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 霧の泉に到着。

 なんと、いくつかのテントがあった。

 先客のプレーヤーがいたのか。

 うかつにトレインしてたけどマズかったかも?



 まあそれはそれとして。

 泉の傍で机と椅子を出して、食材を並べていく。

 メインの肉はツラミ、頬肉になる。

 これは楽しみだ。


 黒曜を帰還させて文楽を召喚する。

 料理を任せておこう。



 オレはお楽しみと行こう。

 素材は草原獅子の爪に黒曜石だ。

 作るのはバグナグ。

 ライオンの爪なんだけどね。


 黒曜石を溶魔法のシェイプ・チェンジで柔らかくして、爪を組み合わせていくだけだ。

 ほんの数分で出来上がってしまう。

 【鑑定】して出来栄えを確認しておこう。



【武器アイテム:打撃】草原獅子のバグナグ 品質C+ レア度4

 AP+3 破壊力1 重量0+ 耐久値70

 防御力無視確率[微] 土属性

 暗器。引っ掻いて使う武器であり鎧兜などにはほぼ無力である。

 低確率で防御力を無視してダメージを与える事がある。



 おお。

 防御力無視、とな?

 これはこれで使えそうだ。


 引き続いて溜まりつつあった古代石の発掘を行う事にした。

 1個を片付けた所で料理が出来上がったようである。

 タイミング、いいよね。


 得られたのは水晶である。



【素材アイテム】煙水晶 品質C+ レア度3 重量0+

 黒色の水晶。別名スモーキークォーツ。

 透明度が高く粒の大きなものは魔法封印によく使用されている。



 水晶は加工が難しいって事で保留になっているんですが、また増えたか。

 まあいずれ役に立つ日が来るかもね。



 ぶ厚くスライスして焼いたツラミは柔らかくてもうね。

 美味しく頂きました。



 片付けを終えると文楽は帰還させる。

 黒曜を召喚する事も考えたが、ヘザーにしました。

 十分に対応出来そうだし。

 MPの回復も残月の支援もあれば有利に働くだろう。


 気を付けねばならないのは他のプレイヤーの存在だ。

 トレインは慎重にやらないと迷惑行為になるからなあ。



 高空からヘリックスで地上を監視して貰いながら西へと進む。

 ケンタウロスの群れも混じっているからややこしい。

 小規模な群れを2つほど蹴散らして、闘牛のトレインを始めてみました。


 追いかけてくる闘牛に全体攻撃呪文を何発か、撃ち込んでおいてダメージ追加と挑発を兼ねる訳ですが。

 今度は壁呪文2つに突っ込ませると、8割近くが次々と仕留められてしまう。

 いや、それはいいんですが。

 うちの子達の活躍の場が少なくなっちゃうのですよ。


 ほどほどが一番です。

 ほどほどに、しましょう。


 


 剥ぎ取り作業を済ませる。

 戦果は十分であろう。

 サーロインを1つ追加して、3つになったのだ。

 気分が良かった。


 当面はもういいかな?

 では、これからどうするか?

 更に西へ向かおう。

 そう、西へ。

 やはりここまで西に進んでしまっては、ね。

 誘惑に耐えられませんでした。


 W4マップ、行ってみたいよね?

 

 死肉喰らいの襲撃もあったが、それも気にならない。

 まだ見ていない風景がそこにあるなら、見てみたいのだ。




 広域マップによるともうすぐW4マップだ。

 更に乾燥化が進んだ平原になりつつある。

 そう、アフリカで良く見るあの風景だ。


 改めて広域マップを見ると、完全にW4マップになっている。

 W3よりも殺伐とした風景だ。


 そして、まだ知らない魔物がそこにいる。



 ブラッドタンブルウィード Lv.3

 魔物 討伐対象 アクティブ

 戦闘位置:地上 風耐性 土耐性



 まあ、あれだ。

 西部劇で見るよね?

 転がっていく草の塊ですな。


 違うのは明らかにこっちを狙って転がってくる事。

 それに大きいって事だ。

 幼い頃、玉転がしってやらなかったかな?

