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増量ちう
夕食は雑談を交えて楽しく摂れました。
エリアポータルの解放には激戦が伴うだろう。
いい感じで肩の力が抜けた、と思う。
MPバーもヒョードルくん以外は余裕があった。
そこはそれ、ヒョードルくんにはマナポーションを奢っておく。
時間を置いて2つ服用したので、7割程になった。
まずはこれで行こう。
そして召喚モンスター達も次々と夜の戦闘を前提にした布陣に切り替わって行く。
オレの布陣は?
ヴォルフ、ジェリコ、ヘザー、獅子吼、テロメアである。
隙が少ない布陣だと思う。
ヒョードルくんは?
フクロウ、ウルフ、ビーストエイプ、フェアリーだ。
さすがにまだ1匹もクラスチェンジしていないだけに、正直見劣りがする。
だが彼もここまできたのだ。
頑張って頂きたい。
アデルは?
フォレストタイガー、ホワイトウルフ、金毛狐、フクロウ、オルトロスだ。
実にモフモフ率が高い。
彼女らしさが溢れている。
オルトロスはこうして並んでいる所を見るとかなり大きい。
漆黒の毛並みに双頭、4つの真っ赤な目が妙に映えている。
その姿形の荒々しさは獅子吼に劣らない。
アデルが平気な顔で愛でていられるのは大いなる謎だ。
そしてイリーナは?
ウッドゴーレム、ブラックウルフ、フクロウ、ピクシー、鵺だ。
アデルに比べるとクラスチェンジ組が少ないのだが、イリーナの布陣も充実している。
ウッドゴーレムとフクロウはクラスチェンジ目前である。
戦力が低い訳でもない。
鵺は恐るべき姿形でありながら、その存在感は薄い。
獅子吼に劣らない大きさなのだが、妖怪だからなのだろうか?
この鵺だが、直視し続けるのは難しい。
心が冷えていくような感覚に陥りそうになるのだ。
イリーナの傍で控えている様子は実に大人しく見えた。
春菜の布陣は、ミスティックアイ、ヴェノムパイソン、ウッドゴーレム、マーメイド。
此花の布陣は、グレイウルフ、フクロウ、タイガー、フェアリーだ。
2人で合わせて前衛と後衛、それに遊撃も含めてバランスを取っているようです。
総勢、サモナー6名に召喚モンスター27匹だ。
ちょっとした集団ですよね?
これならば、そこそこ強い相手でもどうにか出来そうな気になってしまう。
そしてある心構えも出来ていた。
スピンクス、スフィンクス、マミーにキラースコルピオン。
ここまで来ると、ある法則性が見えて来る。
そう、エジプト繋がりだ。
ここのエリアポータルで出現する相手もそういった連中になるのだろう。
まあ何が出現するのであれ、全力で戦うまでだ。
全員でセンス・マジックを使っておく。
そしていつものように呪文で強化を加えていった。
通路を進みながらもオレは呪文での強化を途切れさせない。
前衛になるであろうオレ配下以外の召喚モンスターも出来るだけ強化していく。
グラビティ・メイルだ。
全ての召喚モンスターにグラビティ・メイルは掛けられなかったが、後衛以外には行き渡ったと思う。
そのタイミングで通路が一気に開けた。
広間である。
というか城郭の内部?
そして足元全てがまるで砂場のようになっている。
これは?
足首まで埋まるような状態ではないが、移動するのに邪魔になりそうだ。
そして正面に階段のように祭壇が設けられている。
例の人魂が砂地の祭壇で浮いていた。
いかん。
もう始まるのか?
《過去の栄光はここに在る》
《未来への復活もまたここに在る》
《日々を漫然と過ごす者には罰を》
《邪なる快楽に身を委ねる者にも罰を》
《その心臓を差し出すが良い!》
《天秤が傾く時、汝らに永遠の破滅が与えられよう》
またしても不穏なインフォだ。
問題なのはこの後です。
何が出てくるのですかね?
アヌビスの神徒 Lv.2
イベントモンスター 使徒
討伐対象 アクティブ
戦闘位置:地上 ???
セベクの神徒 Lv.2
イベントモンスター 使徒
討伐対象 アクティブ
戦闘位置:地上 ???
クヌムの神徒 Lv.2
イベントモンスター 使徒
討伐対象 アクティブ
戦闘位置:地上 ???
トトの神徒 Lv.2
イベントモンスター 使徒
討伐対象 アクティブ
戦闘位置:地上 ???
バステトの神徒 Lv.2
イベントモンスター 使徒
討伐対象 アクティブ
戦闘位置:地上 ???
セルケトの神徒 Lv.2
イベントモンスター 使徒
討伐対象 アクティブ
戦闘位置:地上 ???
