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 ログインして目覚めると気持ちよい朝だった。

 綺麗な朝焼けである。

 今日はいいことがありそうだ。



《運営インフォメーションがあります。確認しますか?》



 何だろうか?

 またデータでも送られてきたのか?



《統計更新のお知らせ:本サービス昨日終了時点データに更新しました!》



 ビンゴでした。

 まあ中身を色々と弄るのは後にしよう。

 冒険を先に進めるのを優先すべきだ。



 既に昨日のうちに冒険の準備はしてあったので、早速防具を身に付けて師匠の家を出た。

 メッセージでログインした事をアデルとイリーナに伝えておく。

 さほど間を置かずに返信がイリーナから来ていた。

 待ち合わせはミオの屋台を指定しておこう。

 では残月とヘリックスを召喚してレギアスの村へと向かおうか。



 レギアスの村でフィーナさんの露店とミオの屋台を探す。

 既に屋台はその殆どが営業を始めていた。

 いい匂いがオレの胃袋を直撃してくる。

 メシだ。

 早く美味いメシが食いたい。

 屋台に辿り着いたはいいが、ミオはまだ仕込みの最中だった。

 優香も手伝っている。

 無念。

 それに露店もフィーナさんもリックもいないせいか開いていない。

 話し相手はなしか。


「おっす!でもまだ準備中!」


「待ってますから」


 屋台の裏の椅子に座る。

 横目で準備の進捗を眺めながら運営インフォのデータを弄る事にした。

 生データの一番下を見る。

 プレイヤー数は8,300人を少し下回る程度だ。

 増えている。

 でも現在の狩場の混み合い具合を考えるとどうなんだろうか。

 これ以上増えたらなんか凄い事になりそうだ。

 いや、次のフィールドへ進む事を考慮すれば増えても問題ないのであろう。


 以前と同様にサモナー職を選択したプレイヤーを調べてみる。

 町で見かけたプレイヤーにアデルとイリーナもいるから、そこそこ増えているのだろう。

 26人もいる。


 増えすぎじゃないかな?

 これはちょっと意外な結果だ。

 いや、アデルもイリーナもソロプレイ志望って言っていたような。

 このタイミングで一気に増えたのは何か関係があったんだろうか?

