に浮かんでいる影もあるが?

 若い美貌の男。

 その背中には大きなコウモリの翼。

 間違いなくバンパイアだ。


 鵺の胴体を撫でている小さな人影は?

 分からないな。

 サモナー系のプレイヤーか?

 NPCであるのかもしれないが。

 肩にはフクロウ。

 大きさだけでは何であるのかは予想も出来ない。

 周囲を見回して警戒している、のか?



 いや。

 まだいる。

 全く別の方向からも召喚モンスターらしき影。

 無論【識別】は効かない訳だが。


 スケルトン、しかも武装している。

 それが3体。

 先頭の個体は剣、後方に位置する2体は弓矢に杖。

 いい趣味だ。

 恐らくだがスケルトン系で別々の系統のクラスチェンジをしたのかな?

 そうでなければ目指している途中なのだろう。

 そして先頭のスケルトンの頭上に影。

 僅かに光を放つ霧。

 ミストなのか、レイスなのか。

 それだけではない。

 隣にいるのはバンパイアだな。

 しかも女性型。


 あら、美人さんだ。

 目付きがキツいけど

 むしろうちのテロメアの方が怖い印象があるぞ?


 そうそう、スケルトンの後方にも人影だ。

 顔は見えない。

 きっと位置的にサモナー系のプレイヤーなのだろう。

 手に杖を持っているのが分かる。



 というかさ。

 全員、不審者にしか見えないぞ?

 意匠はそれぞれに違っていたりするようだが、ローブ姿だ。

 顔を見せているのは3名だけで、その3名が何やら相談している雰囲気だ。

 こっちからは何を言っているのか、分からない。

 でもその様子は近くで見る事ができる。

 読唇術があれば何を言っているのか、分かるんですけどねえ。


 そう。

 インスタント・ポータルと同じ現象が起きている。

 彼らの姿は淡く半透明のようにも見える。

 重なっても何も起きていない。



 待て待て。

 不審な格好だからって本当に不審者なのか、分からないぞ?

 ヴォルフや黒曜達が警戒するのも分かるけどさ。

 それよりも、観察しましょう。

 【識別】が効かないのは残念ですけどね。






 怪しい。

 完全に、怪しい。

 怪しいぞ?

 この場所に感付いたのか?

 妙に時間を掛けて調べているような雰囲気なんだが。


 何といっても召喚モンスターらしき狼がしつこい。

 主人であろう小さな影に纏わりついて、何かを訴えているようにも見える。

 だが。

 ここに延々と留まる訳にいかないようだ。

 二手に分かれてここから去る様子です。


 1つはサモナー系らしき集団。

 召喚モンスター10匹にサモナー系らしき影2つ。

 2パーティ相当、だな。

 北西方向にゆっくりと去っていく。


 もう1つは18名にも及ぶローブ姿の集団。

 プレイヤーであれば3つのパーティに相当するのだが。

 この場所に留まる、のか?

 面倒な事になったかね?

 周囲をまだ調べるつもりであるらしい。


 十中八九、プレイヤーと考えていいのだろう。

 だが問題がある。

 こんな所にプレイヤーが何の用なんだろう?




 召魔の森を出ていきなり話し掛ける、というのは?

 アリだろう。

 でもね。

 あからさまな不審者にどうしろと?


 PK職であればいいんだが。

 通常のプレイヤーだと困る。





 一時的に布陣を変更しました。

 テロメア、フローリン、これに言祝、折威、スコーチだ。

 全員、夜間の空中に対応出来るメンバーです。

 そう。

 上から迫ってみよう。

 でもその前に。

 呪文の強化は必要ですね。

 フィジカルエンチャント系、メンタルエンチャント系、グラビティ・メイル。

 だがまだ不足だ。



「インビジブル・ブラインド」


 偽装は必要ですね。

 呪文ですけど。



「センス・マジック!」


 最近、観察するには必須にしてます。

 色々と対応できますから。



「フライ!」


 久々に使うけど、大丈夫かな?

 ま、どうにかなるだろう。

 高速で移動する必要はないのだから。






 18名の方は【識別】出来ました。

 いや、半分は見えてなかったけど、時間を掛けたら見えました。

 全員、PK職。

 全員、クラスチェンジ済み。

 クラスチェンジ後の職業レベルはバラバラだ。


 その内訳は?

