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《フレンド登録者からメッセージがあります》
誰かな?
サキさんでした。
ふむ。
読むのは少し後で。
まずは文楽を召喚しましょう。
朝食の用意を進めて貰おうか。
食材は?
日持ちの点で保険になっている幻影馬の肉がまだある。
でも結構減っているんですよ?
闘牛肉やトカゲ肉を召喚モンスター達に振舞ったりもしているしな。
一時期に比べたらかなり減ってきている。
どこかで補給しておきたいものだが。
おっと。
サキさんの用件は何だろう?
『甲蟹の甲羅を使った鎧兜の試作品が出来ました。午前中なら夕闇城にいます』
ほう。
出来たんだ。
早い、よね?
多分だけど、早い。
ここでの経験値稼ぎはどうするか?
悩ましいが、これもいい機会だ。
東に行こう。
海もいいよね、海!
その前に肉も補充しようかね?
ついでだ。
師匠の家に寄って色々と補給しておくのもいい。
これもいい機会だろう。
食事を摂り終えたらインスタント・ポータルを解除。
すぐにリターン・ホームを使う。
風景が反転する。
うん。
また来るよ!
色々と美味しいみたいだしね。
そして目の前には夕闇城。
おっと。
プレイヤーの数が多いようですな。
邪魔にならないメンバーだけでも召喚しておこう。
黒曜、スパッタ、イグニスで。
猛禽類3羽の競演?
いいえ、互いにじゃれてますけど?
オレの頭上、両肩の場所を巡って争っている?
いえ。
単に遊んでいるだけのようだが。
行きますよ?
ちゃんと付いてくるように。
何故だろう。
いつもの場所にいつもの重鎮。
フィーナさん、サキさん、マルグリッドさん。
リックにレイナ、といますけど。
いや。
アデル、イリーナ、春菜、此花がミオ、優香、レン=レンと歓談している。
その輪の中に紅蓮くんもいるようなんだが。
「来たわね」
「はい」
「先に精算しておきたいアイテムはある?」
「丸太があるんですが」
「丸太?」
「まあ原木ですが」
「丸太!」
レイナが食い付いた。
まあそうですよね。
木工職人だし。
とは言ってもスギが主なんですけど。
「マルグリッドさん、この2羽の装備も新調しておきたいんですが」
「ホーク系、ね。既にある出来合いの奴でいいの?」
「十分です」
スパッタ、イグニスの装備は任せておいて、と。
丸太は問題だ。
さすがに置き場所がないので、臨時製材所に移動して放出しました。
だが。
そこでリックからユニオン申請。
うん?
何でしょう?
『キース、気を付けた方がいいよ?』
「え?」
『先行してるからだろうけどね、色々と聞かれると思うけど。大丈夫?』
「はあ」
ウィスパーで内緒話。
注意喚起、か。
でもね。
逃げる訳にはいかないのです。
新装備、受け取らないといけませんので。
「まあどうにかなると思いますが」
『そうなって欲しいねえ』
「機会があればこっちからも伝えておけばいいかなって思ってましたし」
うん。
でもね。
情報を溜めていたのはオレ自身。
時間を掛けて説明した事はなかったし、掲示板にも書き込んでいないのである。
自業自得?
多分、そうでしょう。
夏休みの宿題だって毎日コツコツと少しずつ片付けたら楽なのです。
最終日に纏めてやろうとするからいけない。
そんな感じ?
増えてる。
周囲にいるプレイヤーの数が酷い。
カヤ、ジルドレ、ハンネス、リュカーン、二郎と譲二。
まだまだいる。
オレを含めて全員がユニオンを組んでいるのですが。
イベント追加反省会、であるらしい。
『始めるけど、いい?』
「は。はい」
フィーナさんがこれ以上ない笑顔です。
何故だ。
背中に震えがくる。
『こんな所で合ってる?』
「合ってます」
『かなりマップの情報も充実してきたわね』
『やっぱりキースには北方面にも来て欲しいんだが。北はまだ5マス先までだぞ?』
『いや、東で』
『南だ南!』
もうね。
誰が誰なんだか。
何をしているかって?
オレがどこのマップに行っているのか、その確認作業です。
マルグリッドさんは蒼月の傍で何かやっている。
なんと出来合いの材料で装備を新調して貰っています。
オレも抜けてるよな?
一番強化すべき召喚モンスターだって事に気が付いていないなんて。
オレの記憶も大した事はない。
だが覚えている事もある。
イベント期間中の動画保存先を教えたり。
新しく得た称号の事とかもそうだな。
ブーステッドパワーやインテリジェンス・アタックのような新しく得た武技もだ。
魔水晶もありました。
あと各マップで得たアイテムの出所もだ。
それにW7で見つけた町とか。
各マップで出現する魔物の情報とか、完全にうろ覚えもあるんですけど?
