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増量ちう
移動そのものは順調?
そう、順調であろう。
とは言え、変化もある。
オレは新たにスキルを取得して有効化している。
【耐沈黙】です。
必要となるボーナスポイントは10と重たい。
だが、これは欲しいな!
呪禁道師、それに呪禁導師のような相手に有効?
そう思えるのだ。
他にもある。
召喚モンスター達の陣容だ。
ウルフ系とホーク系はやや減っている。
支援役のマーメイドやフェアリーもMPバーが枯渇寸前になってしまい、激減。
その分、フクロウ系が増えた。
そして支援役にはキツネ系が増えている。
何といっても、オルトロス2頭は健在、しかも新たに1頭が追加。
ウェアウルフも先刻まで1頭だったのが2頭になっているのだ。
クラスチェンジを果たした召喚モンスターも多い。
オオカミ系、ホーク系の半分以上がクラスチェンジ組になっているのだ。
全体的な戦力は大幅に向上したと言える。
だがそうも楽観も出来ない。
各プレイヤーのMPバーだ。
移動しながらマナポーションで回復を図っているが、先刻のような戦闘が続くと危うい。
マナポーションにはクーリングタイムもあるし、無限にある訳でもないのだ。
状況が切迫していなければいいんだが。
他の課題もある。
各プレイヤーがログインしていられる時間だ。
配慮せねばなるまい。
一番、早い組になると午後3時まで、となる。
戦闘を一旦区切って離脱、というのも考えないといけない。
難しいものだ。
前回はこの辺の調整は春菜と此花がしていたそうです。
今回もお願いした。
まあ事情だけは知っておかないと、戦闘を気楽に仕掛けるのも憚られるからな。
だが。
これは困った。
遠くに見えるのは?
隷獣・外法蛇亀だ。
無論、先刻の奴とは別の奴です。
周囲に群れる魔物はまだ【識別】が効かないが、まあ大体想像の通りなのだろう。
その上空で旋回するのは?
レッサーグリフォンだ。
結構な数がいるのは明白です。
うむ。
これは困ったね!
『どうします?』
『迂回するにしても時間を食っちゃうし!』
「こいつ等、思っていた以上に来るのが早かったか?」
そう。
隷獣・外法蛇亀は他にも4匹、いるのでした。
キムクイ・スレイブも2匹。
しかも目の前にいる群れに関しては、時間を掛けて魔物を減らしていない。
元々多いのかもしれないが、なんと言っても上空にいるレッサーグリフォンがマズい。
数ではない。
上空から襲われるというのは1頭でも厄介だからだ。
しかも地上戦力と連携されたら対処は難しい。
『フィーナさんと繋がってます。無理して静かなる竹林方面に来なくてもいい、との事ですが』
「迎撃戦力は十分あるのか?」
『むしろあの群れの戦力を削いでくれたら有難い、だそうです」
削ぐ、か。
削げたらいいんですがね。
期待されているようでは仕方ないな。
削いでみせよう。
どうする?
戦術そのものは変わりはない。
亀の周囲を回ってきて、魔物を亀から引き剥がして各個撃破だ。
それしかない。
出来れば隷獣・外法蛇亀に張り付いているであろう魔人を先に始末しておきたい訳だが。
何にしても、レッサーグリフォンに騎乗する魔人が邪魔だ。
いや、恐らくはいるであろう呪禁道師さえどうにかしたい所だが。
「数はどうかな?」
『ワンちゃんは、無理!』
『レッサーグリフォンは20はいそうです』
『スヴァジルファリ・スレイブとトライホーンリザードはカメの向こう側にもいるでしょうね』
「オブシディアンビーストも、だな」
溜息しか出てこない。
こうなるとはな!
だがここは度胸一発、やってみるべきなのだろう。
迂回してみた所で魔物の群れに囲まれて捕捉される恐れだってあるのだ。
全滅出来るか?
時間を掛ければ出来るのだろう。
だがそれでは静かなる竹林に間に合わないと思うのだ。
まあ向こうの戦闘の結果次第で、こいつを相手にしてもいいんですがね。
「ヒョードルくん、いるかな?」
『は、はい!』
やや離れた所にヒョードルくんはいた。
ウィスパー機能で会話を続ける。
「まだ精霊は使えるか?」
『大丈夫です。今日はまだ使っていないので』
「ヒョードルくん以外にエルフは?」
『残念ながら。いて欲しいんですけど』
会話にはある種の苦味が滲んでいるようだ。
エルフでサモナー。
雑談で聞く限り、相当にレアだという事は分かる。
でも確かめずにはいられない。
「魔人、特に呪禁道師をなんとかしたいが」
『風の精霊シルフはどうでしょう?呪文発動を封じる力を使います』
「本当か?」
『時間が短いのが難点ですが。魔人狩りで実績はあります』
「範囲はどうだ?」
『風の全体攻撃呪文の範囲相当です。そこそこ広く出来ると思います』
「了解した。使って貰う機会があるだろう。そのつもりでいてくれ」
『了解!』
ふむ。
精霊に頼ると経験値がその分減るというが、贅沢は言っていられない。
ここは使って貰うべきだろう。
「召喚モンスターにも指示は徹底!目標は魔人と騎乗している魔物だ!」
『ヤー!』
『コピー』
『了解っと!』
さて。
どれほどの魔人を片付けられるかな?