 面倒だが確認だな。

 つかスクリーンショットで記録はした。





《これまでの行動経験で【看破】がレベルアップしました!》

《PKプレイヤーと確認されました。討伐が許可されます》



 うむ。

 これでいつでも討伐してもいい訳だが。

 数が多いな。

 それにオレの目から見たら実に面白い光景である。

 召魔の森の防柵の中にまで入り込んでいるが、気がついていない。

 全部、透過してしまっている。

 こう見えてしまうのか。

 面白い。



 で、内訳は?

 PK職、として見たらこうです。


 シーフは3名。

 アウトローが3名。

 バンデッドが2名。

 アサシンが2名。

 ハンターキラーが2名。

 ブラックソーサラーが5名。

 ブラックバードが1名。



 全員、真っ黒。

 だがもう1つの本来の職業も見えてます。

 これも面白い。



 ルーインダイバーは2名。

 トレジャーハンターが1名。

 フェンサーが2名。

 ランサーが1名。

 スティンガーが1名。

 ソルジャーが3名。

 レンジャーが1名。

 アマゾネスが1名。

 エレメンタル・ソーサラー『闇』が1名。

 エレメンタル・ソーサラー『火』が1名。

 エレメンタル・ソーサラー『水』が1名。

 メイジが2名。

 プリンシパルバードが1名。



 PK職の場合は職業というよりも称号みたいなもの、とはどこで聞いたんでしたっけ?

 覚えてないけど。

 だってPK職との接触なんてそんなにない。

 一番最近で言えば闘技大会で見掛けた半ソロバード、かな?

 それだって直接戦っていないし。


 これ、どうしよう?

 ここで仕掛けて屠るか?

 警告の意味も含めて。



 何か面倒だな。

 仕掛けるか。

 だが相手も数は多い。

 時刻は午後7時40分。

 狩りに行きたかったのに、何て面倒な事を!


 ガードに残してある黒曜達の戦力も当てにしていいかな?

 こうなったらもうね。

 徹底的に、叩くか。




 召魔の森には慎重に戻りました。

 気付かれた様子は?

 見えない。

 一時、分散して何か調べているようであったが、今は集合している。

 移動してここを離れる気配を見せているかな?

 襲うなら少し離れてからでいいかな?


 呪文の強化はしておきたい。

 無論、黒曜達、ポータルガードの面々だ。

 黒曜達も召魔の森の有効範囲の外で活動出来る。

 結構、離れても大丈夫の筈だ。



 呪文の強化は?

 終わりました。

 では、インビジブル・ブラインドを使いましょう。

 当然、フォレスト・ウォークもだ。

 襲う合図は?

 オレが出します。



 上空をインビジブル・ブラインドに紛れて空を行くのは?

 テロメア、フローリン、言祝、折威、スコーチ、それに黒曜だ。

 オレは地上で彼らの後を追跡している。

 同行するのはジェリコ、獅子吼、逢魔、雷文、近松だ。

 結構な戦力だと思う。


 合図は?

 オレの武技だ。



「真闘気法!」「ブレス!」「メディテート!」「インテリジェンス・アタック!」


 最後尾にいたPK職に手にしていた槍を投げる。

 白象の長槍だ。

 駆け寄りながら獅子賢者のククリ刀も投げる。

 全て、命中。

 マーカーを確認する暇はない。

 右手で獅子賢者のフルーレを抜き放つ。



「ボンナバン!」


 周囲にはコート姿のプレイヤー達。

 表情は?

 見えない。

 見えないけど、顔のある辺りにフルーレを突き入れる。

 そして手近にいる奴に体当たり。

 木の幹に叩き付けて、後頭部に珪化木のトンファーを撃ち込んだ。

 うわ。

 今の手応えは、死んだかな?

 1名は生かしたまま、色々と聞いてみたかったんだが。


 ま、いいか。

 他にまだ元気そうなのがいる。

 どこかで生け捕りしたらいいさ。



「フラッシュ・バースト!」


 さあ。

 楽しい乱戦の時間だ。











《只今の戦闘勝利で【跳躍】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【軽業】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で召喚モンスター『フローリン』がレベルアップしました!》

《任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》



 はーい、皆さん!

 反省会ですよ!