うわお。
全員、一部ですが【識別】で見えない項目があるんですけど?
明らかに格上か?
全員、形状が同一の杖を手にしている。
そして頭には兜なのか、被り物をしていた。
順番に山犬頭、ワニ頭、羊頭、鳥頭、猫頭、サソリ頭だ。
そして戦う相手はこいつ等だけじゃなさそうだ。
セルケトの神徒かな?
頭にサソリを象った兜を付けている神徒の体中が魔力で光り輝くように見えた。
その足元の何箇所かに魔力が放出されて行く。
何かが這い出して来ているようだが。
キラースコルピオン Lv.4
イベントモンスター 魔物
討伐対象 アクティブ
戦闘位置:地上 土耐性 毒
何だ、お馴染みの魔物ではないか?
但し数がやたらと多いですけど。
どう見ても30匹以上いるよね?
「真練気法!」「ブレス!」「メディテート!」
勿論、ここは全力で。
出し惜しみもなしだ。
呪文を選択して実行。
オレの得物は?
左手には普段通りに呵責のトンファー。
右手には雪獣のメイスだ。
春菜のマーメイドの歌声が響く。
味方を鼓舞する、勇ましい歌だ。
体の芯から湧き上がってくるものがある。
召喚モンスター達が先行する。
ここは先手必勝、敏捷値の高い者だけでいい。
後衛に位置する神徒を先に叩きに行く形だ。
脚の遅い者はアデル達の壁に残しておく。
オレ?
無論、前衛へと出て神徒に向かっていく。
そういう役割でいい。
呪文詠唱が終わるがそのまま溜めておく。
狙っているのはカウンターだ。
次の呪文を選択して実行しておく。
神徒達の魔力が膨らむ。
何か様々な攻撃が召喚モンスター達の先頭に撃ち込まれるのだろう。
オレが待っていた瞬間でもあった。
「ディメンション・ミラー!」
神徒の放った攻撃はそれぞれ違うものであったようだが。
確認する暇などない。
その攻撃を全て反射してのけた事。
反射した攻撃でサソリが全滅していた事。
それだけが分かれば十分。
何気に凄いな、おい!
もしもディメンション・ミラーがなかったら?
怖いなんてもんじゃない!
それにしても足元の砂が邪魔だ!
だからこの呪文を使った。
後悔はしていない。
「フライ!」
呪文の対象は?
当然だがオレだ。
接近戦のリスクを負うのはオレだけでいい。
今度は別の神徒の魔力が異様に高まっている。
頭にワニの被り物をしてる奴。
それに嘴の長い鳥の被り物をしてる奴だ。
クソッ!
スペル・バイブレイトを仕掛けるには距離が遠すぎる!
ペトスコス Lv.2
イベントモンスター 魔物
討伐対象 アクティブ
戦闘位置:地上、水中 水耐性
ホーリーアイビス Lv.2
イベントモンスター 魔物
討伐対象 アクティブ
戦闘位置:空中 光属性 闇属性 時空属性
それは20匹を超える数の巨大なワニだ。
そして同時に現れたのは30匹を超える数の大型の鳥。
その嘴は湾曲している。
何の鳥の魔物なんだ?
だが気にする暇はない。
オレは宙を駆けながら神徒に迫る。
「サンダー・シャワー!」
鳥の魔物と空中で交錯する。
全体攻撃呪文を浴びせておいたが、その効果も確認できない。
次々と事態が悪化しているようであった。
新たな魔物が出現している。
今度は何だ?
インサニティキャット Lv.4
イベントモンスター 魔物
討伐対象 アクティブ
戦闘位置:地上 闇属性
ネコだ。
黒猫であった。
ネコにしてはかなり大きく黒ヒョウに見えてしまう。
20匹程度?
いい傾向じゃないな!
「ヴォルカニック・ブラスト!」
狙いとかもうどうでもいい。
どうせ命中する。
それほどに敵が多い。
全く、困った奴らだな!
それにまだ追加が来るかよ!
デスジャッカル Lv.3
イベントモンスター 魔物
討伐対象 アクティブ
戦闘位置:地上 闇属性
ワイルドシープ Lv.6
イベントモンスター 魔物
討伐対象 アクティブ
戦闘位置:地上 土耐性
山犬みたいなのが10数匹。
大きめの羊がもう目も当てられない程の数です。
50頭はいるよね?
「ガァァァァッ!」
「グラゥァァァッ!」
ヴォルフと獅子吼が吠える。
地上に在る魔物の集団の半分ほどが脚を止めた。
そこに前衛に出ていたオルトロスのブレスが、鵺の雷撃が、テロメアの轟炎が撃ち込まれていく。
更に獅子吼も追撃でブレスを吐く。
ヘザーの放った雷撃が更に追撃となって雨のように降り注いだ。
これは凄いな!
