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 時刻は午後1時40分。

 新練兵場の試合会場は変化を見せていた。

 8面あった試合場は4面に縮小。

 4面分のスペースにはクレイゴーレムによって岩盤が積み上げられて行く。 

 臨時の観客席だ。

 そして4面の試合場には8名のプレイヤー。

 全員、兜を外して周囲の歓声に応えている。


 第五回戦を勝ち残った8名の中に知り合いの姿も見えた。

 ストーンカッターの上位職、ストーンメイソンの東雲。

 スキッパーの譲二。

 フェンサーになっていたシェルヴィ。

 エレメンタル・ソーサラー『光』になっているリディア。


 8名中4名は【識別】しなくても誰なのか分かってしまうというのも凄いな!


 残り4名のうち3名はクラスチェンジをしていない。

 斧持ちのドワーフファイター、杖持ちのソーサラー、弓矢持ちのハンターだ。

 そして最後の1名はセイバー。

 背中に刀を背負ってますけど?

 見た目通りの刃身なら大太刀だな。




「ジルドレも東雲の応援よね?」


「同じドワーフで槌使いだしな。それに同じ生産職でもある。当然だな」


 フィーナさんが声を掛けているのはオレの後ろの席に陣取っているジルドレであった。

 その両隣にカヤ、与作、ハンネスがいる。

 他にも生産職のプレイヤーが集結していた。

 いつの間にかそういう一角になってしまっている。

 いや、観客席のド真ん中を占有する勢いなんですけど。

 マルグリッドさんの隣にはいつの間にかアデルとイリーナもいる。

 召喚モンスターも多い。

 ここはどこの動物園だ?




 生産職でベスト8に残ったのは2名。

 やはりオレの周囲ではその2名への声援が多くなっている。


 だが例外もあるようだ。

 手前の試合場に現れたリディアへ応援の声も飛んでいる。



「キース、貴方には曰く付きのプレイヤーよね?」


「でもさすがに今回は事件になりそうもないわよねえ?」


 マルグリッドさんもフィーナさんも悪戯っ子か!

 意味ありげにオレに視線を送ってくるが。

 ここはノーコメントで。

 地雷を踏む危険を犯す訳にはいかない。



 そのリディアの相手はセイバーだ。

 リディアの得物はオレと戦った時と同様に弓矢。

 無論、弓矢の間合いで戦い続けられたら勝ちは揺るがない訳だが。

 試合相手も当然それは把握している訳でして。

 間合いを潰しに来る筈だ。


 駆引きは既に試合開始前から始まっている。

 セットスキルも組み換えが出来るからだ。

 試合開始前に半分は勝敗が決まってしまうかもしれない。



 砂被りではないが、試合場近くに声援を送るプレイヤーがいるようだ。

 その中には見覚えのあるプレイヤーもいる。

 ガヴィだったかな?

 彼女だけでなく、リディアのパーティメンバーも全員がクラスチェンジ済みのようだ。


 それは対戦相手のセイバーを応援する5人組も同様だ。

 熱気がこっちにも届きそうです。



「彼女の装備、全部ウチの謹製品だったりするのよね」


「そうなんですか?」


「ええ。お得意様」


 ほう。

 確かに風霊の村ならば一通り揃うだろう。



「対戦相手も相応にいい装備みたいね」


「そりゃそうだ。彼はウチのお得意様でな」


「あら、そうなの?」


 ジルドレの所のお客さんでしたか。

 あの太刀を鍛えたのはジルドレ本人ではないそうですけどね。


 生産職ともなるとプレイヤーとの繋がりが多かったりするものであるようだ。

 色々と事情通になるようです。



 おっと。

 試合、始まってますよ?






 セイバーの戦術は実に興味深かった。

 セットしてあるのは土魔法だ。

 ストーン・ウォールを次々と使って慎重に距離を詰めてきている。

 リディアの動きは?

 特にない。

 いや、牽制で矢を放ちはするが、様子見程度だろう。

 むしろ距離が詰まってからの戦いが見事だった。


 セイバーの敗因は?

 遠距離から攻撃される事を警戒して、慎重を期したのが逆にマズかったか?

