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《フレンド登録者からメッセージが3件あります》
ログインするとベッドの上だ。
干草の匂い。
二度寝したくもなるが、オレには意味はない。
今日はどうするか?
納品は師匠達が行くようだが。
付いて行ってもいいのだが、ここに残って色々と作成するのもいいだろう。
さて。
メッセージは誰からかな?
マルグリッドさん、アデル、イリーナからのようだが。
『宝石2個、磨き終えました。本日、風霊の村を出てレギアスに向かう予定です、どこかで受け渡せないかな?』
おおう。
そう言えば依頼品の受け渡しが不便だよな?
テレパス、使おうか?
いや、時刻は午前6時といった所だ。
ミーティング前だろうし自重しとこう。
メッセージでこっちに来てる事だけ伝えておく。
レギアスの村ならここからも比較的近い。
昼飯時にでも再度連絡してみてもいいだろう。
で、アデルのは何だ?
『大会前日から夕食を兼ねてサモナー同士でオフ会みたいな事をします!是非参加してね!』
添付ファイルは案内か。
つか大会期間中は朝も夕方もやる気か?
バーベキュー大会みたいなノリになってます。
で、イリーナのは何だ?
『追記です。召喚モンスターでまだ見ていないようなのもいるかもしれませんよ?』
そして添付ファイルは召喚モンスターの一覧であった。
確かに、オレが把握していないのがいるな。
ビッグクラブ(大蟹)、マーメイド(人魚)、シースネーク(海蛇)か。
水棲モンスターはオレの召喚モンスターの中にはいない。
海のある東方面はまともに探索してないからな。
参加しておく意味はあるだろう。
アデルとイリーナには時間があれば顔を出す、とだけ返事をしておこうか。
さて。
召喚するのは何にするかね?
ヘリックスと黒曜を召喚すると、そのまま窓から外に放した。
文楽、ヘザー、ナインテイルを召喚しておこう。
まあ何にせよ、作業場に降りてみるか。
僅かに酒の匂いが残っているのが分かる。
ここで飲んでたのか?
まあいいけどさ。
メタルスキンが既に朝食の用意を済ませていたようであった。
作業台の上は食事の用意がしてある。
ジュナさんは既に椅子に座って何やら呟いているんですけど。
ちょっと、怖いです。
師匠は瓶の残りを確認しているようであった。
「おはようございます」
「おはようさん」
「おお、早いの」
揃った所で朝食となった。
恐ろしい事に、ジュナさんの会話が途切れているように思えない。
よく、喋る。
なのに料理がちゃんと減っている。
謎だ。
何か呪文でも使っているんだろうか?
「どうせまた色々と作成依頼を受ける事になるじゃろ。お主は残って瓶作成を頼む」
「はい」
「傷塞草は十分にある。瓶作成がある程度進んだらポーション作成もええじゃろ。まあその辺は任せる」
「了解です」
「では師匠、行きますぞ」
「行ってくるわねー」
家の外まで見送る事にしました。
ロック鳥で移動するとか、派手な事はしないと思うのだが。
それでも何を召喚するのかは興味がある。
バトルホース Lv.9
召喚モンスター 待機中
戦闘位置:地上
移動は馬ですか。
まあそうすべきですよね。
ジュナさんと2人乗りで行くのかな?
スレイプニル Lv.???
召喚モンスター 待機中
戦闘位置:地上
いや。
別の馬が召喚されている。
ジュナさんが召喚したその馬なんだが、レベルが見えない。
つまりそれだけ上位の存在って事なのだろう。
しかし、何だ。
脚が8本とか、まともに駆ける事ができるんだろうか?
体躯は師匠のバトルホースよりも更に大きい。
まるで農耕馬かのような感じがする。
体毛は赤毛のようにも黒毛のようにも見えるが、なんといっても迫力が凄い。
それなのにジュナさんには極めて従順のようだ。
器用に跪くと、ジュナさんが騎乗し易くするし。
「じゃあ行きましょう!」
「元気ですな」
師匠は諦めきった顔をしている。
もうね。
見えない首輪とリードがオレには見えます。
「では、後は任せた!」
「それ、ワシの台詞なんですがのう」
まあ、なんだ。
やれる事をやろうかね。
作業は空瓶作成からだ。
無論、この場合は品質Cに揃える必要がある訳だが、瓶だけならそんなに気にする事はない。
錬金術の短縮再現で原料から直接、次々と作っていく。
文楽は机上に並べるだけだ。
MPの消費は当然だがある。
だが気にしない。
棚にはマジックマッシュルームも苦悶草もあるのだ。
マナポーションを作ってMP消費分を補充したらいいのだ。
そう思っていたら気が楽で済むよね。
《これまでの行動経験で【風魔法】がレベルアップしました!》
《【風魔法】呪文のエンチャンテッド・ウィンドを取得しました!》
《【風魔法】呪文のワールウィンドを取得しました!》
そう。
短縮再現で使っているのはメイキング技能の作業記憶で記録したものだ。
その中にはエアカレント・コントロールで息の吹き込みを調整している事も含まれる。
不思議な感覚だが、ちょっと儲けたような感じがするよな?
