1304 蛇足の蛇足17 来客
ども、黒曜です。
種族はフォレストアイ、要するにフクロウです。
名前の由来は黒曜石、瞳の色が似ていたみたいです。
今は違ってますけどね・・・
どうも最近、召魔の森が変な雰囲気です。
まあドラゴン達が常駐するようになってから奇妙な感じだったけど!
その原因はマスター。
最近、思い悩む事が多いんです。
皆、少し距離を置いて心配してます!
今も護鬼と鞍馬が対戦しているのを眺めつつ何か考え込んでます。
・・・いや、空気を読んでいないのがいるな・・・
ルベルちゃん!
マスターの頭の上で踊らないで!
それにそこ、僕の指定席だから!
・・・他にも空気を読まないのがいるような・・・
いや、空気が読めない、かな?
マスターがこんな状態なのをいい事に悪さをしそうな連中がいる。
気を引き締めて見張っていないと!
ねえ、ヴォルフ団長!
・・・あれ?
団長?
団長ってば!
どうしたんですか団長ッ!
マスターが元気ない時こそ団長がしっかりしてないと!
え?
団長も悩み事がある、と。
悩み事、ですか?
珍しいですね。
僕が相談に乗ってもいいですけど・・・
はい?
他人には言えない重要な話を聞いちゃった?
いや、聞かされた?
・・・僕には話していいと思いますけど?
ほら、他人じゃなくて家族みたいなものじゃないですか!
え?
理解が追いつかなくて説明出来ない?
僕じゃダメって事ですか?
・・・そうじゃなくて文字通り団長ご自身が理解出来ていない、と。
一体、何を?
はい?
整理出来たら最初に僕に話す、と。
何だか深刻みたいですけど大丈夫ですか?
ええ?
大丈夫だから見回りしとけ、ですか?
お任せ下さい!
これでも団長に次ぐ古参勢ですからね!
さて、と。
召魔の森の上空から俯瞰してみると?
うん、普段と変わらない風景だ。
相変わらずだ。
各々の塔の最上部にはドラゴン達が鎮座していた。
アイソトープ、メジアン、パンタナール、ビーコンがいる。
それに水晶竜様に黄晶竜様、エルダードラゴンの最長老様に翠玉竜様か。
相変わらず体表の色が各々異なっていて実に美しい。
特に水晶竜様が見事だ!
水晶竜様はほぼ無色の体表だが周囲の光を乱反射する。
だから周囲のドラゴンと異なり全く別のドラゴンかと思う事すらある。
今日は緑色と黄色の対比が素晴らしい。
ただ、これが困る。
見とれてしまい監視に支障が出てしまう!
・・・いや、いた。
よく見たら問題児達がドラゴンの頭上にいる。
ナインテイルと命婦は共に水晶竜様の頭上にいた。
・・・失礼な事、してないよな?
いや、真面目に観戦しているけど。
蜂蜜の瓶は持っていない、か。
大丈夫。
多分、大丈夫。
間違いなく幻影じゃない!
エジリオはパンタナールの頭上か。
こっちも意外と真面目だ。
・・・あれ?
エジリオの視線の先にはマスターがおられる。
ああ、アレか。
団長に結構厳しく指導されていたからな。
かなり効いたようだね!
アイソトープとメジアンの頭上には各々、獅子吼と雷文。
・・・珍しいな。
ま、問題ないだろう。
それに問題児が悪さをするようなら動いてくれる筈。
共に真面目だから心配ないだろう。
黄晶竜様の隣にエルミタージュ、エルダードラゴンの最長老様の頭上にナーダム。
それに翠玉竜様の頭上にはノワールか。
問題ないだろう。
・・・待て。
これって問題かな?
ビーコンの頭上にいる言祝と折威がいる。
でも観戦している様子じゃない。
お互いを見ている?
何をしているんだ?
待て。
・・・君等、何をイチャついているんだ?
いや、お互いに悪魔だし仲良しなのは以前からだけどさ!
最近はより親密になったみたいだ。
無論、団長も知っている。
放っておけと言われてるけど・・・
どうなんだろう?
