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師匠の家に戻ったのは午後1時。
だが師匠達は戻ってきていない。
問題ない。
作業の続きを進めよう。
残月を帰還させて再び文楽を召喚する。
マナポーションから行こうか。
マナポーションを短縮再現で作成するにしても限界はある。
そう、原料がないと当然作成はできない。
マジックマッシュルームが尽きようとしていた。
苦悶草はまだ十分にあるが。
仕方ないので作れる所まで作成し、マジックマッシュルームの残りカスをパイロキネシスで焼却した。
苦悶草の残りカスは別に残しておこう。
では次はどうするか?
瓶作成でもやっておこうかね。
おかしい。
師匠達の帰りが遅いな。
時刻は午後5時になろうとしていた。
時間を忘れて作成をしていたら空瓶の数が凄い事になってますが?
仕方がない。
空瓶作成は一時中止だ。
ポーション作成に移行しよう。
MPバーもまだ6割ほど余らせている。
作業途中でマナポーションでMP回復をしていたからな。
余裕は十分だ。
《これまでの行動経験で【水魔法】がレベルアップしました!》
《【水魔法】呪文のエンチャンテッド・アクアを取得しました!》
《【水魔法】呪文のフラッシュ・フラッドを取得しました!》
短縮再現を繰り返しているうちに水魔法までレベルアップしてきたか。
フィジカルエンチャント・アクアも短縮再現で使っている記録に入ってるからな。
まあ呪文が増えたのは助かる。
もう夕食の時刻が迫っている。
仕方がないな。
文楽には食事の用意をさせよう。
オレは小休止のついでに持ち物の整理でもしておこうかね。
食事の時刻も過ぎてしまった。
師匠とジュナさんの分も作っておいたんだが。
仕方がない。
メタルスキンに残った料理は預けておこう。
外に放っていたヘリックスを呼び寄せて帰還させ、ジーンを召喚する。
黒曜と同様、外で遊ばせておこう。
昨日のように庭で対戦、というかトレーニングをしてもいいのだが。
今日は作業場で師匠達を待っていたい気分であった。
ポーション用の瓶作成を続ける。
今度はMPバーの消費は考慮しなかった。
どうせ後は寝るだけだ。
それだけに凄い数を短縮再現で作り上げてきている。
《これまでの行動経験で【ガラス工】がレベルアップしました!》
早い、よな?
昨日から果たしてどれほどのガラス瓶を作っていた事か。
まあその殆どは錬金術のメイキング技能で強引に作り上げてきたものであるのだが。
空瓶がちょうど300本、溜まるまで作業を進めて、次はポーションの作成だ。
こっちは10本単位だからそう時間も掛からないだろう。
《これまでの行動経験で【薬師】がレベルアップしました!》
おっと。
もしかしてヤバいかもしれない。
品質Cに拘って作成を進めるのであれば、レベルアップは品質が良い方向に変動する可能性がある?
まあそこは気にしないで進めてしまおう。
なぜならば、ある予感がある。
マナポーションでMPを回復させながら作業に没頭し続けているのだ。
短縮再現で【ガラス工】【薬師】とレベルアップしているのであれば次は何だ?
《これまでの行動経験で【錬金術】がレベルアップしました!》
そう。
これがレベルアップするのも必然だ。
夜も遅いのだが不気味な笑い声が自然と口から漏れてしまうな。
だがそれで終わりではない。
《これまでの行動経験で召喚モンスター『文楽』がレベルアップしました!》
《任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》
ポーション液の補充をしている文楽もレベルアップ、と。
地味な所でレベルアップしちゃったなあ。
今の作業なんかは器用値の無駄遣いに感じられるんだが。
おっと。
文楽のステータス値で既に上昇しているのは器用値だ。
もう1ポイント分はステータスアップは精神力を指定しておく。
文楽 ウッドパペットLv5→Lv6(↑1)
器用値 27(↑1)
敏捷値 10
知力値 19
筋力値 12
生命力 12
精神力 10(↑1)
スキル
弓 料理 魔法抵抗[微] 自己修復[微]
スキルが4つだけと寂しくはあるが良しとしよう。
クラスチェンジに期待だ。
師匠達が戻ってくるのを外にいる黒曜とジーンが察知したようだ。
ジュナさんのスレイプニルに2人とも騎乗しているようだが。
時刻は午後11時。
オレは回復丸を作り終えた所だった。
「あらーキースちゃんったら、こんなに遅くまで待っててくれたの?」
匂うぞ。
間違いなくアルコールが入っているな。
ジュナさんの様子は普段と変わってないように見えるのだが、足元がやや定まっていない。
「おお、まだ起きとったのか」
師匠の方はまだ分かり易い。
顔が赤くなるんですね。
ふむ。
お楽しみだったのですね、分かります。
「ドワーフと飲み比べとか無謀ー」
「ワシは止めましたぞ?」
「んー」
「ささ、荷物は先に出しておきましょう」
「分かってるってー」
「すまぬが机の上を空けてくれるかの」
「はい」
作業台上の道具を片付けると、ジュナさんが《アイテム・ボックス》から空瓶を取り出していく。
凄い数だ。
ポーション用、それにマナポーション用の空瓶が次々と。
つか混ざってて分かり難いな。
メタルスキンが選り分けていくのをオレと文楽も手伝った。
数は恐らく、各々が400本以上はあるかな?