 いや、この場合はリディアの選択が嵌まったと言えるのだろう。


 イリュージョンで自らの幻影を作り出す。

 途中からインビジブル・ブラインドで姿を消し、背後に回り込む。

 そして至近距離からパルスレーザー・バースト。

 続けて弓武技を連続で叩き込んで距離を置く。

 そして再びインビジブル・ブラインド。

 その繰り返しで詰んでしまった。



「嵌まってしまったか」


「別のプレイヤーだったけど俺が負けたのも光魔法の使い手だったなあ」


「使い勝手は確かにいいわよねえ」


 感想は人それぞれ。

 つか与作も光魔法で幻惑された口か!


 それにしても、だ。

 確かに試合内容は一方的になったが、セイバーに勝機はちゃんとあったと思うのだ。

 やや上から俯瞰していたからこそ言えるんだけどね。

 土壁を築く時間はリディアにも公平に与えられたものだった。

 それが余計だっただろう。

 ダメージ覚悟でさっさと距離を詰めていたら?

 イリュージョンは仕方ないかもしれないが、インビジブル・ブラインドは使わせずに済んでただろうな。


 まあ結果は惨敗で覆らないんですけどね。





 第六回戦である準々決勝が終了、ベスト8がベスト4に絞られた。


 譲二は?

 なんと敗北です。

 相手はドワーフファイターだ。

 投網はどうしたんだ?

 サキさんによると、ちゃんと投網は使って相手に引っ掛けたそうなのですが。

 逆に引っ張りまわされてしまい、至近距離から斧攻撃を何度も喰らったそうです。

 そりゃダメだわ。


 東雲は?

 弓矢持ちのハンター相手に力押しで勝利したそうです。


 シェルヴィは?

 これは敗北してました。

 勝負は判定になるまで時間が掛かっていたので、オレも試合の様子は見ていたんだが。

 杖持ちソーサラーは複数の魔法技能を活かすだけでなく、上手に距離を置くように戦っていた。

 ぶっちゃけ逃げ回ってたんですけどね。

 それも正解の1つだと思う。

 シェルヴィはフェンサー、つまりは壁役である。

 それに重装備だ、

 試合が長引いたのはそのせいもあるだろう。

 ぶっちゃけ、シェルヴィの攻撃が1回でも命中していたら結果は逆だっただろうな。

 実際、オレが見ていた範囲でも危ない場面はあったのだし。



 ともかく、ベスト4が揃ったか。

 初級クラスの準決勝もここで行われるようですが。

 その試合そっちのけでオレの周囲では中級の優勝予想が白熱してました。

 誰が優勝しそう?

 ちょっと予測が出来ないな。

 相手によって得手不得手が激しい気がする。




「ドワーフが2名、勝ち残ったからなあ。どっちかに優勝して欲しいものだが」


「その2名が準決勝で対戦するみたいだね」


 ジルドレの期待は叶うだろうか?

 決勝戦にドワーフが残るのが確定したのは間違いない。

 カヤの指摘にも複雑な表情です。


 そうなるともう一方の準決勝はリディアと杖持ちソーサラーの対戦か。

 決勝戦は対照的な相手同士で対戦する事も確定のようだが。



「キースなら優勝予想に誰を推すのかしら?」


「正直、分からないですけど。推すなら東雲です」


 だって周囲の皆さんは東雲推しじゃないですか。

 ここで対抗してどうしますか?

 いや。

 実際、根拠はあるのだ。

 ただシンプルに殴りに行く。

 槌対斧だ。

 互いにドワーフ。

 一点豪華主義で武器技能をセットしてあるのなら、レベル差が活きるだろう。

 後は武器と防具の差だ。

 共に金属製の防具。

 槌と斧では槌が有利に思えるのだ。




 中級クラスの準決勝が開始。

 ドワーフ同士の対戦は壮絶な殴り合いに終始してました。

 なんと互いに装備を切り替えて戦いに臨んでいたのです。

 それは盾だ。

 そしてその選択が試合時間を長引かせていた。

 同時にそれが東雲を優勢にしているようである。



「東雲は【重槌】を外したか」


「その代わりに【重盾】を選択したようだな」


 そう。

 盾の差が地味に効いている。

 互いにパワーファイター、攻撃は当たるものと覚悟するならば、盾重視の選択はアリだろう。

 その判断は対戦相手も同様だった。

 だが。

 その装備には大きな差が存在していた。

 対戦相手の盾もそう悪い代物ではないと思うのだが。

 東雲の持つ盾は大きく、そしてより強靭な代物のようだ。

 そして互いに盾そのものが殴打武器と化している側面もある。


 試合終盤は互いの兜が半ば吹き飛んでました。

 それほどの激戦でありながら、判定。

 東雲は判定勝ちで決勝戦に進んだ。



「で、決勝戦の相手は?」


「リディアよ!」


 レイナはリディアの試合をちゃんと観ていたようだ。

 開始直後から弓矢の武技を連射しての力押しだったそうですが。

 ドワーフである東雲相手にはどんな選択をするかな?