 まあ、あれに近いんだが。


 速い。

 それに見た目がデカいからおっかない。

 残月に乗ってて助かりました。


 捕物棒の長さを活かして何度か殴ってもみたが、まるでクッションなのだ。

 効果は薄い。


 だから呪文を使った。

 使いましたよ、そりゃ。

 草なら燃やしてしまえ。


「ファイア・シュート!」


 燃えました。

 そりゃあ盛大に。


 そのまま向かってくる魔物の姿に恐怖を覚えました。

 恐ろしすぎる。

 これはもう理屈じゃない。

 魔物のHPバーがなくなるまで、逃げ回る羽目に。

 実に情けないが、これが現実なのです。


 恐ろしい。

 知らないって事は恐ろしいのだ。

 次があったらどうする?

 やはり火魔法を使う事になると思う。

 慣れるんでしょうかね?


 因みにこいつは何も残さなかった。

 怖い思いをした分、大損した気分になりましたよ。



 枯れ川らしき場所を見つけた。

 どうやら乾季と雨季があるのか?

 周囲には緑も多い。

 それに、W3マップと共通する魔物も見掛ける事になった。

 ステップライオンだ。

 メスが群れとなっており、オスは少し離れた場所で周囲を見回していた。

 全て、パッシブだ。


 戦闘を仕掛ける事はしなかった。

 何故かって?

 その光景が美しいと思ったからだ。

 様になってる。

 サファリ、だよなあ。


 そしてサファリと言えば定番のサイがいますよ?



 パンツァーライノ Lv.2

 魔物 討伐対象 アクティブ

 戦闘位置:地上



 定番のサイですよ?

 カッコイイ!

 名前は語学的に問題があると思うが、そこは気にしたら負けだ。

 いやあ、テンションが上がるなあ。


 でも観光どころじゃありません。

 突進してきます。

 アクティブなんだから当たり前だ。



 どんな相手か?

 凄まじい、の一言に尽きる。

 こっちの攻撃をその装甲の如き表皮で受け止め、こっちを追い回してくるのだ。

 延々と、である。


 捕物棒で思いっきり突いた結果、こっちの腕が痺れるような体たらくである。

 呪文は?

 効果は、ある。

 ほぼ当たるのだが、タフなものだから攻撃呪文は一体どれほど必要になるのか、憂鬱になってしまいそうだ。

 足止め?

 ルート・スネアは力ずくで蹴散らされました。

 麻痺も効かない。

 暗闇も期待したが、効果は薄い。

 混乱は?

 途中から激高状態になったみたいで効かなくなってしまった。

 ディレイで敏捷値を低下させてるし、ディフェンス・フォールも掛けてあるのだが。


 おっかないです。


 召喚モンスター達も当然だが攻撃を加えている。

 だがこの魔物は特に見向きもしていないようだった。

 飽くまでもオレを狙ってきている。

 恐ろしい奴。


 壁呪文も行使してダメージを積み重ね、どうにか倒しきったが、もうね。

 呪文をどんだけ使わせたんだ、こいつ。

 オレのMPバーは一気に半分近くまで減ってしまっていた。



《只今の戦闘勝利で【精神強化】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で召喚モンスター『ヘリックス』がレベルアップしました!》

《任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》



 ヘリックスがレベルアップしてくれました。

 それ位の事がないとやってられない。

 そういう相手でした。


 ステータス値で既に上昇しているのは精神力だった。

 もう1点は筋力値を指定する。



 召喚モンスター ヘリックス ファイティングファルコンLv1→Lv2(↑1)

 器用値 12

 敏捷値 26

 知力値 23

 筋力値 13(↑1)

 生命力 12

 精神力 14(↑1)


 スキル

 嘴撃 飛翔 遠視 広域探査 奇襲 危険察知 空中機動 風属性



 今回、ヘリックスは牽制攻撃で奇妙な事をしてました。

 その翼を細かく使って風の刃を作り出していたのだ。

 まあ牽制を気にする相手じゃなかったけど。


 属性持ちでも呪文のような事が出来るのと出来ないのとが、いる。

 無明は闇属性持ちだが、何もやってない。

 同じ闇属性持ちのジーンは色々と出来る。

 どこの差なんだろうか?


