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《フレンド登録者からメッセージがあります》


 ログインしたのは午前6時30分。

 ちょっと普段よりも遅れ気味になってしまったかな?

 場所は静かなる竹林です。

 いやはや、本当に静かだ。

 初めてここに来た頃を思い出す。



 うん?

 待て。

 静か過ぎるんじゃないのか?


 テントは?

 少ないが、ある。

 ここを拠点にしているであろうプレイヤーの数を考慮すると、少な過ぎるよな?

 竹で編まれた仮倉庫の前には?

 何もない。

 倉庫の中も空だ。



 何かが、起きた?


 そうだ。

 メッセージ!




『かなり早い段階で魔物の群れが近付いてます。既に大半のプレイヤーは迎撃に出発しています』


 うわあ。

 オレ、出遅れちゃったのか?

 しまった。

 鞍馬の装備どころじゃない!


『先にフィーナさんの所へ急いで下さい!場所は西へ真っ直ぐ、すぐに分かると思います』



 遅刻だ。

 いや、出勤時間は決まってないけどね。

 出遅れているのは間違いない。

 急いで召喚モンスターを呼んでいく。

 ここは即決で。

 ヴォルフ、残月、ヘリックス、ヘザー、逢魔にした。

 急げ。

 呪文による強化も移動しながらでいい、

 食事も移動しながら携帯食で済ませよう。


 天気は正に快晴。

 だが気分はそれどころではない。

 イベントの盛り上がる所を逸しているではないか!







 前方に軍勢が展開しているのが見える。

 そう。

 軍勢と呼ぶにふさわしい。

 その最前線では一線に何かの構造物が並んでいる。

 あれが防御線か?


 おっと。

 テレパスを使おう。

 相手はフィーナさんだ。



「すみません、遅れました!」


『キース?ここはいいから!南へ行って!』


「南?」


『南側からも隷獣・外法蛇亀が迫っているの!』


 フィーナさんによれば。

 ここに来て魔物の群れが一気に迫ってきたようなのだ。

 観測班によると、キムクイ・スレイブもかなり迫っているようですが。


 つか遠目に見えているし。

 ヤバい。

 あれを静かなる竹林に到達するまでに仕留められるのか?



『サモナー達は全員、南方面に向かって貰ってるの!合流して!』


「ここ、本当にいいんですか?」


『いいのよ、これで』


「でもこれでは!」


『このままだとエリアポータルは諦めると思うけど、防御戦で消耗を強いているの!』


「尚更じゃないですか!」


『それよりも隷獣・外法蛇亀を仕留めてくれた方が有難いわね。行って!』


 暫し考える。

 ここは指示に従おう。

 馬首を南へ。

 幾重にも張られた防御線にトライホーンリザードが突っ込み、ガルムが侵入する様子が見えている。

 迎撃するプレイヤーの面々もだ。

 まさに戦争だな。


 オレはオレで、やるべき事をやる。

 そうする事にしよう。






 ヘリックスがサモナー軍団を見付けたようだ。

 その先導に従い、戦場に向かう。

 テレパスを、使う。

 相手はイリーナだ。


「私だ!来たぞ!」


『キースさん!』


 その声はまだ余裕がありそうだ。

 間に合ったか?



「何処にいる?」


『カメの尻尾側で迎撃中!もうすぐトレインしてた魔物を仕留め終えます!』


「そうか、魔人は?」 


『この群れは昨日の奴です!カメの頭の上の魔人は仕留めました!』


「魔物に乗ってる奴は?」


『こっちに来ています!』


 おお!

 それは朗報だな。

 呪文の効果を無効化される心配はない訳か。

 では、思いっきり使える、

 色々と。


「そっちに行く。暫く待ってくれるか?」


『了解!』


 テレパスを切る。

 次は?

 コール・モンスターだ。

 隷獣・外法蛇亀の周囲にいるのは?

 トライホーンリザード。

 まだいるな?

 カメの周囲を固めるオブシディアンビースト。

 ガルムがまだたくさん。

 あれでも減っているのだろうな。


 センス・マジックも使っておく。

 確かに、魔人らしき高い魔力は感じない。

 では。

 合流しに向かおう。

 迂回するつもりはない。



 群れの中を、突っ切る。

 ついでだ、隷獣・外法蛇亀の脚をこの獅子賢者の騎士槍で削ってやる!