出来れば2回か3回で引き剥がせるといいんだが。
とはいえ魔物の数は多い。
だがそれは全体攻撃呪文で与えるダメージの効率が高い事にも繋がる。
オレ自身はブーステッドパワーは使わない事にした。
隷獣・外法蛇亀を一気に沈められるとは思っていない。
突撃から戻って、追いかけて来る魔物を殲滅したら、一旦撤退する予定であるのだ。
だが望外の報告もある。
『カメの上の魔人、仕留めたみたい!』
「何?」
どうもそれは本当であるようだ。
全体攻撃呪文は隷獣・外法蛇亀に届いているようである。
間違いない。
オレも確かめました。
だが、まだ他にも魔人がいる。
レッサーグリフォンに騎乗する呪禁道師だ。
所々でサモナー達のエンチャントが全部、吹き飛ばされてもいる。
まだ死に戻りはないようだが、あれがいると安定した狩りが出来ない。
困ったものだ。
魔物の群れを突破。
今度は魔物の群れへ再突入。
さあ、どれほどの魔物が付いてきてくれるかな?
機動力のある魔物は出来るだけ減らしておきたいのだが。
想定外です。
ほぼ全てと思われるガルムが付いてきているようなのだ。
そして魔人が騎乗するレッサーグリフォンも。
魔人が騎乗するスヴァジルファリ・スレイブも多いか?
魔物の群れのうち、機動力のある魔物は全て、来ている?
もしかして。
この魔物の群れの指揮官を失って、統制を失っているんじゃないの?
「ヒョードルくん!精霊を!」
『りょ、了解です!』
魔人が迫っている。
呪禁道師が混じっているのは確実だ。
あれさえいなければ。
あれほどイヤな相手もいない。
半ばトラウマなのだ。
レッサーグリフォンの相手は弓矢持ちに任せて、オレは殿を受け持つ。
魔人が騎乗するスヴァジルファリ・スレイブが相手だ。
その数、少なく見積もっても50はいるかな?
バード系の魔人もいるがその歌声は聞こえない。
上空を行くヒョードルくんの風の精霊、シルフの能力だ。
いや、これは既に加護と言っていい。
今のうちに魔人だけでも仕留めておきたい所だ。
カメからかなり離れた所で再度反転。
今度は攻めに転じる。
上空のレッサーグリフォンに矢の一斉射撃。
続けて空中位置の召喚モンスター達が次々と襲い掛かる。
殿にいるとその様子はハッキリと見えていた。
数で、攻める。
基本だ。
そして確実に戦果は得られる。
レッサーグリフォンはまだまだ戦えそうであるが、どれも無傷で済んではいない。
魔人はどれも息絶えたか、地上に落下している。
まずは第一の目標は達成した、と言えるだろう。
次は?
やはり魔人だ。
だが風の精霊、シルフの加護はもうなくなっている。
ここから先、呪禁道師を相手にガチ勝負だ。
頼るべきものは何か?
封印術だ。
「五行封印!」
オレに最も迫っている魔人はジャグラーであるのだが。
無視です無視!
後方にいる呪禁道師に仕掛ける。
効いたかどうかなんて確認する暇もない。
他にも呪禁道師は、いる。
次の呪文を選択して実行。
残月をスヴァジルファリ・スレイブに体当たりさせ、馬上槍を突き入れた。
同時に何かが目の前を跳ね上がっていたんだが。
オレの目の前にジャグラーらしき魔人の体がある。
何だ?
残月だ。
その角でジャグラーを貫いている。
おい!
