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1281 蛇足?

急に書きたくなったので書いてしまった。

反省ならしていない。

別視点で販促SSとか書いたのがいけないんだ!


「そろそろやるか」


『ああ』


『やるからには本気でやる。いいのだな、我が友よ』


「勿論だ。そうでなくては意味がない」


 雲母竜が一歩、前進する。

 これまでにこのドラゴンとは何度も対戦をしている。

 戦闘スタイルは単純、物理攻撃が主体だ。

 牙、爪、角、尻尾、そして翼までもが凶器。

 全身が鈍器と言えなくもない。

 岩で出来たドラゴンのような佇まいだ。


 この雲母竜と一対一の対戦で負けた事はない

 だがそれは稽古の範疇であるからだ。

 死を賭した戦いでどうなるのか、予想は出来ない。



『しかし面倒な』


「済まんな、琥珀竜よ」


 琥珀竜はオレンジ色を基調とした極彩色の蛾ような姿だ。

 ドラゴンなのにドラゴンのように見えない。

 だがその外見からは想像し難いが鉄壁に近い防御力がある。

 強力な結界を複数、常時張り巡らせているからだ。

 そして攻撃は手数優先になる。

 この琥珀竜との対戦はそう多くない。

 そして雲母竜と同様、一対一で負けた事はない。


 だがこの両者を同時に相手をするのは今回が初めて。

 その上、死を賭して戦うとなればどうなる?

 雲母竜も琥珀竜もドラゴンの長達に匹敵する実力があるのだ。

 魔神としての恩恵があるとしても勝算はかなり低くなる筈。

 紫晶竜の巣を攻略した際も魔神全員が必要だった。

 しかも入念な準備をした上で、最終的には失敗に終わっている。

 巣を占拠はしたが最後の最後で結界を張られて捕獲出来ていない。



「そうだ、戦いを始める前にお前達には伝えねばならん」


『今更、何をだ?』


「我の名だ」


『『?!』』


 雲母竜も琥珀竜も、かつては誓約と制約に縛られた存在だった。

 今は違う。

 自らに課した約定があるだけ。

 それは私ともう一人に対してのものだ。

 そして彼等は私の事を我が友と呼ぶ。

 それだけで十分だった。

 そう、これまではそうだった。



『魔神が名を持っていたとはな。知っていたか、琥珀竜?』


『いや、知らぬ。聞いた事がない』


「そうであろうな」


 魔神と化す際、最初に失うのは自分の名であるからだ。

 そしてその事も忘れて思い出せない。

 これは代償の一つなのだ。


 だが私は知っている。

 正確には思い出した。

 まだ確信出来ないが、思い当たる節ならある。

 だから確信を得る為に、私は行く。

 行かねばならぬ。

 その為には雲母竜と琥珀竜の助力が必要だ。



「我の名は、ハヤト。今後はそう呼べ」


『ハヤト、か。不思議な響きがする』


『確かに』


 ハヤト。

 語源は薩摩隼人。

 父が私に名付けた名前でもある。

 ゲームでもカタカナ表記で使っていた名前。

 その事も思い出した。

 しかも幾つもの苦い記憶を伴っていた。



「では、始めようか」


『承知した』


『我が友よ。いや、ハヤトよ。勝たせて貰うぞ』


「簡単に勝てると思うなよ?」


 いかんな。

 分かる。

 分かってしまう。

 私は今、間違いなく笑っているだろう。

 息子には絶対に見せたくない、あの邪悪な笑みだ。

 私の父に比べたら多少はマシだろうが、大した差はあるまい。

 そして息子もまた同じ笑みを浮かべていた事を思え。

 まるで呪いだ。

 血のなせる業だ。

 薩摩に生まれ戦う事を宿命とした者達の業だ。

 呪いでなければ何だというのか?



「ハッ!」


 一気に間合いを詰める。

 雲母竜は迎撃の構えだ。

 その後方で琥珀竜が翼を広げていた。

 この両者の連携はどうなのだろう?

 興味深い。

 それはすぐに分かる筈だ。




『ここは我が!』


『済まん!』


 琥珀竜が前に出る。

 同時に水の壁、その後方に土の壁が見えた。

 甘い。

 他にも結界を展開しているだろうが、同じだ。

 琥珀竜は防御力に自信があるから、基本的に回避行動をしない。

 だから最初の対戦では私の圧勝だった。


 雲母竜も琥珀竜も全ての属性を使いこなす。

 それでも好みがあるようで琥珀竜は時空属性を好む。

 だが時空の壁も私には突破する術があった。

 殴る蹴る、それだけだ。

 魔神であるが故に繰り出す拳にも爪先にも魔力が宿る。

 それは全ての属性を打ち破る凶器だった。

 魔神の恩恵にして呪い。

 並の魔物では一撃で沈んでしまう。

 凡戦に終わる戦いに興味はなかった。



「フッ!」


 だが私もまだ甘い。

 打撃に伴って息が漏れる。

 同時に殺意も漏らすな、とも教えられた。

 暗い森の中で戦うには必須なのだと。

 忌々しいが父の教えは多分正しい。

 息が漏れる次の瞬間、隙が生まれているのが分かる。



「?!」


 頭上から降り注ぐのは槍か?

 岩に水、いやそれだけじゃないだろう。

 琥珀竜は様々な属性を同時に操る事は既に知っている。

 魔力だけを見るとかなり多い!



『ムンッ!』


 更に雲母竜の巨体が落ちてきた!

 私の攻撃はドラゴンの巨体に対し点にしかならない。

 だがドラゴンの攻撃は私にとって面だ。

 私の動きが速いから対応出来ているが、それでも難儀だ。

 一対一なら打開出来る。

 それだけの自信はある。

 だが一対二ならどうか?