呪文は以前に報告書で読んだ奴だな。
大会で果たして使う機会があるだろうか?
作業を続けよう。
さて、実際の瓶作成は1個単位での作成である。
短縮再現で作成できるのも当然1個だけだ。
時間が短縮できるとはいえ、100個単位を作り上げるのにも時間がそれなりにかかる。
ポーション瓶300個を作り上げるのに1時間ほど掛かった。
MPバーは2割ほど削られてしまったか。
だがそれも以前に比べたらかなり効率が良くなっている。
これは嬉しいですな。
次はマナポーション瓶の作成だ。
同じく300本、作成するまで1時間ちょっとで作り上げてしまう。
机上は瓶で埋まり始めていた。
今度は瓶の中身の補充、だな。
先にポーションから行こう。
品質Cで揃うように傷塞草5本でポーション10本分、作成を進めていく。
リキッド・ウォーターで水を一気に溜めておき、短縮再現で次々と作成していく。
液の補充は文楽の担当だ。
こっちの方は効率がいいな。
30分程で300本のポーションが出来上がっていく。
但し、完璧ではない。
品質Cを外れて、品質C+が4本ほど出来上がってしまった。
無念である。
出来上がったポーションを棚に移して机上を整理すると、回復丸も作っておく。
全部で30個だ。
これもあっという間に出来上がっていく。
品質Cで揃っているのも好感触だ。
では次だ。
マナポーションの作成と行こう。
その前にMP回復にマナポーションも使っておこう。
MPバーは5割ちょっとになっていたのが6割ほどに回復した。
さて、もう少し頑張ってみようかね。
マナポーションは苦戦しました。
3個単位で短縮再現をしていくのだが、品質Cに揃えるのが大変です。
昼前までに品質Cを100個までは作れたものの、品質C-と品質C+が7本づつ出来上がっている。
ある意味、不良品になる訳だが。
これは分けて棚に移動させておいた。
品質C-のマナポーションでMP回復をしておいて作業を中断。
昼飯にしよう。
《運営インフォメーションが2件あります。確認しますか?》
文楽と師匠のメタルスキンが料理をしている合間にインフォが来てました。
何ですかね?
《闘技大会申し込み終了!参加人数が満数となりました!》
《闘技大会参加者へのお知らせ》
おお。
もう満数になったのか。
今回は早かったな。
《闘技大会への参加申し込み人数が満数に達しました!参加者各位には別途、個別に試合日程を通知します》
1通目の内容はこれだけだ。
そうなると次は日程連絡なんだろうな。
《キース様へ:第一回戦は予選初日10時00分、新練兵場A面で開始の予定です》
メタルスキンが机上に並べた食事を摂りながら、今更だが大会要綱を眺めていく。
脳内ではどう戦闘を展開するか、想像してみる。
そう、普段から他パーティの戦いぶりをそう多く見ている訳ではない。
数は少ないが、金剛力士と戦っている様子を観戦した程度なのだ。
個人戦とは、違う。
パーティを組んで戦う、という事は、メンバー同士の弱点をカバーし合えるのは当然だ。
前衛は後衛の支援を受けて戦いに専念できる。
後衛は前衛の後方から安定した戦果を上げていく事だろう。
ではオレの場合はどうだ?
後衛に、となるとオレと護鬼って事になるのか。
だがそんな戦闘スタイルではない。
速攻か。
速攻、だよな。
それが似合っている。
呪文と武技、その両方にどう対応するのか、そこが鍵になるかな?
それに互いの距離だ。
間合いを詰めるにしても呪文1発は十分に使える余裕はあるだろう。
そう考えると楽しくなってきた。
召喚モンスターはそれぞれが強力な能力を持っている。
だがその能力を封じられる可能性、となるとやはり呪文が障害になるだろう。
スペル・バイブレイトがレジストされなければいいんだが。
オレ自身の場合は?