魔物の群れは大混乱に陥っているようであった。
これは好機?
先頭を駆けていたヴォルフの姿が羊の群れの中へと消えてしまう。
大丈夫か?
「ライト・エクスプロージョン!」
ヴォルフが神徒に迫る前に魔物の群れに撃ち込んでおく。
そしてオレも神徒の元に辿り着いた。
ついでにフライの呪文を解除する。
雪獣のメイスを思いっきりサソリ頭の奴の腹に撃ち込んだ。
一撃で吹き飛んでしまう。
HPバーはそれでも半分以上、残ってやがるけどね。
こいつめ。
さすがに強いか?
トンファーで顎を撃ち上げ、浮いた顎へとメイスを叩き込んだ。
これでどうだ?
まだHPバーが残ってやがる。
だが昏倒してくれたらしい。
地面に倒れ伏して動かなくなったようだ。
状況はどうなっている?
既に多くの魔物が放たれたエリアは砂埃で充満している。
ダメだこりゃ。
アデル達が呪文を放ち、武技を使う様子はウィスパーを通じて聞こえている。
だがそこに意識を集中できる余裕はなかった。
聞こえているうちは健在。
そんな感覚です、ハイ。
神徒は?
すぐ傍に山犬頭がいた。
その足元からまた何かを出現させようとしているようだ。
まだ追加があるんですか?
そうはさせるか!
「パルスレーザー・バースト!」
至近距離から直撃弾。
続いて胸板へメイスを叩き込んだ。
今度は仕留めきったらしい。
追加の魔物は出現させずに済んだみたいだ。
あれ?
経験値的には呼ばせた方が良かったのか?
まあいいや。
次だ次!
猫頭の神徒は鵺に喉を噛まれており、尻尾の蛇に胴体を絞められているようだ。
こいつはもう詰んでる。
他の奴は?
ワニの頭の奴はオルトロスに噛み千切られそうな有様だ。
片方の頭が胴体を、もう片方が太腿の辺りに噛み付いて、引き裂く様子が見えた。
もう千切ってました。
既に事切れた神徒を2つにして放り出すと、砂塵の中に新たな獲物を求めて突っ込んでいった。
ワイルドだぜ。
豪快に過ぎる。
鳥頭は獅子吼とブラックウルフに、羊頭もヴォルフとホワイトウルフに散々な目に遭っている
おい。
オレの獲物は?
砂塵が徐々に収まってくる。
まだ魔物は十分な数が残っているようだ。
空ではテロメアを始めとした面々がホーリーアイビスを撃ち落しているようである。
待て待て待て待て。
もうちょっと、残っていてくれよ?
「アシッド・シャワー!」
全体攻撃呪文を撃ち込む。
そして収まりつつある砂塵を再び巻き起こすように、メイスを振り回す。
ネコも羊も山犬もワニもサソリも関係ない。
寄らば叩き潰すまでだ。
攻撃も飛んでくるが、避けるかトンファーで凌ぐのみである。
時には蹴りだって使う。
いいぞ!
どっちを向いても魔物だらけだ!
いつの間にか目の前に見慣れない存在が。
その頭上のマーカーは緑色。
味方にこんな奴がいたかな?
ウンディーネ Lv.5
精霊 戦闘中
戦闘位置:水中、地上 水属性
オレに向けて接触してくる。
何だ?
オレの頭上の緑のマーカーにいつの間にか小さなマーカーが重なっていた。
それが徐々に消えていく。
おお!
何があったのか分からないが、いつの間にかオレは状態異常を喰らっていたようだ。
つかHPバーも3割程、減っているようだし。
気付かなかった?
そういえば体のあちこちが痛い。
まあいいさ。
まだまだ、魔物の数は多い。
早くしないと召喚モンスター達に全部持っていかれるぞ?
味方に素早いのがいるから安心できん。
「リジェネレート!」
回復はこれでいいかね?
では。
戦闘に集中しよう。
手近にいたワニの頭をメイスで叩き潰す。
その隣にもワニだ。
そいつの頭にもメイスを叩きつける。
また別のワニが来た。
叩く。
ここは何処のゲームセンターなのか?
いい加減、沈んでしまえ!
「ガァァァァッ!」
「グラゥァァァッ!」
「ギシャァァァァッ!」
「ゴァァァァァッ!」
獣の咆哮が重なって魔物の集団に叩きつけられた。
何故かその咆哮の中でもマーメイドの歌声は良く響いている。
耳に心地いいな。
傍で脚を止めたネコ共と山犬共にメイスを次々と撃ち込んで仕留める。
いや、殆どは昏倒しているんだが。
つか本丸の神徒は片付いているのに残っている魔物が多過ぎる!