首を一振りした残月が魔人を振り落とす。
五行封印を後方の呪禁道師に仕掛けながら周囲を見る。
ヤバいな。
半分、包囲されかかっている。
『キースさん!』
『こっち!こっち!』
見ればアデルとイリーナが呼んでいる。
臨時で作り上げたのか、オオカミ系の召喚モンスターが整然と並ぶ。
無論、ヴォルフの姿もある。
意図は、読めた。
残月を再び叱咤するかのように駆り立てる。
残月がそれに応じた。
素晴らしい速度で疾駆する。
だが、スヴァジルファリ・スレイブもガルムもオレを捕捉しようと追い掛けてきている。
諦める様子はない。
最初の攻撃は矢だった。
だがその数はサモナーの弓持ちの人数よりも間違いなく多い。
武技を使っているのだろう。
その甲斐があってか、追撃の速度は鈍ったようだ。
だが、それでも追い掛けるのを諦めない魔物と魔人。
実に見上げたものだ。
オオカミ達の列に残月が飛び込むと同時にそれは起きた。
全体攻撃呪文の乱舞。
オルトロスの吐くブレス。
上空からはホーク系とフクロウ系の召喚モンスターからも特殊能力由来の攻撃も加えられている。
残月を反転させて様子を確認する。
まさに壮観。
それでも尚、こっちに向かってくる奴がいる。
スヴァジルファリ・スレイブが数頭。
ガルムは今の攻撃で全滅か?
魔人の姿はスヴァジルファリ・スレイブの背中にはいない。
そして、召喚モンスター達は一斉に襲い掛かる。
相手の数が少なかろうと慈悲などない。
あっという間に地面に倒すと、集って攻撃を積み重ねる。
獣玉だな。
スズメバチがニホンミツバチに集られているようなものだ。
あ。
ちょっと待て!
せめて1頭、オレにも止めを刺す機会を!
オレの願いは叶わなかった。
仕留めるのが早いよ、君達。
大活躍なのは分かるが、これではご褒美はあげられないな!
《只今の戦闘勝利で【風魔法】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【耐沈黙】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で召喚モンスター『クーチュリエ』がレベルアップしました!》
《任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》
どうやらこっちをロックオンしているアクティブな魔物はいなくなったようだ。
どれほどの数の魔物を排除したかな?
機動力のある奴はごっそりと引き剥がした気がする。
まあそれはそれとして。
クーチュリエのステータス値で既に上昇しているのはまたしても敏捷値だ。
もう1点は筋力値を指定しておこう。
クーチュリエ ギガントクイーンLv3→Lv4(↑1)
器用値 20
敏捷値 33(↑1)
知力値 12
筋力値 10(↑1)
生命力 10
精神力 9
スキル
針撃 噛付き 飛翔 回避 奇襲 誘引 毒
で、クーチュリエのスキルを眺めて思う。
誘引、か。
いや、コール・モンスターでもいいんだが。
指揮官を失った兵卒であるのならば、分断して始末するのも容易いだろう。
上手く利用できないかな?
「魔人の姿はあるか?」
『距離があって良く分かりません!』
ありゃ。
そりゃそうだ。
迂闊すぎる。
試すのは少し待とう。
各自、回復を図っているのだ。
すぐに、というのは無理だろう。
今回の襲撃で死に戻りはなかった。
ステータス異常に陥った召喚モンスターが5匹、というのは被害としても軽微なのだろう。
まだ、戦えるか?
やれる。
時間もあるのだ。
無駄に過ごすつもりもない。
レッサーグリフォンから剥いだ金鉱石を纏めて回収し終えると、早速試してみます。
コール・モンスターを使う。
レッサーグリフォンは?
いない。
スヴァジルファリ・スレイブは?
いない。
では、ガルムはどうなのか?
あれだけいたガルムもいないとは。
恐るべき戦果だ。
残る護衛は?
トライホーンリザードとオブシディアンビーストのみ。
その数は?
トライホーンリザードは10頭以上残っている。
オブシディアンビーストは数える気分になれない程、いる。
分断して狩りたい相手だが。
まずはコール・モンスターでトライホーンリザードを1匹だけ。
半殺しでいい。
こいつは仲間を呼ぶ筈だ。
呼ぶ筈なんだが。
1匹だけが相手だと加減が効かないよ!
まさに数の暴力。
トライホーンリザードに強引に引き剥がされて吹き飛ばされるウルフもいたようだが。
結構、器用に着地しているようです。
アレはネコじゃないよな?
多分、その筈だ。
結果、トライホーンリザードは仲間を呼ぶ暇すら与えられずに沈んだ。
前から思っていたんだが、こいつ、本当にツインホーンリザードの上位か?
難易度的に上であるのは間違いないが、そうかけ離れているようでもない。
いや、十分に驚異的な強さな事には間違いはないんですが。
まあいいか。
コール・モンスターは効果がある。
これを利用して護衛からトライホーンリザードを引き剥がそう。
その次は?