 魔物の死体に剥ぎ取りナイフを突き立てたら何が得られるのか?

 定番、と言えば定番なものが得られたようです。



【素材アイテム】重装犀の角 原料 品質C+ レア度4 重量1

 パンツァーライノの角。大きくやや反っている。

 その大きさの割りに非常に軽い。



 これ、何に使えっていうのかね?




 とりあえず、先に進むことを優先だ。

 コール・モンスターを使ってみたが、ステップライオンもパンツァーライノもそんなに数はいない。

 だが気にしなきゃいけないのもいるようだ。


 空中だ。



 マイナーグリフォン Lv.4

 魔物 討伐対象 パッシブ

 戦闘位置:空中



 あのヘリックスがオレの肩に自発的に戻ってきましたよ?

 マイナー、という事はレッサー種の更に下かな?

 それでも馬並みのようだ。

 鷲それに獅子を掛け合わせたような姿。

 オレ達に気がついている筈なのだが、悠然と過ぎ去っていく。


 ふむ。

 助かった、のか?

 先に進むに従い強い魔物が出てくるのは、まあ分かる。

 これでは先々にどんな強力な魔物がいるのかね?


 楽しみが増えた。



 更に真っ直ぐ、西へ向かう。

 当然だがパンツァーライノにも遭遇する。

 多くはパッシブ。

 それは助かった。

 でもアクティブな奴もいる。

 苦戦必至だ。


 だが有効な手段は意外な呪文にありました。

 


 木魔法の壁呪文、ソーン・フェンス。



 ルート・スネアが完全に不発だったのに。

 それなのにこの壁呪文には不思議な程、嵌ってくれた。

 棘付の蔦が絡み合って出来た壁に突っ込んだサイは、まともに地面に足を付けられなくなってしまう。

 その後は、殴り放題です。

 無論、防御力の高い相手なので、時間はそれなりに掛かったのですが。


 時間短縮に草原獅子のバグナグが実に役に立ってくれました。

 防御力無視でダメージを与えるのって素敵。

 クリティカルの発生確率は10発に1発?

 微妙です。

 でも数をこなせばなんとかなるもんですよ。


 残月から降りて、リダクション・タッチを追加。

 地味に。

 そう、地味にダメージを重ねました。

 どんなにパワーのある相手でも、地面から脚が浮いてしまい、力を伝えられないのでは唯の的である。

 問題は、ありましたけどね。

 ソーン・フェンスそのものが邪魔で集中攻撃ができない、とか。


 倒しきるのに20分は確実に掛かっていたように思う。

 途中でソーン・フェンスの追加は行ったものの、1頭目に比べたらMPの消費は確実に少なかった。

 知らない相手というのはこれほどに恐ろしく手間がかかるか。

 それだけに実入りがないとやっていけない。



《只今の戦闘勝利で【木魔法】がレベルアップしました!》



 まあ良しとするか。

 重装犀の角を得ると先へと進む。

 目指すのは?

 勿論、エリアポータルだ。



 現在の時刻は午後5時半。

 見付けました。

 明らかに怪しい場所を見付けました。

 あれからサイを2頭狩ってきていたのが響き、発見が遅れてしまった。


 陽が沈む前で良かった。

 逆光の中、枯れ川を見下ろす丘の上に明らかに人の手による構造物がある。

 城砦か?

 しかも古い。

 ヘリックスの偵察によると、誰もいないように見える。

 半分以上は廃墟のようなのだが。



 これ、いるな。

 エリアポータルの番人だ。

 恐らくは、いる。


 得物は呵責の捕物棒から呵責の杖に交代する。

 召喚モンスターの布陣はそのままだ。

 さて。

 何が、いるかな?



 城郭の中は意外に広い。

 最も外側の城壁は実に分厚く、何箇所かに物見櫓がある。

 いずれも崩れかけているけどね。


 残月に騎乗しながら行き来できるだけの余裕もある。

 今の所、異常はない。

 静かだった。


 2つ目の城壁を越える。

 門は開けっ放しだ。

 そして門を越えた先に建物は壊れたものばかりだ。

 中心部には建物の台座しか残っていない。


 いや。

 センス・マジックも使って周囲を見回す。

 何か異常は?