どうなっている?
「すまぬが棚に収めておいてくれ」
「はい」
これも手分けして棚に移動させていく。
恐らくは、何かしら依頼を受けたのだろうが、この量は一体?
「これ、依頼ですか」
「数に上限なしでな、冒険者が集まる機会を前に出来るだけ数を揃えたいそうじゃ」
「で、納期は?」
「大会開催中に可能な限り、じゃのう」
ジュナさんはいつのまにか作業台に顔を伏せて寝てしまっている。
天下泰平。
そんな言葉が頭に浮かんだ。
幸せそうで何よりです。
「客室に連れて行け。慎重に、じゃ」
メタルスキンがジュナさんを抱える。
お姫様だっこだな。
「むー、キースちゃんの方がいいー」
問答無用でお断りです。
メタルスキンにそのまま運ばれちゃって下さい。
つか起きてたんかい!
ジュナさんはブツブツと何やら文句をいいながらも物言わぬメタルスキンに運ばれてしまっていった。
いい仕事をしているな。
食べる機能があったら色々と奢ってあげるんだが。
「これはまた結構な数を作ったようじゃな」
師匠は棚に並べてあるポーションとマナポーションを眺めていく。
品質Cで揃えたものとそれ以外のものは分けてある。
「こっちはそのまま納品できるの」
「そうですか」
「ルグランからせっつかれておるでな。明日も瓶作成を頼めるかな?」
「まあ、なんとか」
「うむ。ではこっちの品は全部お主が使ってよいぞ」
師匠が品質C以外のポーションとマナポーションを杖で指し示す。
まあある意味、目論見通りなんですが。
暫くはポーションも、そしてマナポーションにも不自由する事はないだろうな。
「すまんの、お前さんも大会に出る前じゃし鍛錬しておきたいのであろうがの」
「平気ですから」
「まあ続きは明日にしておこうかの」
師匠も眠たそうだな。
ゆっくりと地下へ降りていく。
オレも休んでおこうかね。
再びログインしたのは午前6時。
MPバーも全快している。
明日は早くも予選か。
慌しい事だ。
今日はどうするか?
師匠の手伝いで、というのはもう決めてある。
ポーションはさておき、報酬代わりに貰えているマナポーションは実に魅力がある。
品質Cをわざと外したくなる程だ。
おっと。
召喚を先にしておこう。
文楽、ヘリックス、黒曜、ナインテイル、クリープと召喚していく。
さて。
参りますか。
作業場では早くも作業が始まっていた。
ジュナさんも師匠もマナポーションの作成のようだ。
メタルスキンが出来上がっていくマナポーションを次々と棚に収めていく。
つか棚がもうそろそろ埋まりそうな勢いだな。
「おはようございます」
「あら、おはよー」
「うむ」
師匠は真剣な表情を崩さない。
しかしまあ、あれだ。
昨日、オレがマナポーション用に作っておいた空瓶が殆どなくなってきてますが?
オレと文楽が瓶整理を引き継いだ。
メタルスキンは作業場から退出した。
食事を作るためだろう。
「こっちは終了しましたぞ?」
「今やってるので終了ー」
なんと。
ザッと【鑑定】してみたが品質Cから外れた物がほぼない。
作成されていく中では1本だけしか品質C+を見なかったぞ?
「食事を終えたら納品に行くのでな。瓶の作成を進めておいてくれ」
「はい」
「今日は昨日みたいに遅くならないと思うわよ?」
「師匠、巡検使は放っておいていいんですかの」
「へーきへーき」
しかしまあ、なんだ。
昨日は酔っ払っていたんだよな?