まあ獲物がまだいて助かっているんだけどね。
オレとヴォルフ達は乱戦の中で戦果を競うかのように獲物を屠り続けていた。
その一方でジェリコとウッドゴーレム2体が壁役となり、距離を詰めつつある。
その後方からアデル達が支援を続けていた。
急速に魔物の数が減っていく。
その魔物共の駆逐は長かったような、短かったような。
魔物を追加する神徒がいなくなった以上、減っていくのは道理であろう。
最後の1匹はワイルドシープです。
でもテロメアに血を吸われていて、オレの出る幕はなかった。
しまった。
やっぱり神徒を片付けるのが早過ぎたのか?
終わってしまえばそれが悔やまれる。
それが正解だとは分かっている。
分かっているのだが。
やはり経験値的に惜しいのだ。
《過去の破滅はここに在る》
《未来の終末の姿もまたここに在る》
《日々を漫然と過ごす無かれ》
《邪なる快楽に惑わされてはならぬ》
《原罪もまた真なり!!》
《破滅の天秤は汝等の中にもあるのだ》
インフォはそこで終わった。
うん。
終わったんだよな?
《S5のエリアポータルを開放しました!》
《ボーナスポイント5点が加算されます。合計で35ポイントになりました》
《只今の戦闘勝利で【杖】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【打撃】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【蹴り】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【回避】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【受け】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【溶魔法】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【魔法効果拡大】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【魔法範囲拡大】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で召喚モンスター『ヘザー』がレベルアップしました!》
《任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》
いやもう色々と上がっちゃってますけど?
6つのパーティ分と考えても魔物の数は多かった。
これ位のご褒美があってもおかしくはないのかね?
ヘザーのステータス値で既に上昇しているのは精神力だ。
もう1点は筋力値にしよう。
ヘザー シルキーLv4→Lv5(↑1)
器用値 9
敏捷値 23
知力値 24
筋力値 7(↑1)
生命力 7
精神力 26(↑1)
スキル
飛翔 浮揚 魔法抵抗[中] MP回復増加[中] 風属性
土属性 雷属性
ヘザーはまたちょっとだけ大きくなっているようだ。
オレの腰の辺りを少し越えている。
徐々にだが確実に大きくなるようです。
どこまで成長するのか?
ちょっと想像できない。
ところで。
ヘザーは男の子?
女の子?
見た目じゃ全然分かりません。
悪戯っ子の雰囲気が強くなっているような気がするし男の子?
だが仕草は女の子のようにも見えるし。
分からん。
かといって確かめる行為は怖くて出来ません。
「アデル、被害はどうだ?」
『全員健在!ホワイトウルフのうーちゃんがステータス異常喰らってますけど』
「イリーナ?」
『問題ありません。ゴリアテと白夜がレベルアップしちゃいました!』
『本当?やったねイリーナちゃん!両方ともクラスチェンジだね!』
『アデルちゃんもクラスチェンジが1匹増えるみたいね?』
『ふーちゃんは何にしようかなー』
きゃあきゃあとはしゃぐ2人。
同様にはしゃいでいるのは春菜と此花だ。
『クラスチェンジ1体追加!』
『私は2体追加!』
『何にする?何にしよう?』
女性陣4人はガールズトークに突入しました。
まあいいけどね。
ここはエリアポータル。
魔物の襲来は心配しなくていいだろう。
対照的なのはヒョードルだ。
呆然としている。
「大丈夫だったか?精霊は助かったよ」
『ども。1匹が状態異常になってますけど。一気にレベルアップが来ているのでちょっと混乱してます』
「うん。あれって重なる時は重なっちゃうよね」
『こんなの初めてです。今日だけで色々とレベルアップしてますし、驚くばかりです』
ふむ。
彼もまた大きな経験値を得ている筈だ。
もう1押しで職業レベルが上がってもおかしくない。
そして彼の召喚モンスターは全てレベルアップしていた。
フクロウはクラスチェンジにリーチのレベル7だ。
もう一押しだな。
夜の狩りでクラスチェンジしてもおかしくないか?
『キースさん!見て見て!』
アデルの歓声が響く。
ちょっとだけボリューム下げて!
「どうした?」
『壮観ですよね?』
そこにはクラスチェンジを果たした召喚モンスターがズラリと並んでいた。
アデルのフクロウはミスティックアイになっている。
イリーナのフクロウはオオフクロウに。
加えてウッドゴーレムはクレイゴーレムになっている。
春菜のウッドゴーレムはマッドゴーレムにクラスチェンジだ。
此花のフクロウはミスティックアイに。
そしてタイガーはフォレストタイガーになっていた。
うん。
この布陣で戦っていたら、もっと楽にエリアポータルは解放してたかも?