 そうでもしないと出遅れた分を稼げそうにないのだ。



 残月を全速力で駆けさせながら突撃の準備を進める。

 呪文を、継ぎ足す。

 動画による記録も開始だ。

 周囲には誰もいない。

 後で状況確認も出来るようにしておこうか。

 では。

 いいかな?


「人馬一体!」「ブーステッドパワー!」



 ガルムが向かってくる。

 だが、オレは無視です。

 ヘリックスとヘザーの攻撃を受けて群れの統制は乱れる。

 いや、最初から統制されているような感じがしない。

 だが。

 今、狙っているのはお前等ではない。

 まずは、オブシディアンビーストの防御陣を突破。

 そして隷獣・外法蛇亀だ。



 後方にガルムを置き去りにしてオブシディアンビーストの列に迫る。

 だが、邪魔だ!

 逢魔が先導を切ってオブシディアンビーストの群れに向かう。

 ぶつかる?

 そう思えた次の瞬間。

 オブシディアンビーストの方が転がるように吹き飛んだ。

 ディメンション・ミラーと同じだ。

 魔物が迎撃しようと攻撃したのを跳ね返した?

 絶妙のタイミング。

 そして通路が出来たか。

 オレは隙間に目掛けて突撃するつもりだったんだが。

 ここは便乗で。


 だが、オレの目の前にオブシディアンビースト。

 しかも転がってしまい、腹をこっちに向けていた。

 誘ってる。

 誘ってるぞ?

 ここに突撃しろと、誘っている。

 否はない。


 残月と共に、突撃。

 次の瞬間、向こう側が見えていた。

 何が起きた?

 分からない。

 だが確かな事もある。



 隷獣・外法蛇亀の脚がもうすぐそこにある。




 目指したのは右前脚。

 さすがに一撃で壊せるような太さに見えない。

 だがここは表皮を削ってやる。

 皮、というかもうこれは装甲だ。

 ならばその装甲、剥いでやる!


 突撃!

 手応えは?

 大きい。

 何かが吹き飛んだように見えたが、確認する暇がない。

 頭上に見える景色の半分以上がカメの腹側になっている。

 嫌がらせなのか、ヘザーが頭上に雷撃を浴びせ続けていた。


 そう時間も掛からずに次の脚だ。

 右後脚。

 やはり目標は表皮だ。


 突撃!

 やはり何かが吹き飛んだ。

 今度は残月の角にも何かの塊があったが、残月は首を一つふると投げ捨てる。

 あれ。

 皮なのかな?

 何か肉片にも見えたんだが。


 だがすぐにオブシディアンビーストの列。

 再び逢魔が先頭に立ち、突っ込んで行く。

 絶妙のタイミングで吹き飛んでいくオブシディアンビースト。

 転がっていくものだから腹が狙えない。

 ああ、もう行け!

 行ってしまえ!


 突撃!

 そして次の瞬間、向こう側が見えている。

 またか!

 どうなっているんだが。

 まあ動画で記録はしてあるんだし、気にする事はしないでおこう。


 まだガルムが後方に迫ってきている。

 面倒な数だが、横へ並んでくる奴を仕留めつつ、先を急ぐ。

 トライホーンリザードもいたが、追い掛けてくるのを止めたようだ。

 ヴォルフ達と共に追い掛けてくるガルムを次々と屠る。

 死体は当然、放置で。

 どうせ魔石が剥げる確率は低いのだ。

 惜しくない。


 それよりも。

 もうすぐ合流出来そうだ。




 戦闘は終了してました。

 アイテムを剥いでいる最中であったようだ。

 残念。


 ユニオン申請が来ていたので受諾。

 状況は?



『見てましたけど、無茶し過ぎですよ!』


『何やってるんですか!』


『普通、迂回しません?』


『自重してない!』


 何故だ。

 最短距離を通って合流したのに怒られちゃいました。






 えっと。

 皆の者、落ち着き給え。

 ともかく、アレを片付けてから。

 話はそれからだ。


 まずは戦力の確認だ。

 サモナー軍団の総戦力は昨日から更に向上している。

 クラスチェンジ組が増えているからだ。

 サモナーの数は微増し、オレを含めて75名。

 今の戦闘でクラスチェンジしたサモナーもいて、過半数が既にクラスチェンジ組であるようだ。

 その内訳は?

 セージ20名、グランドサモナー27名、ネクロマンサー5名

 凄いよ!

