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 ビーストテイマーならば戦った事がある。

 多少、レベルはアップしているから、多少は手強くなっているだろう。

 でも大きな脅威にはならないかと思ってました。



「ギャン!」



 杖で狼の攻撃を凌ぐ。

 背中合わせで戦鬼が暴れているんだが。

 両手に犬の首を掴んで振り回す様子は魔物そのものである。

 いや、召喚モンスターだし、魔物と言ってもいいんですが。


 犬共はオレ達を攻撃する事に専念している。

 これに対してヘリックスと黒曜がビーストテイマーを襲っている。

 何気にHPバーの削りあいの様相であった。

 戦況そのものはこっちに有利か?


 序盤はそうだったが、この狼共に噛まれると敏捷値遅延が発生するようなのである。

 半分程はレジストできているが、それでも積み重なるものは積み重なる。

 直撃で噛まれてはいないが、掠るだけで状態異常になってしまう。

 面倒臭い。


 そして、犬だ。

 ビーストテイマーがその鞭でダメージを喰らった犬を叩くとする。

 その犬は回復してしまうのである。

 それも結構、回復率がいい。


 いや、本当に面倒くさいのですよ。


 ヘリックスと黒曜には呪文で対抗しているようだ。

 中々、近付けない。

 このままでは戦況もいずれは膠着、そのうちに逆転しかねない。

 真っ先に片付けるべきは、ビーストテイマーだ。

 だが犬達はオレと戦鬼を包囲して間断なく攻撃を続けてくる。

 全く、面倒くさいな!


 ナインテイルから全方向に光が発せられた。

 一瞬、犬達の動きは止まる。


「ヴォルカニック・ブラスト!」


 溶魔法の全体攻撃を仕掛けてダメージを与える。

 犬共を無視してビーストテイマーに迫った。

 戦鬼も続く。

 かなり遅れて犬共も追いかけてきた。


「ファイア・ウォール!」


 壁を、築く。

 次々と犬が突っ込んできて瀕死に近い状況になっていく。

 ビーストテイマーと犬共の分断がようやく出来た。

 つか遅いって、オレ!


 杖で次々と犬に止めを刺す。

 ビーストテイマーは召喚モンスター達に任せよう。

 犬を近寄らせてはならない。


 ファイア・ウォールが消えていった向こうに犬の群れが見えた。

 すぐには襲ってこない。

 壁呪文を警戒しているのか?


「グラベル・ブラスト!」


 放ったのは土魔法の全体攻撃呪文。

 犬共は?

 なんと動かなかったのだ。

 体を伏せて、耐えている。

 そして、一斉に反撃してきやがった。


 オレの肩にいるナインテイルから再び光が発せられた。

 先頭を駆けている数匹は一気に瀕死状態に陥る。

 そいつ等を蹴りながらオレも前に進んだ。

 迎撃しきれる数ではない。

 殲滅するには少しでも早く数を撃ち減らすに限る。




 ダメージは積み重なったものの、犬の群れは全滅した。

 ビーストテイマーは?

 戦鬼に捕まったまま、ヘリックスと黒曜に屠られてしまっている。


 オレの肩にいるナインテイルはそうダメージは喰らってないが、MPバーが枯渇寸前である。

 奮戦してくれていたからな。


 犬が次々と消えていく。

 そして何も残さなかった。

 またか。


 そしてビーストテイマーも、消える。

 だがこいつは何かを残していた。

 紙切れのようなんだが。



【封印アイテム】三元封印の札 品質B レア度7 重量0+ 

 三元封印を施された呪符。



 ただの紙切れではなかった。

 それにこのレア度何なのよ?


 【鑑定】した直後、札はボロボロと崩れてしまっていた。

 嗚呼、なんて事だ。



 ヘリックスが、黒曜が、そしてナインテイルも、極度の緊張を見せた。

 まだ何かが、来る。

 今度は間違えようがない。


 ウェンディゴだ。

 それがどう見ても10匹以上。

 サスカッチも、いる。

 1匹どころか、3匹はいるよな?


