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1284 蛇足、だよねえ

本日一回目の更新です。

この一文を書くのも久し振り・・・

 今日はいい天気だ。

 昨日は大雨だったので漁はS1W14マップで実施した。

 海中戦だったから天候は関係ない。

 一昨日までは召魔の森の地下洞窟に数日間通い続けている。

 戦力の底上げを考慮してもう少しこっちで漁をしておきたかった。


 今日はW15マップの浅瀬で連戦中になってる。

 テイラーが発光を使って魔物を呼び寄せてくれているから獲物は多い。

 うん、多いのはいいんだが。

 問題がある。

 これ、どうしよう?



『足りんぞ!』


『キースよ、もう少し。もう少しだけいいか?』


「えー」


 問題とは?

 ここにいるドラゴン達だ。

 数はそう多くないがメンバーが酷い。

 金紅竜、柘榴竜、蒼玉竜に水晶竜。

 各々が自らの巣を構える名前を持つドラゴンの長達。

 あの、自分の巣の管理は大丈夫なんですかね?

 確かに各々の巣には留守番役のエルダードラゴンが複数いる。

 それは知ってる。

 でも責任者が長期不在なのはどうかと思うぞ?

 当然だけど面と向かっては言えない。

 オレは小心者なのだ。


 極めつきなのは紫晶竜。

 ドラゴン達の長をも統べる、長の中の長。

 自前の巣だってある。

 昨日も来てましたよね?

 ああ、黄晶竜はずっといていいぞ。

 そして大いに魔物を食べて大きくなってね!

 最近、海魔の島に配置したポータルガード達と仲良く漁をしている。

 無論、引率役にエルダードラゴンの最長老が同行するから心配はない。


 いや、心配かも?

 最長老が頻繁にW14マップに行っている理由は知っている。

 あの海域には弥勒菩薩が出現した実績があるからだ。

 両者にどういった因縁があったのかオレは知らない。

 ただ最長老が弥勒菩薩を敵視しているのは確かだ。

 そして煙晶竜も常に同行している。

 こいつも何か弥勒菩薩と因縁があるに違いない。


 他にも各所から派遣されているドラゴン達もいる。

 今は十五体、だろうか?

 ドラゴン三体で編隊を組むのが通例だから五つの編隊数になる。

 おかしい。

 以前は編隊数にして四つだった筈だ。

 いつ増えた?

 全然、気付かなかったよ!


 彼等は海魔の島に交代で駐留する戦力になるが果たしてその実態はどうか。

 明らかに美食を満喫している。

 ただ物見遊山ではないし自前で魔物を狩っているのだし文句は言わない。

 どうも彼等にとってこの周辺の魔物は好ましいようだ。

 特にW15マップの浅瀬にいる魔物は別格だろう。

 その原因が目の前にいた。


 元始蜃帝だ。

 その姿は巨大なハマグリである。

 既に事切れていて動かない。

 最初に戦った頃は厄介な相手であったが、今や食材にしか見えなくなった。

 ただこの魔物からは貴重なアイテムを得られる可能性がある。

 剥ぎ取りナイフを突き刺せば済む話だが、まだ出来ない。

 ドラゴン達がその味を堪能しているからだ。


 しかもこの元始蜃帝は調理済みだった。

 普通に貝柱の表面を炙るだけなのだが、その火加減は難しい。

 調理出来るのは最長老か煙晶竜だけだ。

 オレも一度、挑戦したが大いに焦がしてしまった。

 仕方ない。

 オレはカレーだって不味く作ってしまうような男。

 料理は鬼門だ。


 他にも獲物には撃針海栗、ジュエルオマール、セイクレッドクラブ、拳帝シャコもいた。

 ドラゴン達はこれらの魔物を生で殻ごと食べてしまう。

 だから既に死体は見当たらない。

 まあいい。

 剥ぎ取り作業が出来ない程、獲物が多いからいい。

 ただ元始蜃帝だけは見逃せない。


 浅瀬にはオレ配下の召喚モンスター達もいる。

 ポータルガード達だけでも十六体。

 パーティ配下の召喚モンスターは五体。

 ここの浅瀬で漁をするには十分な戦力だ。

 テイラーは発光を使って魔物を大量に呼んでくれる、有り難い存在だ。

 それでも足りそうにないとは悩ましい。

 あ、テイラーにはマナポーションを与えておこう。

 もう少し頑張って貰わないといけないようだしな!



『待たせたな、キース。もういいぞ』


「はいはい」


 剥ぎ取りナイフを元始蜃帝の死体に突き刺す。

 蜃帝真珠は無事回収出来て良かった。


 しかし困った。

 狩り、いや漁に緊張感が全く伴っていない。

 特に最長老と煙晶竜はクォークの背中でゴロゴロしているだけだ。

 いや、最長老は元始蜃帝を炙って調理しているけどさ!

 煙晶竜はずっと惰眠を貪っている。


 だが、そこにパンタナールが来襲!

 黄晶竜も一緒だ。

 各々の頭上にナインテイルと命婦がいる。

 多分、けしかけたのはナインテイルだな。

 煙晶竜に遊んで貰いなさい!