 東雲も弓矢持ち、そして光魔法の使い手を相手にどんな選択をするかな?


 決勝戦は既に始まっている。

 互いの手の内を読みあっている事だろう。




「で、フィーナよ。お前さんは決勝戦の後はどう見る?」


「イベントならあると思うわ」


「そこは同意だけど、何が来るかな?」


「何があるにしても期待したいわね」


 ジルドレ、それにカヤの興味は闘技大会以外にもあるらしい。

 前回は表彰のタイミングで魔人が出現している。

 今回も、というのは十分に有り得る話だ。

 フィーナさんもまたイベントにいち早く対応する事を考えているようです。



「貴方達との交易にしても早めに済ましたのだってイベントがあるって予測の上なんだし」


「トラブルを望むかね?」


「望むのはイベントであってトラブルじゃないわ」


「お前さんにとっては似たようなものではないかね?」


 前後の席で言い合いが始まるかと思ったが。

 初級クラスの決勝戦が始まった。

 そうそう、観戦しないといけませんよね?



 この対戦は剣持ちファイターと槍持ちファイターのものだった。

 見所は?

 手の内の探り合いといった所だ。


 互いに相手の利点を消す事を考えている。

 同時に自らの欠点をカバーする事も考えている。

 セットしてあるスキルもそこそこ多いと思われた。

 それに防具もいい装備であるらしい。

 中々、決定打が出てこない。

 呪文も補助が中心で、攻撃呪文はほぼなかったのだ。


 エフェクト的には攻撃呪文がないと地味だ。

 地味なんだが。

 オレ的には楽しめた。

 特に槍持ちの動きがいいからだ。

 槍の利点、間合いの長さを活かす事に腐心しながらも、剣持ちファイターの動きを良く読んで対応していた。

 槍持ちファイターのレベルは4です。

 剣持ちファイターのレベルは6だ。

 手数で及ばないし、接敵を許してもいるのだが、剣の間合いを外すタイミングがいい。

 無論、完全にではないが。


 剣持ちファイターの敗因は?

 武技に頼っていた事だろう。

 いや、頼るのは間違ってないと思うのだが。

 槍持ちファイターがその攻撃を捌くのが上手い、としか言い様がないな。

 実際、互いに武技を出し尽くす所まで持ち込んでいたのだから、剣持ちファイターも善戦したと言える。


 結局、判定で槍持ちファイターの勝利だ。

 表彰は中級クラスの決勝戦の後でまとめて、という事であるらしいな。

 雛壇上のギルド長に動きはない。


 あれ?

 師匠がいないな。

 それにジュナさんもいつの間にかいない。

 来賓には変わりがないように見えるのだが。



 何処に行ったんだろう?





 決勝戦が始まろうとしている。

 師匠達の事はまあ置いておこう。


 東雲は?

 その得物は腰に下げた槌だろう。

 そして準決勝と同じく、重盾。

 変わらないように見える。

 相手が弓矢で来ると想定しているのであれば、盾は有効だろう。

 盾そのものは大きいし、盾を前にして距離を詰める事も出来るだろうが。

 接近してからどうするんだろう?

 イリュージョンはどうする?

 インビジブル・ブラインドは?

 何か手を打つと思うんですが。



 リディアは?

 変わらず弓矢のようです。


「両方とも頑張れ!」


 レイナの声援も飛ぶ。

 どっちが勝利するにしても、何かしら繋がりがあるからそうなるよな?

 うん。


 あれ?

 リディアの背中に棒があるんだが。

 もしかして、杖か?



「彼女、貴方に勝つ事を諦めてなかったって知ってた?」


「はい?」


「闘技大会に、ではなく対戦で真正面から戦って勝つ。それが彼女の目標」


「えー」


 マルグリッドさん、それ本当ですか?