いや、あれほどの魔物を一気に屠っているからこそ、レベルアップも多かったんだろうけどさ。
全く、世の中は儘ならないものだ。
さて、と。
落ち着いた所で確認しておこうか?
このエリアポータルの名前は?
広域マップを見ると、砂塵の神殿、となっている。
さもありなん。
時刻は?
午後7時30分だ。
まだまだ宵の口と言っていいだろう。
布陣を変更する。
ヘザーを帰還させて幻月を召喚する。
まだまだ。
まだ終わらんよ!
『キースさん、まだ続けるんですね?』
「うむ。付き合うか?」
『まだユニオンを解いていないし!このまま新しい戦力でゴー!』
アデルはある意味で染まりきっているようだ。
逆に引き締めないと危ういかもしれないな。
まあ今は有難いが。
ヒョードルくんはMPバーが半分以下になっている。
マナポーションを奢っておいて、どうにか半分をキープした。
そしてステータス異常を喰らっている召喚モンスターは当然だが交代で。
アデルのホワイトウルフのうーちゃんはライオンのらーちゃんに。
ヒョードルはウルフが外れてバットが加わる形だ。
夜だし戦闘は迎撃が中心だからこれでもそう戦力は落ちていない筈だ。
『キースさん、ちょっといいですか?』
「うん?」
イリーナが何やら不機嫌にも見える顔でオレを見ているんだが。
何でしょ?
『フライの呪文です。掲示板情報と随分と違った使われ方なので』
「え?」
何?
どういう事?
何が変なのか、と言えば。
一度に複数の対象に呪文を掛けているのがおかしい、という事らしいのだが。
何度見ても呪文の説明だと、選択が出来ると書いてある。
実際に、指定できるし、使えていますよ?
『もしかして、他の呪文も似たような感じになってませんか?』
「え?」
指摘されたので、改めて幾つかの呪文の説明文を見たんですが。
あら不思議。
フライの呪文と同様、複数を指定出来るようになっている。
無論、無制限ではないのだが。
エンチャント系、レジスト系は全部だ。
後はノクトビジョン、レビテーション、サイコ・ポッド、グラビティ・メイルもそうみたいです。
無論、フライも同様である。
複数指定出来るのは同一パーティ、ユニオンを組んでいるパーティの範囲で3つまで。
そうでない対象は個別でないと無理のようだ。
形はやや違うが、テレパス、リターン・ホーム、インスタント・ポータルも適用範囲が広がっている。
チェンジ・モンスターも1日あたり3回までと使用回数が増えてました。
いつの間に。
説明文なんて何度も見返さないから、気が付かなかった。
それだけではない。
オフェンス・フォール、ディフェンス・フォール、パラライズ、ディレイもでした。
まあこれらは味方に掛ける様な呪文ではないんだが。
敵を次々と連続で凝視したら最大で3つまでの対象を選択できるらしい。
3匹までが相手なら擬似的に全体攻撃呪文みたいな使い方が出来るって事か?
さすがにフォース・バレットを始めとした単体への攻撃呪文に変化はないように見える。
ファイア・ストームのような全体攻撃呪文も同様だ。
それに封印術は全て変化はないようです。
いつの間に。
今までずっと、気付きませんでしたよ。
なんという間の抜けた話なんだ。
おバカさん。
もっと楽に戦闘が出来ていたんじゃありませんか?
しかしどうして?
一つ、思い当たる存在がある。
【魔法効果拡大】と【魔法範囲拡大】だ。
どっちだ?
控えに回して検証してみた。
【魔法範囲拡大】のようです。
つか範囲ってそっちの意味もあったの?
まさに迂闊。
反省なんてものではない。
それは自己嫌悪であった。
『キースさん!それはそれとして、狩りに行きましょ!』
アデルの明るい声が響く。
ああ。
楽天的でいいねえ。
私にだってすぐに浮かべない程、落ち込む事だってあるのですよ。
『今まで、気が付かなかったんですね?』
「うん」
イリーナの追撃は単純でありながらも厳しい。
うう。
その通りです。
頷くしかなかった。
では。
気を取り直して。
いや、この自己嫌悪を振り払うには?
狩りだ。
狩りで晴らすのだ。
そうそう。
ちょっとだけ暴れたらスッキリするかもよ?
さあ、全て出してしまえばいいのだ。
溜め込んでいるからダメなのだ。
夜の狩りに来ました。
何故かアデルに慰められながら。
むしろ落ち込む。
このマイナスの気分を振り払うよ!