 ウェンディゴは皆、似たような容姿なのだが、サスカッチは個性があるな。

 スリムな奴もいるが、ウェンディゴと変わらないスタイルの奴もいる。

 まあそれはそれとして、だ。


 敵意が周囲の空気を溶かすように満たされていく。


 ダメだ。

 これは、死んだか?



 何故だろう。

 魔物が襲ってこない?

 いや、怯えている様子にも見えるが。



『疾く去ね』


 頭の中に直接、言葉が響く。

 その言葉はオレに向けられた言葉ではなかった。

 魔物達に向けられていたようだ。


『疾く、去ね。さすれば追わぬ。氷穴に帰るべし!』


 オレの傍に女性が立っている。

 あの氷の下にいた筈なのに。



 女性はゆっくりと、ある方向を指し示す。

 魔物達は?

 次々とパッシブになってしまう。

 サスカッチ1匹だけが、残った。

 まだオレに向けて敵意を示している。


『去ね。痴れ者が!』


 何かが天空から降ってくる。

 大きな腕だ。

 とてつもなく、デカい。

 圧倒的だ。


 その拳がサスカッチを掴んだ。

 あの3mはあろうかというサスカッチが簡単に、まるで人間がネズミを掴むかのように、だ。

 幻覚?


 その腕に捕まえられたサスカッチは何も出来なかった。

 女性が指し示した方向に持ち運ばれるようである。

 肩は見えない。

 雲で隠れているようだが。

 一体、その全体像はどうなっているんだか。

 想像を絶するな。



 女性がオレを見る。

 ヤバい。

 あんなのを見せられたのでは、ね。

 逆らってはいけない。



『この地で争いはならぬ。良いな』


 頷く以外に何も出来ませんでした。

 そうだ、【識別】は?



 グリッド ???

 ??? ??? ???

 ???



 何も分かりませんが?


『争いをせぬ限り、この地に留まる事を許そう』


「え?あ、はい」


『うむ。善き旅であれ』


 それだけ語ると女性は消えてしまった。

 なんぞ、これ。



《イベント『女神の解放』をクリアしました!》

《高山火口の中継ポータルを開放しました!》

《ボーナスポイント4点が加算されます。合計で30ポイントになりました》



 ほほう。

 今のってイベントだったの?

 気がつかなかった。




 ナインテイルはもうMPバーに余裕がなくなっている。

 ここは帰還させよう。

 代わりにヴォルフを召喚しておく。

 まあ念のためだ。


 氷上を滑って移動し、湖畔に向かう。

 スケーティングがあると移動が楽でいい。

 ヴォルフも最初は戸惑っていたようだが、すぐに順応した。

 楽しそうです。

 戦鬼以上にはしゃいでますけど?


 こういったフィールドだと機動性のある召喚モンスターの方が相性は良さそうだ。

 合わせて寒さを苦にしないと更に良い。

 クリープのような爬虫類だと相性は悪そうだよな?

 変温動物なんだし。



 取り留めのない事を考えながら湖畔に到着した。

 同時に風景は一転する。


 凍りついた湖面が溶けて行く。

 それも、急速に。

 まるで魔法だ。

 いや、魔法、なのだろう。



 湖畔でいくつか確認してみる。

 ポータルである事は間違いなさそうだ。

 ちゃんとログアウトの選択肢がある。


 そしてそのエリアはどこまであるのか?

 どうやらほぼ火口の中の全体がポータルの範囲となっているようだ。

 広いと言えば広いな。


 そしてあの女性が指し示した先には洞窟があった。

 さすがにその中はポータルの範囲ではないようだ。

 それにヴォルフが警戒を強めた事だし、先に進むのは中止だ。

 ここはヤバいか?

 オレのMPバーが半分でも残っていたらチャレンジしていたかも知れないが。

 今はやめておこう。

 ちょっと余裕がない。

 特に精神的な意味で。



 時刻は午後4時といった所だ。

 ここで狩りを続けるのもしんどい。

 それにコール・モンスターで確かめてみたら、獲物となる魔物がいない。

 ウェンディゴも、サスカッチも、いない。


 中継ポータルの範囲を外れた所でリターン・ホームを使う。

 ここでの狩りはあきらめよう。



 で、土霊の祠に戻ったのですが。

 プレイヤーの数はそこそこいるようだ。

 どうする?