 何よりも同時召喚が5匹になっているのが大きい。


 サモナーと召喚モンスターの総数は427となり、単純に昨日の戦力の1割増しになっていると思われるが。

 一気にあの隷獣・外法蛇亀と従う魔物、狩れちゃうんじゃないの?


 いやいやいやいや。

 トライホーンリザードがまだいる。

 オブシディアンビーストの大部分が健在だ。

 ガルムだって減ってはいるが、まだまだその数は多い。

 ここはもう一度、魔物を剥がしに行った方がいいな。




『もう2回で片付けられそう!』


「そんな所だろうな」


 周囲のサモナー達がアイテム配分していたりするのを見ながら思う。

 ブーステッドパワーの効果は途切れている。

 いい機会だ。

 呪文を継ぎ足しておこう。



「では、行くぞ」


『了解!』


『皆さん、行きますよー!』


「歌も使えよ!」


『はい!』


 マーメイド系も何匹かいるのは分かっていた。

 その歌声から逃れるのは魔物にとっては困難だろう。

 いい事だ。

 嫌がらせ最高!


 此花の号令でサモナー達が集まって戦列を組む。

 そして召喚モンスター達も。

 馬群が駆け出すと、上空の猛禽類の群れが先導して行く。

 地上でも狼達の群れ。

 その中には少ないながらもウェアウルフもオルトロスもいる。

 先頭にいるのはヴォルフだ。

 

 では。

 カメの護衛は出来るだけ引き剥がそうか!





 最初のトライホーンリザードはヘリックスの牽制攻撃を受けてオレに側面を見せていた。

 即ち、腹だ。

 美味しい。

 美味しすぎる。



「人馬一体!」「ブーステッドパワー!」


 そこに残月と共に突撃を敢行する。

 慈悲はない。

 すぐにオレの見る風景は快晴、そして次に屠るべき魔物の姿だ。

 戦果の確認は後でいい。


 ガルムを何匹か、屠りながら次のトライホーンリザードをロックオン。

 今度は正面から挑んだ。

 右前脚の付け根を削った。

 いや。

 前脚そのものが千切れて飛んでいた。

 うぉい!

 凄いな、これは!


 次のトライホーンリザードも前脚を奪う。

 つか残月の角の先にはガルムが刺さったままだ。

 いつの間に。

 考える間もなく次のトライホーンリザードの腹に突っ込んだ。

 今度はハッキリと分かる。

 肉片が舞っていた。

 なんという異次元の風景なのか?




「このままカメの周囲を回れ!」


『ええ?』


『まだ魔物が多いですよ?』


「かまわん!このまま一気に押し切れる!」


 そう。

 問題はトライホーンリザードなんだが。

 この群れに従う数が少ない。

 今までに他のプレイヤーに削られた成果であるのかもしれない。


 更に一周。

 トライホーンリザード全てに突撃によるダメージが入っている。

 無傷の奴はいない筈だ。

 もう一周、ブーステッドパワーの効果があるうちに仕留めたい訳だが。

 ガルムの姿もかなり減っている。

 オブシディアンビーストを的にし始めて、いいよね?



「全体攻撃呪文を使おう!トライホーンリザードは無視していい!」


『大丈夫ですか?』


「なんとかするさ」


 そうだ。

 ヴォルフ達もいる。

 ヘリックス達もいる。

 他にもたくさん、いる。

 戦力に不足はない。






 ブーステッドパワーは更にもう1回、使う事になった。

 3周で、トライホーンリザードは全滅。

 まあまあ?

 そして次の相手はオブシディアンビーストだ。

 周囲からの全体攻撃呪文を食らい続けてしまい、一方的な展開だ。


 オレはと言えば、ブーステッドパワーが切れた間隙を使って呪文を継ぎ足す。

 ヴォルフ達もヘリックス達も戦列を乱しているオブシディアンビーストを攻撃し続けていた。

 堅い相手だが、微かなダメージも積み重ねたら屠る事が出来るようです。

 呪文によるダメージで瀕死のオブシディアンビーストが次々と屠られていく。

 そろそろ、だよな?

 隷獣・外法蛇亀が本気になってくるか?



「ピットフォールはいけるか?」


『もうですか?』 


「早めに仕留めたい。右脚側を落とせるか?」


『カメの右脚、ですか?』


「右脚は両方、ダメージを与えてある。踏ん張りが利かないようなら効果が高いだろう」


『用意します!少し時間下さい!』


 春菜と此花が指示を出すのを聞きながらオレも呪文を繰り出す。

 ディフェンス・フォールにオフェンス・フォールだったりして、対象も隷獣・外法蛇亀だが。

 アレを狩る準備は早いに越した事はない。





『準備、出来ました!』


『次の周回で行けます!』


「よし、タイミングは任せる!」


『はい!』


 早くしないと!

