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昨日はミスしちゃいました・・・orz
作業場には奇妙な空気が流れている。
オレは渡されていたマジックマッシュルームを机上に全て並べていった。
「ジュナ師匠、作業を優先させたいのですがの」
「わーかってるって!ちゃんと手伝うわよ?」
「キースに教えておかねばなりませんのですが」
「どっちでやるの?」
「練成陣は使いませんぞ!いずれ短縮再現で使うようになって貰いたいので」
「相変わらず練成陣は嫌いなのねえ」
「利が大きいのは承知、ですが害もあるのもまた真実。ならば伝えておくのが探求者の義務ですぞ?」
「相変わらず、ガチガチに固いわねえ」
ここでジュナさんの解説が入りました。
練成陣を用いる利とは何か?
これは単純、術者の腕に関わらず、一定の品質の物を作り上げるのが簡単である事だ。
ぶっちゃけ初心者でも使える、というのだ。
そして後世に形を残して使われていくため、技術の損失はほぼない。
ジュナさんはどうもこっちの理由が持つ意味に価値を見出しているようだ。
では練成陣を用いる害とは何か?
これも単純、術者が練成陣の、長じては錬金術の探求を疎かにされかねない事だ。
初心者が楽をする事を覚えたら碌な事がない、というのはまあ分かる。
その反面、術者が溜め込んだノウハウは後世に残るかどうか、大きな疑問が残る。
弟子が継いだとしても、それが連綿と続いていくとは限らない。
だがそれだけに術者の成長を図り易いし、新たな発見もあるのだろう。
オレニュー師匠はここに価値を見出しているようであった。
師匠はジュナさんと口喧嘩をしながら空瓶を並べていく。
「マナポーションにして200本は作れそうじゃな」
「私がしましょうか?」
「空瓶はそこまでありませんぞ?」
「依頼は100本、明後日までに、という事でしたが」
「ふむ」
「今日のうちに終わらせたら?そうしたら明日はずっと遊べるし」
遊ぶって。
なんか不穏当な言葉を聞いたな。
「キースには最初から教えるのですぞ、時間はどうしても掛かりますがの」
「じゃあマナポーション100本は私が作っておくから。オレニューちゃんは教える方を始めちゃって!」
「いや、『ちゃん』ではなく」
「機材は借りるわよー」
師匠の威厳が次々と破壊されていく。
無残。
マナポーションの作り方講座です。
まずは材料から。
当然、マジックマッシュルーム。
その前処理からだ。
「エバポレイター!」
師匠が呪文を使って強引にマジックマッシュルームを乾燥させた。
なんという力技。
「本来は日陰で風通しの良い場所で乾燥させるんじゃがな。この呪文があれば工程を短縮できる」
「はい」
その呪文、オレも使えます。
つか師匠も塵魔法持ってるんですね。
さすがです。
次の工程は?