最初から飛ばそう。
スフィンクスとスピンクスのペアから行くぞ!
呪文で強化を進めるのも忘れない。
3倍だ。
呪文を掛けていく効率が3倍だ。
実に効率がいい。
だがそれよりも、今までこんなに便利だった事に気がつかないとは。
そっちに頭が向いてしまう。
振り払え。
振り払うのだ!
オレの得物は独鈷杵に呵責のトンファー。
遠目に魔物の姿も見えてきた。
「真練気法!」「ブレス!」「メディテート!」
武技を使って迎撃準備。
そして呪文を選択して実行。
鬱憤、晴れるかな?
狩りの効率は間違いなく上がりそうだ。
オフェンス・フォール、ディフェンス・フォールを2匹同時に掛けられる。
それだけでも有難い。
哀れ、スピンクスは翼を焼かれてピットフォールに嵌まり召喚モンスター達の餌食に。
スフィンクスも翼を焼いて地上に墜とす。
ブランチ・バインドで動きを邪魔して属性封印で弱体化を図る。
そしてオレも魔物を直接殴りに行きました。
気分、晴れた?
終わりません。
終わる訳がないのだ。
暴れ足りません。
恐ろしい事に、足らなかったのだ。
何故ならば、この2匹からはアイテムが剥げなかった。
剥ぎ取りナイフをスフィンクスに突き立てたのはオレだったんだが。
スピンクスからはアデルが獅子賢者の針を剥いでいるというのに。
お前ら。
寄越せよ!
アイテム、寄越せよ!
鬱屈が逆に溜まってしまうではないか。
もっとだ。
まだまだ足りない!
「もう少しいけるか?」
『今の感じならいけそう!』
『2匹だとさすがに余裕が少ないようですけど、大丈夫ですか?』
「無理も無茶もしていないと思うがなあ」
イリーナよ。
何故そこでジト目になるんだ?
もしかして疑っているのか?
ならば見るがいい。
実績で示してみせよう。
《只今の戦闘勝利で【剣】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【火魔法】がレベルアップしました!》
《【火魔法】呪文のヒート・ボディを取得しました!》
《只今の戦闘勝利で【塵魔法】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【封印術】がレベルアップしました!》
スフィンクスとスピンクスのペアを狩る事、更に3ペア。
色々と上がったから気分は少し、良くなったかな?
うむ。
オレは落ち着いている。
大丈夫だ。
スピンクスから古代石柱も剥げている。
よし。
アイテムを剥いだだけでも気分がいい。
我ながら単純だな!
時刻は午後9時30分。
さすがに全員、MPバーに余裕がなくなりつつある。
ここまでにしておこう。
「じゃあそろそろインスタント・ポータルでログアウトしておくか?」
『待ってください!少し考えがあるんですが』
ほう。
何だろう?
イリーナの話を聞こうとしたその時。
魔物が襲い掛かってきていた。
何だ?
そいつ等は人の形をしているようだ。
だがどこかで見たような被り物をしている。
【識別】している暇はない。
襲ってくる奴を投げ飛ばすと周囲を見る。
完全に包囲されていた。
ヴォルフ達に気付かせないとは!
それだけで脅威だ。
「奇襲だ!」
『アデルちゃん!後ろ!』
『え?敵?敵なの?』
「回避に専念!」
まだ武技と呪文の強化が効いている。
それは大いなる幸運であっただろう。
だがそんなに長い時間、残っている訳ではない。
何者なのかは知らないが、返り討ちにしてくれる!
また何者かがオレに襲い掛かってくる。
得物は剣か?
攻撃を避け、被り物ごと首を捕まえた。
一気に、捻る。
あれ?
こいつ、弱い?
赤いマーカーが消えて行く。
HPバーも一瞬で消えてしまった。
「恐れるな!こいつ等は大した事はない!」
『『はい!』』
一時的な混乱は?
収束しつつあるようだ。
まあダメージもあるんだが。
改めて周囲を見回して【識別】してみる。
こんな奴らでした。
セルケトの従者 Lv.6
使徒 討伐対象 アクティブ
戦闘位置:地上 火属性 風属性
セルケトの従卒 Lv.6
使徒 討伐対象 アクティブ
戦闘位置:地上 風属性
セルケトの従卒 Lv.6
使徒 討伐対象 アクティブ
戦闘位置:地上 火属性
従者が6人に従卒が50名以上って所か?
半ば包囲する形でこっちに襲い掛かってきている。
従卒は2つのタイプがいるようです。
こいつ等、見た事があるような。
先刻、エリアポータル解放の際にいた奴?
