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《フレンド登録者からメッセージが3件あります》
ログインしたのは午前6時30分。
アデルとイリーナ、そしてラムダくんからメッセージが来てました。
『S3マップの灰色の森に来てます!例のサモナー繋がりで魔人狩りは好調の模様!』
アデルのメッセージは相変わらずの調子だな。
添付されているのは魔人の死体。
2頭のブラックウルフがブラックサンタに噛み付いている図だ。
どこまでもブラックだな。
『朝焼けの灯台の海でも魔人狩りが本格化してます。漁師に負けていられませんよ?』
珍しく熱くなっているイリーナのメッセージだが。
添付されているのはやはり魔人の死体。
その格好から判断するならばパントマイマーかな?
お気の毒に。
ヴェノムパイソンに首を絞められて事切れている姿はもうね。
同情しちゃいます。
『現在、PK狩りに復帰しました。やっぱり落ち着きますね』
ふむ。
ラムダくんも天性の狩人っぽくなってきたかな?
PK職限定だけど。
『復讐劇も最後の1人が中々終わりませんが、このままでもいいとか思ってしまう事もあります』
メッセージはそう締め括られてました。
そうか。
楽しめているようで何より。
それにゲームで楽しめるのは復讐するだけじゃないと思うよ?
まずは朝食からだな。
文楽を召喚する。
で、今日はどうするか?
まずはS3W1マップの昼間の狩りをしましょう。
今日は試したい事もある。
風魔法の呪文、フライ。
空を飛ぶのってどんな感じなんでしょうね?
まあフライの呪文を使うのは後でいいか。
ヴォルフ、残月、ヘリックス、幻月と召喚して、と。
召喚リストから黒曜はまだ選択できない。
今夜になるまでお預けだ。
待っているがいい。
復活出来たら暴れさせてあげるからな?
文楽の料理を食べ尽くすと出発だ。
文楽はここで帰還、クーチュリエを召喚する。
では。
狩りに行きますかね?
最初に確認すべきなのは?
ネコだ。
いや、アダンダラだっけ?
それにサキュバスとインキュバス。
グールとグーラもだな。
ネコは厄介だが、サイコ・ポッドがあれば対抗は出来るだろう。
むむ?
またしても暴れたくなってきた。
ここは冷静に行け。
昼間だと行動パターンが変わるようです。
ネコはいる。
但しその全てはパッシブ?
動こうとしない。
近くに寄ったらどうなるか、知れたものではないな。
対策は必要だろう。
サキュバスとインキュバスはペアを組んでいるように見えない。
単独だ。
グールとグーラは変わらず群れを作って移動しているようだが。
他に未確認の魔物がいてもおかしくない。
残月に騎乗して今度は北を目指してみる。
S2W1マップの様子はまだ見ていない。
その前に。
コール・モンスターでネコを呼ぶ。
三味線の皮にしてくれるわ!
アダンダラを昼間に見るのは初めてだが。
いい毛並みだ。
だが。
その視線には即死の能力がある。
危険極まりない魔物。
対策はしてあっても緊張する。
追い掛け回すのはヴォルフを中心にヘリックスとクーチュリエが担当した。
無論、追い込む先は残月に騎乗したオレの元に、である。
旗魚の槍で突くと簡単に詰む。
いや、本当に。
あっさりとしたものです。
慣れてしまえばサイコ・ポッドなしで狩れそうに思えてしまうのが怖い。
どうも脚を止めている所で目を閉じ、次に視線が合う時、目が異様に光るのだが。
あれが即死効果を与えるようだ。
うむ。
生首の行動に類似するな。
危険過ぎてサイコ・ポッドは外せないな。
サキュバスとインキュバスを単独で狩る。
これは全く問題ない。
そしてグールとグーラの群れも、多少手間だが問題ではなかろう。
だが。
こんな奴が出るのか。
レッサーオーガ Lv.4
魔物 討伐対象 アクティブ
戦闘位置:地上
さあ、どうする?
これはちょっと興味がある。
いいよね?
1対1で戦っても、いいよね?
ダメだ。
自重しろ。
昨夜、戦鬼と対戦したよね?
