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「皆さん、これって何だか分かりますか?」


『椅子?』『椅子!』


『玉座みたいね。広間よりも数段、高い所にあるし大きいわ。問題は置いてあるアイテムね』


 オレにだって椅子があるって事は分かる。

 フィーナさんの指摘の通り、玉座っぽい。

 そして誰も座っていないけど、鎮座しているのは何か棒状のアイテム。

 杖かな?

 それとも剣?



『ダメね。直視するには魔力で強烈過ぎて細かい所が見えない!』


「いずれにしても手にしてみましょう」


『任せるわ。皆、準備はいい?』


『ダークネス・フィールドは効果があるかな?』


『ブリザードとかホワイトアウトは?』


『状況がどう変化するか分からないわ。そのまま待機で!』


 さあ、ここからだ。

 こんな環境で戦闘とか、どうなんだろう?

 だが、オレの場合はこれまでにこれと似通った環境で戦った事がある。

 それを思えば大丈夫。

 十分、戦える自信があった。



「では、行きます!」


 手を棒状の何かに触れる。

 さあ、どう変化するんだ?





「見えますか?」


『ええ。キース、センス・マジックの仮想ウィンドウをもう少し狭めてくれる?』


「了解」


 オレが触れたのは椅子に置かれた短い棒、でも細かい彫刻が施されているようだ。

 先端には大きな球体が備わっていた。

 そう、見える。

 周囲の風景も普通に見える。

 ここって城の広間だよな?

 見渡す範囲で人影は確認出来ない。



【装飾アイテム:王笏】魔神の王笏 品質X レア度?

 M・AP+??? 重量2+ 耐久値???

 魔神の権威を象徴するアイテムの1つ。素材は不明。

 その先端には邪結晶が嵌め込んである。

 持つ者によりその祝福と呪詛が異なる特殊な王笏。

 ※効果???


《これまでの行動経験で【鑑定】がレベルアップしました!》


 おい。

 呪詛って!

 呪われているじゃないか!

 触ってしかったけど大丈夫なのか?

 ここに置いたままにした方が良さそうだ。



『広域マップの表示が無い?』


『マグネティック・コンパスも表示がグルグル回ってる!』


『何だこれ?』


『落ち着きなさい! そのまま待機、会話は最小限に! キースの行動の邪魔よ!』


 皆が騒ぎ始めるのをフィーナさんが一喝、黙らせている。

 有り難い。

 オレとしては周囲への警戒を解く事が出来なかった。

 黒のローブがあるけど、それで完璧に身を潜めていられるとは思わないぞ?

 もし、バレるようなら魔人として振る舞えばいい訳だが。

 それだってちょっとした保険程度でしかない。



「広間の外を確認します」


 返答は無い。

 つまりこのまま続行でいいって事だ。

 この広間だが吹き抜けになっているようで、風を感じる。

 それに支柱と支柱の間から、外の光景の一部が見えていた。

 城壁の向こう側には山かな?

 それにしては不思議だ。

 センス・マジックで見る風景では、その山の方が輝いて見えるのだが。

 これは一体、どういう事だろう?





 ウトガルド・ロキ ???

 ??? ??? ???

 ??? ???



《これまでの行動経験で【識別】がレベルアップしました!》


 えっと。

 山かと思ったら違ってます。

 ウトガルド・ロキ。

 分身とは比べられない程の大きさ、横たわっているとまるで山が迫っているみたいだ!

 動きは無い。

 巨大な頭部は力無く傾いていて、その表情は虚ろだ。

 いや、死んでいるんじゃないのかな?

 そう思えるけど死体なのかどうか、マーカーからは読み取れない。


 他に気になるのは?

 ウトガルド・ロキの手前で様々な魔物が蠢いているのが分かる。

 魔竜の群れか。

 アストラルドラゴン、ユニバーサルドラゴン、ボイドドラゴンが並ぶ様子は壮観だ!

 半数以上はアラバスタードラゴンと思われる。

 キムクイガーディアン・スレイブ達もいた。

 追従戦力もガルムを始め、ゾロゾロいて大変な規模だ!


 ダメだ。

 まだ、ダメだ!

 全部、ここで仕留めたくなるような有様だが今は我慢だ。

 これだけの戦力を束ねる存在、当然だけど総大将に相当する奴がいる筈。

 ガルムよりも小さな影がウロウロしているけど、きっと魔人だな。

 捕らえて情報を聞き出してみたい所だが、名前持ちじゃないど会話が成立しない。

 いや、これだけの規模の戦力であれば魔神だっているかも?