 ちょっとだけ、重たいんですけど。



「ああ。確かにそんな話もありましたな」


「与作も何度か対戦してたでしょ?」


「ええ。まあ断る理由もなかったですから」


 なんとまあ。

 与作とも対戦してたの?

 度胸あるなあ。



「対戦成績の方は?」


「私が1つだけ、勝ち越してますよ」


「何勝何敗なの?」


「4勝3敗ですかね?」


 おい。

 与作相手に、3つ勝ってるの?



「東雲と彼女は対戦してるのかしら?」


「してますよ。互いに普段の手の内は知ってますが」


「闘技大会では技能制限がある、と」


「そこが駆け引きって事になるでしょう」


 マルグリッドさんと与作の話を傍で聞いていたんですがね。

 驚くべき会話が。



「東雲は彼女に負け越してますからね。それだけにどう戦うかな?」


「そうなの?」


「普段の彼女ですが光魔法と土魔法の併用ですからね。ピットフォールに嵌まって詰みのパターンです」


「へえ」


「対策は聞いてます。気になるのは彼女の弓矢も杖も新調品って所です」


「どっちも私の作品!」


「そしてレイナ作の杖に嵌まっている宝石を仕上げたのは私」


 マルグリッドさんは意味深な笑みを浮かべている。

 何だ?



「マルグリッド、それにレイナ。どっちの応援?」


「両方!」


「私だって、両方。フィーナだってどっちにも頑張って欲しいでしょ?」


「まあそうなんだけど」


 試合場で2人の視線が絡み合う。

 互いに、礼。


 試合が始まった。

 観客の歓声が会話を掻き消していく。

 この試合、どうなるんですかね?





 試合は開始された筈だ。

 だが。

 地味だ。

 その理由は分かっている。

 リディアが弓矢を使っていない。

 その手には杖。

 完全に魔法技能に頼るつもりか?



 最初の攻撃は意外なものだった。

 フォース・バレット。

 だが盾に遮られてしまう。

 単なる牽制?


 やや距離が詰まった所で今度は本格的な攻撃呪文が放たれた。

 ストーン・バレット。

 光魔法じゃない?



 それでも東雲には前進あるのみのようだ。

 だが、いいのか?

 土魔法をセットしてある、という事はピットフォールの呪文を使われる可能性は高い。

 いや。

 オレなら、使う。

 その可能性だけでも牽制になるんだが。

 間合いの差がそれを許さない。

 ただただ、前進あるのみ。


 東雲の足元に、穴が生じようとしていた。

 だが。

 東雲はその穴に嵌まらなかった。

 何だ?

 一気にリディアとの距離が詰まっている。



「今のは武技か?」


「そう。シールド・ラッシュ。盾の武技でピットフォールを避けた訳だ」


「それにしては随分と距離を詰めたが」


「武技の連続発動です。タイミングが難しいですが、効果はご覧の通りです」


 ジルドレの疑問に与作が答えていた。

 そうか。

 あの半ソロバードが刺突剣の武技で使ったのと一緒だ。

 成程ね。



 次のリディアの選択は?

 攻撃呪文だ。

 盾を叩くだけでダメージは通っていない。

 だが。

 東雲はリディアを見ていない。

 盾に隠れたまま、攻撃呪文の防御をしているのだから当然だが。

 回り込むように距離をとる。

 ま、当然だな。

 次の攻防はどうなる?

 東雲の選択はもう分かりきっている。

 追撃するしかない。

 呪文を防ぎきるとリディアの姿を確認して距離を詰めに行く。

 その速度は?

 速い。

 シールド・ラッシュの連続使用だ。

 徹底して使い倒すつもりだな?



 東雲の目の前に、土壁が出来上がる。

 ストーン・ウォールだ。

 まともに衝突した東雲にダメージが入る。

 だが。

 止まらない。

 そのまま土壁に槌を叩き込んでいた。

 何と!

 そして盾を前面に押し出して突撃。

 おい。

 力技なんてもんじゃない!


 土壁に大穴が空いて、そこを通り抜けてしまっていた。



「強引!」


「あの手は以前に喰らってますからね。対策は考えてありました」


「無茶じゃないのか?」


「勿論、事前に土壁を使って練習してましたからね」


 与作の顔に浮かぶ笑み。

 東雲の勝利を確信?