よく騎乗したまま戻ってこれましたね?
酒酔い運転はダメですよね?
おっかない事をするなあ。
棚にあるポーションとマナポーションをジュナさんと師匠が次々と《アイテム・ボックス》に放り込んでいく。
まるで魔法だ。
いや魔法のある世界なんだから問題ないのか。
「では食事じゃな」
メタルスキンが料理を運んできていた。
昨日、文楽が作っておいた料理に少しメニューが追加されている。
食材を無駄にしないのはいい事だな。
食事の間はジュナさんの独演会に近い状況になっていた。
こういっちゃなんですが、愚痴大会ですね。
槍玉に挙げているのは巡検使の代表となっている王族だった。
そして本国のお偉いさんも。
どうやら冒険者ギルドに先行して探索を進めさせているのは、とある王家の意向のようだ。
王家は支援を行う。
冒険者ギルドは冒険者たちを送り込む。
どうも送り込まれる冒険者、というのがプレイヤーという事になるのかね?
愚痴は続く。
言ってしまえば冒険者を目指すような輩は王家にとっては始末の悪い連中に見えるようだ。
王権に従おうとしない存在。
領内の魔物を討伐してくれているから見逃しているようなものだ。
そうでなくとも犯罪者のような者も紛れ込んでいるようなのだから、元々が受けも悪いようだが。
冒険者ギルドがこの大陸に進出したのは王家との妥協の産物であったようだ。
かつて、巨大な領土を有しながら、魔物によって滅ぼされた帝国領土。
即ち、海の彼方の大陸を探索する事だ。
このゲームの舞台そのものになってる訳か。
冒険者ギルドは人を出す。
王家は金と資材を出す。
そういった取り決めで50年近くが経過。
数は少ないものの、移民も進んできている。
王家は定期的に巡検使を派遣し、探索の進捗状況を調べているのだとか。
だが今回は毛色が違っているようである。
巡検使のトップが王家の人間だからだ。
「あれをここの領主にしたがってるバカ共が多いみたいなのよねー」
「バカ共?」
「そのバカ共と付き合いたくなくての。ワシはこっちにおる訳じゃが」
「ねー私の代わりに枢密顧問やってくんないかな?私ってばここが気に入っちゃった!」
「お断りですな」
「宮廷魔術師が嫌いだったのかしら?」
「知れた事ですのう」
「私も!あと王家の連中も!ちっちゃい頃は可愛かったのにー」
領主、ね。
確かにそういった存在は見た事も聞いた事もないな。
王族、ねえ。
王権支配を強めるだけの価値があるのかどうか。
それを見に来ている、とか?
運営の仕掛けなんだろうな。
間違いない。
「師匠が大会開催をそそのかしたのは何故ですかのう?」
「ひーみーつー」
これも謎だ。
運営の仕掛けか?
こっちは自信ないです。
では作業だ。
今日は師匠の指示で、マナポーションの空瓶を重点的に作る事になった。
無論、短縮再現を駆使してだ。
MP回復にマナポーションの使用も許可を貰っちゃいました。
無論、品質C以外なら、という条件付であるが。
師匠達はポーション作成をサクサクと進めていく。
メタルスキンと文楽が空瓶に次々と液を注いでいった。
1時間ほどで大量のポーションが作成され、あっという間に師匠達の《アイテム・ボックス》に消えていく。
こう言っては何だが恐ろしい速度だ。
「では、レムトに行って来るでな」
「瓶作成は任せた!」
あっという間に納品に出掛けてしまった。
ふむ。
静かになるとそれはそれで寂しくもあるなあ。
おっと。
瓶作成だ、瓶作成。
倉庫からメタルスキンと文楽と原料を運び込むと作業を開始した。
昨日と比べて、少しは効率が良くなっているだろうかね?
昼食を挟んで瓶作成を続ける。
昨日【ガラス工】に【錬金術】がレベルアップした成果なのか、短縮再現で減るMPバーの幅が少なくなってる?