警戒すべきは武技、だろうな。
いきなり飛んでくる武技をどう凌ぐか。
回避できれば無論いいのだが、今度はチーム戦だ。
1発だけ避ける事は出来るかもしれない。
2発連続、ともなると難易度が一気に跳ね上がるだろうな。
つかそういった経験がないんで、想像なんだが。
《フレンド登録者からメッセージがあります》
食事の片付けが終わった所でメッセージが来てました。
マルグリッドさんだ。
『森の迷宮で食事中です。もうすぐ出発だから、1時間とちょっとでレギアスの村に到着すると思います』
ほう。
早いな。
じゃあこっちも先にレギアスの村に行って待っていようかね?
レギアスの村で待ってます、と返信しておこう。
生産作業が続いていたし、息抜きも必要だ。
文楽を帰還させて残月を召喚する。
ここからなら30分とちょっとでレギアスの村まで到達できるだろう。
「じゃあ後はよろしく」
師匠のマギフクロウに挨拶をしておいて出立する。
たかが宝石2つ。
されど宝石2つ。
戦力向上になるのは間違いない。
レギアスの村の入り口で待っていたら、知った顔が大挙して来てました。
与作がいる。
アデルとイリーナもいる。
つかいくつのパーティで移動して来たんだ?
どう少なめに見ても7つか8つのパーティがいるんじゃね?
「来たぞー!」
レイナも、いるな。
声だけで分かるってどうなのよ?
挨拶もそこそこに腰を落ち着かせるために屋台のある一角に移動する。
生産職のプレイヤーズギルドの別メンバーがいるらしい。
生産職組は村の入り口で別れてそこに移動するようだ。
与作のパーティは村の外の樵小屋へ。
攻略組は宿屋でログアウトする者もいれば村の外に狩りに行く者もいるようだ。
アデルとイリーナは宿屋に直行、ログアウトするようだな。
オレは無論、生産職の面々に付いて行く。
宝石を受け取らないといけないし。
「少し落ち着かせてね」
「はい」
屋台裏で椅子に座ると机周りにも各員が腰を降ろしていく。
その中にフィーナさんはいない。
サキさんもいないな。
マルグリッドさん、レイナ、リック、優香、不動、ヘルガでパーティを組んでいるらしい。
「フィーナさん達は留守番ですか?」
「ええ。村の開発も手を抜けませんから」
「私達は大会をライブで見に行くよ!」
オレの隣に座り込んだのはリックだ。
彼は商人らしく、西で得たアイテムを売るのと同時に、村に必要となる各種資材を買い付けに来ているそうだ。
抜け目ないな。
「なんと言ってもポーションとマナポーションですね。風霊の村でもポーション作成してますが足りなくて」
「なるほど」
運営の誘導もあるんだろうな。
大会に向け、大量のポーションとマナポーションをレムトに用意しておく。
そうすればプレイヤーも買い込んでくれるに違いない。
まだ探索や攻略の最前線に安定供給できるような状況じゃないしなあ。
そうだ。
アレ、見せておこうかね。
「ところでこんなアイテムがあるんだけど」
《アイテム・ボックス》から取り出したのは山で得た奴だ。
【素材アイテム】雪獣人の骨 原料 品質C+ レア度4 重量1
ウェンディゴの骨。大きいサイズの割りに軽くて丈夫。
【素材アイテム】雪獣人の皮 原料 品質C+ レア度4 重量4
ウェンディゴの皮。分厚くて硬いので加工し難い。
骨は3つ、皮は2つある。
何かに使えないものかね?
「骨に皮、ですか」
「何か装備にできませんかね?」
「まあその前に。イベント絡み、ですね?」
「まあそうですね」
リックも苦笑するしかないようだ。
周囲の面々も興味を示してくる。
「骨!これは響音の槌と同じパターンじゃないかな?」
代表してレイナが叫ぶ。
そして視線はある男に集まった。
不動だ。
そう言えば彼って鍛冶師だったっけ。
「今日は確かに時間は余ってるけど、今から鍛冶作業しろって?」
「そこはそれ、村の設備を借りたらなんとかなるって!」
「いや、その前にこのアイテムはまだキースさんのなんだけどね?」
今度はオレに視線が集まる。
もうね。
まあ大会に向けて装備の強化も悪くはないか。
護鬼の片手斧とか、いいかもしれない。
「2本は依頼って事にできますかね?1本は売りましょう」
「不動、どうかな?」
「納期は設備の空き次第。空いてたら今日中に作れるよ」
「何を作りますか?」
「片手斧を優先で。もう1本は槌で」
「不動、いいかい?」
「鍛冶場に行って来る。精錬するにしても少し時間が要るし」
「リック、私もヘルプに行くわ。興味あるし」
「頼んだ」
不動とヘルガは雪獣人の骨を3つ受け取ると去っていく。
移動してきたばかりなのに大変ですね。
骨はいいとして。
皮はどうするかね?