何よりもスキル。
耐性。
そして英霊です。
その英霊が一番の問題であったようだ。
紅蓮くんが頭を抱えている。
『イベントの時の謎支援効果って英霊だったのねー』
『助かったのは確か。でも事前に知っておきたかったわねえ』
『作戦に組み込めていたら話がまるで違ってくるしな』
周囲の反応は?
呆れる声ばかりだ。
『何か抜けはないのかしら?』
「あるような、ないような。分かりません」
先生!
分かりません!
自分の事ですけどね!
うん。
我ながら呆れるよね?
幾つもの溜息が聞こえました。
つか同時にオレも溜息。
本当に困った奴だ。
『結論は?』
『生産職の支援の枠だって元々超えてるようだし。これは諦めましょう』
『そういうキャラ位置になってしまっとるしな』
『今後は?』
『放流するしかないでしょうね』
やった!
無罪放免?
当然だ!
一体、どんな罪を犯したというのか?
『同行はどうですかね?』
『オススメ出来ませんね』
『色々と自重しませんから!』
そうか?
アデル、それにイリーナと同行してる際はそんなに無茶していないと思うんだが。
紅蓮くんへ、オレと同行するとどうなるのか。
アデル、イリーナ、春菜、此花が何か説明しているようです。
何を言っているのか、気になる。
気になります。
『で、放流かな?』
『放流でいいと思うわよ?』
よっしゃ!
弁護士さん、ありがとう!
いや、別に逮捕拘束されて事情聴取を受けていた訳じゃないですが。
ユニオンは解消されウィスパー機能を使った臨時反省会は終了した。
つかさ。
イベントの話が半分もなかったよね?
ところで。
いつの間にか蒼月の馬装具に追加が。
どうなったかと言えば、頭絡だ。
白銀の首飾りを加工して通しているようだ。
「強引だけど、当面はこれでいい筈。でも宝石は付けない方がいいわね」
「他の形で作れます?」
「飾り帯みたいにするのがいいのかしら?ちょっと考えさせて」
マルグリッドさんでも困惑する要望であったらしい。
うん。
蒼月の戦闘スタイルを考えたらどうなんだろう?
むしろ別方向で考えた方がいいように思えますが。
「呵責の腕輪や呵責の足輪の延長じゃダメですかね?」
「そう?」
「ええ」
やや考え込む様子。
だが。
何かを思いついたらしい。
「それ!採用!」
「はい?」
「蹄鉄よ!獄卒の鼻輪で加工出来るかも?」
「ああ、成程」
蹄鉄か。
確かに。
サイズ的にも作れそうだ。
「鍛冶師にも相談しなきゃ!」
そう言うと何処かに駆けて行ってしまいました。
慌しいな。
おっと。
そう言えば奈落とサキさんは?
奈落は別の小屋の中で装備を新調させて貰っている筈だ。
サイズ調整が要るようです。
そろそろ、終わってるかな?
「どうにか使えそうかしら?」
「ですね」
奈落の姿は?
以前の蟹装備に通じるものがある。
でも色相は地味だ。
焦げたようにも見える、黒に近い茶色なのだ。
その性能は?
【防具アイテム:兜】甲蟹の兜 品質C+ レア度5
Def+10 重量0+ 耐久値240
甲蟹の甲羅を加工した兜。軽くて丈夫。
内装に幻影馬の革を張り合わせてあり耐久性も良い。
僅かだが耐久値を自己修復する性質がある。
【防具アイテム:鎧】甲蟹の鎧 品質C+ レア度5
Def+13 重量2 耐久値320
甲蟹の甲羅を加工した鎧。軽くて丈夫。
内装に幻影馬の革を張り合わせてあり耐久性も良い。
僅かだが耐久値を自己修復する性質がある。
【防具アイテム:垂帯】甲蟹の垂帯 品質C+ レア度5
Def+9 重量0+ 耐久値200
甲蟹の甲羅を加工した垂帯。軽くて丈夫。
僅かだが耐久値を自己修復する性質がある。
【防具アイテム:ブーツ】甲蟹のブーツ 品質C+ レア度5
AP+2 Def+10 重量0+ 耐久値220
甲蟹の甲羅を加工したブーツ。軽くて丈夫。
内装に幻影馬の革を張り合わせてあり耐久性も良い。
僅かだが耐久値を自己修復する性質がある。
【防具アイテム:篭手】殺人蠍の篭手 品質C+ レア度4
AP+6 Def+8 重量0+ 耐久値230
殺人蠍の爪を加工した篭手。軽くて丈夫。
手先を用いる行動に対するペナルティもなく使いやすい。
肘打ちにのみ攻撃補正がある。
内装に幻影馬の革を張り合わせてあり耐久性も良い。
いいじゃない。
何がいいって、軽い!