無論、オブシディアンビーストだ。
最終的に隷獣・外法蛇亀だけにしたい。
先刻の戦闘だけからも得るものがあった。
周囲に護衛の魔物がいるうちにアレを相手にするのは出来るだけ避けたいものだ。
『3匹、いや4匹で!』
「5匹だ。いけると思うんだが」
何の話かと言えば。
同時に何匹、トライホーンリザードをコール・モンスターで呼び寄せるのか。
その話である。
最初にオレが提示したのは7匹だったんだが。
意外にアデルが粘っている?
しかも中々、引かないとは!
仕方ないな。
時間もないことだし、ここは妥協した。
4匹で。
でもね。
4匹でも戦闘の最中に呼び寄せるのは止め様がないよね?
そう、トライホーンリザードは仲間を呼ぶ。
そして駆け付けて来るのは?
やはりトライホーンリザードになるだろう。
オブシディアンビーストでは足が遅いからね。
ある意味、目論見通りか?
いや、アデルも計算済みであったのかも知れない。
これはどちらの目論見が当たったのか?
同時に呼んだのは4匹。
途中で追加されたのも4匹。
隷獣・外法蛇亀の周囲に残るトライホーンリザードは8匹。
微妙な残り方だな!
まあオレはブーステッドパワーを使って突撃攻撃を連発、溜飲を下げている訳だが。
もう1回で全部はやっぱりダメかね?
ダメでした。
悲しい。
その悲しさをぶつけるかのように次に呼んだ4匹を相手にまたしてもブーステッドパワー。
一時的にオレの気分は晴れたのだが。
追加されたトライホーンリザードは1匹。
しまった。
早々と沈んでしまって悲しいです。
最後の3匹は同時に呼んで、始末する。
これにはブーステッドパワーを使うまでもなかったようだ。
まあいい。
まだまだ使う機会はあると思うのだ。
次はオブシディアンビースト。
あれを呼び寄せて、狩る。
その筈だったんですがね。
時間だ。
何かと言えば、昼食の、である。
それもまた悲しい。
だが悪い事ばかりではない。
隷獣・外法蛇亀もオブシディアンビーストもその移動速度は遅い。
今のうちに、という事も言えるだろう。
サモナー達は交代でインスタント・ポータルを用いて食事とログアウトを済ませる事に。
他のプレイヤーはその周囲で警戒である。
そうだな。
休憩が終わるまではおとなしく待とう。
獲物が逃げないよう監視でもしながら待ちましょう。
うん。
ラクチャンゴの群れでも襲ってこないかな?
アイラーヴァタでもいいんだが。
マイナーグリフォンでも文句なしだ。
だが、その思いは裏切られた。
オレが警戒している順番で魔物の襲来はありませんでした。
「それにしてもさっきのアレって何!」
「武技、ですよね?」
「つい最近覚えたばかりだな」
雑談を交えながら食事を摂る。
早速、アデルとイリーナに呆れられてますが何か?
まあそれとなく受け流す訳だが。
あのイリーナでさえ、釣られている。
残月にだ。
先刻も撫でていなかったかな?
途中であのヒョードルくんの追っ掛けお姉様達も興味深そうに愛でている。
大人気だ。
先刻までの残月の戦い振りは暴れ馬と呼ぶのにふさわしいものであった。
その一方でこうもおとなしくなるとは。
元々の残月っておとなしかったと思うんですよ。
どっちが本当の残月なのか?
謎だ。
インスタント・ポータルを出てみると、地面に転がるマイナーグリフォンの群れ。
先刻、襲ってきていたらしい。
春菜、此花、ヒョードルくん達が羨ましいな。
オレがいない時に魔物に襲われてるなんて!
運営め。
きっと運営の悪意に違いない。
布陣は?
変えていない。
多くのサモナー達の布陣も変化は少ないようだ。
時刻は午後0時30分。
静かなる竹林近辺の動静も気になるが、今は目の前の魔物だ。
しかも魔人は既にいない。
目標は?
全滅させてやる。
1匹として逃すつもりはない。
無論、オブシディアンビーストが先だ。
隷獣・外法蛇亀とは分断して狩りたいのだが。
これが上手くいかない。
コール・モンスターに呼び寄せられはするのだが、一定距離で効かなくなる。
どうも仲間思いなのかな?
とは言ってもあの数を全部、サモナー達で呼ぶにしても無理がある訳で。
そこでクーチュリエです。
誘引。
効くかな?
そう思って試させたらこれが酷い。
全部、こっちに向かっている。
隷獣・外法蛇亀は?
なんと動くのを止めてしまっている。
休憩?
多分、あれは単に休んでいるだけなのだろう。
まあそれはそれとして。
オブシディアンビーストの群れがこちらに迫ってくる。
大集団、しかも密集していた。
恐らくはその数、100匹前後。
遠近感がおかしい。
どれも唯のダンゴ虫に見える!