「これはサキさんに相談したいですね」
「難物ですか?」
「レギアスの村にレザーワーカーはいますが、このレア度の皮だと失敗のリスクが高すぎますね」
「ダメですかね」
「なめしに時間がかかりますし大会には間に合わないでしょう」
ダメか。
まあそこは仕方がない。
雪獣人の皮は保留だな。
戦鬼あたりの防具に出来そうだったんだが。
「じゃあ私の用件の方ね」
マルグリッドさんが宝石を2つ取り出した。
【素材アイテム】ツァボライト+ 品質C+ レア度3 重量0+
緑色のガーネット。赤色系のガーネットよりも希少価値がやや高い。
透明度の高いものは魔法発動用に人気があり高額になり易い。
楕円状多角形に整形し研磨され、銀の台座に嵌め込まれている。
[カスタム]
台座に呪符紋様『菱』が刻まれている。
2つとも品質C+で揃っている。
これは呵責の足輪にセットしてみようか。
【装飾アイテム:足輪】呵責の足輪+ 品質C+ レア度3
AP+6 重量0+ 耐久値150
魔力付与品 属性なし
獄卒の足輪。何かの金属。特性は銅や銀に似ているようだ。
装備された足には亡者を呵責する力が宿ると言われている。
[カスタム]
ツァボライトを嵌め込んだ台座を連結して強化してある。
「どう?」
「いい感じですね」
「そう、良かった。大会には出るんでしょう?」
「え?」
「大会前に装備を整えたがるのは誰もが一緒なのよね」
ありゃ。
これは引っ掛けでしたか。
こういった交渉事ではどうにもならないな。
オレってば弱いな。
「生産職の方で出場はあるんですか?」
「臨時でチーム組んでるけど、数チームいるわねえ」
「へえ」
「本命中の本命で西方面のメンバーで選抜チームも組んでるわよ?」
「それはまた」
恐らく、いや、間違いなく与作がいるな。
あれに周囲も高レベルのプレイヤーで固められたら洒落にならん。
まあ連携次第なのだろうが。
「掲示板でも優勝予想で賑わってるし。チーム戦ともなると色々と楽しそうよね」
「私等は観戦するだけ!気楽なモンよね!」
いいなあ。
それ、いいなあ。
オレもそういった選択肢が欲しかったです。
いずれにせよ大会には参加してたような気もするけどね。
リックに精算をして貰ってその場を辞去した。
雪獣人の骨を使った武器は大会に間に合わないかもしれないが、それはそれで仕方ないよな。
まあ護鬼向けに斧が間に合わなくても他に手はある。
槌は無明向けになるから大会には関係ない。
気長に待つとしよう。
主人公 キース
種族 人間 男 種族Lv16
職業 グランドサモナー(召喚魔法師)Lv2
ボーナスポイント残 25
セットスキル
杖Lv13 打撃Lv10 蹴りLv10 関節技Lv10 投げ技Lv10
回避Lv10 受けLv10 召喚魔法Lv16 時空魔法Lv8
光魔法Lv9 風魔法Lv10(↑1)土魔法Lv9 水魔法Lv9
火魔法Lv9 闇魔法Lv9 氷魔法Lv7 雷魔法Lv7
木魔法Lv7 塵魔法Lv7 溶魔法Lv7 灼魔法Lv7
錬金術Lv7 薬師Lv6 ガラス工Lv4 木工Lv6
連携Lv12 鑑定Lv12 識別Lv12 看破Lv4 耐寒Lv6
掴みLv9 馬術Lv9 精密操作Lv12 ロープワークLv1
跳躍Lv5 軽業Lv2 耐暑Lv7 登攀Lv6
二刀流Lv9 解体Lv7
身体強化Lv7 精神強化Lv8 高速詠唱Lv10
魔法効果拡大Lv7 魔法範囲拡大Lv7
装備 呵責の杖×1 呵責のトンファー×2
呵責の捕物棒×1 怒りのツルハシ+×2 白銀の首飾り+
雪豹の隠し爪×1 疾風虎の隠し爪×2 雪豹のバグナグ×1
草原獅子のバグナグ×1 闘牛の革鎧+ほか
呵責の腕輪+×2 呵責の足輪+×2(New!)
暴れ馬のベルト+ 背負袋 アイテムボックス×2
所持アイテム 剥ぎ取りナイフ 木工道具一式
称号 老召喚術師の高弟 森守の紋章 中庸を知る者
呪文辞書 格闘師範