なんとか自重しました。
そうそう。
自己回復を上回るダメージを重ねてやればいい。
馬上から突き入れる槍で与えるダメージはいい感じだ。
レッサーオーガはパワーもあるしタフな上、素早さもある。
しかし、ヴォルフの牽制には簡単に引っ掛かってくれる。
オレも槍を突き入れるのが楽だ。
騎乗していれば追い付かれないし、攻撃は一方的に加える事になる。
問題は、ある。
戦いたい。
接近戦で、戦いたい。
疼く。
ああもう、どうにかしてしまいたい!
だが抑えろ。
この獲物はオレだけのものではなくなっている。
空中からの牽制も飽和してしまえばそれは牽制でなくなる。
今回の主役はクーチュリエだった。
目を狙ったようだ。
そして針が直撃。
うわあ。
想像したくない。
「グォォォォォォォッ!」
その怒りの咆哮は凄まじいものであったが。
隙だらけだ。
後方から槍を後頭部に突き込んで終了してしまいました。
で、レッサーオーガなんですが。
どうして何も剥げないの?
更に数戦してみる。
もう初見の魔物はいないのかね?
では次だ。
フライの呪文、試してみよう。
ヴォルフと残月は帰還させよう。
ヘザーだけを召喚する。
まずは呪文の対象はオレだけで。
改めて呪文の説明を確認しておく。
飛行可能時間が、概ね280秒、飛行速度は最大で時速134km/hか。
うん?
何か微妙に速度上がってないか?
まあ、いいさ。
先に飛行呪文を使ってみたい。
その為に召喚モンスターを全部、空中位置のメンバーで揃えたのだ。
本当なら黒曜もいたんだけどな。
では。
呪文リストからフライを選択して実行。
さあ、どうなる?
体が浮く感覚。
そして徐々に加速しながら上空へ。
つかさ。
チュートリアルみたいなのってないの?
呪文を継ぎ足す事3回目。
かなり、慣れてきた。
加速と減速は足の位置だった。
閉じれば加速、広げたら減速。
そして進行方向は体の傾きである。
まあなんだ。
慣れてしまえばこんなものか?
これならば両手で武器を扱う事もできそうだ。
無論、呪文も問題ない。
召喚モンスター達は?
無理なく付いて来れるのはヘリックスとクーチュリエだ。
ヘザーと幻月は付いてこれなくはないが、キツそうである。
少し、速度は落とそう。
更に呪文を継ぎ足して慣熟飛行を続けた。
こうなると空中戦も出来そう?
MPバーの減り方は思っていたよりも少ない。
これなら、いけるか?
そんな事を考えていたら早速その機会が。
ヘリックスが魔物の姿を捉えていた。
ここで実戦かよ!
飛行呪文の有効時間は280秒。
5分ないのだ。
どうする?
どうする、オレ?
やるか。
いずれやる事になるのだ。
空中戦も慣れておけ!
獲物が見えた。
インキュバスだ。
オレ達の位置からは眼下にいる訳だが。
こちらに気付いている様子はない。
さあ、空中戦はどうなる?
ヘリックスはオレの目の前で小刻みに揺れている。
次の瞬間。
一気にその姿が消えた。
急降下?
クーチュリエも続く。
オレもまた高度を一気に下げていった。
空中からの奇襲、か。
こんな感じになるのね?
ヘリックスとクーチュリエの攻撃をいきなり喰らった悪魔にオレも襲い掛かる。
空中で悪魔に組み付くと。
裸絞めに極める。
いや。
一気に首を捻ってやった。
そのまま手を離すと地面に墜落していく。
既に悪魔のHPバーは残っていなかったようだ。
地面に降りて死体を確認しておく。
こんなものか?
インキュバスも空中戦だと脆い。
いや、奇襲だったのが効いたのだろう。
空中戦はもう少し、続けてみよう。
結構面白くなってくるかも?
《イベント『森の襲来者達』をクリアしました!》
《ボーナスポイントに2点、エクストラ評価で2点が加点され、ボーナスポイントは合計30点になりました!》
そのインフォは唐突に来た。
空中戦をしている時だったのでちょっとビックリです。
まあ待ちなさい。
このサキュバスを仕留めたら確認するから!
『キースさん、ちょっといいですか?』
「今はちょっと狩りの途中でね。終わったら折り返すよ」
『了解です。待ってます』
イリーナからウィスパーが来てました。
いや、テレパスの呪文か?