 少しだけ、エリアポータルから離れて狩りをしよう。

 その前に陣容も変更しておこうか。


 ヴォルフ、ヘリックス、黒曜は残して、戦鬼とリグを帰還させた。

 ティグリスとクリープを召喚する。

 スノーエイプやブラックベア辺りならば、呪文の強化なしで連戦も可能だろう。



 コール・モンスターを使ってみていくつか気がついた事がある。

 最初、ユキヒョウもブリッツも引っ掛かったのだが、そのうちに消えていってしまった。

 いかん。

 山に、戻っちゃったか?

 地形の影響は、大きい。

 ユキヒョウにせよ、ブリッツにせよ、平原のような場所であれば狩るのは難しくない。

 だがあの山の中ではどうか?

 一気に難易度が跳ね上がるだろう。

 もう少し、稼いでおいたら良かった。


 おっと。

 前向きにゲームを楽しむべきだな。

 ティグリスとクリープの経験値稼ぎを兼ねて、オレも少し体を動かしておこう。

 今日は杖を使っての戦闘が長かった。

 トンファーも使っておくか。





 戦っているうちに奇妙な感覚に気がついた。

 体が、軽い。

 相手をしているスノーエイプの動きは相変わらず速い。

 だからこそ、試し甲斐があると思って仕掛けてみた。


 スノーエイプの側頭部をトンファーで撃つ。

 瞬間、跳躍してスノーエイプを飛び越えた。

 ちょうどスノーエイプを支えにした感じになる。


 着地と同時に猿の膝裏を蹴る。

 オレを見失っているのか、猿が簡単に転んでくれた。


 これ、【軽業】スキルが効いているのかね?

 派手なアクションだけで、有効打が見出せないのであれば、使う事はなかっただろう。

 でもね。

 結構、いい感じで攻撃が決まってくれるのだ。


 トンファーを使わず素手でもやってみる。

 これはもっといい。

 いや、もはや曲芸と言っていいかも知れない。

 オレとしてはやった事がないアクションになるな。

 ゲームならでは、といった所か。


 熊相手にも結構有効である。

 頭に手を置いて跳んで、後ろに回り込んで蹴りを入れるとか。

 結構簡単に出来ちゃったりするのだ。

 ああ、そういえば【跳躍】なんてスキルもありましたっけ?



 コール・モンスターを駆使しつつ、猿と熊を狩る。

 夕闇が迫ってくるまでこの布陣で、呪文は使わずに粘りました。

 おかげでポーションが減って行く。


 でもまあ問題はない、かな?

 このN1W1マップには傷塞草が多く採取できる。

 ついでに苦悶草も多いけどね。

 狩りの合間にそこそこ採取できたし、後でポーションは補充しておこう。




《只今の戦闘勝利で【連携】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【軽業】がレベルアップしました!》



 ブラックベアをまとめて3匹を片付けた所でレベルアップしていました。

 皮も取れたし、悪くはないのだが。

 ここで狩りを進めるにしても、稼ぎ的にはどうだろう?

 正直、戦ってみて物足りない部分がある。


 ああ、それってオレだけかも?

 むしろまだ比較的レベルが低い召喚モンスターだとちょうどいい環境なのかも知れない。


 時刻は午後6時を過ぎた。

 土霊の祠に戻って食事としよう。




 エリアポータルとなる祠の中は混雑していた。

 ま、それは仕方がない。

 祠の周囲にもエリアポータルとしての領域はある。

 外で休憩しているプレイヤーだっているのだ。

 そっちに回ろう。


 ヴォルフ、ヘリックス、黒曜を帰還させる。

 召喚するのはジーン、文楽、瑞雲だ。

 これにティグリスとクリープの布陣となる。

 無論、メインは瑞雲の経験値稼ぎだ。

 想定する獲物はコボルト。

 ジーンがいればコボルトアサシンの脅威は格段に落ちると思っていい。

 ついでに文楽にも戦闘をさせておくつもりである。

 