 確かに有利だとは思うが。



「まだ分からないわよ?」


 マルグリッドさんは冷静にそう指摘していた。

 確かに、東雲は土壁を回り込む時間を消費しないで済んでいる。

 それでも土壁を破壊するのに時間を割いているのも確かだ。

 リディアは再び距離を稼いでいる。

 杖を掲げて呪文詠唱は既に始めていた。

 果たしてシールド・ラッシュの連続使用も間に合うかどうか。


 だが。

 東雲の右手が動く。

 何かが宙を飛んで行き、リディアに命中した。

 HPバーにもダメージが入る。


 何か、投げた?

 再び何かが宙を飛ぶ。

 直撃。

 リディアの呪文詠唱は途切れたか?


 再度、距離を置こうとするが、場所が悪かった。

 試合場の角。

 逃げ場がない。


 リディアは試合場の端を回り込もうと動くが、またしても何かが飛んできて直撃。

 結構大きなダメージが通っているようです。

 何を投げているんだ?



「ありゃあ何だ!」


「金槌ですよ。小さめの、ね」


 ジルドレの疑問に答える与作。

 実に満足気だ。



「武器技能の【重槌】を外してでも【投擲】を選択した理由がこれです」


「決勝戦までこの手は?」


「使ってないでしょうね」


 そうか。

 自分の不利を少しでも補う、執念の選択なのだろう。

 それにしても。

 金槌、幾つ持ってたんだ?

 腰にあるようには見えない。

 《アイテム・ボックス》から直接出しているようだと反則だが。



「ねえ。あの金槌って何処から出してるの?」


「盾の裏側にあるんです」


「無茶な事をするわねえ」


「ドワーフはパワーありますから」


 いや、問題はパワーじゃない、と心の中で突っ込んでおく。

 オレも最近になってから【投擲】を使っている訳だが。

 あんなに命中させられるか?

 自信はない。

 相当に【投擲】を鍛えるか、そうでなければ元々から器用値が高くないと無理じゃね?

 プレイヤーズスキルでカバーしているのかもしれないが。



 結局、リディアが再び呪文を唱える事はなかった。

 盾による痛撃を受け、沈んでしまう。

 東雲の勝利だ。

 自らストーン・ウォールに突っ込んで受けたダメージが一番大きかったというのも凄いな!

 終わってみたらドワーフらしい、豪快な勝利に見える。

 それでいて【投擲】という技能を絡めて活かした点は緻密な計算にも見えるが。



「むう、火力が低かった?」


「ドワーフが相手なら光魔法よりも土魔法で良かったと思うわよ?」


 レイナは残念そうだったがフィーナさんが慰めている。

 普通ならそうだろうな。

 オレだって土魔法の呪文、ピットフォールを中心に組み立てたくなる。








「何よあれ、つまんないわ!」


 それはフィーナさんの心情を良く表現していただろう。

 同じような感想を持っている面々もいるようだ。

 何が不満なのか?

 イベントが起きる、という予測が外れたからだ。

 表彰では何も問題は起きず、闘技大会は終了。

 そう。

 魔人も現れない。


 ブツブツと呟くフィーナさん、何を言っているのだろう?

 呪詛のように聞こえる。

 いや、呪詛だろう。

 【耐寒】は何をやっているのか?

 寒いんですが。



「運営にも事情があるんだろうよ。そう怒るな」


「怒ってないわよ」


「いやあ、β時代を思い出すなあ」


「カヤ、貴方ってもしかして喧嘩売ってる?いいわよ、買うから」


「いやいやいやいや」


「待て待て待て待て」


 フィーナさんの怒気は納まる気配はない。

 ジルドレとカヤが避雷針になってくれていて助かる。

 いや、フィーナさんが2人に甘えているようにも見えるのだが。

 任せておきましょうかね。

 古い付き合いであるようだし。



「東雲は誰かが待つとして。そろそろ時間も遅いしログアウトしたい人も多いんじゃない?」


「町の外でインスタント・ポータルを使いましょう」


「では東雲は私と与作が待ちましょう」


 ハンネスと与作が新練兵場の前で東雲を待つ事に。

 そしてオレも町の外へ同行する。

 仕方ない。

 だってヴォルフも逢魔もマルグリッドさんやアデルに付いていってますけど。

 君達、そんなに撫でられるの好きかな?

 機会があったらその奥義を学びたいものだ。


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