 良く分からない。


 前回同様、選択したプレイヤー数が少ない順番で職業を並べてみよう。

 するとこんな感じだ。



 ランバージャック(樵)2人

 グラスワーカー(ガラス職人) 3人

 ストーンカッター(石工) 3人

 セラミックワーカー(陶芸職人) 3人

 ラピダリー(宝飾職人) 3人

 フィッシャーマン(漁民) 4人

 ブリュワー(醸造家) 5人

 ファーマー(農民) 8人

 バード(吟遊詩人) 17人

 サモナー(召喚術師) 26人

 アルケミスト(錬金術師) 34人

 マーチャント(商人) 92人

 ファブリックファーマー(織物職人) 98名

 ファーマシスト(薬師)122名



 1人だけの職業はなくなったのか。

 そしてサモナーも目に見えて増えているのだがアルケミストも大きく増えているようだ。

 まあ分母が小さいからそう見えるだけなんだが。


 それに未だ1桁に留まっている職業もある。

 オレってばグラスワーカー3人のうち2人と知り合っている事になるのか。

 結構レアな存在なんだな。

 とても身近な感じがするのに不思議だ。



 前回と同様に魔法スキルを1種以上習得しているプレイヤーを抽出し、魔法技能の取得数別で絞り込んでみる。


 一番多く取得してるのは7種類。

 そして全体でも1人だけ。

 何かの頂点に立っているのがオレだ。

 次点が4種類なのだからその行動のバカさ加減は推して知るべきであろう。

 だが反省はしていない。



「よっしゃ!一品目出来た!」


 ミオがオレに差し出したのはホットドッグだ。

 いや、楕円形のパンに野菜炒めと棒状のミンチ肉の炒め物が挟んであるのだが。

 【鑑定】する間もなく食いついた。

 だってもうたまらん。

 あっという間に平らげるとミオと優香に声をかける。


「実に旨かった!」


「がっつき過ぎて味わってない!」


「お粗末様でした」


 まあ反応はそれぞれだよな。

 温かいお茶を貰ってデータを弄ろうとしたらフィーナさんとリック、それに不動が来た。


「お早うございます」


「あら、早いわね」


 リックと不動とも挨拶を済ませる。

 彼らも優香が差し出す食事に夢中になっていった。

 まあ男ならそれが正解だ。

 つかここの男性陣は確実に胃袋を捕まえられているような気がする。



「キース、ちょっといい?」


「はい」


 なにやら改まっているフィーナさんから『ユニオン』申請を受け取ると受諾する。

 ウィスパーで何やら話をするようだが。


『ちょっと話があるの。というより貴方の視点での意見が聞きたいのだけれど』


『何でしょう』


『今日運営から来ているデータは見た?』


『今ちょうど見てます』


『そう。それを見てどう思った?』


 フィーナさんが何を気にしているのか分からないが、さっきまでデータ抽出して遊んでた時の感想を口にした。

 フィーナさんは聞き役に徹している。


『プレイヤーの数。気にならない?』


『今の狩場の状況を考えると適正な数かな、とは思いますけど』


『そうね。そういった見方もできるかもね』


 一体何が気になるんだろうか?


『私が気にしているのは運営、いやこのゲームのコマーシャルベースの方なの』


 コマーシャルベース。

 採算性か。

 いや、ちょっと待てよ。

 脳内で概算してみる。

 課金は日数によっていくつかの条件があるが、仮に30日=1月分を1,000円としよう。

 プレイヤーの数も1万人いるものとする。

 一月の収入は一千万円。

 だがここに様々な固定費がかかっている筈だ。

 人件費、サーバー費用、開発費用、広告費用、まだまだあるだろう。

 遠い先の話になるかもしれないが、投資元には利益の再分配も考えないといけない。

 月に一千万円?

 人員を月あたり20名動かすだけで枯渇しかねない規模。

 それに加えて新規組は無料期間もある訳で、相当の資金が持ち出しになっている筈だ。


『採算が合わない、いや完全に赤字、ですよね?』


『良かった。長々と話す手間が省けたわね』


 ミオが差し出す食事を手に取りながらも食べようとせずにフィーナさんはウィスパーを続けた。


『最低限でもプレイヤー数は5万、それなりの安定収益を望むなら30万以上は要る筈。人気作なら100万を超えてくるし』


『そんなものですかね?』


『私が出資している立場ならこの規模で正式リリースは激怒ものだわ』


『よほど長期スパンで投資回収を図っているとか?』


『ないわね。メディアミックスがあるなら可能でしょうけどそういった動きがあるって聞かないし』


『まだフィールドが狭いので混乱を回避する為に制限をかけている可能性は?』


『それはさっきまで考えてなかったわ。いずれ大規模に増やすのかもしれない』


『でも他にも納得できてない理由がありそうですけど』


『勘よ』


 勘、ね。

 フィーナさんはそのまま考え込んでしまった。

 何かしら彼女なりに懸念する根拠があるのだろう。


『一旦区切って考え直した方がいいかもしれないですね。それに食事が冷めますよ?』


『あら、いけない』


 ウィスパーを解除するとミオがオレを凄い目で睨んでいた。

 一体何?


「言っておくけどナンパはさせないわよ!」


 なんじゃそれ。

 いや、そういう会話じゃありませんから!

 フィーナさんも知らんぷりして食事しないで助けて!



「「おはようございます!」」


 アデルとイリーナが揃って現れた。

 元気で宜しい。


「おっす!何か食べてく?」


「「ゴチになります!」」


 ミオの矛先が収められて料理人の顔に戻っていった。

 いいタイミングだった。

 二人にはミオの屋台で好きなものを買って食べる権利をやろう。

 メニューは限られているけどな!