 どこかで飽和するだろう。


 雲母竜と琥珀竜の連携は、いい。

 前衛と後衛を交代しつつ、時に挟み撃ちの位置取りもする。

 今は頭上を雲母竜に確保され、逃げ場はなかった。



「シャッ!」


 逃げ場がないならどうする?

 逃げない。

 真正面から打開する、それが正義。

 そう教えられていたし、実行していた。

 頭上に向け、蹴りを放つ!

 降り注ぐ槍の幾つかが霧散していく。



「?!」


 だが、おかしい。

 私が放った蹴りは雲母竜に直撃した筈。

 その感触が皆無だ!



『こっちだ!』


 横合いから雲母竜、噛み付きにきた!

 即座に拳を牙に向け叩き込むが、おかしい。

 またしても感触がない!


 着地すると周囲に壁が次々と出現。

 この手は知ってるぞ?

 雲母竜は土属性を好む。

 絡め手を使うのは好まない質だが使うべき時は心得ている。

 落とし穴を使わなかった理由は?

 頭上から攻撃する為だ!


 再び頭上に雲母竜、今度は鉤爪が振り下ろされる。

 先刻のような幻影か?

 いや、ここは迎撃あるのみ!



「ッ!」


 周囲の壁が消えた。

 そうか、幻影は壁の方か!

 横合いから琥珀竜が迫っていた。

 巨大な牙の間に鋸のような細かい牙が並んでいる。

 どうする?

 私はこうする。


「ハハッ!」


 窮地にこそ笑え。

 そして楽しめ。

 狂気とも言えるがその境地は確かにある。

 父はとっくにその境地に達していた。

 キースも恐らく、達しているだろう。

 私は最近だ。

 いい気分になっているのが、分かる。


 自ら琥珀竜の口の中へ突っ込む。

 さあ、お楽しみはここからだぞ!




『無事か、琥珀竜』


『そう見えるか?』


『見えんな』


 琥珀竜は気息奄々たる様子ではあるが生きている。

 それは確かだ。

 無理をさせ過ぎた、とは思わない。

 お互いに全力で戦う。

 勝つにしても被害甚大になる事は承知の上だった。

 その筈だ。

 問題なのは予想以上だった事だろう。

 個々に見たら魔神は確かに強い。

 だがこれまで一対一で戦い負けた事はなかった。

 唯一の例外は魔神ハヤトのみだ。


 魔神ハヤトが普段の対戦で縛りを入れて戦っていたのは承知している。

 お互いに全て実力を見せていなかった。

 まさかこれ程の力を隠していたとはな!



 魔神達との戦いに破れ制約を強制されたのはいつだったか?

 あの時は複数の魔神が相手だった。

 しかも用意周到なことに複数の罠まであった。

 それだけの前準備があっては敗北するのも当然だ。

 慎重な判断力があれば罠に嵌まらずに済んだかもしれない。

 だが魔神達に拘束され使役される屈辱の日々はもう過ぎた話だ。

 もう油断しないぞ!


 魔神、か。

 これまでに数々の魔神を屠ってきた。

 魔神は何度でも蘇ってくる厄介な連中だ。

 しかも変化を伴うのが常だった。

 多くはその戦闘力が高まっていたように思う。

 全く様相が異なる場合もあったが、多くはそうであった。

 魔神ハヤトはどうなるだろう?

 辺獄には新たな力を得るために行くのではないようだが。



『雲母竜よ。マズいとは思わないか?』


『うむ。対等の友であるならば実力もそうであるべきだ』


『ああ。我等は共に力が足りぬ』


『我もそう思った。だがな、最長老様の忠告を覚えているか?』


『ッ?!』


 私も琥珀竜も、最初から魔竜ではなかった。

 普通のドラゴンだった。

 更なる力を求め、辿り着いたのが魔竜だった。

 それだけだ。


 だが、魔竜となっても届かない領域にいる強者がいた。

 神仏だ。

 神仏の化身や幻影程度なら全く問題にならない。

 神や仏そのものとしか思えない存在の前に圧倒された。

 我と琥珀竜の場合、弥勒菩薩とその眷属。

 死を賭して戦ったが勝てなかった。


 我等を救ったのは最長老様だ。

 その真の姿は神殺しのドラゴン。

 エンシェントドラゴン・オブ・ゴッドスローター。

 我等の知る最長老様とはまるで違う、その姿は衝撃だった。

 理想の姿を目の前に我等は感動で震えたものだ。

 最長老様のその姿は同世代の金紅竜達も知るまい。


 最長老様は弥勒菩薩を撃退した後、我等に様々な話をして下さった。

 既に魔竜となっていた、我等にだ!

 それは説教であった。

 激励でもあった。

 より重要な事に忠告でもあったのだ。



『力のみを求めるなかれ、か』


『うむ』


 最長老様は神をも滅ぼす力を有している。

 恐らく歴代ドラゴンの頂点。

 なのに力を求めるなとはご無体な話だと当時は思ったものだ。



『焦るな。歩みを止めてみよ。こうも言っていたな』


『そうだな、琥珀竜』


『今はいい機会だ。ハヤトをここで待つとするか』


『そうしよう』


 そうだ、今は待とう。

 魔神ハヤトが辺獄から戻るまで、ゆっくりと待とう。

 彼が新たな力を得るのか、変質してしまうのか、それは分からない。

 どうなろうとも受け入れる。

 そうでなければ友ではあるまい。


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― 新着の感想 ―
ハヤト、琥珀、雲母の話しを読んで 特効の拓の龍神、風神、雷神の3人を 思い浮かんだ
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