 カメが首を伸ばし始めている。

 目に見えて魔力が高まりつつあるのだ。

 時間が、惜しい。

 間に合うか?


 カメの目前を通り過ぎる。

 そのまま反時計回りで脇を抜けるコースをとる。

 複数のサモナーが繰り出すピットフォールだ!


 オレも武技封印を使ってブレスの無効化を狙ったのだが。

 これは効いていないようだ。

 だが。

 ディフェンス・フォールにオフェンス・フォールは効いている。

 打てる手は、打った。

 尻尾を右に見ながら回り込む。

 隷獣・外法蛇亀の体は右へと傾いて行った。

 どうにか体勢を戻そうとしているようであるが。

 左後脚の一部が僅かに抉れて肉が露出しているのが見えた。

 うむ。

 自信を持て!

 戦果はある。

 いける。

 この前にも狩った奴だ。

 今日だって、やれる!



「人馬一体!」「ブーステッドパワー!」


 オレと残月は一体となって駆けていく。

 目指す場所は、頭だ。

 カメから見て左後方からの、突撃。

 だが。

 カメが首を伸ばしながら、こっちを向こうとしている、のか?


 ままよ!


 このまま、突っ込め!




 再び見たのは晴天。

 そして地面に横たわるガルムやオブシディアンビーストの死体。

 残月の馬首を右へと向ける。

 残月のHPバーには異常はない。

 かなり荒っぽい攻撃の連続であるが。

 リジェネレートもまだ有効の筈であり、多少のダメージは無視出来る筈だ。

 今度はカメの後頭部の方向から、首元を狙う。


 肉、千切れるかな?

 千切るんだろうな。

 だが。

 千切ってよし!


 突撃が命中する瞬間が今度はハッキリと見えた。

 まるで上から撃ち下ろすように角を突き入れる残月。

 オレの馬上槍と同時にこんな感じで攻撃してたのか。

 自分の事で精一杯で見えてなかった。


 またしても風景は青空と死体の転がる地面に。

 だが、まだまだ。

 隷獣・外法蛇亀のHPバーはまだ半分以上、たっぷりと残っている。

 何度でも行き来しながら突撃をしてくれる!




 だが。

 更に2回の突撃で隷獣・外法蛇亀は沈んでしまった。

 最後の突撃を首に受け、首そのものが切断寸前になってしまったらしい。

 もしかして、クリティカル?

 削り過ぎかよ!



『キースさん!』


『まだ魔物が残ってます!』


 おお、そうか。

 なんという朗報。

 残っているのはオブシディアンビーストのみ。

 その数も10頭と残っていなかった。


 まだブーステッドパワーの効果は?

 ちょっとだけある。

 残月の傍に逢魔は寄り添っていた。


 よし。

 頼むぞ?



 再び突撃。

 どうにかオブシディアンビーストを2頭、仕留める事も出来た。

 ふむ。

 ようやく、か。

 途中、時間を惜しんで仕留めるのを急いでしまったが、結果的に良かったのだろう。

 戦果は上々だ。



《只今の戦闘勝利で【身体強化】がレベルアップしました!》

《取得が可能な補助スキルに【耐即死】が追加されます》

《只今の戦闘勝利で【連携】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【識別】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【平衡】がレベルアップしました!》



 インフォも上々だ。

 召喚モンスターのレベルアップはなかったけどね。

 そこはいいんだが。


 全員に何らかのレベルアップがあるような雰囲気だ。

 まあそれも喜ばしい事である。


 そして、アイテム剥ぎ。

 これも楽しい事は楽しいのですがね。

 戦争中みたいな雰囲気はどこに行った?




【アイテム】審判の石版 品質A レア度7 重量10+

 効果:永続 転送ゲート設置

 ラッパを吹く天使が描かれているという石版。

 旅人の旅路を助けると言われている。



 魔晶石はまあいいとして。

 またしても何か奇妙な代物が!

 これも預かる事に。


 そして【耐即死】ですか。

 必要なボーナスポイントは10です。

 重たい!

 取得は無理!

 現時点では断念するより他ない。

 他に取得を優先したい技能もあるしな!