錬金術のメイキング技能、破砕を使う。
ポーションの場合は傷塞草を摺鉢で粉砕したが、乾燥させてある場合はこれでいけるようだ。
成程。
今度はその粉末をある一定量、濾紙の上に置いた。
「これでマナポーションにして1本分になる。薬師の『目分量』ならば同量を量り取れる」
「へえ」
「覚えておくことじゃな」
そう言うと師匠は並べた5つの濾紙に同量ずつ、無造作に見える手つきで並べていった。
師匠に促されて手に持ってみる。
この重さか。
「で、ここから先が秘密にせねばならん所でな」
「はい」
「これも使う」
師匠が手にしていたのは苦悶草だった。
「これ、使うんですか?」
「うむ。まあ見ておれ」
そう言って師匠が作業を続ける。
マジックマッシュルームと同じ手順だ。
乾燥、そして粉砕。
今度も濾紙に一定量を量り取った。
「この量も覚えておけ。1本分じゃな」
「はい」
やはり手に持ってみる。
かなり軽いな。
そしてマジックマッシュルームと苦悶草の粉末を別々の容器に入れた。
今度は水を玉杓子で取り分けて容器に注ぐ。
水は同量。
苦悶草の量はマジックマッシュルームに対してかなり少なめだ。
「この量じゃ。覚えておけ」
「はい」
「本来は何度か時間を置いて攪拌しながら抽出を行う。半日はかけるものなんじゃがの」
「ええ?」
「この工程だけは時間を掛けた方が良いのじゃよ。品質に大きく響くでな」
「はい」
「だが今は反応を進めておこうかの。使うのは『溶解』じゃ」
そう言うと薬師のメイキング技能、溶解を使ったようだ。
静置する。
そして再び溶解を使った。
そして再び静置する。
次の工程は2つの溶液の濾過だ。
「良いか?濾過した2つの液を混ぜ合わせるのじゃがな。ここは慎重に混ぜ合わせんといかん」
「はい」
「一気に混ぜ合わせるとな、有毒なガスを生じる。慎重に、慎重にな」
そう言うとオレの目の前で混ぜ合わせ始めた。
マジックマッシュルームの抽出液に苦悶草の抽出液を少しずつ注いでは攪拌していく。
何やらいい匂いがするんですが。
「良い匂いがするであろう?だが惑わされてはならん」
そう言うと師匠が呪文を使った。
「エアカレント・コントロール!」
匂いが急速に消えていく。
うん。
確かに、これはいい方法だな。
「これじゃからの。大量に作ろうとすれば中毒者が出てしまうのでな」
「危ないですね」
「うむ。じゃからこそ短縮再現が重要になる」
師匠が視線を転じる。
ジュナさんが何かの液体を空瓶に注いでいる所だった。
「短縮再現を利用すればそういったリスクを負わずに済む」
「問題はない訳ですか」
「いや、そこそこの熟達者でないと危ない。出来上がったマナポーションで悪酔いするぞ」
「悪酔いなんですか?」
「うむ。出来が悪いと中毒者になるのでな」
麻薬そのものじゃないですか、やだー
ジュナさんが作成したマナポーションを見せて貰う。
全部品質Cで揃っていた。
さすがと言おうか。
「腕は鈍ってないわねー」
「それはいいんですがの。ワシの分がのうなってますが」
「だからー、その分、余った時間で遊べるでしょ?」
なんだろう。
駄々っ子も受け手に回ると弱いんですね。
「師匠、抽出後の残滓は何かに使えますか?」
「苦悶草の残滓ならば使える。マジックマッシュルームの残滓は残してはならん」
「危ないのですか?」
「うむ。燃やしてしまうに限るの」
「まっかせてー」
マジックマッシュルームの残滓はジュナさんに呪文で焼却されていった。
あの匂いはしない。
なんとも豪快な事だ。
「苦悶草の残滓はね、携帯食になるのよ?」
「煮詰めて固めるだけじゃからな。まあ明日にでも作ってみたらええじゃろ」
という訳で。
オレもやる事になりました。
とは言っても材料を粉末化して、一定量を目分量で量り取り、水に溶かし込むまでですが。
メイキング技能は使わない。
エバポレイターの呪文は使ったけど。
師匠もジュナさんも少し驚いたようだが、そこはスルーで。
他の工程は呪文を使わずに作業を通してやってみよう。
短縮再現用として覚えるには手間を掛けた手順の方が品質が良いからだ。
途中の段階までだが作業記憶で記録しておく。
だがこれで明日の朝までやる事がなくなった。
「続きは明日じゃな」
「よし!じゃあ遊ぼうか!」
「ジュナ師匠、自重して下さらんかのう」
ダメだこの2人。
なんとかしないと。
時刻はいつの間にか午後6時を過ぎていた。
なんと、時間の過ぎるのが早いことか。
残月を帰還させて文楽を召喚する。
師匠、それにジュナさんの分も料理を作らせる事にした。
肉は干し肉。
野菜類は師匠の家にあるものを使う。
とは言え、師匠のメタルスキンと一緒に料理したみたいだが。
作業場での食事もまあ久しぶりだった。
「キースよ、夜は狩りにでも行くのかな?」
「無論です」
そう、今日はそんなに狩りをしてない。
色々とやっておきたい事が滞っているのですよ。
瑞雲の経験値稼ぎとか。
黒縄の利用方法とか。
リターン・ホームを使うとN1W1マップの土霊の祠まで飛ばされてしまう。
今日は師匠の家に泊まる方がいい。
そうなると、この周囲でイビルアント中心に狩りをするのがいいだろう。
「どうしても、かのう?」
「あら、キース相手に貴方の昔話をしてもいいのよ?」
師匠の顔に浮かぶ表情。
それは絶望。
師匠。
だからもう詰んでますって!