 まあいい機会だし頼みごとは早めに済ませておこうか。


 食事を続けるフィーナさんの目の前に昨日の獲物を並べていく。

 大量の邪蟻の針と甲、ゴボウに黒曜石、縞狸の皮といった所だ。


「アデル、イリーナ。昨日の獲物を後でいいからここに出しておいて」


 口の中に食べ物があるので頷くだけだが意図は伝わっている事だろう。


「これはまた大量に持ち込んだわね」


「彼女達もいましたから」


「あの娘達にアリを集らせるような真似はよしなさい」


 おや、釘を刺されちゃいましたか。

 大丈夫でしたから。

 油断したら危ないのは当然だが、それだけに得るものは大きかった。

 彼女達も初日からレベルアップしているし。


「気をつけます」


 そう言うしかありませんでした。


 アデルとイリーナの荷物にしていた分の獲物と合わせて売る事にする。

 フィーナさんからは野生馬の鞍を受け取った。

 加工費はそれなりに高額だったが、売り物が多かったので収支は黒字である。

 アデルとイリーナには露店売りの刺し子の服と綿の服を買うことにした。

 結構な出費だが皮製の防具を買うには手持ちが届かなかったのだ。

 やはり草原でウサギを狩って皮を調達するべきか。


 アデルとイリーナが新たに買った服を重ねて着るのを待って出発を告げた。

 だがその前に昨日の宿題があったな。


「じゃあ出発前に宿題の提出だな。新しい召喚モンスターは何にするのかな?」


「決めてあります」


「では召喚いきます!」


 屋台の裏手で二人ともサモン・モンスターの呪文が紡がれて行く。

 そして魔方陣の中から現れたのは馬と鷹であった。


「これが宿題の答えです」


「すみません、キースさんの戦ってるスタイルを真似する事にしました」


「なるほど」


「今日からは私達二人で馬にも乗れるよう頑張ります!」


「いや、それはいいんだが、馬装具はどうするんだ?」


「あ」


 こらこら。

 オレと同じミスをしてますよ。

 仕方がないな。

 新品の鞍は彼女達に使わせよう。

 残月の鞍は師匠からの借り物で補正効果はない。

 少しでも乗馬が上手くいくのならそれに越した事はないだろう。


「鞍はこれを使って。他にもハミやら手綱やらも要るから買いに行こう」


「お買い上げありがとうございます」


 なぜそこでニッコリと営業スマイルを浮かべるのですかフィーナさん。

 抵抗できる筈もなかった。

 つか売ってるんですか!