『次、いけるか?』


「ええ。でも次で最後にしますよー」


 紫晶竜のリクエストに軽く釘を刺しておいて、と。

 テイラーの脚を軽く叩く。

 頼むぞ!

 今日、最も活躍したのは間違いなくお前だ!


 テイラーの全身が虹色に輝く。

 昼間なのが残念。

 夜間に発光しているテイラーの美しさは格別なのだ。




『邪魔だッ!』


『『『『『ッ!?』』』』』


 何だ?

 頭上でドラゴン達の編隊が散開、幾つものブレスが交錯している!

 そして急降下してくる二つの影。

 周囲に飛沫をまき散らして着地した!

 その衝撃でジュエルオマールとセイクレッドクラブが吹き飛んでいる!



 琥珀竜 モスドラゴン ???

 ??? ??? ???

 ??? ???


 雲母竜 スカラブドラゴン ???

 ??? ??? ???

 ??? ???



 うん。

 ヤバそうなのが来た。

 テイラーの発光の効果かな?

 違うような気がする。


 数々のドラゴン達のブレスが地上に向けて放たれた!

 全て直撃しているが効果はどうか?

 琥珀竜には届いていない。

 雲母竜は表皮で弾いているようだ。

 要するに効果なし?



『金紅竜、貴様に用は無い! 失せろ!』


『雲母竜、それに琥珀竜か!』


 一番近くにいた金紅竜が本気になった?

 元々、強大な魔力が更に高まっている。

 全身の輝きがより強まっていた。

 琥珀竜も極彩色のドラゴンで美しさを競うような様相だ。

 でも待て。

 ここで上位のドラゴン同士で戦争でもするの?



『お前等こそ食事の邪魔だ!』


 言っちゃった!

 食事って言っちゃった!

 まあそのつもりで来てるのは知ってたけど!

 金紅竜からブレスが放たれる。

 同時に雷撃の雨。

 ブレスは琥珀竜に防がれているが雷撃は効いてる?


 雲母竜が突進してくる。

 だがその前に巨大な壁。

 えっと、最長老?



『ヌッ?』


『最長老様! おどき下さい』


『まあ落ち着け、金紅竜よ』


 最長老の前で金紅竜が一歩下がる。

 雲母竜と琥珀竜は下がるだけでなく、浅瀬に伏せた。

 戦意がない、と態度で示す形だ。

 いや、最長老に敬意を示しているのかも?



『雲母竜。それに琥珀竜。お主等も戦うだけの為に来たのではあるまい?』


『その通りです、最長老様』


『ならば、よし。紫竜晶様も宜しいですな?』


『う、うむ』


 紫晶竜も普段の最長老の姿しか知らない、と思う。

 茫洋としていて反応が極めて遅いのが常であるからだ。

 いや、最長老の正体を知っていておかしくないか。

 紫晶竜はドラゴンの長の中の長。

 その上、歴代の記憶を受け継いでいる。

 少なくとも先代の紅晶竜の記憶は持っている筈だ。



『では雲母竜に琥珀竜。お前等は何の為に来た?』


『貴様に話す必要などない』


『然りだ』


『何だと?』


 一転して金紅竜に対しては喧嘩腰になる雲母竜と琥珀竜。

 あ、怒ってる。

 金紅竜が怒っているのが分かる。

 まだ自制が効いているけど暴発しないだろうな?

 一抹の不安がある。



『これこれ、言葉遣いは慎重にせんか』


『『『しかし最長老様!』』』


『紫晶竜様。ここで揉め事はキースにも迷惑じゃと思いますがの』


『う、うむ。そうだな』


『キースよ、騒がしくなって済まんの』


「あ、はい。大丈夫です! 気にしてないですから」


 オレに何が言える?

 無難に答えるだけだ。

 紫晶竜の後方に全てのドラゴンが控える。

 戦意旺盛な面々だが紫晶竜の指示には従うより他ない。



『で、キースよ。そこの魔物なんじゃが、いいかの?』


「えっと」


 最長老の視線の先に元始蜃帝が三体。

 但し全て事切れている。

 つまり炙っていいか、と聞いてる訳だ。

 そっちが優先なの?



『紫晶竜様。雲母竜と琥珀竜にも振る舞っていいですかの?』


『う、うむ。好きにして良い』


『ところでお主達。何か用件があるんじゃろ?』


『『アッ!?』』


 雲母竜と琥珀竜が互いを見る。

 どうやら興奮し過ぎて用件を忘れていたのか?

 ドラゴンの表情は分かり難いけど、分かるぞ。

 しまった、失敗した!

 まあそんな所だろう。


 雲母竜と琥珀竜、その目の前に黒い空間が出現した。

 転移門か。

 黒曜竜が使っている所は何度か見ている。

 但しその大きさは小さい。

 門の向こう側は星空。

 オレの期待通りだろうか?


 そこから現れたのは?

 期待通りだった。

 あの筋肉バカだ! 


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ドラゴンの「しまった!?」って顔は一体どんな顔なんでしょうね…w
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