 で、文楽に料理をさせている間にオレもやるべき事を済ませておこう。

 ポーション作成だ。


 なんだかんだで空き瓶が溜まってしまっていた。

 残り5本になってしまっていたとか、笑えない。

 ここ数日、苦戦続きだったとも言えるが。

 自動回復持ちの召喚モンスターがいなかったらショートしてたかもしれないな。


 つまり、それだけ作成しなければいけないポーションの数が多いって事である。

 本来であれば品質は高い方がいい。

 それは間違いない。

 だが今やポーションを連続で使用しなければならない事態は相当にレアになってきている。

 ここは質よりも量だ。

 錬金術の短縮再現を使うべきだ。



 文楽が料理を作り上げる前に全てのポーション瓶を満たす事が出来た。

 ついでに回復丸も5個、作成できた。

 品質B-はなかったが、品質C-もない。

 品質Cと品質C+だけ。

 まあこんなものでいいだろう。


 料理で腹を満たし、片付けたら早速狩りに行こう。

 ミストの瑞雲は一体どんな活躍をするのか、楽しみである。




 最初の犠牲者はコボルトの群れである。

 しかもコボルトアサシン込みだった。


 最初に言っておこう。

 瑞雲、凄く使える奴でした。

 昼間、太陽光がある場所では弱体化するという欠点はあるが。


 唯一、警戒すべきなのはコボルトシャーマンの攻撃呪文、それに精霊の存在だ。

 その精霊もサラマンダーが相手だと問題がないようだ。

 火炎の中を平気で漂いながら、サラマンダーに取り付く。

 MPバーが減った、と思ったら、瑞雲から闇の帯が飛び出してサラマンダーを絡めとる。

 そして減ったMPバーが徐々に回復していた。

 そう。

 サラマンダーのMPを、吸い取っている。

 吸い取りながらサラマンダーを特殊能力で攻撃し続けている。

 なにその無限ループ。


 さすがにコボルトシャーマンの攻撃呪文をまともに喰らっている。

 そのコボルトシャーマンもティグリスに屠られてしまった。

 こうなるとコボルト共に瑞雲を倒す手段がない。

 もう独壇場です。


 サラマンダーを倒しきってなおMPバーが満杯の瑞雲、今度は火炎を撃ち出した。

 これもまた中々の威力である。

 だがまだまだレベルが低い事が裏目に出た。

 4発も撃つとMPバーは半分を割り込んでしまう。

 まあ、それは仕方がないよね。


 コボルトが近寄ってくる瑞雲に攻撃を加えていく。

 当たらない。

 いや、当たってはいるが、ダメージは全くない。

 武器が通過するだけだ。

 そして瑞雲はMP補給をし始める。

 吸い上げる。

 吸い上げていく。


 悪夢だ。

 コボルト共にとっては正に悪夢としか言いようがない。

 全滅させた後、瑞雲のMPバーは少し減った状態であったのだ。

 なんという奴。



 だが問題はある。

 移動速度は、遅い。

 ジェリコよりも遅い。

 だが移動するにしてもリグと同じ方法が有効なようだ。

 貼り付く、ではなく纏わり付くようにして行けばいいようだ。

 実際にオレに纏わり付かせて移動してみたら、全く問題はなかった。

 重さもないし、纏わり付かれる方に負担はない。


 最大の問題は回復だ。

 ポーションがダメです。

 そして回復呪文が、ダメだ。

 いや、ファイア・ヒールは効いた。

 最初、アース・ヒールで回復させようとしたらHPバーは1割も回復しなかった。

 まさか、と思ってライト・ヒールを使ってみたらピクリとも回復しない。

 その次に使ったファイア・ヒールで全快近くまで回復してしまった。


 どうやら好き嫌いがあるようだ。

 試してはいないが、ウィンド・ヒールやアクア・ヒールも効きが悪いのではないか?