いや、数をこなさないと分からない差なのだが。
《フレンド登録者からメッセージがあります》
誰かな?と思ったらリックでした。
『つい先刻、不動が武器2点を作成しました。申し訳ありませんが、受け渡しは明日レムトの町でどうでしょう?』
ほう。
出来上がったのね。
無明用の槌はいいにしても、護鬼用の片手斧が間に合ったのは良かった。
データは添付されてないが、まあお楽しみって事でいいだろう。
了解、という事でメッセージに返事をしておく。
全ては明日だな。
時刻は午後3時。
ようやく師匠達が戻ってきました。
「おお、かなりの数が出来たの」
「じゃあ始めるわよー」
マナポーション作業が始まった。
さすがに2人がかりでマナポーション作成ともなるとペースが速い。
「急ぐんですね」
「さっさと終わらせて大会見物をしたいのでな。文句は言わせんぞ」
「遊ぶための努力は惜しんじゃダメなのよー」
なるほど。
行動は立派だな。
目的意識には大いに疑問はあるが。
オレは引き続き瓶作成だ。
師匠とジュナさんがマナポーション作成。
それは夕食を挟んで延々と続くように思われた。
《これまでの行動経験で【ガラス工】がレベルアップしました!》
午後9時頃にガラス工がレベルアップしたが、構っている余裕はない。
空瓶がなくなりつつある。
いや、作り溜めてあるから、50本以上は余裕はあると思うのだが。
もう何度目かのマナポーションでMPバーを回復させながら驚愕せざるを得ない。
師匠も、ジュナさんも、マナポーションを使っていないのだ。
どんだけ余裕なんですか、この人達って。
午後11時になってようやく作業は終了した。
「ふむ。こんな所でよいじゃろう」
《NPC依頼のサポートによりボーナスポイントに2ポイントが加算されます。合計で27ポイントになりました》
あれ?
ボーナスポイント、増えちゃいました。
それに品質C以外のマナポーションも少し増えたんだが。
いいんですかね?
まあ貰えるものはありがたく貰っておこうか。
有効利用できてないけど。
「明日は朝食を摂ってから一緒にレムトに行こうかの」
「はあ」
「まあ普段通りの時刻に起きてくるんじゃな」
「分かりました」
そうか。
もう明日なんだよな。
大会前にトレーニングをもう少しやっておきたかったが、出来なかったか。
まあそれも仕方ないよな。
「明日からはワシはルグランの所に泊り込む事になるじゃろ」
「私はゲルタちゃんトコに行くー」
「ま、お主は好きにして良いぞ」
はあ。
まあ元々、そのつもりですけどね。
師匠達とは作業場で別れてオレはログアウトする事にした。
もう夜も遅い。
明日の試合は10時だったかな?
開会式はまあ間に合わなくてもいいし、気は楽だな。
そう。
気を楽に持とう。
普段通りでいいのだ。
平常心、平常心。
主人公 キース
種族 人間 男 種族Lv16
職業 グランドサモナー(召喚魔法師)Lv2
ボーナスポイント残 27
セットスキル
杖Lv13 打撃Lv10 蹴りLv10 関節技Lv10 投げ技Lv10
回避Lv10 受けLv10 召喚魔法Lv16 時空魔法Lv8
光魔法Lv9 風魔法Lv10 土魔法Lv9 水魔法Lv10(↑1)
火魔法Lv9 闇魔法Lv9 氷魔法Lv7 雷魔法Lv7
木魔法Lv7 塵魔法Lv7 溶魔法Lv7 灼魔法Lv7
錬金術Lv8(↑1)薬師Lv7(↑1)ガラス工Lv6(↑2)木工Lv6
連携Lv12 鑑定Lv12 識別Lv12 看破Lv4 耐寒Lv6
掴みLv9 馬術Lv9 精密操作Lv12 ロープワークLv1
跳躍Lv5 軽業Lv2 耐暑Lv7 登攀Lv6
二刀流Lv9 解体Lv7
身体強化Lv7 精神強化Lv8 高速詠唱Lv10
魔法効果拡大Lv7 魔法範囲拡大Lv7
装備 呵責の杖×1 呵責のトンファー×2
呵責の捕物棒×1 怒りのツルハシ+×2 白銀の首飾り+
雪豹の隠し爪×1 疾風虎の隠し爪×2 雪豹のバグナグ×1
草原獅子のバグナグ×1 闘牛の革鎧+ほか
呵責の腕輪+×2 呵責の足輪+×2
暴れ馬のベルト+ 背負袋 アイテムボックス×2
所持アイテム 剥ぎ取りナイフ 木工道具一式
称号 老召喚術師の高弟 森守の紋章 中庸を知る者
呪文辞書 格闘師範
文楽 ウッドパペットLv5→Lv6(↑1)
器用値 27(↑1)
敏捷値 10
知力値 19
筋力値 12
生命力 12
精神力 10(↑1)
スキル
弓 料理 魔法抵抗[微] 自己修復[微]