 でも、その前に。


 フローリンのステータス値で既に上昇しているのは敏捷値だ。

 もう1点のステータスアップには精神力にしましょう。


 フローリン レミックバットLv1→Lv2(↑1)

 器用値 22

 敏捷値 38(↑1)

 知力値 15

 筋力値 15

 生命力 15

 精神力 15(↑1)


 スキル

 噛付き 飛翔 反響定位 回避 奇襲 吸血 毒

 忘却 高周波



 はい!

 PK職の皆さんはどうなりましたか?

 全滅、です。

 生き残っているのは?

 いません。

 逃がした訳ではない。


 確認出来た死体の数は14体。

 だが次々と消えてしまう。

 4名は戦闘中に死に戻ったと思われる。

 その場所には貨幣やら魔石やらポーションが残ってたりします。

 むう。

 過剰火力であったのか。

 これでは情報を引き出す事も警告する事も出来ないではないか!



 一番の戦犯は誰だ?

 オレだよ!

 覚えてるだけで少なくとも7名はオレが仕留めてました!


 ゴメン。

 こういう時、どういう顔をして謝ったらいいのか。

 開き直るしかないのでした。



 むう。

 これではいけない。

 いやいや。

 まだPK職らしきサモナー系の獲物がいるではないですか!

 だが別方向に去っているんですよね。




 そうだ。

 追跡、してみる?







 布陣は改めて変更しましょう。

 ヴォルフ、テロメア、フローリン、モジュラス、清姫です。

 黒曜達は?

 一旦、召魔の森まで一緒に戻りましょう。

 お前達も気をつけるように。

 勝ち目のなさそうな相手に喧嘩を売ってはいけません。




 では、改めて追跡しましょう。

 呪文の強化を進めていく。

 インビジブル・ブラインド、フォレスト・ウォーク、センス・マジックもだ。

 さて。

 ヴォルフには匂いを追跡して貰おうか。

 あのサモナー系の2つのパーティだが。

 リターン・ホームやインスタント・ポータルを使われている可能性は当然あるだろう。

 無駄に終わるかも知れないが。

 まあ、いいさ。

 やってみるだけだ。






 匂いは辿れるようです。

 それは上々。

 だが。

 向こうにも探索能力の高そうな召喚モンスターがいるのだ。

 油断してはいけない。


 スクリーン・ショットで保存していないが、まだ覚えている。

 布陣はどうであったのか?


 片方はラミア、鵺、バンパイア、それにオオカミ系とフクロウ系。

 もう片方はスケルトン系3匹にミスト系にバンパイア。

 完全に探索重視、壁役になりそうなのは鵺とスケルトン系の1枚だった筈だ。

 布陣変更していなければ、だけどね。







 匂いを辿れたのはいいんですが。

 戦闘中、というか狩りの真っ最中?

 相手は鵺が2匹。

 しかもレベル5とそこそこにレベルが高くないか?

 ここは夜のS1W3マップだ。

 それなりに強敵もいる事だろう。


 鵺の相手をしているのは?

 サモナー系プレイヤーの2つのパーティによるユニオン。

 先刻、見掛けた連中で間違っていない。

 編成、一緒ですから。


 その戦闘スタイルは?

 基本、上空からバンパイアの火力で押して地上戦力で追撃、だな。

 合理的だ。



《PKプレイヤーと確認されました。討伐が許可されます》



 おお。

 【識別】いや【看破】が効いたか?



 サブリナ 種族Lv.23 人間 女性

 ブラックサモナー/セージLv.9

 戦闘中 反撃許可あり

 戦闘位置:地上



 菅生 種族Lv.22 人間 男性

 ブラックサモナー/ネクロマンサーLv.8

 戦闘中 反撃許可あり

 戦闘位置:地上



 ふむ。

 こういう見え方をするのね?

 一応、スクリーンショットで保存しておくか。


 率いる召喚モンスターはどれほどの強さであるのか?

 ラミアはレベル2だ。

 鵺はレベル3ですか。

 グレイウルフはレベル5、オオフクロウがレベル4ですね。

 そして問題のアンデッドは?