「では、後はごゆっくり」
「いってらっしゃい」
ジュナさんはにこやかに手を振ってくれていた。
師匠は作業台に顔を突っ伏してしまい動かない。
無残。
さて、夜の狩りに行こうか。
召喚モンスターは黒曜を残して帰還させる。
瑞雲、無明、ティグリス、クリープと召喚していく。
さて。
久しぶりにアリを相手に狩りと行こう。
で、瑞雲なんですが。
無論、アリ相手には無敵です。
物理攻撃しかして来ないのだから当然だ。
火炎攻撃をしてはMP補充を繰り返す。
無敵過ぎてつまらないほどだ。
コボルトより酷い。
そりゃあコボルトシャーマンみたいな存在がいないんだから当然ですね。
で、もう一方の課題が獄卒の黒縄です。
どう使うといいのか?
縄跳びとか?
いや、真面目に考えたんですけどね。
試してみましたとも。
アリの頭部と胸の関節に縄をかけて絞めてみました。
縄自身から炎が吹き上がってアリを焼いていく。
あっという間に仕留めてしまった。
何これ。
しまったな。
ウェンディゴやサスカッチ相手にこう使えば良かったんだ!
どうして思いつかなかったんだ、オレ。
試しに樹上にいる筈の暴れギンケイ(メス)でも試してみました。
瞬殺。
ではブラッディウッドはどうだろう。
あっという間に燃え上がってしまい、これも瞬殺。
あっけないものだ。
但し、アイテムは何も残さないようである。
【解体】はちゃんとセットしてあるんだが。
召喚モンスターが倒した場合はちゃんと残るからこれは確定だろう。
瑞雲が火で倒した場合、若干だがアイテムは残るようである。
だがもうここいらの魔物が落とすアイテムに興味を引かれるものはないと言っていい。
狩って、狩って、狩り尽くす勢いで屠っていく。
苦心した成果はあったか?
《只今の戦闘勝利で召喚モンスター『瑞雲』がレベルアップしました!》
《任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》
まあ狙い通りではあるのですが。
やはりここで経験値稼ぎというのは効率がよろしくない。
まあそれはそれとして。
ステータス値で既に上昇しているのは知力値だった。
もう1点を筋力値を指定しようとしたが、できない。
おい。
仕方がないか。
もう1点は器用値を指定する。
瑞雲 ミストLv1→Lv2(↑1)
器用値 3(↑1)
敏捷値 3
知力値 18(↑1)
筋力値 1
生命力 4
精神力 15
スキル
飛翔 形状変化 物理攻撃透過 MP吸収[微] 闇属性 火属性
これが精一杯です。
筋力値がいきなり指定できないとか、想定外です。
《これまでの経験で取得が可能な補助スキルに【ロープワーク】が追加されます》
え?
インフォに続きがありました。
ロープワーク、ですか?
オレに何を縛れと言うのか?
説明を見ても縄を扱うための補助スキルとしか書いてない。
まあ良く利用する職業は予測できる。
漁師とか特に必要だよね?
必要なボーナスポイントが5とやや重たいように感じるが、現在30ポイントも余っているしな。
取得して有効化しておこう。
アリの群れを呼び寄せては殲滅。
これを繰り返す。
【ロープワーク】をセット後、獄卒の黒縄の扱いはどうなったか?