 で、ダーク・ヒールは効くものと推察される。

 瑞雲は闇属性と火属性を持っている。

 つまり、そういう事なのだろう。


 コール・モンスターでコボルトの群れを呼び寄せ続けよう。

 これは面白い事になりそうだ。



 瑞雲無双は続く。

 オレの目標は自然に決まっていった。

 コボルトシャーマン、それに精霊の始末である。

 シルフ、ウンディーネ、ノームが出てきたら優先して仕留めにかからないと危ない。

 特にウンディーネがヤバい。

 たった1回の攻撃で瑞雲のHPバーが6割を超えて減ってしまうのだ。

 でも肝が冷えるような場面はそこだけだ。


 コボルトシャーマンは別にオレじゃなくとも排除は容易い。

 手強いのはやはり精霊なのだ。

 呪文も併用しないと早期に屠るのは難しい。

 瑞雲もまた精霊排除を最優先で戦わせて見た。

 実に派手な戦闘になるのだ。

 火炎が、闇の帯が、縦横無尽に精霊に向けて繰り出される。

 一時的にMPバーが空になったら適当なコボルトに貼り付いてMP回復に行かせた。

 オレはオレで止めを刺すのが楽で済む。


 コボルトシャーマンが召喚する精霊で一番手強いのはウンディーネだろう。

 火が通じ難いからだ。

 闇属性の特殊攻撃で対応はできるのだが、反撃も喰らうと中々大きかったりする。

 まあウンディーネはオレが真正面から相手をすればいい。


 最も悲惨なのはコボルトシャーマンがいない群れの場合だ。

 どうにもならない。

 瑞雲だけで全滅コースである。


 瑞雲無双。


 恐らく、物理攻撃しか持っておらず、属性も持たない魔物相手だと同様だろう。

 怖いな。

 味方で良かった。



 瑞雲の実力を確認できたら本格的に狩りを進める。

 今度は瑞雲を含めた連携も見ながら、である。



 調子は良かった。

 だからこそ、どこかに隙を見せていたのかも知れない。



 森の奥にまでコボルトを追いかけて狩りを続け、周囲に獲物がいなくなった。

 仕方がなく祠の方向に戻っていたのだが。


 先導していたティグリスとクリープが一瞬にしてオレの目の前から消えた。

 え?


 次の瞬間、背中に違和感。

 矢が肩に突き刺さっていた。

 何?

 ジーンが何かが動くのを捉えていた。

 数は、6つ。


 これは。

 PKか?



 マーカーを気にする暇はない。

 囲まれている事だけは、分かった。

 オレと文楽に向かってくる3つの影。

 そこに集中する。


 文楽はタックルをまともに受けて転がってしまう。

 そこへ更に迫る2つの影があった。


「練気法!」


 即座にオレ自身を強化。

 呪文も選択して実行。

 手にした呵責の杖を小脇に抱えて文楽の支援に向かう。


 消えた筈のクリープがオレの傍に来ていた。

 無事か?

 いや、HPバーは少し削れているようだ。

 クソッ!

 何だったんだ?


「センス・マジック!」


 魔力の発生源はこれで捉えられる筈だ。

 怖いのは遠距離からの支援。

 呪文、それに弓矢だ。


「グラァァァァァ!」


 何かが、吼えている。

 それがティグリスなのだ、というのは分かっていた。

 怒り狂っている。

 馬鹿な奴らだ。

 元々、ティグリスは好戦的な奴だ。

 怒りに我を忘れるような事は今までになかったんだが。


 矢が何本か飛んでくる。

 それに構わず文楽に馬乗りになっている奴に杖を繰り出した。

 呪文も飛んで来た。

 呪文詠唱は分からなかったが、魔力の高まりは知れている。


「ディメンション・ミラー!」


 呪文を跳ね返した効果は知らない。

 ますは、一殺。

 文楽を襲っていた奴は転がって距離を取って剣を構えているが、クリープが速かった。

 首に巻きついた、と思ったら既に噛み付いている。

 慌てている様子の所を追撃。

 杖で腕を払って剣を落とす。

 後はクリープに任せよう。

 マーカーを見たら既に毒状態に陥っているようだしな。

 文楽も立ち上がって弓矢で襲撃者を攻撃し始めている。

 オレも、次の獲物を探した。


「グラァ!」


 再びティグリスが吼えている。

 近い。

 つかオレの真後ろだ。


 短剣を構えた奴が首元を噛まれて地面に倒されていた。

 闇の中、ティグリスの目が爛々と光っている。

 うわお。

 おっかないって。


 周囲を見回す。

 まだ動いているマーカーが3つあるな。



 キラ Lv.11

 シーフ 戦闘中 反撃許可あり

 戦闘位置:地上



 サンダ Lv.12

 ブラックソーサラー 戦闘中 反撃許可あり

 戦闘位置:地上



 スガ Lv.12

 ハンターキラー 戦闘中 反撃許可あり

 戦闘位置:地上



 全員、PK職だな?