 ところで。

 情報収集を進めていたイリーナの様子がおかしい。

 先刻まで朗報を聞いていたのが、今は悲報を聞いているような表情になっているんだが。



『全員に報告があります。いい知らせ、それに悪い知らせです』


 やっぱりか。





 いい知らせ。

 それは隷獣・外法蛇亀の撃破だ。

 オレ達の分ではない。

 最後に残った奴だ。

 つい先刻、仕留めきったそうです。

 オレ達サモナーだけで編成された部隊以外にも、馬で騎乗戦闘をできる機動部隊もいたようだ。

 これが仕留めた、というのはいいのだが。


 悪い知らせ。

 キムクイ・スレイブだ。

 その接近に伴い、激戦が続いていたのだが、静かなる竹林の蹂躙は決定的であるようだ。

 臨時に張った防御線が突破されたそうです。

 現在、乱戦状態に。

 死に戻りやステータス異常で後送されているプレイヤーは夕闇城への転送もしているそうだが。

 まだ健在な戦力は後退しながら魔物を撃ち減らしているようだ。



 オレ達への指示は?

 このまま移動して魔人狩りを継続。

 その後は夕闇城方面に後退。

 そういう事であるようだ。



「ここにいるサモナー全員、静かなる竹林に跳べるか?」


『時空魔法持ちの数はそこそこいますので、パーティ編成を変えたらいけると思いますが』


『戻っても戦闘は厳しいと思います!』


「いや。夕闇城への撤退もリターン・ホームを使えば効率はいいだろう」


『撤退で、ですか?』


「最前線で戦わなくても別の形で貢献は出来る」


『それもそうですね』


『組み換えましょ!』


『でもキースさんはどうするんですか?』


「キムクイ・スレイブの顔でも拝みに行くさ」


 撤退戦は厳しい。

 それだけに戦力は少しでもあった方がいい。

 ここにいるサモナー達もMPバーが半分を大きく下回っている。

 あのアデルやイリーナも3割ないのだ。

 マナポーションで回復するにしても、厳しいだろう。


 出発前に動画は外部リンク先へと格納する。

 キムクイ・スレイブの顔を拝むついでに記録もしておきたい。



 春菜と此花に後の事を託すと、ユニオンからオレのパーティだけ外れて行く。

 オレのMPバーは?

 マナポーションで回復し、残るMPバーは6割程。

 移動する途中でもう1本使っても8割には届かないか。

 そこはそれ、残月に騎乗している事でプラスされる分に期待だ。









 残月を駆って北へ。

 あのキムクイ・スレイブの姿はまだ見えない。

 逢魔は帰還させていた。

 MPバーの消耗が極端で1割となかった。

 まあ無理をさせていたのはオレなんだけどな!

 それにヘザーもだ。

 MPバーは2割となかった。

 これも帰還させる。


 召喚したのはナインテイル、そして極夜だ。

 まだまだ。

 オレの配下となる召喚モンスターは全部で31匹。

 十分に戦える。

 サモナーの強みでもあるな。

 状況に応じて布陣を自由に組める。

 だが継続戦闘という面でも有利だ。

 バックアップ出来る召喚モンスターがいたりするし。

 まあ残月の役目は代わりがいませんけどね。


 おっと。

 今は急ごう。


 そしてキムクイ・スレイブ。

 恐らくはいるであろう魔人。

 どれほどの戦力であるのか、確かめておきたい。


 出来るのであれば、ブーステッドパワーを使って突撃してあげたい。

 魔人が健在だと無効化されてしまう可能性がありそうで怖いけどね。

 やっぱり通じるかどうか、試してみないと!




 防御線としていた竹で作られた防御柵は無残に破壊されていた。

 そして転がっている魔物の死体。

 激戦の跡、だな。

 視線を西へと転じると?

 キムクイ・スレイブらしき姿が見える。

 後続部隊だろう。

 だがアレは今は問題ではない。


 視線を東へ転じる。

 やはりキムクイ・スレイブらしき姿が見える。

 こっちは近いな。


 では、どうするか?

 あの群れの最後尾に喰いつこう。

 嫌がらせ?

 そう。

 どこまでも、嫌がらせだ。




 デカい。

 キムクイ・スレイブの高さは目測ではあるが隷獣・外法蛇亀の倍はあるだろうか?