 蹄の音が迫る。

 スレイプニル・スレイブが4騎、鞍上には残らず魔人が騎乗していた。

 魔人のうち、1人は変態魔人だろう。

 パントマイムメンターだ!

 殺意が漏れそうになるのを抑え込むには全力を傾ける必要があった。

 慌てるな!

 オレは城壁の上に佇んでいるのだが、黒のローブを着込んでいる。

 その上、インビジブル・ブラインドの効果もある。

 実際、こっちに気付く様子は無い。



『ウトガルド・ロキ?』


『北欧神話に出て来る巨人だ。何だってここに?』


『これ、死んでませんか?』


『皆、静かに! 話すなら小声で、個別に話をするならテレパスを使って!』


 再びフィーナさんの一喝だ。

 しかし皆が騒ぐのも当然だろう。

 確かにこんな光景を目にしたら黙っていられるかどうか。

 オレにだって自信は無い。



『キース、ここからどうするつもり?』


「戦力の全容を把握、ですかね?」


『何が行われているのか、気になるわね』


「ええ、気になりますね」


『このまま潜入するつもり?』


「ええ。出来れば情報を聞き出せそうな相手がいたらいいんですがね」


『任せるわ。無茶はしないでね? 場合によっては影から全員出撃、戦闘していいわよ?』


「了解」


 さて、どうするか。

 単なる魔人を狙うのは非効率、こういう時は拠点としている奴を狙うのがいい。

 キムクイガーディアン・スレイブは移動する要塞そのものだ。

 ここから見えるのは8体か。

 そのどれかの頭上と甲羅の上に総大将がいてもおかしくない。


 全部、調べてみよう。

 多少、手間になるが大将の数は限られる。

 やれるよね?






「ッ?」


「そのまま、声を出すな。死ぬぞ」


 声を出すなと言ったけどね。

 首にはオレの腕が絡んでいて裸絞め、喉は半ば潰しつつある。

 声を出したくとも出せないよね?


 いきなり最初の亀の頭上に名前持ちの魔人がいたんだが、こいつが問題だった。

 ステンテレッロ。

 要するにオレと被ってるよ!


 一緒にいた魔人は4名。

 呪禁導師、ソードダンサー、カードマジシャン、フォーチュンテラーだ。

 各々、テロメア、ヘイフリック、待宵、キレートが仕留めている。

 その全てが無音である所が恐ろしい。


 ステンテレッロの仮面を外す。

 うん。

 無駄に美男子だが今は顔面を殴るのは注視だ。

 その表情に浮かぶのは、恐怖。

 まあいきなり襲われたらこうなるよね?



「これ程の規模の軍勢をお前が率いているとは思えないな。誰だ?」


 僅かに裸絞めを緩める。

 息をするのに必死だが、これで終わりじゃないぞ?

 オレが手にしているのはグレイプニル。

 梱包の時間だ!


 グレイプニルで縛り上げたら、その相手の戦闘能力を完全に奪う事が可能だ。

 だが、声を出す事を防ぐ事にはならない。

 騒がれてしまってはいけません!

 ついでに魔人の指輪も外しておこうか。

 今、ステンテレッロが別にいる状態は好ましくない。

 オレがステンテレッロなのだから当然だな!



「ここで答えなくていいぞ?」


 ステンテレッロの体を手早く梱包し終えると、その体がオレの影の中へと沈んで行く。

 テロメアとヘイフリックも一緒だ。

 シャドウ・ゲートの中には大勢のプレイヤーが潜んでいる。

 声が漏れる事も無い。

 色々と話を聞き出すには都合がいいのだ。


 本当はオレ自ら、説得するのがいいんだろうけどね。

 今回は控えましょう。



「フィーナさん?」


『魔人を確保とは、やるわね』


「情報は聞き出せそうか、試して頂けますか?」


『やってみるわ。私じゃ自信が無いけど』


「ゼータ、聞こえてるな?」


『は、はい!』


「時間が無い、君に任せる。多少、強引な手を使っても構わない」


『りょ、了解!』


 ゼータくんは元PKK職でアヴェンジャーだった。

 その頃には復讐相手を追跡するのに色々と人には言えない事もしているのだ。

 拷問には慣れている筈。

 いや、説得だ説得!


 影の中からテロメアとヘイフリックが上半身だけを出してオレを見上げていた。

 次の指示を待っているのかな?

 いや、彼等にも出来る事はあるぞ?