もう少し。
翼の関節を砕くのって結構大変なんですよ。
でもその効果は絶大だ。
墜落したサキュバスにヘリックスが止めを刺している。
フライの呪文はいい。
だが万能ではない。
試しに残月を加えてフライの呪文を使ってみたんだが、効率が悪すぎる。
速度がまるで出なかった。
どうもこの呪文はプレイヤー向けのようです。
サキュバスの始末を終えるとテレパスを使う。
何でしょう?
「終わったぞ。どうした?」
『相談です。南方面のイベントも終了、残りは北方面だけらしいんですが、行きます?』
「北には攻略組が多いって話だったかな?」
『ええ』
「手が余っている様なら行った所で獲物がいなくなってるかもなあ」
『ああ、そういう可能性はありますね』
「今、どこにいるんだ?」
『灰色の森です。S3マップのエリアポータルですね』
ほう。
それは都合がいい。
オレの脳裏には別のプランが急速に出来上がりつつある。
「ちょっと待てるか?そこにならすぐに行ける」
『大丈夫です』
テレパスを切るとリターン・ホームの呪文を使う。
ふむ。
アデルを説得するのは恐らく容易い。
その一方で勘が良さそうだからな。
普段通りに振舞えば問題ないと思うが。
イリーナはどうだろう?
恐らくは質問してくると思うのだが。
エサが要るかな?
そうだな、何か彼女達に魅力的な提案があればいいんだが。
エサはアレにしよう。
新しく加わった召喚モンスターをお披露目するのだ。
彼女達の戦力も中々に充実してきている。
スフィンクスやスピンクスが相手ならば、ユニオンを組んで行けば不足はないだろう。
うん。
ちょっとだけ、ハードなだけだ。
ちょっとだけ、だよな?
時刻は午前9時30分といった所か?
灰色の森に到着した。
その様子に変わった所は?
あった。
明らかに召喚モンスターが集まっている一角がある。
いい目印だよな?
「あ!ここです!」
アデルよ。
そう大声出さずとも分かるよ?
アデルとイリーナだけか、と思ったら他にもサモナーがいた。
春菜と此花です。
それにヒョードルくん?
「ども。お久しぶりです」
「あれ?もうここに」
「来れたのは良かったんですけど」
なんとヒョードルくん、ユニオンを組んでいた相方のサモナーが長期に亘ってログイン出来なくなったそうな。
ヒョードルくんの種族レベルは8か。
召喚魔法もレベル8で、同時召喚できる召喚モンスターはまだ3匹だ。
それでここのマップを攻略するのは明らかに厳しい。
北へ向かうなら同行したい、という事らしいです。
「春菜と此花、だったかな?君達はどうしたいのかな?」
「迷ってます」
「私は東の海か、このまま南に行きたいんですけど」
おい。
バラバラじゃないの?
「で、アデルとイリーナは?」
「私は北に行ってみたいんですが」
「クラスチェンジ狙いで経験値稼げるならどこでもオッケー!」
うむ。
アデルは分かりやすいな。
アデルとイリーナはサモナーの職業レベルが14、クラスチェンジ目前だ。
春菜と此花もレベル13に到達している。
そしてヒョードルくんはレベル8になるのか。
行きたい方向もレベルもバラバラ過ぎ!
「キースさんは予定ってあります?」
あります。
ありますとも。
でもね、ヒョードルくんには相当ハードだと思うのですよ。
まあレベルがあと2つ上がれば目処はつくかな?
「やりたい事はあるけどね。南だ。S5マップの攻略になるけど」
「え?」
「はい?」
「えー!?」
互いの顔を窺う面々。
そう不安そうな顔をしなさんな。
慣れてしまえばいいのだ。
その感覚も麻痺してしまえばいいのだ。
「新しい呪文も試したいしな」
「新しい呪文、ですか?」
「うむ。風魔法の呪文でフライだ」
「え?では風魔法がもうレベル15に?」
おお。
意外な所から釣れてる。
釣れてる、よな?
主にアデルと春菜が。
もう一押し、行こうかね?
「それに新しい召喚モンスターも加わったからな。そのレベルアップもしておきたい」
「新しい、ですか?」
「うむ。大サソリだがね。見たいか?」
食い付いた。
アデルと春菜は完全に術中に嵌まっている。
此花もだ。
ついでにヒョードルくんも不安そうではあるが、興味を示している。
イリーナも半分、釣れてるぞ?