少しだけ、縄で縛るまで澱みなく進んでいるような気がする。
気持ち、なだけだが。
試しに二重に巻いて絞めてみました。
いい感じである。
しかし、あれだな。
これ、本当に便利だわ。
だが実際の戦闘でどう使う?
後ろから音もなく接近して首に縄をかけて絞めるとかどうだ?
どこの暗殺者か。
探索時とか、ロープを上手に使えるようになるのは色々と便利じゃないかな?
行動範囲が広がってくれるかもしれない。
その後も狩りを継続するが、インフォはついになかった。
まあ仕方がない。
それだけ、強くなってきており、レベルが上がり難くなっているという事だろう。
師匠の家に戻ると召喚モンスター達を帰還させる。
2階のベッドに向かう。
品質Xの邪蟻の甲と針は変わらず枕元の台の上にある。
【素材アイテム】邪蟻の甲 原料 品質X レア度- 重量0+
イビルアントの甲。
【鑑定】しても変わり映えがしないが。
【識別】ではレベル10で見える内容が増えている。
この先【鑑定】もレベルアップを重ねたら、別の何かが見えるのだろうか?
少し気になるな。
まあそれも暫くはいいか。
明日は朝からマナポーション作成の続きだ。
久しぶりのベッドは寝心地が良かった。
気持ち良くログアウトする事ができたと思う。
主人公 キース
種族 人間 男 種族Lv16
職業 グランドサモナー(召喚魔法師)Lv2
ボーナスポイント残 25
セットスキル
杖Lv13 打撃Lv10 蹴りLv10 関節技Lv10 投げ技Lv10
回避Lv10 受けLv10 召喚魔法Lv16 時空魔法Lv8
光魔法Lv9 風魔法Lv9 土魔法Lv9 水魔法Lv9
火魔法Lv9 闇魔法Lv9 氷魔法Lv7 雷魔法Lv7
木魔法Lv7 塵魔法Lv7 溶魔法Lv7 灼魔法Lv7
錬金術Lv6 薬師Lv5 ガラス工Lv3 木工Lv6
連携Lv12 鑑定Lv11 識別Lv12 看破Lv4 耐寒Lv6
掴みLv9 馬術Lv9 精密操作Lv11 ロープワークLv1(New!)
跳躍Lv5 軽業Lv2 耐暑Lv6 登攀Lv6
二刀流Lv9 解体Lv7
身体強化Lv7 精神強化Lv8 高速詠唱Lv10
魔法効果拡大Lv7 魔法範囲拡大Lv7
装備 呵責の杖×1 呵責のトンファー×2
呵責の捕物棒×1 怒りのツルハシ+×2 白銀の首飾り+
雪豹の隠し爪×1 疾風虎の隠し爪×2 雪豹のバグナグ×1
草原獅子のバグナグ×1 闘牛の革鎧+ほか
呵責の腕輪+×2 呵責の足輪×2
暴れ馬のベルト+ 背負袋 アイテムボックス×2
所持アイテム 剥ぎ取りナイフ 木工道具一式
称号 老召喚術師の高弟 森守の紋章 中庸を知る者
呪文辞書 格闘師範
召喚モンスター
ヴォルフ グレイウルフLv4
残月 ホワイトホースLv2
ヘリックス ファイティングファルコンLv3
黒曜 ミスティックアイLv3
ジーン ブラックバットLv2
ジェリコ マッドゴーレムLv1
護鬼 羅刹Lv1
戦鬼 レッサーオーガLv2
リグ イエロープディングLv1
文楽 ウッドパペットLv5
無明 スケルトンLv6
ナインテイル 赤狐Lv6
ヘザー フェアリーLv6
ティグリス タイガーLv5
クリープ バイパーLv4
瑞雲 ミストLv1→Lv2(↑1)
器用値 3(↑1)
敏捷値 3
知力値 18(↑1)
筋力値 1
生命力 4
精神力 15
スキル
飛翔 形状変化 物理攻撃透過 MP吸収[微] 闇属性
火属性