 幅も倍以上ありそうだ。

 隷獣・外法蛇亀は動く砦。

 キムクイ・スレイブは動く要塞。

 その印象は変わらない。

 昼間にこの距離まで近寄ったのは初めてだ。

 さすがに緊張する。



 おっと、動画の記録を開始しておこう。


 では改めて。

 最初は挨拶からだ。

 その巨体の割りに短い尻尾を狙う。

 とは言っても巨大なものだ。

 しかもその皮は分厚く見えるのだが。


 それに随行する魔物はオブシディアンビーストしか見えない。

 他の魔物は撤退するプレイヤー達を追撃しに前衛に行ってしまっているのだろう。



 さて。

 隷獣・外法蛇亀のパターンであれば?

 同行する魔人が始末されていないと、呪文の効果は及ばない筈だ。

 試してみよう。

 オブシディアンビーストが邪魔だが、長射程の全体攻撃呪文だってあるのだ。



「フォース・ブラスト!」


 想定通り、攻撃は届かない。

 オブシディアンビーストにすら届いていない、

 いるな。

 魔人だ。

 前に回り込めたら顔を拝めるかもしれない。



 呪文そのものが発動しているし、エフェクトもあった。

 この距離であれば呪文は使えると思えばいいか?

 今は近寄るのは止そう。


 では。

 脇、通りますよっと。




 無論、前の方では魔物が群れていたりする訳ですが。

 ああ、もう面倒な奴等だ!



「アイヴィー・ウィップ!」


 蔦が地面を覆う。

 鞭と化した蔦が跳ね回ってダメージを与え、何頭ものガルムの脚が止まる。

 多少は足止めになったか?


 だが。

 次はそう簡単に突破出来そうにないな。

 トライホーンリザードが群れてやがる。



 悩む事は、しない。

 賭けだ。

 回復はナインテイルに任せる。

 攻撃はオレの領分、という事でいいのだ。


 人馬一体の効果も途切れそうだ。

 ついでだ。

 継ぎ足せ!



「人馬一体!」「ブーステッドパワー!」


 後ろから突撃?

 あると思います。






 どうにかトライホーンリザードの群れの中を突破すると、そこはもう臨時に構築された防御線でした。

 プレイヤーが盾を並べて防御に徹している姿。

 防御線である事は間違いない。


 極夜が脚を止め、振り返る。

 ブレス攻撃。

 そしてもう1つの頭からも時間差をつけてブレス。

 かなりの範囲が焼き払われた。

 あっという間に迫っていたガルムの群れが全滅だ。

 数頭残っていた奴はヴォルフとヘリックスが始末している。

 少しだけ、時間を稼げたか?



 ユニオン申請を承諾。

 話しかけてきた声には聞き覚えがある。

 誰だったかな?

 いや、すぐ傍にいるプレイヤーだろう。

 その顔には見覚えがある。

 シェルヴィか?


『キース?助かった!』


「撤退しなくていいのか?」


『これでも撤退中よ!』


「次の奴等が来るぞ?」


『分かってる!皆、走るよ!』


 重装備で固めたプレイヤー達が駆ける。

 だが、遅い。

 目標地点は見えていた。

 竹で作られた防柵だ。


 ナインテイルが光の球を作り出す。

 大きい。

 力を溜め込んでいるのが分かる。

 迫っている魔物の群れの中央に撃ち込むと、その光は一気に炸裂した。


 魔物達の赤いマーカーに状態異常を示す小さなマーカーが幾つも生じていた。

 おお、ナイスアシスト!

 蜜を舐める権利をやろう。

 機会があれば、だけどな!



 脚を止めたガルムの群れにヘリックスが風の刃を撃ち込んで次々と屠っていく。

 足止め?

 殲滅してますがな。


 だが魔物の群れの後続は迫ってきている。

 これは急いだ方がいいな。

 馬首を反転させると魔物の群れと正対する。



『ちょっと!何をする気?』


「一時撤退、ついでに突撃かな?」


 機動力を活かすには?

 動き続けるのが最上。

 脚を止めての戦闘では分が悪いのです。



 ユニオンを抜けると残月を駆る。

 キムクイ・スレイブさん。

 ちょっと脇、通りますよ?


 ついでに魔人だ。

 どんな奴がいるんだ?







 ダーククラウン ???

 イベントモンスター 魔人 ???

 ??? ???



 呪禁導師 ???

 イベントモンスター 魔人 ???

 ??? ???



 ビーストマスター ???

 イベントモンスター 魔人 ???

 ??? ???