 ない。

 ヴォルフもヘリックスも異常は感じていないようだが。


 ナインテイルが視線を台座に向けたまま、外そうとしない。

 そこか。



 残月に騎乗したまま台座の周囲を回る。

 ナインテイルの視線は台座に向けられたままだ。

 センス・マジックの掛かっているオレの目には何も感じ取れない。

 だがここはナインテイルを信じよう。


 強化呪文を一通り掛けておく。

 MPバーが半分を割ってくるが気にしない。

 警戒はすべきだろう。


 階段を残月に騎乗したまま登っていく。

 いきなり頭上に例の人魂が浮かんできた。

 やっぱりか。



《客人よ》


《我等を称えよ》


《我等は指し示す》


《汝等の行く先に望みはない》


《ここで希望を捨て去るがいい》



 インフォはもう聞き飽きた。

 さあ、何が出るんだ?


 そいつ等は一様ではなかった。

 ある者は地面から生えてくるように現れてくる。

 ある者は空中にいきなり出現してくる。

 いきなり吹き上がってくる炎の中から現れる者もいる。


 皆、異様な格好をしていた。



 マッドクラウン Lv.3

 イベントモンスター 魔人 挑発中

 戦闘位置:地上 時空属性 光属性 闇属性



 火吹き男 Lv.2

 イベントモンスター 魔人 挑発中

 戦闘位置:地上 火属性



 パントマイマー Lv.4

 イベントモンスター 魔人 挑発中

 戦闘位置:地上 水属性



 マッドバード Lv.3

 イベントモンスター 魔人 挑発中

 戦闘位置:地上



 ナイフスローワー Lv.2

 イベントモンスター 魔人 挑発中

 戦闘位置:地上



 ビーストテイマー Lv.4

 イベントモンスター 魔人 挑発中

 戦闘位置:地上 火耐性 風耐性 土耐性 水耐性



 ステップライオン(オス) Lv.4

 イベントモンスター 待機中

 戦闘位置:地上 土属性



 サーカスです。

 誰がどう見ても、サーカスです。

 各人、パフォーマンスを始めましたよ?


 火を口の中に入れては火を吹く。

 短剣でジャグリングをする。

 手に持った椅子を使って逆立ちしながら体の柔らかさをアピールしたり。


 まあ色々だな。

 

 パントマイマーが一番変態っぽいな。

 全身ラバースーツに目元に蝶のマスクだ。

 唇が真っ赤だ。

 それでいて体のラインはどう見ても男なのだ。

 なぜ、女性じゃないのか。



「練気法!」


 すぐに呪文を選択して実行。

 相手は?

 なんと、散っていってしまう。

 全体攻撃、喰らわそうと思っていたのだが当てが外れた。


 奴等は何処へ?

 台座からも降りて壊れた家々の合間へと消えていく。

 何それ。

 これ、不戦勝にならないのかね?


 だが攻撃は意外な形で始まっていた。

 奇妙な歌だ。

 それに合わせて弦楽器の曲も流れてくる。

 実に不愉快な音だ。



 オレのHPバーが減っている。

 オレだけじゃない、召喚モンスター達のHPバーも減っているようだ。

 ほんの僅かなものだ。

 だが、無視出来ない。

 こっちから狩りに行かねば。


 ヘリックスが宙を飛ぶ。

 ヴォルフに先導させて追跡を始めた。

 目標は、あのバードだ。



 歌は続いている。

 どうも曲の小節がある程度進む毎にダメージが来ているようだ。

 これは最優先でどうにかしないと。


 路地の裏手から炎の塊が襲ってくる。

 火吹き男だ。

 邪魔するなこの!