「見たい!」
「ここじゃダメだな。サソリと言えば砂漠のような場所でないと」
彼女達の中で何かが囁いている事だろう。
それは悪魔か?
いいえ、彼女達自身の欲望です。
オレはそれを少しだけ刺激しているに過ぎない。
「あ、でも僕だとレベルが低過ぎますね。同行は止めておいた方が」
「うん?どうせレベルならすぐに上がるさ。気にしなくていい」
落ちたか?
落ちたようだ。
イリーナを陥落させたのはアデルであってオレではないが。
結局、サモナー6名で南へと向かう事に。
メンバーが増えたのは想定外だが、問題ない。
むしろ好都合だ。
召喚モンスターを全て帰還させる。
その様子を皆が不思議そうに見ていた。
うん?
ああ、説明が要るな。
「ここからこの6名でパーティを組もう。移動が楽に出来るだろうし」
「え?」
「移動が、楽に?」
「まあ実験だな」
そう。
フライの呪文も対象を増やして行かないと、MPバーへの負担がどうなるのか、感覚的に分からないのだ。
実験だ。
申し訳ないが実験なのだ。
「もしかして、フライの呪文ですか?」
「そうだ」
さすがにイリーナは話が早い。
うん?
そう後悔するような顔をしなくていいぞ?
灰色の森でまずは補給だ。
主に食料を買い込むだけだけど。
買い物をしながらフライの呪文について、出来るだけレクチャーをしておいた。
そして灰色の森を出る。
周囲にプレイヤーの姿は見えない。
さあ。
最初の関門だ。
オレも完全な形で自由自在に飛行できるとは言い難い。
皆さん、上手く飛べますかね?
『凄い!これ凄くいいよ!』
『キャッホー!』
『こらこら、はしゃがない!』
『風魔法、取得して育てるよ!』
うむ。
君達、慣れるのはええよ!
アデルと此花、それにヒョードルは既にオレを上回っているかもしれない。
ヤバいよこの子達。
パーティを組んでいる場合、2回の呪文で全員を対象に呪文を掛ける事が可能だ。
接触は必要ない。
距離も視認範囲であれば大丈夫そうである。
まああまり遠くに離れる事はしなかったが。
慣熟飛行をある程度終えると南へと向かう。
空を飛んで、だ。
さあ、問題は巡航でどの程度、距離を稼げるだろうか?
次の興味はそこにあった。
南へと向かう途中、カナブンの襲撃はあったが華麗にスルーで。
交錯したらあっという間に距離が空いて、パッシブになってしまった。
楽でいいな、これ。
時刻は午前10時30分。
S3マップとS4マップの境界で中継ポータルに一度立ち寄るまで、戦闘はなかった。
マップ半分を飛行するのに大体40分弱で到達した事になる。
速過ぎ!
マップ半分、と言えば、W2マップの風霊の村から南の洞窟までが相当すると思うが。
残月での移動では戦闘時間を除けば1時間はどうしてもかかる。
ほぼ倍の速度かな?
それだけで凄いです。
オレのMPバーの消費はどうだ?
単独でオレだけに使うのと比べたら減りは確かに大きい。
だがそれでも大した負担にならないようだ。
では実験の続きだ。
「じゃあ各自、2匹ずつ召喚しておいてくれるかな?サモナー2名で1つのパーティを組む」
「はい?」
「え?地上を行くんですか?」
「空だよ。そうそう、召喚モンスターは飛行できるタイプ限定でね」
「はあ」
「ヒョードルくんは私と組もう」
実験内容は?
それはユニオンを組んだ状態でフライの呪文の効果が同様に発揮できるかどうか。
検証はしておきたいよね?
オレが召喚したのはヘリックスとクーチュリエ。
ヒョードルくんは鷹とフクロウ。
うむ。
無難ですな。
アデルはフクロウのふーちゃん、ホークのたーちゃん。
イリーナはバトルホークのスカイアイ、フクロウの白夜。
春菜と此花は共に鷹とフクロウ。
いや、ファイティングファルコンとオオフクロウが1匹ずつ混じってます。
さすがだ。
「この先のS4マップに何が出るか、知っているかな?」
「フロートヘッドにパペットツリー、それに手長魔猿、ですね」
「あ。もしかして」
「そう、もしかしなくても空中で襲われるとしたら何が来る?」
「フロートヘッド、ですね」
「そうだ。で、あの生首なんだが、たまに宝石が剥げるんだがな」
「はあ」
「目を瞑ったら特殊攻撃が来る。そこに気を付けてくれ。基本、袋叩きにしてやれば詰むだろう」
「キースさん、生首って」
イリーナよ、ツッコミ入れる所はそこなの?