「私もリックも行商をやってる関係で馬がいるの。当然予備の馬装具はちゃんとあるわ」


「言い値で買います」


 思わぬ出費になったがここは仕方ないものとあきらめよう。


「よし。名前は付けたかな?」


「「はい!」」


 一応、【識別】で確認しておく。



 ホース/まーちゃん Lv.1

 召喚モンスター 待機中


 ホーク/スカイアイ Lv.1

 召喚モンスター 待機中



 アデルとイリーナがどっちを召喚したのか名前だけで分かる。

 まーちゃんに馬装具を装備させていく。

 中々様になっているな。

 まーちゃんは残月と違って芦毛で綺麗に輝く灰色の馬体だった。

 アデルが異様に馬体を撫で回している。


 感触を楽しんでやがる。

 あの顔は危険な香りがするぞ。

 多分、誰かが止めないとあのままだろう。


「アデルちゃん、行くよ!」


 こういう場合のツッコミ役はイリーナになる訳か。

 任せておいて大丈夫だろう。

 オレには無理です。



 さて、今日のメニューです。

 召喚モンスターを何にするかでどうするか、変わる可能性もあったのだが、当初の予定でいいだろう。

 草原でウサギ狩りだ。

 だがその前に乗馬に慣れて貰わないと話にならない。

 村を出て街道を出るとアデル一人で早速乗って貰う。

 まあ召喚モンスターに乗るだけに歩くような速度では問題はないのだが、走るとなるとまるで違ってくる。

 補助スキルの【馬術】はないと確実に困る筈だ。

 オレの場合だが、【馬術】はあったとしても馬上で戦闘をするにはそれでも足りなかった。

 器用値を呪文で無理やり底上げして戦っていたのだ。

 そして彼女達にはその呪文はない。

 まあ鞍の補正でなんとかできると信じたい所だったのだが、ちょっと自信はない。


 だがその辺は彼女達なりに考えていたようである。

 二人で騎乗して片方が乗馬、片方が騎上からの攻撃と分担するようだ。

 流鏑馬は難易度が高いと思うが、二人で役割を分担するとなればなんとかなるのかもしれない。

 懸念材料は二人を乗せる馬の方だが、上に乗っけるのが軽量級である事が幸いして走る分には問題なさそうだ。

 あとは騎乗からの弓矢による射撃がちゃんと当たるかどうか。

 まあ当たらなくともサブウェポンで控えているロッドで殴らせるだけだ。


 森の中の街道を抜けて草原に出る。

 早速、二羽の鷹が上空から獲物を次々と見つけてくれる。

 野犬も、そして野犬を狙うパーティも見つかっているが、目的はウサギだ。

 そしてウサギ狙いのプレイヤーは少ない。

 すぐに手近な所にウサギが見つかっていた。


『いたぞ。まずは試しに狩ってみて』


『『はい!』』


 ウィスパーで指示を出しておき、その狩りの様子を見守る。

 どうなんだろうか。



 最初の騎射は外れ。

 次は掠ったようだ。惜しい。

 やはり動いている相手に当てるのは無茶である。

 

 そこでスカイアイの出番だ。

 上空から牽制してウサギの足を止めるようにアシストさせていた。

 がんばれスカイアイ。

 ウサギの足が止まった瞬間、イリーナの放った矢が直撃した。

 スカイアイが追撃を行い、更にもう一本、ウサギの胴体を矢が突き刺していた。

 ちゃんと狩れたようである。

 やるじゃないの。


 オレの場合と似て非なる形だが、面白い戦い方ができそうだ。

 弓矢は射程がある分、ダメージを受けるリスクが少ないだろう。

 それだけに色々と難易度が高い戦い方になりそうだ。

 いい経験になるのではないかな?

 でも他にも心配事はある。


「乗馬に攻撃、役割分担はいいが成長が偏らないかな?」


「平気です、交代でやるつもりですから」


「お互いに【馬術】も取ったし!」


「私もいずれは馬を召喚したいと思ってます」


「あ、私は次の新しい召喚モンスターは狼に決定済みです!」


 成る程ね。

 互いに今後の事も考えているようだ。

 いや、片方は主にモフモフな方向だけで考えていそうだが。


 そのまま数匹、狩りを続けさせてみた。

 なんとか形にはなっている。

 どちらかと言えば馬のまーちゃんと鷹のスカイアイの貢献が大きいような気もするが。

 召喚モンスターを使役するのがサモナーなんだからそれでいいのかも知れない。


「じゃあレムトに行くぞ」


「「え?」」


「狩りはレムトの冒険者ギルドを覗いてみてからまた続けるから」


 調子が乗っていたのだろう、少し不満気な顔を二人して見せた。

 単に狩るだけでもいいんだが、やはり目標がないとダレてしまうからな。

 ちょうどいい依頼がないか、探してみよう。

主人公 キース

種族 人間 男 種族Lv5

職業 サモナー(召喚術師)Lv4

ボーナスポイント残17


セットスキル

杖Lv4 打撃Lv3 蹴りLv3 関節技Lv3 投げ技Lv3

回避Lv3 受けLv2 召喚魔法Lv5

光魔法Lv2 風魔法Lv3 土魔法Lv2 水魔法Lv3

火魔法Lv1 闇魔法Lv1

錬金術Lv3 薬師Lv3 ガラス工Lv3

連携Lv5 鑑定Lv4 識別Lv4 耐寒Lv2 掴みLv3

馬術Lv4 精密操作Lv3 跳躍Lv1 耐暑Lv3


装備 カヤのロッド 野兎の胸当て+シリーズ 雪猿の腕カバー 

   野生馬のブーツ+ 雪猿の革兜 背負袋

   アイテムボックス×2


所持アイテム 剥ぎ取りナイフ


称号 老召喚術師の弟子(仮)、家畜の守護者


召喚モンスター

ヴォルフ ウルフLv4 お休み

残月 ホースLv3

ヘリックス ホークLv3

黒曜 フクロウLv3 お休み

ジーン バットLv1 お休み


同行者

アデル&まーちゃん

イリーナ&スカイアイ

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― 新着の感想 ―
 自称フツメン。でも書籍版だとそこそこだったかな。ただしバーサーカー。
キースそこまでナンパ疑われるって事は見た目がイケメンかチャラ男なのか? もしイケメンだった場合羨ましいぜちくしょう!
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