内側に補強で薄手の革が貼ってあるのも特徴だ。
それでいて、軽い。
さすがだ。
「篭手だけは別の素材だけど。まあ素材そのものは貴方から買い取った物なんだけどね」
「軽いですね」
「以前の奴よりもかなりいい筈。酷い壊れ方をしない限り補修も不要みたいだし」
これはいいな。
奈落もクラスチェンジしてはいるが、ステータスだけを見たらまだまだ平凡だ。
前衛として見るならば、どちらかと言えばスピードファイターなのである。
素早さを阻害する装備は相応しくはないだろう。
確認を終えたら奈落は帰還させた。
新装備の真価は実戦で確認しましょう。
古いカニ装備は?
売っておきました。
うむ。
お世話になったが、今後も何所かでネタ装備として活躍して欲しいものだ。
精算しました。
やはり持ち出しになったが、それほどでもなかった。
リックは苦笑するばかりだ。
ご愁傷様、とその顔は語っている。
分かる。
何故か、分かります。
「皆は何処を目指すんだ?」
「カヤさんの所で依頼を受けました!」
「S5E1マップを目指す事になってます。ユニオン組んでですが」
「別マップでアイテム狙いですかね?」
「ほう」
アデルとイリーナは南か。
あの港町に行く訳だ。
春菜、此花は互いに組んでS1W5マップだ
分かり易い。
あの山羊と羊のアイテム狙いだな。
彼女達が組むのであれば辿り着くのはそう難しくはないだろう。
「キースさんは?」
「ちょっと考えがあってな。東に行ってみたい」
「東、ですか?」
「ああ。鍛えたい召喚モンスターが多くてね」
「今ならネーメマーカーがいます。S2E1まで跳べますが?」
「いや。地道に移動するよ。アイテムも欲しいしね」
そう。
まずは闘牛肉だな。
次に師匠の家。
そんなに手間でもない。
蒼月で空を移動しながらなのだから。
夕闇城の生産職仮本部を辞去する。
現在の布陣は?
黒曜、蒼月、スパッタ、イグニス。
もう1つの枠はどうする?
折威にしよう。
移動する先に出現する魔物は徐々に難易度が低くなるのだ。
まだクラスチェンジしたばかりだし、地道に経験値稼ぎはしておくべきだ。
戦力の底上げも狙いたいですな。
では。
プレイヤーの目が多い場所で蒼月で飛び立つのは避けておこう。
どうも悪目立ちしているようだ。
先刻の会話でも聞いた気がする。
急いでいたとはいえ、衆人環視の中を蒼月で飛んだのだ。
その動画もまた話題の震源地であったようだし。
いずれはサモナー系も飛ぶのが普通になると思うのですが。
だがそれは今ではない。
ここは自重しておこう。
時刻は?
午前9時50分。
W3マップに突入すると高度を下げた。
さすがにトレイン行為はしない。
つか出来ない。
そこそこ、プレイヤーがいたりするからだ。
闘牛を狩るのも面倒になってきている。
トレインして大きくなった群れをまとめて狩るのは効率がいい。
でもね。
アイテム剥ぐのも大変なんだよね?
あれはあれでストレスになり易い。
程々でいいのだ。
前向きに考えたらいい。
ステップライオンは相変わらずパッシブなのでスルーするとして。
闘牛だ闘牛。
いや。
お肉だお肉!
アイテムとしてのレア度とか関係なく、闘牛の肉は旨いのだ。
逃す事はない。
闘牛相手の狩りは?
好調である!
幸先良く三角バラを得たのは大きい。
でもね。
やはり数も欲しいのですよ。
レア度低めでいいからホルモンだって欲しいのです。
闘牛そのものは?
空中から突撃、美味しいです。
一撃で仕留めるのはさすがに難しいが、たまにあったりする。
瀕死になった闘牛は召喚モンスター達に止めを譲って他の闘牛を狙う余裕もある。
肉のストックを見ながら狩りを進めましょう。
熱中すると際限がなくなる。
適度に数は稼げたら移動すべきなのだから。
それでもやはり狩りには熱が入りました。
何しろ、肉だ。
肉なのだ!
結局、サーロインが出るまで粘ってしまいました。
時刻は午前11時30分。
風霊の村に立ち寄って昼食を摂り終えました。
ところでこの風霊の村ですが、村の規模が半端なく大きくなっている、
大規模農場ですね。
村の周囲の畑は更に拡充されている。
梅、桃、栗、そして柿までもが安定して収穫されているようなのだ。
屋台で聞いた話だが、最近は梨に林檎、葡萄も試験的に栽培が開始されているのだとか。
半端ない。
でもね。
やはり気候に合わせて大規模化はすべきかな?