「死なない程度に血を吸ってやれ。魅了も使っていい」


 オレの言葉にテロメアは艶然と笑い返した。

 ヘイフリックは珍しく、冷酷な笑みを浮かべている。

 まるで本物の吸血鬼みたい?

 いや、そう表現するのもおかしいけどな。

 ヤンキーのような態度が消えている。

 多分、テロメアが傍にいるからだろう。

 真面目に吸血鬼をやっています。



『キース、このまま続行?』


「ええ。亀の上にいる魔人を掃討しておきます」


『魔の神がいるかもしれないわよ?』


「ええ、そうでしょうね」


 勿論、いる可能性は高い。

 それこそがオレの狙いだ。

 オレだけで仕留められるとは思わない。

 それにオレの存在がバレて戦闘となってしまったら?

 ここにいる全戦力を相手にする事になる。

 正直、切り札無しでは無理があるぞ!







「ッ?」


 怒炎蛇竜神の小剣がアルレッキーノの鎖骨の凹みへと吸い込まれている。

 その剣先は心臓を貫いている筈。

 アルレッキーノの全身は痙攣し、そして動かなくなった。

 これで名前持ちの魔人は4人目だ。


 他の魔人は4名、これも声を出す事なく仕留めたようだ。

 待宵とキレートは普段通りで驚くには値しない。

 与作と各務の手際が見事だ!

 共に黒のローブを身に纏い、まるで暗殺者に見える。

 与作は柔道をしていただろうから納得だけどね。

 各務も中々の手際だったぞ?

 関節技や絞め技は覚えたばかりと聞いたし、その技を実際に使って試したいとも聞いた。

 それをこういう形で実現出来たとは、重畳だろう。

 彼等に手伝って貰っているのは理由がある。

 テロメアとヘイフリックは拘束した元ステンテレッロを説得中なので手が足りていないからだ。



『キース、情報が取れたわ。魔の神は今、揃ってあの巨人の所にいる』


「何をしているかは?」


『巨人の血肉を使って戦力を増強しているって聞いたわ』


「え? 巨人の血肉、ですか?」


『生贄らしいわ』


 それでここにはこんなにも戦力がいるのか!

 しかしどうやって?

 そんな疑問もあるけど重要なのはそこじゃない。

 魔神だ。

 ここに魔神がいるだと?



『キース?』


「魔の神とやらの元に行きます」


『奇襲、かしら?』


「ええ。亀の上に名前持ちの魔人が消えてますから、騒ぎになるのも時間の問題でしょう」


『無茶に見えるけど、総指揮官を潰すのは戦略的に正しいわね。でも!』


「ここの戦力ですね? 【英霊召喚】に【精霊召喚】は可能な限り注ぎ込むべきでしょう」


『ああ、やっぱりここの魔物は全滅させるつもりね?』


「勿論」


 そこは妥協していい所じゃない。

 それに時間が限られている。

 同行しているプレイヤーも延々とログインしていられる訳ではないのだ!

 早々に仕掛けて片付けちゃましょうよ?



「どうだ? やれると思うか?」


『やれるかどうかは関係無いんだろう? ただ、やる。それだけさ』


『ここまで来て、今更逃げ帰るのもどうかと思うわ』


 目の前にいる与作と各務の意見はこうだ。

 うん。

 獲物を目の前にして戦わずに帰る選択肢って無いよね?

 そもそもまだ影の中で潜んでいる面々はまるで暴れ足りていないだろう。

 その機会は作るべきだ。


 安心して下さい。

 どんな流れになるかは不明だけど、ここにいる戦力は十分な数がいる!

 獲物に不足する事は無い筈だ。



『分かった、準備を進めておくわ』


「ところでここはどんな場所なのか、聞いてくれますか?」


『聞いてあるわ。辺獄、その内の1つだそうよ?』


「え?」


 辺獄って。

 ここが?

 何だか普通の光景に見えちゃうんですけど?

 横たわるウトガルド・ロキのい巨躯と、その周囲に展開する戦力の数々が異様なだけだ。



「辺獄、で間違いないですか?」


『ええ』


 うーむ。

 辺獄、か。

 ここが辺獄であり、魔神が辺獄にいるというその意味は?

 死に戻っているって事にならないだろうか?

 魔神は死んだら辺獄送りになるという事だが。

 では、辺獄で死んだらどこに送られるのだろう?


 うん。

 分からん!

 分からないなら考えても無駄だ!



『キース、どうかしたの?』


「いえ。何でもないです」


 今、すべき事は何か?