 ダメージを喰らったのはオレと残月だけで済んだ。

 ナインテイルとヘザーはヴォルフの方に移動して難を逃れている。

 ヘザーは支援を。

 ナインテイルは牽制を。

 そしてヴォルフが攻撃を敢行する。


 オレも続く。


「ファイア・ヒール!」


 火吹き男に迫ると壁の上からパントマイマーが飛び掛ってくる。

 飛び蹴りかよ。

 間一髪、避けはしたが驚いた。

 こいつら、ちゃんと連携してきやがる。


 オレ達はあのバードを追う。

 そして連中はそんなオレ達を邪魔しに来る。

 そんな展開が続いた。


 なんと言っても地形がいけない。

 連中は壊れた家々の合間を庭のようにすり抜ける。

 パントマイマーとマッドクラウン、それにナイフスローワーは軽業師でもあるようだ。

 結構高さのある壁を難なく越えてしまう。


 厄介だな。


 だから倒せそうな奴からなんとかした。

 ビーストテイマーだ。

 前衛で繰り出してくるステップライオンはオレと残月が受け持つ。

 ビーストテイマー自身はヴォルフに任せた。

 上空ではヘリックスに探索を続けさせている。

 連中、ビーストテイマーに迫るオレの背後から近寄ってくるようだが。


 馬上から呵責の杖でステップライオンを殴りつけては残月も踏みつける。

 オレの攻撃はそこそこ効いているが、残月の踏み付けはそれ以上だ。


「ストーム・ウェーブ!」


 後ろに向けて放つ。

 ビーストテイマーとライオン以外、ちゃんと揃っていた。

 仲間、なんだろうな。


 改めてステップライオンに攻撃を追加して止めを刺す。

 こいつはタフだった。

 残月の踏み付けにここまで抵抗した奴に覚えがなかったし。


 ヴォルフの援護にヘリックスも加わっていた。

 程なくビーストテイマーも息絶えたようだ。


 やっと、1人と1匹が片付いたのか。

 だがまだ歌とその演奏は続いている。


 それ、必ず止めてやる。

 またしても追いかけっこが始まった。




 各個撃破は続く。

 残り2人になっていた。

 火吹き男、ナイフスローワー、マッドクラウンと片付けたのは、いい。

 こっちもかなりダメージを喰らいながらだったからな。

 ようやく回復呪文を使えるだけの余裕も出来た。

 まだ歌とその演奏は続いている。


 ではそろそろ終わりにしようか。

 パントマイマーの相手をオレがしている合間にヴォルフとヘリックスがマッドバードに襲い掛かる。

 暫くすると歌と演奏が止んだ。

 あっけない。

 だがその歌と演奏に苦しんだのは確かだ。


 パントマイマーの動きが、変わった。

 あからさまにオレだけを狙ってくる。

 壁の上に登ってから飛び蹴り。

 それは難なく避けたが、次の攻撃はまともに喰らってしまった。

 壁を使って三角跳び。

 そして飛び膝蹴りだ。

 オレは残月から落馬してしまっていた。

 同時に呵責の杖も手放してしまう。


 こいつ。

 やってくれたものだ。


 パントマイマーの姿は見えない。

 いや、いた。

 なんとオレの首に腕が巻きついてくる。

 そのまま絞めてくるのだ。

 地面に倒されてしまい、オレの胴体にパントマイマーの足がロックしに来た。

 おのれ。

 オレに関節技を仕掛けてきただと?

 しかも、上手いぞ、こいつ。


 パントマイマーの腕がロックされるのを右腕でなんとか凌ぐ。

 オレの胴体に絡んでくる足は?

 パントマイマーの足首をオレの左足の膝裏で引っ掛けてカウンターで関節技を極める。

 どうだ?

 痛みを感じてくれているか?

 どうやらこいつはちゃんと痛覚があるらしい。

 一瞬、首を絞める力が弱まっていた。


 好機。

 絞めにきていた腕を外す。

 手首を極めにいったが、これは外される。

 だがそれに見合うだけの収穫はあった。

 オレが極めていた足首を外して体を反転させる事に成功したのだ。

 それでもまだパントマイマーにガードポジションをキープされているんだけどな。


 さて。

 このままヴォルフ達に攻撃を任せるのもいい。

 だがこいつはオレに関節技を仕掛けてきたのだ。

 そのお返しはしないと、な。


 グラップル戦を継続する。

 邪魔は入れさせない。

 そう決心した。



 まだ互いに寝技の応酬は続いている。

 極めきれない。

 なんと言ってもパスガード出来ていないのが痛い。

 この攻防を優位に進めているのは残念ながらパントマイマーの方だった。

 こいつに関節技を極めきれていない。

 体が柔らかいっていうのもあるが。


 打撃も通じることは通じているが、面白くない。

 だが痛覚があるならば、痛め技を使うのはいいよね?