 バンパイアは両方ともレベル2でした。

 レイスはレベル4。

 スケルトンファイター、スケルトンハンター、スケルトンソーサラーは仲良くレベル3だ。

 ふむ。

 やはり問題はバンパイアですね。





 戦闘に夢中でこっちには注意が向いていない、か。

 まあ無理もない。

 オレだって戦闘中は集中するのだし。


 周囲の様子はどうだ?

 森の気配はまだ濃い。

 身を隠す場所は多かった。


 コール・モンスターで魔物の動向を確認してみる。

 邪魔が入る事は?

 なさそうだ。

 いや。

 少し距離があるように見えるが、別の鵺もいるようだ。

 呼んでみる?

 いやいやいやいや。

 PK職みたいな真似はしなくていい。

 つか鵺は呼んでみた所で途中で消えたりしてた筈だ。

 妖怪は多くがそうだったし。


 よし。

 奇襲、しますか?


 では、皆の衆、確認です。

 確認ですよ?

 ブラックサモナーの2名は生け捕りで。

 繰り返す。

 ブラックサモナーの2名は生け捕りで。


 一番心配なのは?

 オレだな。

 風天羂索、2組用意しておこう。

 縛り上げるのに必要ですよね?

 メインの得物はどうする?

 珪化木のトンファーです。

 今度はしくじらないようにしましょう。






 タイミングは?

 最も、心理的に安心する瞬間を狙う。

 そう。

 魔物を仕留め終えた直後だ。



 それはいつだ?

 今、ですね。




 呪文を選択して実行し、溜めておきながら、次の呪文を選択して実行。

 時間差を付けての、呪文の連続使用だ。

 もう最近では慣れきってしまっているが、プレイヤー相手には久し振りです。

 そんな事を考えてました。


 いかんな。

 戦闘に、集中しろ!



「サンシティフィ・アンデッド!」


 呪文の有効範囲は大丈夫かな?

 だがマーカーを確認している暇はない。


「フラッシュ・バースト!」


 光が。

 炸裂した。

 オレ達には影響はない。

 だが喰らった方はどうなのか?

 オレ自身は喰らった事がないので分からないが。


 ネクロマンサーは混乱の状態異常に陥っている。

 セージの方は?

 おお!

 呪文詠唱、してますよね?


 オレも呪文を選択して実行済みであるのだが。

 どっちが、速いかな?



「八部封印!」


 封印は効いたか?

 効いたみたいだ。

 セージの頭上に状態異常を示す小さなマーカーが生じている。



「スペル・バイブレイト!」


 上空にいるバンパイア2匹。

 それにレイス、ついでにスケルトンソーサラーの攻撃を散らせたようだ。

 魔力が散っている。

 今度は爆炎。

 だが爆炎を放ったのはテロメアだ。

 おい!あまり範囲を広げるなよ?

 プレイヤーは仕留めてはいけない。

 周囲の召喚モンスターは?

 問題ない。

 仕留めて良し!





 スケルトンって厄介だな。

 頭蓋の中と胸郭の2箇所にある人魂を散らしてやらないと、延々と動くのですから。

 だがそれも相応に弱体化している。

 テロメアだけでも仕留めてしまえそうだが、時間を掛け過ぎるのは良くない。

 オレも骸骨を砕くのに参加しておこう。


 ネクロマンサーは?

 清姫が巻き付いてしまっている。

 その上、頭上に状態異常を示す小さなマーカーがある。

 八部封印が効いているのだ。

 ああ、そうそう。

 血は好きに吸っていいぞ?



 セージは?

 既に梱包済みです。

 八部封印はもう効力が失せているが、風天羂索で縛り上げてあるのだ。

 逃げられない筈。

 いや、強引に呪文を使おうとしたらしく、HPバーが大きく減っている。

 いけませんね。

 後でダーク・ヒールで回復させてあげないといけない。

 念を入れて、モジュラスが糸で両手首と両足首を縛り上げてある。

 死に戻り以外に逃げ道はもうないだろう。




 最も手強いと思われたバンパイアは?

 女性型の奴はテロメアが、男性型の奴はオレが仕留めました。

 レイスは後回しにしてしまった分、結構暴れさせてしまったが、今はもういない。


 鵺は?