その割りに【識別】が属性に対しても効いている。
下位互換?
数で劣る召喚モンスター達が一気に優勢になっている。
一部は無双中です。
『いけるよ!こいつ等ってそんなに強くない!』
「周囲に気をつけろ!包囲されたら危険だ!」
全く。
武器を抜く暇もない。
近接戦で対応するしかないではないか。
首を捻ってやって、何人かはあの世行きにしてやった。
考える暇もない。
数が多いな、と思っていたのは最初の数分程か?
かなり従卒は減った。
つか弱いよ従卒!
そこでオレは獲物に従者をロックオンしたんですがね。
邪魔だ。
従卒が、邪魔だ!
従者の強さが確認できないだろ?
どうにか従者に辿り着いたんだが、そいつはもうHPバーが半分です。
しかも最後の1人でした。
得物は槍か。
その攻撃は中々に鋭い。
だが単調過ぎる。
槍の攻撃の間隙を縫って距離を詰めたらもうこっちのものだ。
投げ飛ばして被り物を外そうと思ったんだが。
出来ない。
何かの固定具がある様子もなかった。
まるで被り物そのものが顔みたいな感じか?
仕方がないので、被り物ごと捻って終わらせたが。
ちょっと厄介かも。
裸絞めや三角絞めが極まりそうもない連中だ。
《只今の戦闘勝利で【関節技】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【投げ技】がレベルアップしました!》
うん。
奇襲を喰らったのは気に食わないが、暴れさせて貰ったからな。
それにレベルアップもあったし。
いい気分です。
今の戦闘でヒョードルくんのバットもレベルアップしているようだ。
レベルの低い召喚モンスターは、難敵相手だとすぐにレベルアップしてくれる。
ユニオンを組んで戦力に余裕があるからな。
レベルがまだ低い召喚モンスターを組み込んでも無理ではなくなる。
底上げをするならユニオンは非常にいい環境だろうね。
だが。
さすがにもう戦闘継続は止そう。
余裕がないメンバーが多すぎる!
テロメアは相変わらず余裕たっぷりですけどね。
「ところでイリーナ、話の続きはインスタント・ポータル内でいいかな?」
『はい。ちょっとしたアイデアなんですが』
「アイデア?」
『マップ間の長距離移動です。かなり楽が出来るかも知れません』
ほう。
それは興味深い。
インスタント・ポータル内でユニオンは解除。
ようやく一息つけそうだ。
「イリーナちゃん、ちょっとしたアイデアって何?」
「時空魔法の呪文。リターン・ホームとインスタント・ポータルの組み合わせなんですけど」
「うん?」
「その2つの呪文を使えるプレイヤーが2名以上いる場合です。こういう事が出来ませんか?」
イリーナの説明はこうだ。
現時点で、オレがリターン・ホームを使ったら?
灰色の森に跳ぶ事になる。
ここにいるサモナーが召喚モンスターを帰還させ、6名でパーティを組んだら?
全員、灰色の森に跳ぶ事になる。
ま、ここまでは当たり前だな。
では、イリーナがこの砂塵の神殿でログアウトした、と仮定しよう。
そしてログイン。
普通に6名パーティを組む。
オレがリターン・ホームを使えば?
当然、全員が灰色の森に跳ぶ事になる。
そしてイリーナがリターン・ホームを使ったら?
砂塵の神殿に全員が跳ぶ事になる。
うん?
出来そう。
無理ではなさそうだよな?
更に言えばアデルも別のエリアポータルでログアウトしていると仮定すれば?
その場所にも自在に跳べる、よな?
一同が真剣な顔付きになったのが分かる。
だが。
「イリーナちゃん!良く分からなかったんだけどもう一回説明お願い!」
だあっ!
アデルよ。
天然過ぎる?
説明は例を挙げてじっくりと続きました。
理解したような雰囲気はあるんだが。
どうも納得している様子に見えない。
大丈夫か?
「こうなったら明日、実地で検証してみたいですね」
「同感だ」
時空魔法、か。
ある意味、物流を破壊しかねないな!
フライの呪文も便利だと思ったものだが。
このリターン・ホームとインスタント・ポータルの組み合わせは恐ろしいとすら思う。
この件は明日、実験する事に決定した。
楽しみが増えた?
それにオレの鬱屈も吹き飛んだようです。
密かな期待がある。
全くオレってば単純です。
時刻は午後10時20分。
インスタント・ポータルの中で動いているのはオレだけになった。
皆、ログアウトしている。
中々のハイペースで成長している分、消耗も激しいからな。
英気を養いつつ、頑張って貰いたい。
では。
古代石柱の発掘の続きでもしようかね?
2個目の古代石柱には果たして何が埋まっているのか?