 オレの胴体を挟んでいる太腿に肘を押し付ける。

 グリグリと。

 そしてしつこく。


 外そうとしなかったが、一転して肘打ちを見舞ったらようやく外してくれました。

 膝を押さえてロックを完全に外す。

 そのまま膝裏に腕を通して関節技を極めた。


 膝固め。

 膝よりも太腿とふくらはぎを痛めつける技だ。

 これが、効いた。


 防御は当然やっているパントマイマーだが、気にしない。

 技を極めきる事に集中する。

 

 痛みに耐え切れなかったのか、もう片方の足をオレの顔に引っ掛けてきた。

 それ、あまりいい手段ではないんだが。

 膝固めを解いてその足に関節技を仕掛ける。


 膝十字固め。

 今度は完璧な形で極まったと思う。

 そのまま膝を痛めつける。

 声を上げないパントマイマーだが、これはかなり効いているようだ、

 HPバーは半分を割った。


 後は一方的に攻め続ける事に。

 最後は背後から裸絞めにして仕留めました。



《客人よ》


《我等を称えよ》


《我等は指し示す》


《絶望の淵を見て来るがよい》


《この場は汝等に明け渡そう》



 そうしてイベントは終わった。

 いや、強いっていうよりも面倒極まるような相手だったな。


《W4のエリアポータルを開放しました!》

《ボーナスポイント3点が加算されます。合計で24ポイントになりました》



 エリアポータル開放のご褒美が減ってる?

 まあそれも今はどうでもいい。

 何か今の戦闘は実に疲れました。


 時刻は午後6時半に迫ってきていた。

 残月とヘリックスは帰還させた。

 文楽とジーンを召喚する。

 かなり早いが夕飯の準備を進めておこう。

 それに色々と落ち着きたい。


 オレのMPバーは色々とあってか、3割近くまで減ってしまっていた。

 結構、さっきの門番共には苦戦させられていたようだ。

 戦闘時間も長かったしな。



 さて。

 MPバーの回復も兼ねてやっておくべき事は済ませておこうか。

 台座のあった場所に戻って作業をする事にした。

 ポーションはそんなに消費してなかったが補充しておく。

 6本だけだったから錬金術の短縮再現で済ませておいて、もっとやりたい事にとりかかる。


 サイから剥いだ角が2本ある。

 以前、雷山羊の角を穂先にして槍を作ったよな?


 あれをやってみよう。

 但し柄はアレで行こう。

 地獄の閂から作るのだ。



 最初に作るのは呵責の捕物棒である。

 まあ外見は唯の物干し竿ですが。

 そこまで加工した所で文楽の作った夕飯を食べ、片づけを終えると、今度は文楽にも作業を手伝わせる。

 作業にはエンチャンテッド・ウェポンでMPを消費するが微々たる物だ。

 気にしたら、いけない。


 呵責の捕物棒の先端に重装犀の角を固定する。

 反対側の石突には草原獅子の牙を使った。


 さあ、どんな槍が出来たかな?



【武器アイテム:槍】重装犀の槍 品質C+ レア度5

 AP+19 M・AP+0 破壊力4+ 重量3 耐久値220

 魔力付与品 土属性

 重装犀の角を穂先とした突く事に特化した槍。

 刃がなく斬る事はできない。

 柄が呵責の捕物棒であり、魔法発動にはほぼ寄与しない。

 槍のサイズにしては比較的軽くて扱いやすい。

 石突に草原獅子の牙を使用。土属性を備える。

 クリティカル発生時のダメージは非常に高い。



 凄いな。

 攻撃力が向上しているのも凄いが、破壊力もだ。

 ヤバい。

 槍技能、取得したくなってきましたよ?