 モジュラスの糸に全身を絡ませてしまい、動けなくなった所で集中砲火を受けて沈んだ。

 テロメア、清姫、モジュラスの攻撃を間断なく受けてましたね。

 まるで功績を競うかのような重厚な連続攻撃だった。

 恐ろしい。

 ちょっと怖いです。


 グレイウルフはヴォルフが最初のうちに仕留め終えていたと思う。

 オオフクロウもフローリンの餌食となっていたようだ。

 今やその2匹はラミアを相手に奮戦中だ。

 モジュラスも加わり、ラミアにはもう勝ち目はあるまい。

 ラミアは特殊能力を発揮する暇も与えられていなかった。

 忘却。

 フローリンのスキルが発揮されているようだ。

 HPバーもMPバーも減ってはラミアの血を吸って供給するという鬼畜ぶり。

 同時にヴォルフの攻撃を受け続けて、ラミアはHPバーが砕け散る前にMPバーがなくなりそうだ。

 既に詰んでいるのと同義です。



 スケルトン系も残るのはスケルトンハンターのみ。

 これはテロメアに任せていいかな?



「八部封印!」


 セージとネクロマンサーの両方に状態異常のマーカー。

 死に戻り狙いも許しませんよ?


 では。

 ネクロマンサーを梱包するか。

 何か清姫に散々締め上げられて大変な事になってますけど。

 つかMPバーも少ない。

 清姫、吸い過ぎ!

 抱き付き過ぎ!

 ダーク・ヒールはそう何度も使えそうにないな。










《只今の戦闘勝利で召喚モンスター『テロメア』がレベルアップしました!》

《任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》



 戦闘は終了したようだ。

 召喚モンスター達の死体は?

 そう時間を経過しないうちに消えてしまった。

 通常のモンスターとはやはり違うようだ。

 当然、アイテムは剥げない。

 残念でした。



 テロメアのステータス値で既に上昇しているのは知力値でした。

 もう1点のステータスアップは敏捷値を指定しましょう。



 テロメア バンパイアLv11→Lv12(↑1)

 器用値 17

 敏捷値 29(↑1)

 知力値 32(↑1)

 筋力値 17

 生命力 17

 精神力 32


 スキル

 杖 槌 小盾 受け 回避 飛翔 変化 気配遮断

 物理抵抗[小] 魔法抵抗[中] 自己修復[中] MP吸収[小]

 奇襲 吸血 闇属性 火属性 風属性 土属性





 では。

 質問、してみようか?

 あそこで何してたのか、興味がある。

 そう。

 唯の、質問です。

 何も強要するつもりは、ない。



「ところで、サブリナさんに菅生くん、話せるかな?」


 返事がない。

 ま、そうなのかもね。


 念の為だ。

 フードを目深に被っていて表情も良く見えていなかった。

 素顔を見ておこう。




 なんという事でしょう。

 サブリナ、という女性プレイヤーの素顔は?

 実に幼い。

 それでいて凄い目付きで睨んでます。

 そんなに見ないで。

 ちょっと恥ずかしいのですよ?


 変装は?

 口の中に綿のような物を詰めてました。

 全く。

 定番ではあるが、良くここまでやるものだ。

 化粧もしているし。

 落とすのは手間なので止めておいた。


 菅生、という男性プレイヤーの素顔はどうか?

 これがまた、絵に描いたようないい男。

 いや。

 化粧、しているよね?



「もう一回、聞くけど。話せる、かな?」


 返事はない。

 目を横に逸らせていたようだが。


 風天羂索が音を立てる。

 風切音。

 サブリナの状態異常を示すマーカーが消えていた。

 痛みを耐える表情は隠せない。

 だが悲鳴は上げなかった。

 いかんいかん。

 八部封印、継ぎ足しておかないと。

 勝手に死なれても寝覚めが悪くなるからな。




「ダーク・ヒール!」


 サブリナのHPバーを回復させて、と。

 そうそう、サブリナのMPバーは?

 たっぷりと半分以上、あるな。


 菅生は?

 もう1割どころか枯渇してしまいそうだ。

 仕方ないな。



「ファイア・ヒール!」


 菅生くんには大サービスだ。

 オレってば、何て優しいのだろう!







「何か、話せるかな?」


 ダメか。

 仕方ない。

 説得を試みるとしよう。



「仕方ない、よね?」








「や、やめて、くれっ!それ以上は、マズい!やめろぉぉぉ!」


「うーむ、ここかな?」


 拷問、ではない。

 これは痒い所を探して掻いてあげているのだ。

 くすぐっている訳ではない。


 ほーれ、ここか?