土地にも向き不向きはあると思います。
W2マップでは久しぶりにフロートアイと戦闘になった。
これはこれで蒼月に騎乗したままの攻撃が難しい。
馬上槍の攻撃が命中したら一撃だ。
一撃で仕留められる。
だがそれが中々、難しかったりする。
小さい魔物が相手だ。
難しいのも当たり前ですね。
スプライトのように極端に当たり難い訳ではない。
適度にチャレンジ出来るだけの余地がある。
まあ経験値としてはかなり微妙なのだろうが。
かと言って余計なダメージを喰らうのも面白くない。
動きが止まって瞬きすると面倒なのだ。
つかその瞬間を狙って召喚モンスター達が襲うんですけどね。
オレは?
馬上槍で突く。
五行封印を使って攻撃を封じる。
それだけだ。
正直、移動のついでの暇潰しにしかならない!
うん。
移動だ移動!
時刻は?
午後0時20分だ。
少し戦闘で時間を掛けたが、師匠の家の前に到着。
というか、マギフクロウとミネルヴァオウルのお出迎えが先です。
黒曜と編隊飛行?
いいえ、唯の追いかけっこですね。
仲のいい事で。
門扉の前に着地する頃には師匠の家の屋根に並んで寛いでますが何か?
無論、スパッタとイグニスもです。
和み過ぎじゃね?
蒼月から降りて門を通り抜けると?
師匠までもがお出迎えです。
「お久しぶりです」
「うむ。壮健であるかな?」
「まあまあです」
「うむ。まあまあ、かのう」
蒼月の顔を撫でながら師匠は意味ありげに笑った。
うん。
蒼月の姿はホワイトホースの頃とそう大きく変わっていないのだが。
ペガサスって見抜かれてる?
多分、見抜かれていると思います。
いつもの作業室に入ると?
ジュナさんが真剣な顔付きで作業中?
「終わった!」
「成功ですかの?師匠」
「失敗!」
肩を落とす師匠。
机の上には?
アレだ。
品質Xの邪蟻の甲。
「冗談よ!でも再現性は完全じゃないわねー」
「私では師匠程の成功率は出せません。もう少しお願いしたいんですかのう」
「ダメよー、ちゃんと鍛えないと!」
「こういうのはワシの領分ではありませんので」
師匠は苦笑するばかりだ。
ジュナさんと視線が合う。
何故だろう、嫌な予感しかしない。
その微笑の意味する所は何だろうか?
子供がおもちゃを見付けた時の顔をしてます。
「おー!キースちゃん、元気してる?」
「はあ」
オレもまた苦笑するしかなかった。
師匠に断りを入れてからポーション、マナポーション、それに瓶の原料を調達出来た。
それはいい。
だが条件があったのでした。
「何、少し付き合って貰うだけじゃよ」
「どこかへ行くんですか?」
「うむ。ある場所に野暮用じゃ。同行するだけでいい」
「はあ」
師匠の目もおかしい。
悪戯小僧に通じるものがある。
何か企んでませんか?
いや、傷塞草採集ならちゃんと付き合いますよ?
目の前にはお久しぶりのロック鳥。
おお。
改めて見るとやはり格が違うな!
だが。
「お前さんにはちゃんと空を飛ぶ手段があるじゃろう?」
「おお!キースちゃん、もうこんな子までいるなんて!」
ロック鳥への同乗は断られてしまいました。
やはり見抜かれてましたか。
当然、ジュナさんもだろう。
仕方ない。
行くぞ、蒼月!
おかしい。
傷塞草の採集であればN1W1マップに行くだけでいいのだが。
明らかに方向が違う。
マグネティック・コンパスによると、その方角は東だ。
何処に行くんだ?
それに速度もおかしい。
いや、付いて行けるだけの速さなんだが、明らかに速い。
そのせいかやたらと寒い!
レジスト・アイスも掛けたが、それでも寒いよ!
高度はそんなに高くない筈だが。
つか蒼月だけじゃなく、黒曜もスパッタもイグニスもこの速度で寒くないのか。
平気です。
さすがに折威は寒いようで、蒼月に同乗する形になっている。
つかオレの背中にくっついてます。
魔物の襲来は?
ない。
眼下にステップホークを見掛ける事もあるが、こっちを襲う様子はなかった。
勇者はいないのか。
残念。
しかし、アレだ。
どこまで行くんだろう?
広域マップで見ると、レムトの上空もあっという間に通過してしまっている。
既にE1マップに突入、眼下には河口を挟んで2つの港町があるのが見えた。
それでも高度を下げる雰囲気はない。
何処へ行くのか?
分からない。
上空は青空。
下は海。
実に美しい風景なんだが。
楽しめますか?
ちょっと心配だ。
いや、かなり心配だ。
師匠、それにジュナさんと同行しているのである。
何かある、よね?