 3名、いるんか。

 だがいずれはその区別なく全員、仕留めて差し上げたい。

 オレにはこの距離で届くような攻撃手段はないが。


 少しキムクイ・スレイブから離れ、オブシディアンビーストから一定の距離を置くルートを通る。

 無論、魔物の群れがいる訳だが。

 ガルムが相手ならどれほどの数がいても問題なさそうだ。

 残月なら文字通り蹴散らす。

 死体からアイテムを剥ぐ暇はないが。


 ま、戦果はあった。

 覚えましたから。

 3名の魔人の顔だ。

 最終的にはアレを仕留めたらいいんだな?


 キムクイ・スレイブがその後だ。









 現在の時刻は?

 午前10時30分。

 随分と長い戦闘になってるな!

 キムクイ・スレイブが従える魔物の数は一体どれほどだったのか?

 まるで減っているように見えない。

 残月が速いから一気に集られるような事はないが。


 1度、集られそうになった事はある。

 ブーステッドパワーが途切れていたから、武技のペネトレイトで突破したけどね。


 そう。

 何度、突撃を敢行しただろうか?

 主な目標はスヴァジルファリ・スレイブに騎乗する魔人。

 それにトライホーンリザードだ。

 でも遭遇する機会は少ない。

 ブーステッドパワーもトライホーンリザードに遭遇するまでは使用を控えた。


 マナポーションも何本、使ったかな?

 まだオレのMPバーは6割をキープしている。

 ナインテイルは意外に消耗していない。

 ずっと残月に便乗していて、その恩恵を得ているからだ。

 残月には騎乗者回復がある。

 この、ちゃっかり者め!



 おっと、いかん。

 ここは戦場だ。

 今も後方から魔物が迫ってきている。

 早く前方へと逃げた方がいい。


 いや。

 前方にも魔物の群れがいるんですがね。


 ここは撤退だ。

 静かなる竹林に入れば少しは時間を稼げる。


 そろそろ、他のプレイヤーの撤退も終了している事だろう。









《只今の戦闘で【封印術】がレベルアップしました!》

《【封印術】呪文の六芒封印を取得しました!》

《【封印術】呪文の七星封印を取得しました!》

《只今の戦闘で【木魔法】がレベルアップしました!》



 魔物の群れは突破。

 静かなる竹林に逃げ込んだらレベルアップしてました。

 戦闘勝利、ではない訳だ。

 それに上がったのが木魔法に封印術だ。

 呪禁道師相手に五行封印、ガルム相手にアイヴィー・ウィップを使いまくってたからな。

 それは分かる。

 それはいいんだ。


 六芒封印、それに七星封印?



 説明は簡単なものだった。

 要するに。

 陰陽封印の全体版が六芒封印。

 全体に対して状態異常攻撃を一時的に封印する呪文だ。

 五行封印の全体版が七星封印。

 全体に対して味方以外の全属性魔法技能が一時的に使用不可となる。


 共に確率そのものは単体に比べたら低くなるものの、複数を相手に出来るメリットは大きい。

 けどね。

 今はちょっと休ませて。

 心理的に厳しいのであります。




「後送しまーす!時空魔法なくてもいいよー!」


「夕闇城へ!ここはそう長く維持できません!」


 呼び掛けが行われている。

 そうか。

 リターン・ホームを使って後方へ、W4のエリアポータルの夕闇城に移動させ続けるつもり?

 全面的に撤退、か。

 ここもあのキムクイ・スレイブに潰されるのか?



 レイナの編んだ仮小屋の前に来てみた。

 生産職の重鎮3名。

 フィーナさん、ジルドレ、カヤがいる。

 これにサキさん、そして紅蓮くんがいるな。

 もう1人いるが初見だ。

 zin、という名前でレンジャーのようだが。



「あら、キース、お疲れ様」


「ども」


 彼らが何をしているのか、と言えば。

 今後の作戦会議でした。

 まあ進捗状況の報告も兼ねた反省会だな。




 撤退は既に急速に進んでいるようだ。

 ここ、静かなる竹林と夕闇城の間をピストン輸送。

 紅蓮くんによると、キムクイ・スレイブがここに到達するのは、早くても午前11時40分頃になるそうです。


 相変わらず、その歩みは遅い。


 そして魔物の群れも、魔人もエリアポータルに侵入出来ないでいる。

 多少だが、撤退する時間が稼げているのは朗報だ。



 しかし、癪だな。

 ここを放棄する事になろうとは。



「キース!貴方もそろそろ撤退しないと!」


「えっと、そうですね。フィーナさん達は?」


「撤退を確認して最後に戻るわよ?」


 そうですか。

 まあオレがここにいて出来る事はそう多くなさそうだ。

 後送するプレイヤーの数も既に確保出来ているそうですし。


 だが何か、勿体無い。

 このままここが潰れるなんて、勿体無い。

 そこが引っ掛かっていた。


 まだ時間はある。

 この竹林という地形も利用して何か出来ないかな?