 ここがええのんか?

 菅生くんは敏感だな。

 腋の下とか足の裏とか耳の裏とか、弱い所が多くないかね?

 違った、痒い所だ。




 ため息が聞こえた。

 サブリナさん、ですね?


「茶番はもういいでしょ?時間が惜しいの。さっさと殺したら?」


 何だ。

 2人とも、話せるじゃないの。





 だが。

 再び2人ともだんまりだ。

 あれ?

 サブリナさんに菅生くん。

 お話しましょうよ?




 しょうがないな。

 やれ、ヴォルフ。

 オレは菅生くんの痒みを止めます。








 きっとオレがヴォルフと同じ事をしたら垢BAN確定なんだろうな。

 ヴォルフはサブリナの耳の辺りを舐め続けている。



 ペロペロペロペロペロペロペロペロ。

 ペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロ。


 ペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロ。

 延々と続く耳舐め攻撃。

 蜂蜜がそこにあるかのようだ。



 おお!

 サブリナの顔が緩んでいる。

 笑っちゃいそうだ。

 いや。

 もう、笑ってるし。




「ねえ?色々と聞かせて欲しいんだけど?」


 緊迫の雰囲気をブチ壊してしまったが、どうにか話をしてくれる気分になったみたいだ。

 素直になってくれて有難う。

 拷問、いいえ、説得に時間を掛けずに済むようだ。


 でもね。

 質問は1人1人、少し離れた形で行いましょう。

 口裏を合わせられても困りますから。


 お二人さんには謝らないといけない事もあるなあ。

 カツ丼、ないんですよ







 少し時間を掛けてしまった。

 だが、情報としてはそこそこ精度は高いのかな?

 まあ全て信じる訳にはいかないけどね。


 要約すると?

 召魔の森と同じ場所にPK職の連中も愚者の石版を使おうとして出来なかった事。

 で、謎の魔物こと、オレ配下のポータルガード達に襲われ散々な目に遭った事。

 その中にはサブリナもいた事。

 今回はそのリベンジであった事。


 オレ達が全滅させたPK職の3つのパーティと別行動になった理由は?

 元々、ポータルガード達を狩るつもりで同行したそうです。

 だが襲来が中々無いので、意見が割れたそうな。

 で、この2名は水晶狙いでS1W3マップで狩りをしていたらオレに襲われた、という形になる。


 で、オレが全滅させたPK職連中は?

 あれでもPK職の中でも名の通った連中だったのだそうで。

 あれで、か。

 現在、オレにとっての強敵、難敵の基準は禍神。

 大型であればキムクイ。

 海であればケートスかな?

 ブロンズドラゴン級以上はもう論外の存在ですけどね。


 うん。

 比べてはいけないか。



 そして菅生くんから聞かされた情報が!

 いや、オレにはまるで価値がない情報でしたけど。

 ネクロマンサーは配下の召喚モンスターを全てアンデッドで揃えると、追加効果があるらしい。

 3匹だと器用値、敏捷値のステータス値に+1の修正が付く。

 4匹になると更に知力値、筋力値のステータス値に+1の修正が付く。

 5匹になると全てのステータス値に+1の修正が付く。

 パーティの全員に、である。

 但しこれにアンデッド以外の召喚モンスターを入れたら効果は無くなる。

 パーティ内だけに有効で、ユニオン相手にまでは波及しないらしい。

 それでも強力ですけどね。


 でも残念。

 オレはネクロマンサーではないのでした。

 それにサモナー掲示板では最近書き込まれているそうです。

 むしろ時流に取り残されているオレがここにいます。

 だって掲示板、見てないし。





 時刻は?

 午後10時を回ってました。

 オレの目の前には縄を解かれたサブリナと菅生がいます。

 解放?

 そう。

 ここで、解放です。

 まあ交換条件は無くもない。

 各々のスキル構成、それに配下にいる召喚モンスターのリストです。

 ハードコピーさせて送って貰いました。

 だって興味があったし。




「どうして殺さないの?」


「殺されたかったの?」


 返答に詰まるサブリナ。

 うむ。

 怒った顔は子供のようだが。

 受け応えの感じはそうではなかった。

 外見に騙されてはいけない。



「まあ、何だ。PKK職の獲物を横取りするのもアレだしねえ」


 あれ?