おかしい。
おかしいよね?
比較するものがないと大きさが把握出来ない。
だがこれは好機でもある。
密集している、即ち、全体攻撃呪文で与えるダメージの効率は高いと思われる。
これは囲んで攻撃し続けるべきだろう。
「囲んで全体攻撃を浴びせ続けよう」
『召喚モンスターの交代もしていいですか?』
『あ、それいい!』
うむ。
それもそうだな。
サモナー達の半分程は布陣を変更するようだ。
一気にキツネ系やフェアリー系が増えていく。
オレも布陣を変えよう。
ヴォルフ、極夜を帰還させる。
ナインテイル、それにヘザーを召喚した。
準備はいいかな?
では、行こうか!
その戦闘はこれまでになく背筋が寒くなるような代物であった。
何故か?
どこまでも一方的な嬲り殺しになったからだ。
オブシディアンビーストは弱いか?
間違いなく、強い。
タフでもある。
確かに物理攻撃に比べたら呪文攻撃には弱いだろう。
でもね。
オレはアレを相手にパルスレーザー・バーストを数発撃ち込んだとする。
仕留められるか?
半分以下に出来るかどうか。
自信はない。
それ故に今行われている攻撃は恐るべきものだ。
これもまた別の形をした数の暴力。
大規模ユニオンでなければ出来ない芸当だ、
オブシディアンビーストの群れの周囲は完全な包囲で固められている。
ストーン・ウォールの壁。
それも二重になっている。
途中で効果が切れたり、魔物に破壊されたりする事もあるのだが、次々と構築されていく。
まさに檻の中。
その中に放り込まれるのが全体攻撃呪文だ。
魔物達に逃げ場はない。
こっちはやりたい放題。
サモナー達は包囲したまま、反時計回りで移動する。
そして次々と全体攻撃呪文を放ち、壁の構築を続けていた。
魔物に同情するよ、これ。
オレは全体攻撃呪文以外も使ってますけどね。
マグマ・フィールド。
インスタント・シムーン。
嫌がらせ?
嫌がらせって素敵だ。
無論、全体攻撃呪文も各種試してみた。
まさか全部試す事になるとは思いませんでしたけどね。
ライト・エクスプロージョン。
檻の中で閃光が弾けて眩しい!
これは面白い。
少ない数だが魔物が混乱する様子は見物だ。
でも攻撃の瞬間、魔物の様子がこっちも良く見えなくなる。
ちょっと使うのは控えたい。
ダーク・エクスプロージョン。
これも逆の意味で魔物が見えない。
動きを見て次の手段を講じたいのに、これも少し困る。
ファイア・ストーム。
普通に効いている?
だが上空から特殊能力を放っているフェアリー達に迷惑が掛かりそうだ。
これも多用するのは控えよう。
周囲では結構派手に使ってますが、オレも真似する事はない。
ストーム・ウェーブ。
これも上空のフェアリー達に迷惑になりそうだ。
止めとこう。
グラベル・ブラスト。
まるで効いていない?
それよりも石塊があちこちに跳ね返って危ない!
ちょっと怖いのです。
アクア・スラッシュ。
これも余り効いているように見えない。
次だ。
サーマル・エクステンション。
効いてる?
効いてると思うが。
これもフェアリー達にとって邪魔かも?
上昇気流が発生してしまう。
ヴォルカニック・ブラスト。
これは中々だろうか?
周囲に迷惑も掛からない。
アシッド・シャワー。
継続ダメージが入っているのかどうかが、分からん!
判定不能につき保留です。
サンダー・シャワー。
派手だ。
それにこれだけの数がいれば1匹や2匹の麻痺も出てくる。
これはいいな!
土壁に悪さをする奴が少なくなるのもいい。
フリージング・ブラスト。
これも中々いいかも?
動きは元々遅い魔物だから敏捷遅延効果には期待できないが。
アイヴィー・ウィップ。
ダメージよりも動きが一瞬止まるのがいい。
でも効果があまりにも限定的だ。
これもパス。
最後にフォース・ブラスト。
意外にダメージはあるようだが、それだけだ。
元々、攻撃範囲が広い事が売りの全体攻撃呪文なのだし、こんな所だろう。
他の面々との兼ね合いもあるのだろうが、サンダー・シャワーを多用した。
そう。
サンダー・シャワーはたまにだが麻痺が発生する。
その代わりダメージは少なめ。
これ。
で、周囲は壁に囲まれで逃げ出せない素敵仕様。
これ最強。
《只今の戦闘勝利で【雷魔法】がレベルアップしました!》
時間は掛かったように思うが、全員がダメージなしで狩りきったのは大きな成果と言えるだろう。
そして全員が魔晶石を得て、余った分も一時的にオレが預かっている。
問題などない。
MPバーの回復が大変だけどね。
ところで。
オレの馬上槍の出番は?