 うむ。

 名案が浮かんでこないな。









 午前11時10分。

 現在、夕闇城にいます。

 召喚モンスターは全て帰還させてあった。

 先刻までの戦闘で得たアイテムの精算をリックにして貰い、サモナー軍団も一旦解散となった。

 アデルやイリーナを始め、リターン・ホームが使えるサモナーは既に撤退活動に参加している。

 春菜と此花がいたので、彼女達に配分を渡すのは任せるとして。

 オレはここでログアウトしておく。

 このままで済ますつもりはない。

 すぐに戻ってきますよ?





 戻ってきました。

 では。

 後送をしているプレイヤーを捕まえて便乗する事に。 

 行き先は、静かなる竹林。


 名案ではないかもしれない。

 無駄に終わるのかも?

 だが、試してみたい事があるのだ。




「キース、貴方何でここにいるの?」


「魔物相手に嫌がらせをしに来ました」


「貴方ねえ」


「失敗しても元々ですから」


「何をする気?」


「魔人狩りです。今までと変わりませんから」


 フィーナさん。

 頭痛ですか?



「死に戻り覚悟?」


「まさか。やってみたら面白いかな、と思いまして」


「でもここ、誰もいなくなるのよ?支援もないのに?」


「ええ。ま、自己責任って事で」


 口には出しませんけどね。

 他に誰もいない、というのがまたいいのだ。

 この場所も自由に使えるし。



「あのキムクイ・スレイブ、ここに来るのは?」


「現時点の予測は午後0時10分、動きを止めない限り、そう誤差は大きくないと思います」


 紅蓮くんの回答は福音に聞こえた。

 有難い。

 仕掛ける時間は十分あるだろう。



「いい?無茶はしないでね?」


「ま、無謀ではないですから」


 そう。

 勝算はあるような、ないような。

 でもね。

 嫌がらせをしてやりたい、という気持ちは本物だ。


 さて。

 布陣はどうするか?

 黒曜、リグ、クーチュリエ、モジュラス、清姫。

 搦め手狙いが透けて見えます。


 でも、それでいいのだ。

主人公 キース


種族 人間 男 種族Lv31

職業 グランドサモナー(召喚魔法師)Lv17

ボーナスポイント残 1


セットスキル

剣Lv12 両手槍Lv12 馬上槍Lv12 棍棒Lv13 刀Lv13

刺突剣Lv11 捕縄術Lv11 投槍Lv8 ポールウェポンLv8

杖Lv22 打撃Lv20 蹴りLv20 関節技Lv20 投げ技Lv20

回避Lv20 受けLv20

召喚魔法Lv31 時空魔法Lv19 封印術Lv13(↑1)

光魔法Lv19 風魔法Lv19 土魔法Lv19 水魔法Lv19

火魔法Lv19 闇魔法Lv19 氷魔法Lv17 雷魔法Lv18

木魔法Lv18(↑1)塵魔法Lv17 溶魔法Lv17 灼魔法Lv18

錬金術Lv15 薬師Lv10 ガラス工Lv8 木工Lv12

連携Lv22(↑1)鑑定Lv22 識別Lv22(↑1)看破Lv7 耐寒Lv9

掴みLv18 馬術Lv19 精密操作Lv21 ロープワークLv11

跳躍Lv11 軽業Lv11 耐暑Lv13 登攀Lv11 平衡Lv13(↑1)

二刀流Lv18 解体Lv18 水泳Lv6 潜水Lv6 投擲Lv10

ダッシュLv11 耐久走Lv11 隠蔽Lv6 気配遮断Lv6

身体強化Lv20(↑1)精神強化Lv20 高速詠唱Lv20

魔法効果拡大Lv19 魔法範囲拡大Lv19

耐石化Lv6 耐睡眠Lv6 耐麻痺Lv6

耐混乱Lv4 耐暗闇Lv4 耐気絶Lv8

耐魅了Lv1 耐毒Lv3 耐沈黙Lv3


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