 何か、変な事を言ったかな?

 目を見開いて驚いた様子だが。



「次の機会があったらお互いに仕掛ける。勝敗は時の運。それで良くないかな?」


「不遜だわ」


「不遜になんてとてもなれそうにないよ。最近も死に戻りしているしねえ」


「えっ」


「えっ」


 押し黙ったままだった菅生くんも声を上げてました。

 あれ?

 誰だって死に戻りはしてると思うんだが。




 テロメアがサブリナを、清姫が菅生を解放。

 2人はパーティを組んで、リターン・ホームで跳んで去っていった。


 あ。

 警告するの忘れてた。

 まあ、いいか。

 召魔の森を攻略するのは困難だろうしな。



 しかし凄いな。 

 PK職の連中も愚者の石版を使って自前の拠点を作った、という事です。

 場所は聞く事はしていない。

 特に襲う理由もないし。


 だが心しておこう。

 ポータルガードの召喚モンスターを含めて、戦力の底上げはするべきだろう。

 現時点ではかなり安心出来る。

 だが将来はどうなる事か、保証など無いのだ。



 そうそう。

 時刻は午後10時10分。

 まだまだ、時間はある。

 護国谷に跳ぼう。

 布陣も変更しておこうかな?

 ヴォルフ、テロメア、フローリン、赤星、キールです。

 前衛で赤星には頑張って頂きたい。

 今日はオレも前衛で金剛秘剣を使おう。

 まずは軽くツインヘッド辺りから始めましょうかね?









《只今の戦闘勝利で召喚モンスター『キール』がレベルアップしました!》

《任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》



 軽く、ツインヘッドから?

 ファッティーツインヘッドからでしたね。

 レッサーデーモンにデモンズビーストはまだいいとして。

 レッサードラゴン・リッパー、アイスワイバーン込みのスノーワイバーンの群れ。

 そして今のレッサードラゴン・ダーク。

 手軽な相手が、いませんでしたね。



 キールのステータス値で既に上昇しているのは生命力でした。

 もう1点のステータスアップは敏捷値を指定しましょう。



 キール ブラックウルフLv1→Lv2(↑1)

 器用値 12

 敏捷値 33(↑1)

 知力値 14

 筋力値 14

 生命力 16(↑1)

 精神力 13


 スキル

 噛付き 疾駆 威嚇 聞耳 危険察知 追跡 闇属性



 さて、交代させる?

 調子もいいし、このままでいいかな?

 まだまだ、時間はある。

 もう1つ、レベルアップするまで粘ってみようか?


 それにしても赤星、盾なしでもガンガン前に出て戦っている。

 盾を使わせても安定した壁役になってくれていた。

 それでいて闇の円盤、火の槍、水の槍を使いこなす。

 手数が実質的に多くなってる感じがする。

 それでいて回復も気にしなくて良いのだ。

 大満足です。


 オレの負担も当然少ないのだが。

 今まで試していなかった事をします。

 フォース・ジャベリンの試し撃ち。

 それにまだ使っていない武器だ。

 倶利伽羅剣。

 火属性限定の両手剣なんだが。

 魔法をセットしなくて済むのはいいけど、それだけに使い道は限定されかねない?

 まあ使ってみないと分かりませんね、はい。










《只今の戦闘勝利で【両手剣】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で召喚モンスター『キール』がレベルアップしました!》

《任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》



 倶利伽羅剣ですが。

 あのレッサードラゴン・リッパーの体表を完璧に破壊してやがりましたよ?

 劣竜戟、劣剣竜の小刀に迫る攻撃力。

 だが破壊力はこっちが上だろうな。

 レッサードラゴン・リッパーの体勢を崩していたりしますし。

 戦果は申し分なし。

 だがこの剣、金剛秘剣よりも重心が先端側に寄っている。

 重さそのものは変わらない筈。

 だが使っていると体が重たくなるような感覚が残る。

 体の芯に、響くのです。

 もうちょっと鍛錬が必要かもしれない。


 フォース・ジャベリンは?