そして残月だって不満そうに見える。
角の出番もなかった。
でもね、残月よ。
あの隷獣・外法蛇亀相手にその角で突くつもりか?
それはさすがに無茶じゃないかと思うが。
『では次はアレですか』
『ちょっと待って!MP回復!』
「少し待つか。クラスチェンジもいるようだしな」
そう。
この戦闘ではまたしてもレベルアップにクラスチェンジが出ている。
どんだけ成長しているのか?
恐ろしい事だ。
やや時間を置いて今度は隷獣・外法蛇亀に迫る。
攻撃呪文は全体にしなくていい。
単体でもいいのだ。
それだけに攻撃では効率は良くなるだろう。
問題はあのブレス対策だ。
オレも少し布陣を弄っておこう。
クーチュリエを帰還させて逢魔を召喚する。
ナインテイルもヘザーもまだまだMPバーに余裕はある。
大丈夫だ。
周囲の警戒はヘリックス頼みであるが、ここには仲間が大勢いる。
集団でいる事の利点である。
まあ油断はしない事だ。
このマップでは出ないと思うが、地下から襲ってくる魔物もいるのだし。
では。
やりますか?
手順は省いた。
いきなり隷獣・外法蛇亀の左前脚を複数のピットフォールで嵌めたのだ。
続けて左後脚も嵌める。
ブレス攻撃に警戒しながらカメの腹方向から攻撃呪文の集中砲火である。
オレ?
ブーステッドパワーを使って突撃しますが何か?
それも頭部を集中的に狙いました。
まあ牽制のついでだ。
麻痺にはそう多くを期待できないが、それでも少しだけ時間を稼げる。
それに毒だ。
期待していい?
いいよね?
地味だがまあこれも嫌がらせのうちだ。
逢魔はオレと残月に随行している。
ブレス対策だ。
そしてナインテイルもオレと一緒に残月の鞍に便乗している。
こいつはいざという時に回復が出来るしな。
ブーステッドパワーを使っている間は武技も呪文も一切使えない。
保険はあった方がいい。
それでもオレが突撃している間、光の球を撃ち込んでますけどね。
逢魔にしてもあの巨大なカメの頭部を殴りつけている。
効いているのか、いないのか?
分からない。
呪文攻撃が連続で撃ち込まれている影響でHPバーを見ても判別出来る状況にない。
オレはオレで突撃を敢行するのだが。
残月もまた暴れ足りないようなのだ。
喉元へ向けて突撃した時、残月が角を真っ直ぐに突き入れている様子は見事だった。
そして心配になる。
折れたりしないよな?
余りにも体重差があるのだ。
無茶すんな!
《只今の戦闘勝利で召喚モンスター『ナインテイル』がレベルアップしました!》
《任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》
おい。
ちゃっかりとレベルアップしちゃってまあ。
いや、嬉しいんですがね。
ナインテイルのステータス値で既に上昇しているのは知力値です。
もう1点は精神力を指定しておこう。
ナインテイル 銀毛狐Lv7→Lv8(↑1)
器用値 10
敏捷値 27
知力値 28(↑1)
筋力値 10
生命力 10
精神力 27(↑1)
スキル
噛付き 回避 疾駆 危険予知 MP回復増加[小]
魔法抵抗[微] 光属性 闇属性 風属性
さて、この隷獣・外法蛇亀からは何が剥げるのか?
いや、それよりも。
またしてもその役目はオレになってるんですがいいのか?
剥いでみたら石版だ。
愚者の石版?
と思ったら違いました。
【アイテム】隠者の石版 品質A レア度7 重量10+
効果:永続 森の迷宮設置
隠棲する老人が描かれているという石版。
冒険者への試練を与えると言われている。
なんじゃそりゃ。
《これまでの行動経験で【鑑定】がレベルアップしました!》
ついでに何かが上がってます。
森の迷宮設置?
なんじゃそれ。
「奇妙な代物が剥げたな」
『何でしょうね、これ』
『プレイヤーがダンジョンを作れるとか!』
ほう。
アデルの言う通りなら面白そうなんだが。
魔物はどうするんだろう?
これは保留かな?
《アイテム・ボックス》に保管しておく。
別口で分けて管理しているんだが、今日は大変だな!