厚みのある板のような物だというのは分かる。
その表面の一部は露出しているのですが。
分からない。
唯の石版?
表面は滑らかであるし、唯の石版ではないような気もするのですが。
まあ発掘し終えたら分かるだろう。
午後11時40分。
まだ少し発掘作業は残ってしまっているが、ここで切り上げた。
一番大きな理由は時刻であるが。
こんなインフォもあったのです。
《これまでの行動経験で【水魔法】がレベルアップしました!》
《【水魔法】呪文のアンダー・ウォーターを取得しました!》
まあ作業効率を上げる為にフィジカルエンチャント・アクアも使ってはいますけど。
飽くまでも共通付与呪文のエンチャンテッド・ウェポンがメインです。
やっぱり不思議な気はする。
だがこれでまた新たな呪文が増えてきた訳だ。
説明、読んでおこう。
そうそう、取得したのはいいが、説明を碌に読んでいない呪文もあるよな?
読んでおこう。
反省は活かすべきなのであった。
火魔法の呪文、ヒート・ボディ。
全身に炎を纏うようなイメージか?
触れた相手に火属性のダメージを与えるようです。
無論、接触し続けたらダメージをずっと与える訳で。
装備品にも効果が及ぶようだし、矢にまでその効果は及ぶらしい。
怖いな、これ。
いや。
格闘戦と組み合わせたら?
特に寝技とか。
ふむ。
検討の価値は十分にある。
土魔法の呪文、トンネル、か。
これは完全に戦闘向けではなさそうだ。
単純に穴を掘り進める呪文ですね。
鉱石掘りなどで大活躍な予感がする。
水魔法の呪文、アンダー・ウォーター。
文字通り水中活動が可能になる呪文だった。
もっと早く取得できていたら?
水中行動で苦労する事もなかったのかも?
いや、必要があったからこそ【水泳】と【潜水】も鍛えられたのだ。
そういう事にしておこう。
光魔法の呪文、インビジブル・ブラインド。
うん?
ああ、師匠が随分と前に見せてくれた呪文だな?
相手の目を騙して姿が消えているように見せる奴だ。
使い所によっては便利だろう。
取り急ぎ隠れるのにちょうどいいかな?
それにしても。
呪文リストが大変な事に!
これはマズい。
ショートカット一覧の呪文リストを編集しておこう。
新たに要検証呪文のグループを作成してみました。
忘れないように。
見えるようにしておきましょう。
どうもオレは色々と積み残して先に進んでしまう傾向が強い。
自己管理するにしても工夫しないと、ね?
そんな事をしている間に深夜0時が迫ってきている。
さっさとログアウトしておくとしよう。
主人公 キース
種族 人間 男 種族Lv24
職業 グランドサモナー(召喚魔法師)Lv10
ボーナスポイント残 35
セットスキル
剣Lv10(↑1)両手槍Lv9 棍棒Lv9 刀Lv9 捕縄術Lv8
杖Lv19(↑1)打撃Lv16(↑1)蹴りLv16(↑1)関節技Lv16(↑1)
投げ技Lv16(↑1)回避Lv16(↑1)受けLv16(↑1)
召喚魔法Lv24 時空魔法Lv14 封印術Lv7(↑1)
光魔法Lv15 風魔法Lv15 土魔法Lv15 水魔法Lv15(↑1)
火魔法Lv15(↑1)闇魔法Lv14 氷魔法Lv12 雷魔法Lv12
木魔法Lv12 塵魔法Lv13(↑1)溶魔法Lv13(↑1)灼魔法Lv12
錬金術Lv10 薬師Lv8 ガラス工Lv6 木工Lv9
連携Lv17 鑑定Lv17 識別Lv17 看破Lv5 耐寒Lv8
掴みLv14 馬術Lv14 精密操作Lv16 ロープワークLv8
跳躍Lv8 軽業Lv8 耐暑Lv10 登攀Lv9 平衡Lv8
二刀流Lv15 解体Lv13 水泳Lv6 潜水Lv6
ダッシュLv7 耐久走Lv7
隠蔽Lv2 気配遮断Lv2
身体強化Lv14 精神強化Lv14 高速詠唱Lv15
魔法効果拡大Lv14(↑1)魔法範囲拡大Lv14(↑1)
召喚モンスター
ヘザー シルキーLv4→Lv5(↑1)
器用値 9
敏捷値 23
知力値 24
筋力値 7(↑1)
生命力 7
精神力 26(↑1)
スキル
飛翔 浮揚 魔法抵抗[中] MP回復増加[中] 風属性
土属性 雷属性
同行者
アデル&イリーナ&春菜&此花&ヒョードル