 ティグリスが顔を上げる。

 その下に横たわる奴も【識別】してみる。



 明輝 Lv.11

 アサシン 死亡 反撃許可あり

 戦闘位置:地上



 あれま。

 もう逝ってしまっていたか。


 ジーンは?

 瑞雲は?

 どこだ?


 瑞雲はどこにいるかは不明だ。

 だがなんとなく、健在である事は分かる。


 ジーンはオレの肩に戻ってきた。

 すぐに、飛び立たせる。

 連中の後方に回って撹乱して貰おうか。


 さて。

 どうしてくれようかね?



 クリープがオレの体を伝ってくる。

 どうやら噛み付いた相手は片付いたか?


 3人のPK職は動かない。

 いや、1人が呪文を用意しつつあるのは、分かる。

 呪文詠唱の声はない。

 無音詠唱なのだろう。


「スペル・バイブレイト!」


 魔力が高まりつつある所に武技を発動させる。

 そして一斉に襲い掛かる。

 左端にいた奴は後ろからジーンに襲わせていた。

 まああれは放っておくか。


 オレは逃げようとした奴に向かう。

 スガという名前の奴だ。


 さすがに逃げ足は速い。

 だが逃がすか。


「フォレスト・ウォーク!」


 森の中である事は悪いことではないかもな。

 不利だった状況だが、一気に有利に傾いてくれる。

 あっという間に追いつく。

 そしてタックル。

 同時にクリープも巻きついていった。

 転がりながらも反撃しようとするのは見事だ。

 だがこっちも必死である。

 杖を手放して足を捕らえると股間を蹴り飛ばしてやる。

 そのまま膝十字固め。

 極める、と同時に、壊した。


「グッ!」


 僅かに悲鳴が漏れた。

 ほう、痛みは感じるようにしてあるのか?

 ならば今度は腕だ。

 腕を絡めて手首を掴む。

 肘が極まる。

 腰を落として体重を掛け、捻って、伸ばした。

 折れた衝撃が伝わってくる。


「ヒィッ!?」


 今度は折れた腕を抱えて投げた。

 パスガードすると無事な方の腕も捻って後ろ手にする。

 クリープが首を絞め始めた。

 噛み付きたがっているようであるが、それは止めた。

 暫し待つと気絶したようである。


 良し。



 戦果、と言うべきなのか?

 全てが終わった所でインフォが来てます。



《只今の戦闘勝利で【看破】がレベルアップしました!》



 ま、それは後回しというかスルーで。

 瑞雲とも合流、PK職の連中の死体も消えていくのを確認した。

 6名中5名が死亡、金を残した奴はまだいいが、魔石を残した奴もいる。

 お気の毒に。


 戦果を示すとこんな感じだ。

 全員、死体が消える前に【識別】出来たのは僥倖といえよう。



 スガ Lv.12

 ハンターキラー 気絶 反撃許可あり

 戦闘位置:地上



 キラ Lv.11

 シーフ 死亡 反撃許可あり

 戦闘位置:地上



 サンダ Lv.12

 ブラックソーサラー 死亡 反撃許可あり

 戦闘位置:地上



 明輝 Lv.11

 アサシン 死亡 反撃許可あり

 戦闘位置:地上



 Lord Lv.11

 バンデッド 死亡 反撃許可あり

 戦闘位置:地上



 コウ Lv.11

 ブラックソーサラー 死亡 反撃許可あり

 戦闘位置:地上



 【識別】した結果はこうなる。

 問題は気絶中の奴の始末なんだが。

 どう見ても噛み付きたがっているのがいますよ?

 ちょっと待て、ティグリス。

 最後はちゃんと任せますからね?