対戦中なんだしちゃんと観戦しろって言っとくべき?
・・・ん?
門番の酒船から合図だ。
どうやら来客があったみたいだけど・・・
遠目からでも分かる。
マスターの師匠達だ!
「ホーーーーーーッ!」
こちらからも合図を出す。
酒船が門を開ける。
獅子吼と雷文も飛び立って門の方に向かってお出迎え。
多分、城館の中では久重達が饗応の準備を始めている筈。
当面はこれでいいけど・・・
用件は何かな?
・・・あ、魔神もいる。
いつものアレかな?
最近、あの方々はこの召魔の森によく遊びに来る。
それもマスターのお仲間が来ていない所を狙って、来ている。
今回の目的も闘技場での対戦だろう。
対戦相手は様々だけど、魔神とマスターの対戦は毎回やっている。
・・・マスターも対戦の時は元気になるし有り難い。
いや、何か違うような気もするけど・・・
連絡はしてあるけど念の為に団長の所にも行っておこう。
無論、マスターの所にもね!
「来たか筋肉バカめ」
「ああ、来たとも」
団長、闘技場で対戦をしていた護鬼と鞍馬はどうでした?
今回は鞍馬が執念で判定勝ち?
へー、頑張りましたね。
「まだ我をそう呼ぶか?」
「嫌か?」
「お母さんが嘆くぞ?」
「・・・それを言うなッ!」
マスターと魔神の挨拶が終わり早速始まったけど・・・
ねえ、団長。
ちょっと今日は雰囲気が違いますよね?
団長も違うと思う?
やっぱりですか。
ジュナ様、ですね。
オレニュー様、ルグラン様もどこか表情が固いですし。
何かあったみたいです。
勘ですけど深刻な感じがします!
・・・団長?
団長がジュナ様の元に駆け寄る。
そんなに愛でて貰いたかったんですか?
僕もオレニュー様の杖の上を止まり木にして落ち着く事にした。
「ジュナ様?」
「このまま待ちましょうか」
「出来るだけ早い方が・・・」
「大丈夫よ、ルグラン。すぐに終わらせるように言ってあるし」
闘技場を見る。
魔神から感じ取れる恐るべき闘気!
こんなの、これまでに見た事がないぞ!
その魔神はマスターを背後から裸絞めを極めていた。
どう考えても詰んでる!
マスターがまさかの瞬殺?
「ね?」
「・・・恐ろしい奴ですな・・・」
「ジュナ様。魔神は何故、普段から全力を出さないので?」
「面白くないから、じゃない?」
「はあ」
うーん、この。
マスターも大変だ。
魔神の本名はハヤト。
何故かマスターの父親らしい。
そしてジュナ様が母親なのだとか・・・
うん。
大変な家族構成だけど納得出来てしまう。
ねえ、団長?
・・・
あれ?
「心配しなくても大丈夫。キースはキースなのだから」
ん?
ジュナ様が語りかけている相手は間違いなく団長だ!
・・・
ヴォルフ団長、何かあったんですか?
「勝負は一瞬じゃったの」
「オレニュー師匠、お恥ずかしい」
「いや、儂ではあんな戦いは出来んしの」
「ハヤトちゃん、お疲れ様!」
「疲れる暇もなかったがな」
あ、マスターの視線がマズい。
本気の目だ。
急激に殺意が膨らんでいるけど・・・
「言ったな?」
「おお、言ったがどうした?」
「闘技場に降りろ。大いに疲れさせてやろう」
「期待しよう」
あ、やっぱり。
最近、マスターってば簡単に挑発に乗っちゃうんだよな・・・
「キースちゃん、今日は大事な話があるから! 早めに終わらせてね!」
「悪いが我はそう簡単に負けはせん!」
「あらそう?」
で、魔神もまた挑発に乗っちゃうんだよな・・・
やっぱり家族だと納得するしかない。
ねえ団長?
・・・あれ?
ジュナ様に甘えまくってもう!
団員が皆、見てますよー!