奇妙な代物があるし。
精算は生産職に任せる方がいいか。
春菜は【交易】を持っているが、一目で精算は無理、という回答でした。
手元のお金や魔石が足りなくて配分出来そうにない、と言うのだ。
なんと。
ここは一旦、静かなる竹林に戻ろう。
HPバーの回復は出来る。
でもMPバーの回復はそう簡単に行かない。
マナポーションは便利だが、無限ではないのだ。
呪布を使って召喚モンスターのMP回復は出来るのだが、魔石を消費する。
まだプレイヤーのMPを回復できる呪布を持っているプレイヤーはここにはいない。
何が条件なのかは不明だが、数名のアルケミストリーダーが所持しているらしいが。
困ったものだ。
さて、移動だ。
ナインテイルを帰還させてヴォルフを召喚する。
エリアポータルに戻ったらこのサモナー集団も一時解散だ。
惜しいな。
もっと時間が合えば、他の魔物の軍勢も駆逐出来そうなんだが。
あ、キムクイ・スレイブはまだ確信が持てないけどね。
時刻は午後2時40分。
静かなる竹林に到着した。
いつもの場所にはフィーナさんの姿はない。
留守番はリックと見慣れない生産職の面々だ。
「あれ?フィーナさんは?」
「今は最前線にいますからね」
何と。
生産職の重鎮が最前線に?
武闘派なのか、あの人。
それはそれとして、配分が必要なアイテムの精算をお願いした。
愚者の石版、それに隠者の石版だ。
他にもあるけど、これらに比べたら既に小物であろう。
「ちょっと待って!何名で割るの?」
「72名!」
「手持ち分で足りるかな?マナポーションで代替するのはアリ?」
「どうでしょう?」
「いいんじゃないかな?」
そうそう。
各プレイヤーもマナポーションは消費しているのだ。
十分に妥協出来るだろう。
実際に否の意見は出てこない。
ところで。
尖兵となった隷獣・外法蛇亀とその軍勢はどうなったんだ?
気になる。
リックが精算を終えたようで、他の生産職の面々がサモナー達に分配している。
既にここでログアウトをする予定のサモナーは召喚モンスターを帰還済みのようだ。
あ、そうだ。
リックに聞いておかねば。
何か進捗は?
「時々、死に戻りのプレイヤーがいてね。状況は一進一退?」
「フィーナさんはかなり自信があったみたいですが」
「観測班によると後続の魔物の群れから援軍があったそうでね。これが想定外の規模だったみたい」
「おや」
「ところで、そっちはどうだったの?」
「動画で記録はとってありまーす!」
「隷獣・外法蛇亀の群れを2つ、撃破してきました」
「えっ」
「えっ」
リックには報告は行ってなかったのか?
アデルとイリーナの言葉に随分と驚いてるようですけど。
思わずオレも反応しちゃいましたよ?
それに、だ。
多分、屠った魔物の数はフィーナさん達が相手をしている数よりも少ないと思うのです。
きっと、そうだ。
そうに違いない。
静かなる竹林の中、竹が伐採された場所でテントが幾つも並んでいる。
時間が迫り、ログアウトしたサモナー達のものだろう。
そしてまだログアウトしていないサモナー達もまだいる。
春菜、そして此花の呼び掛けに応じて残っているのだ。
まだ、やる気十分?
いい傾向だ。
フィーナさんの所へ援軍に向かおうか?
それがいい。
だがその前に。
準備はしておこう。
装備の修復はしていた方がいい。
プレイヤーのうち、何名かがリックの所へと買い物に向かう姿もある。
《これまでの行動経験で【錬金術】がレベルアップしました!》
呪布による獅子賢者の騎士槍の修復には魔晶石を使った。
魔晶石は魔石の上位なんだが、3割ほどの魔力を消費してしまう。
勿体無い?
使わない方が勿体無い。
ここは使っていい場面だと思うのだ。
オレ自身のMPバーも6割程か。
マナポーションは今の内に使っておこう。
これも使うのに躊躇すべきでないと思うのでした。
再編成されたサモナー軍団は半分以下の規模である。
サモナーの数は32名。
40名が離脱してログアウトした計算だ。
それでもよく残ってくれたものと考えないといけないと思う。
その中には見知った顔も多い。
アデル、イリーナは勿論。
呼び掛けしていた春菜と此花。
ヒョードルくんにヘラクレイオスくん。
えっと。
あの2人、あれは確か、誰だっけ?
駿河と野々村だ!
つか2人共、何でマーメイドを2匹同時に召喚して侍らせているんだ?
痛い視線が交錯しているんだが、気にする様子を見せない。
煩悩、恐るべし。
買い物を済ませに行ったプレイヤーを待つ間に召喚モンスターの布陣を組んでおく。
ヴォルフ、残月、ヘリックス、ヘザー、逢魔です。
定番ですな。
他のサモナーの面々も布陣を確定、
買い物から戻ってきた面々が召喚モンスターを呼ぶのを待って、ユニオンを組んだ。
時刻は午後3時30分。
では。
援軍?