 なんとかティグリスを抑えながら縛り上げる事にする。

 黒縄を使い後ろ手にして縛って転がしておいた。

 ダーク・ヒールで回復させ、頬を叩いて気絶状態から目覚めさせる。


 尋問、してみようかね?



「やあ、スガさん、でいいかな?聞きたい事があるんだがいいかい?」


「殺せよ、もう用済みだろ?」


 クリープが首に巻きつくと絞める力を強めていく。

 手加減しろよ?


 いや。

 平気な顔をしてやがる。

 どうやら痛覚カット、してるらしいな。


 咄嗟に頬を殴りつけてやった。


「グッ?」


 あれ?

 今度は痛がっているようだが。


「何をした!」


「聞くのは私だ。それに答えるのが君。OK?」


 もう一発、反対側の頬を殴る。

 スガの反応は間違いなく痛がっていた。



「先刻の罠、あれは何?」


「知るかよ」


 両足の靴を脱がせ、膝を少し立てた状態のまなブランチ・バインドで固定する。

 石ノミを右足の小指の関節部分に押し当て、木槌で叩いた。

 悲鳴は、ない。


「痛くないんだよね?」


「知るかよ」


 ほう、平気か。

 いい反応だな。

 その笑い顔、最高です。

 最高の挑発になってます。


 鼻先を殴ってやる。


「ッテェな!」


「痛くないんじゃないの?」


「知るかよ!」


 もう一発、殴っても反応は同じだ。


 うむ。

 何が違うんだ?


 彼から少し目を離した間に別の現象が起きていた。

 火だ。

 そして肉が焼ける匂いもする。

 何だ?


「ギャァァァァァァァァ!」


 悲鳴は素のものであろう。

 本当に焼けているようだ。

 スガを縛り付けている黒縄が、燃えている。


 その火はすぐに消えて行った。

 黒縄に触れてみるが、まるで熱くない。

 それどころか、まるで損なわれていない。

 燃えていたのに。


「今のは、何?」


「お、オレが聞きてえよっ!」


「いや、私も分からなかったんだ。ゴメンね」


 うむ。

 謎は深まるばかりだが、こいつに死なれても目覚めが悪い。

 お詫びの印としてダーク・ヒールで回復してあげよう。



 沈思黙考。

 思い当たる節なら、ある。

 こうなったら彼にも協力して貰おう。

 但し、その協力は強制であるのだが。


 呵責の杖を手にして右足の親指を突き潰してみる。


「ッ痛ェ!」


 ふむ。

 これは痛い、と。


 呵責のトンファーで足の指を潰してみる。

 悲鳴はなかった。

 だが声を出すのを我慢しているのが顔で分かる。

 奇妙に歪んでます。


 今度は呵責の腕輪を外して殴ってみた。

 これは痛くないらしい。



 呵責シリーズって何?

 【鑑定】しても特に痛覚設定無視とか、そんな能力があるように見えない。

 『改心しない者にはより大きな苦痛を与える』という説明文が気になるが。


 では次だ。

 ダーク・ヒールで回復させてあげよう。

 オレってば優しいよな。


「ところで、頼みがあるんだけどいいかな?」


「知るかよ」


「呪文で私を攻撃してみていいよ」


「あんた、マゾかよ?」


「君こそマゾなんじゃない?」


 今度は呵責の杖で足の甲を突いてあげよう。

 悲鳴は、なかった。

 歯を食い縛って痛みに耐えているようだ。

 グリグリと杖を捻るようにして力を込める。

 声は、ない。

 結構我慢強いんだな。


「ほら、呪文を使わないと。次は顔にしようか?」


「よ、止せ!」


 どうやら呪文を使う気になってくれたようだ。

 ご協力感謝。



 予想は的中した。

 またしても黒縄が燃え始めている。


「だ、ダメだ!何だこの縄!」


「何かな?」


 ダーク・ヒールで回復させてあげよう。

 だがもうMPバーが少ない。

 オレのMPバーを使うのも気が進まない。

 どうしようか?


 再び、黒縄が燃え始めた。

 今度は何だ?