 高いレベルで得る呪文だけの事はある。

 威力そのものはまあそれなりだが、射程が長く命中率がいい。

 射程は投槍よりも長いが、むしろ併用がいいかもしれないな。



 キールのステータス値で既に上昇しているのは敏捷値か。

 もう1点のステータスアップは器用値を指定します。



 キール ブラックウルフLv2→Lv3(↑1)

 器用値 13(↑1)

 敏捷値 34(↑1)

 知力値 14

 筋力値 14

 生命力 16

 精神力 13


 スキル

 噛付き 疾駆 威嚇 聞耳 危険察知 追跡 闇属性



 時刻は?

 午前0時20分です。

 日付、跨いじゃいました。

 まあいいか。

 明日、いやもう日付は今日だが、次にログインしたら狩場を変えようかな?

 ここでは格闘戦を楽しめる相手がいない。

 それが問題だ。


 より格上の相手、ともなるといません。

 金紅竜の眷族には手は出せないし、そもそも勝ち目が無い。

 これは問題だ。



 ま、いずれにせよ今日はここでログアウト決定です。

 もう時間も遅いし急ぐとしよう。

主人公 キース


種族 人間 男 種族Lv41

職業 アークサモナーLv8(大召喚魔法師)

ボーナスポイント残 14


セットスキル

小剣Lv12 剣Lv20 両手剣Lv13(↑1)両手槍Lv18 馬上槍Lv22

棍棒Lv17 重棍Lv9 小刀Lv13 刀Lv20 大刀Lv12

刺突剣Lv17 捕縄術Lv20 投槍Lv17 ポールウェポンLv18

杖Lv31 打撃Lv29 蹴りLv28 関節技Lv28 投げ技Lv28

回避Lv30 受けLv30

召喚魔法Lv41 時空魔法Lv29 封印術Lv23

光魔法Lv26 風魔法Lv27 土魔法Lv26 水魔法Lv26

火魔法Lv26 闇魔法Lv27 氷魔法Lv26 雷魔法Lv25

木魔法Lv26 塵魔法Lv25 溶魔法Lv26 灼魔法Lv26

英霊召喚Lv3

錬金術Lv22 薬師Lv12 ガラス工Lv10 木工Lv13

連携Lv29 鑑定Lv28 識別Lv29 看破Lv11(↑1)耐寒Lv19

掴みLv28 馬術Lv28 精密操作Lv29 ロープワークLv16

跳躍Lv21(↑1)軽業Lv21(↑1)耐暑Lv17 登攀Lv13 平衡Lv19

二刀流Lv25 解体Lv25 水泳Lv14 潜水Lv15

投擲Lv18

ダッシュLv21 耐久走Lv21 隠蔽Lv11 気配遮断Lv11

身体強化Lv28 精神強化Lv28 高速詠唱Lv29

魔法効果拡大Lv28 魔法範囲拡大Lv28

耐石化Lv11 耐睡眠Lv11 耐麻痺Lv16

耐混乱Lv12 耐暗闇Lv11 耐気絶Lv16

耐魅了Lv8 耐毒Lv14 耐沈黙Lv10

耐即死Lv9


召喚モンスター

テロメア バンパイアLv11→Lv12(↑1)

 器用値 17

 敏捷値 29(↑1)

 知力値 32(↑1)

 筋力値 17

 生命力 17

 精神力 32

 スキル

 杖 槌 小盾 受け 回避 飛翔 変化 気配遮断

 物理抵抗[小] 魔法抵抗[中] 自己修復[中] MP吸収[小]

 奇襲 吸血 闇属性 火属性 風属性 土属性


フローリン レミックバットLv1→Lv2(↑1)

 器用値 22

 敏捷値 38(↑1)

 知力値 15

 筋力値 15

 生命力 15

 精神力 15(↑1)

 スキル

 噛付き 飛翔 反響定位 回避 奇襲 吸血 毒

 忘却 高周波


キール ブラックウルフLv2→Lv3(↑1)

 器用値 13(↑1)

 敏捷値 34(↑1)

 知力値 14

 筋力値 14

 生命力 16

 精神力 13

 スキル

 噛付き 疾駆 威嚇 聞耳 危険察知 追跡 闇属性


召魔の森 ポータルガード

黒曜、ジェリコ、獅子吼、逢魔、雷文、近松

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― 新着の感想 ―
色々新情報が知れて満足です ぺろぺろシーンは漫画で読んでみたいw
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