援軍になるかどうか、分からないが、とにかく行ってみよう。
戦場は意外に近場にあったのか?
いや、馬で移動しているからそう思えるだけだ。
20分と経たずに戦場は見えた。
だが。
戦闘そのものは終息しているようだ。
「おお、援軍!」
オレ達を出迎えてくれたのはレイナでした。
他の面々はと言えば、何やら忙しく動き回っている。
声を掛けるのも憚られる雰囲気です。
「この騒ぎは?」
「精算、ログアウト組の後送、追撃部隊の編成、そんなとこ?」
「それ、同時にやってるんですか?」
「それをやってるのが凄いわよね!」
アデルとイリーナがミオを見つけたようだ。
何やらはしゃいでいるのだが。
「勝ったんですよね?」
「辛勝って所!死に戻りは少ないと思うんだけど、ステータス異常を喰らってるのが多い!」
「それでも追撃、するんですか?」
「やらないと間に合いそうもないのよね」
いつの間にかレイナの背後にフィーナさん。
カヤとジルドレもいる。
「攻略組で健在な連中は既に進発、周囲に分散している魔物の駆除を始めてるよ」
「でも時間が時間でな。手が足りん」
「貴方達は時間、大丈夫?」
「ちょっとだけ、頑張れそう!」
アデルが元気良く答える。
おい。
まあそうなんだが。
フィーナさんが誰かと話し込んでいる。
何か忙しそうだな。
「北側を侵攻していた群れは片付けたって聞いたけど?」
「まあ、なんとか」
「もう少し、なんとか出来そう?」
「戦力が半減以下ですし時間もそう長く戦えませんしね。それに夜が来ます」
「無理せず、確実に魔物の群れの戦力を削ぐ。それだけでいいわ」
フィーナさんはそう言うと、念押ししてくる。
「いい?無理しないで、死に戻りはしないように、ね?」
「まあ死に戻りは嫌ですからね」
「そうよね」
うん。
フラグ?
死亡フラグですか?
そんなものは圧し折ってくれるわ!
主人公 キース
種族 人間 男 種族Lv31
職業 グランドサモナー(召喚魔法師)Lv17
ボーナスポイント残 1
セットスキル
剣Lv12 両手槍Lv12 馬上槍Lv12 棍棒Lv13 刀Lv13
刺突剣Lv11 捕縄術Lv11 投槍Lv8 ポールウェポンLv7
杖Lv22 打撃Lv20 蹴りLv20 関節技Lv20 投げ技Lv20
回避Lv20 受けLv20
召喚魔法Lv31 時空魔法Lv19 封印術Lv12
光魔法Lv18 風魔法Lv19(↑1)土魔法Lv18 水魔法Lv18
火魔法Lv18 闇魔法Lv18 氷魔法Lv17 雷魔法Lv18(↑1)
木魔法Lv17 塵魔法Lv17 溶魔法Lv17 灼魔法Lv17
錬金術Lv15(↑1)薬師Lv10 ガラス工Lv8 木工Lv12
連携Lv21 鑑定Lv22(↑1)識別Lv21 看破Lv7 耐寒Lv9
掴みLv18 馬術Lv19 精密操作Lv21 ロープワークLv11
跳躍Lv11 軽業Lv11 耐暑Lv13 登攀Lv11 平衡Lv12
二刀流Lv18 解体Lv18 水泳Lv6 潜水Lv6 投擲Lv10
ダッシュLv11 耐久走Lv11 隠蔽Lv6 気配遮断Lv6
身体強化Lv19 精神強化Lv20 高速詠唱Lv20
魔法効果拡大Lv19 魔法範囲拡大Lv19
耐石化Lv6 耐睡眠Lv6 耐麻痺Lv6
耐混乱Lv4 耐暗闇Lv4 耐気絶Lv8
耐魅了Lv1 耐毒Lv3 耐沈黙Lv2(New!)(↑1)
召喚モンスター
ナインテイル 銀毛狐Lv7→Lv8(↑1)
器用値 10
敏捷値 27
知力値 28(↑1)
筋力値 10
生命力 10
精神力 27(↑1)
スキル
噛付き 回避 疾駆 危険予知 MP回復増加[小]
魔法抵抗[微] 光属性 闇属性 風属性
クーチュリエ ギガントクイーンLv3→Lv4(↑1)
器用値 20
敏捷値 33(↑1)
知力値 12
筋力値 10(↑1)
生命力 10
精神力 9
スキル
針撃 噛付き 飛翔 回避 奇襲 誘引 毒
同行者
サモナー軍団