「今、呪文を使おうとしたかな?」


「い、いや」


 答え難そうな様子だった。

 目の前に呵責の杖を向けてみよう。


「違う!この縄を【鑑定】しようとしただけだ!」


「ほう」


 なんとまあ。

 徹底しているな。

 これでは捕らえた者は何も出来ないじゃないか。

 つか回復呪文がなければあっと言う間に死に戻っちゃうんじゃないかな?


「ところで最初の質問に戻るけど。最初に罠みたいな奴。あれは何?」


「つ、土魔法のピットフォールだ。オレは使ってないぞ!」


「へえ。レベルは?」


「レベル10で取得できる呪文の筈だ。知らないのかよ?」


 ふむ。

 そうか。

 スッキリしました。


 オレはまだ土魔法がレベル9である。

 先々でより使えそうな呪文があるってだけで楽しみも増えるというものだ。


「じゃあこれで最後にしておこう。PKって楽しいの?」


「ああ?」


「いや、聞いている事に答えて欲しいな」


 呵責の杖を一振り。

 うむ。

 いい感触だ。


「あんたも拷問してて楽しいだろ?同じだよ」


「ほう」


「痛みには耐えてみせる。次はアンタにも同じ目に遭わせてやんよ!」


 うん。

 答えになってないなあ。

 理解は出来るんだが、残念な事に納得は出来ない。


 さて。

 さっきからソワソワしてるのがいます。

 ティグリスだ。

 目の前に獲物がいておあずけ状態が続いている。

 そろそろ潮時か。


「うん。では次の機会を待ってみるとしよう」


 けしかけた。

 ティグリスが喉を噛み切る様子は凄まじいものになった。

 やっぱり大型の肉食哺乳類なんだな。

 おっかないです。

主人公 キース

種族 人間 男 種族Lv16

職業 グランドサモナー(召喚魔法師)Lv2

ボーナスポイント残 30


セットスキル

杖Lv13 打撃Lv10 蹴りLv10 関節技Lv10 投げ技Lv10

回避Lv10 受けLv10 召喚魔法Lv16 時空魔法Lv8

光魔法Lv9 風魔法Lv9 土魔法Lv9 水魔法Lv9

火魔法Lv9 闇魔法Lv9 氷魔法Lv7 雷魔法Lv7

木魔法Lv7 塵魔法Lv7 溶魔法Lv7 灼魔法Lv7

錬金術Lv6 薬師Lv5 ガラス工Lv3 木工Lv6

連携Lv12(↑1)鑑定Lv11 識別Lv11 看破Lv4(↑1)耐寒Lv6

掴みLv9 馬術Lv9 精密操作Lv11

跳躍Lv5 軽業Lv2(↑1)耐暑Lv6 登攀Lv6

二刀流Lv9 解体Lv7

身体強化Lv7 精神強化Lv8 高速詠唱Lv10

魔法効果拡大Lv7 魔法範囲拡大Lv7


装備 呵責の杖×1 呵責のトンファー×2

   呵責の捕物棒×1 怒りのツルハシ+×2 白銀の首飾り+

   雪豹の隠し爪×1 疾風虎の隠し爪×2 雪豹のバグナグ×1

   草原獅子のバグナグ×1 闘牛の革鎧+ほか

   呵責の腕輪+×2 呵責の足輪×2

   暴れ馬のベルト+ 背負袋 アイテムボックス×2


所持アイテム 剥ぎ取りナイフ 木工道具一式


称号 老召喚術師の弟子、森守の紋章 中庸を知る者

   呪文辞書 格闘師範


召喚モンスター

ヴォルフ グレイウルフLv4

残月 ホワイトホースLv2

ヘリックス ファイティングファルコンLv3

黒曜 ミスティックアイLv3

ジーン ブラックバットLv2

ジェリコ マッドゴーレムLv1

護鬼 羅刹Lv1

戦鬼 レッサーオーガLv2

リグ イエロープディングLv1

文楽 ウッドパペットLv5

無明 スケルトンLv6

ナインテイル 赤狐Lv6

ヘザー フェアリーLv6

ティグリス タイガーLv5

クリープ バイパーLv4

瑞雲 ミストLv1

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― 新着の感想 ―
Pk戦は読んでてやっぱり面白いです笑
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