 だが待て。

 これ、オレが使うとしたら馬上槍か?

 自分で作っておきながら手にしてみると、どうしても違和感が残る。

 つか、あれだ、

 オレが使ったことがある武器の範疇を越えてるサイズと重さだからだろう。

 正直、使いこなせる自信がない。

 呵責の捕物棒だとまだいいんだが。

 こいつは使わずに誰かに売ってしまおう。



 重装犀の角は3つ残っているが、槍にするのは止めて置いた。

 色々と地獄の閂で武器を作れそうなのが分かったのが収穫と言えば収穫だ。

 端材も細く削りだす。

 後で矢にする為だ。

 色々と試す事があって木工も面白いな。



 MP回復はさほど進まなかった。

 だが夜の城砦の風景は少しだけ変わってきている。

 修復が進んでいるのだ。

 どういった理屈でそうなっているのかは不明。

 なんだろうな、これ?


 広域マップで確認してみる。

 このエリアポータルは『夕闇城』となっていた。

 ネーミング、微妙です。

 ここで夜の狩りをするのはどうか?

 正直、厳しいような気がする。

 撤退しよう。

 城砦を出てリターン・ホームを使い、風霊の村に戻る事にした。



 戻ったはいいが。

 狩りは続けておきたいな。

 だがオレのMPバーもやや少なくなってきている。

 村に戻って早めにログアウトする事にしました。

 明日、早めにログインしたら同じ事だ。

 そうだ、そうしよう。

主人公 キース

種族 人間 男 種族Lv15

職業 グランドサモナー(召喚魔法師)Lv1

ボーナスポイント残 24


セットスキル

杖Lv12 打撃Lv9 蹴りLv9 関節技Lv9 投げ技Lv9

回避Lv9 受けLv9 召喚魔法Lv15 時空魔法Lv7

光魔法Lv8 風魔法Lv8 土魔法Lv8 水魔法Lv8

火魔法Lv8 闇魔法Lv8 氷魔法Lv6 雷魔法Lv6

木魔法Lv7(↑1)塵魔法Lv6 溶魔法Lv6 灼魔法Lv6

錬金術Lv6 薬師Lv5 ガラス工Lv3 木工Lv5

連携Lv11 鑑定Lv11 識別Lv11 看破Lv3 耐寒Lv5

掴みLv9 馬術Lv9 精密操作Lv11 跳躍Lv5

耐暑Lv5 登攀Lv5 二刀流Lv9 解体Lv7

身体強化Lv7 精神強化Lv8(↑1)高速詠唱Lv9

魔法効果拡大Lv6 魔法範囲拡大Lv6


装備 呵責の杖×1 呵責のトンファー×2

   呵責の捕物棒×1 怒りのツルハシ+×2 白銀の首飾り+

   雪豹の隠し爪×1 疾風虎の隠し爪×2 雪豹のバグナグ×1

   草原獅子のバグナグ×1

   闘牛の革鎧+ほか 呵責の腕輪×1

   暴れ馬のベルト+ 背負袋 アイテムボックス×2


所持アイテム 剥ぎ取りナイフ 木工道具一式


称号 老召喚術師の弟子、森守の紋章 中庸を知る者

   呪文辞書 格闘師範


召喚モンスター

ヴォルフ グレイウルフLv3

残月 ホワイトホースLv2

ヘリックス ファイティングファルコンLv1→Lv2(↑1)

 器用値 12

 敏捷値 26

 知力値 23

 筋力値 13(↑1)

 生命力 12

 精神力 14(↑1)

 スキル

 嘴撃 飛翔 遠視 広域探査 奇襲 危険察知 空中機動

 風属性

黒曜 ミスティックアイLv2

ジーン ブラックバットLv1

ジェリコ マッドゴーレムLv1

護鬼 鬼Lv7

戦鬼 レッサーオーガLv1

リグ スライムLv7

文楽 ウッドパペットLv5

無明 スケルトンLv6

ナインテイル 赤狐Lv5

ヘザー フェアリーLv5

ティグリス タイガーLv3

クリープ バイパーLv3

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