まあいい。
出来ればS5マップまで、ノンストップで行きますよ?
飛び立って約10分後。
生首襲来。
こいつめ、意外に速い!
追い掛けられているのですが、徐々に距離を詰められている。
だが全速力で追って来ている間は例の特殊攻撃を仕掛けて来ない。
それだけが有難いな。
『どうします?』
「迎撃するさ。もう少し待て!」
何故ならば。
フライの呪文の継ぎ足しを気にしないといけない。
それに空中戦だしな。
「フライ!」
3名分を2セット、継ぎ足ししておいて、と。
「攻撃開始!」
『はーい!』
『行きます!』
戦列が一気に分散する。
そしてオレは猛禽類の恐ろしさを間近で見る事になった。
ホラーだ。
目を狙っている。
明らかに狙っている。
そして潰しにかかっている。
怖いな、お前達!
生首の死体は湿地に半ば埋まっている。
攻撃魔法なしでありながら派手な空中戦だった。
ホラーでもあったけど。
生首は血達磨になって仕留められていた。
オレの出番?
槍で数撃、突いたように思うが、やはり主役は猛禽類の面々だ。
これは否めない。
春菜がフライの呪文を上手に調整しながら剥ぎ取りナイフを突き立てる。
そしてその手にはオパールが。
解せぬ。
何故、一発で剥げるのか?
『このままフロートヘッドを狩りたい気分!』
『無理言っちゃダメよ?アデルちゃん』
うん。
オレのMPバーが枯渇しちゃうかもね?
それにしても生首は脆かった。
森の中では襲われる立場だったが、襲う立場だとこんなものか?
フライの呪文って便利すぎる。
だが。
あのスフィンクスやスピンクスには通用しそうにないな。
特殊攻撃を封じるにしても手が要るだろう。
空中戦だと逆に全体攻撃に対応しきれない恐れがある。
むしろ地上戦で迎撃した方がいいかも知れない。
それに、だ。
地上戦でもっと別の戦い方が出来るかもしれない。
以前に戦った際、封印術を試すだけの余裕がなかったからな。
人数が増える分、得られる経験値が低くなるが、連戦は可能になるだろう。
夜の連戦だって出来るかも?
目論見通りであれば、なのだが。
S4マップでは生首を4体、空中戦で仕留めて、宝石は更にトパーズ2個が追加されました。
取得効率、高過ぎじゃね?
解せぬ。
時刻は午後0時20分。
S5マップに到着しました。
途中で戦闘がなければもっと早く辿り着いていただろう。
だがここは当然、インスタント・ポータルで昼飯休憩だ。
「本当に砂漠だー!」
「アデルちゃん、それを言うならS5マップまで来た事に驚かないと」
「まずは休憩、ですね?」
「無論だ。休憩後、ここからは地上を移動するから」
「え?空中はダメなんですか?」
「厄介なのがいるからなあ」
まあそのうち分かりますから。
あの魔物と戦闘になるのは不可避だろう。
何故ならば。
オレがコール・モンスターで呼び寄せる予定ですから。
さて。
文楽に6名分の食事を用意させておいて、と。
約束通り、大サソリのペプチドをお披露目しておきました。
「おお!これってレア?」
「十二宮殿の所で出現するけど、召喚モンスター候補には加わらないわよね?」
「キースさん、ここにいるんですか?」
「ああ。昼間は土の中にいて襲ってくるタイプだな」
「夜は?」
「移動しながら襲ってくるな」
「いずれにしても要注意、なんですね」
「まあね。それよりもログアウトして戻って来るように。食事を終えたら出発するからな?」
「「はーい!」」
全く、君達。
ヒョードルくんを見習いなさい。
ピョコンと一礼を残してログアウトして行く。
有言実行でも不言実行でもいいが、実行が伴えばいいのです。
では。
皆がログアウトした所で先に布陣を変更しておこう。
ペプチドは帰還させて、と。
ヴォルフと残月を布陣に加える。
本日の目標は?
無論、S5マップのエリアポータルです。
同行者
アデル&イリーナ&春菜&此花&ヒョードル