 魔神がいるなら全滅させておくべきだ。

 場所が辺獄であろうが、やるべき事は変わらない。

 キッチリ、殺しておこう。

 慈悲は無い。



『まだ聞きたい事があるかしら?』


「いえ、もう特に無いです」


『了解』


「始末は私の召喚モンスターにやらせます。まあ、死体も便利に使わせて貰いましょう」


 元ステンテレッロにはもう用事は無い。

 梱包に使ってあるグレイプニルだって回収せねばならない。

 では、死体は?

 ヘイフリックに任せよう。

 死霊生成のスキルでアンデッド化する事で戦力になってくれる筈だ。


 同行者がたっぷりいるんだし、余計かもだがそこはそれ。

 僅かでも戦力は多い方がいいのだ。







 ??? ???

 魔神 ??? ???

 ??? ???



 ??? ???

 魔神 ??? ???

 ??? ???



 ??? ???

 魔神 ??? ???

 ??? ???



 ??? ???

 魔神 ??? ???

 ??? ???



 ??? ???

 魔神 ??? ???

 ??? ???



 確かに。

 ステンテレッロの言う通りです。

 オレが知る魔神が勢揃いだ!

 例外はあの筋肉バカの魔神だが、まあここが辺獄であれば仕方ないか。

 ステンテレッロには感謝せねばならないな。

 でももう遅い。

 オレが首を捻り折って仕留めてしまったからだ。

 感謝したくなった時にはもうその人はいない。

 残念だ。

 非常に、残念だ。

 本物の情報だったとは思わなかったよ!


 オレの位置から一番近いのは元法騎士ドラゴーネだ。

 以前と比べて装備が変わったな?

 腰に佩く剣は正統派の片手剣、左手には方形の盾でいかにもゴツい。

 全身を覆う金属鎧は漆黒、鈍い光を反射していた。

 新品で使い込んでいないようです。

 脇に抱える兜はフルフェイス、まるで悪魔を連想するデザインだ!

 だが、今の状態なら奇襲で仕留められるかな?

 どんなにいい兜であっても装備してなきゃ意味が無い。

 延髄に金剛杵を押し当てて刃を展開。

 ついでに接触型呪文の詰め合わせでどうかな?

 それで沈まないようなら氷の棺桶か鉄の棺桶に封じ込めておくべきだろう。


 元法騎士ドラゴーネから少し離れた位置に妖艶な女魔神だ。

 ちょっと問い詰めたいのはその格好だな!

 何で薄着に?

 戦闘には全く向かない、肌の露出多目の出で立ちで目のやり場に困る。

 天宇受賣命やアプサラスに比べたらマシだけどね。

 気になるのはその露出した肌にも入れ墨がある事だ。

 勿論、顔にもある。

 デザインは以前とはまた別なのだろう。

 妖しい雰囲気は全開だ!

 そして断言しよう。

 駿河、それに野々村!

 この光景を見ているだろう?

 スクリーンショットにして保存しているだろう?

 分かっているぞ!

 だから感謝するがいい。

 視界に表示してある仮想ウィンドウは全て最小化、撮影の機会をやろう。

 でもそれは今じゃないからな!


 女魔神の隣にルーズリーフの魔神だ。

 相変わらず顔の各所はピアスだらけ、引っ張って引き千切りたくなる。

 その格好を見ても違和感は無い。

 大きな違和感を感じるのはその表情だ。

 その横顔からは軽薄な笑みは消え、苦虫を噛み潰したかのよう。

 こんな表情も出来るのか。

 まあそれはそれとして、こいつも要警戒だな。

 【英霊召喚】で英霊のご老人を召喚したとしても、身に付けたアイテムは有効だ。

 両手の全ての指にはリングが嵌められている。

 この点は女魔神にも言える注意点だぞ!


 巨人に右手を当てて何かを呟いているのが老人姿の魔神だ。

 ここからだと後姿しか見えない。

 多分だけど、魔神達の中でもこいつの火力が最大であるのは間違いない。

 何しろカタストロフィの呪文が使えるのだ。

 そしてこれを使わせない事が勝利への絶対条件にもなる。

 真っ先に始末すべき?

 多分、そうすべきだ。

 そしてこいつこそが魔神達の中で首魁なのです!

 見逃す訳にはいかないぞ?


 その老人姿の魔神の傍にはドワーフの魔神か。

 護衛役かな?

 巨人に背中を向き、周囲を見回している。

 こっちに視線が合う事は無いから、オレの存在に気付いていないのかな?

 その装備は相変わらず重装備だ。

 元法騎士ドラゴーネの魔神と同じデザインだが、手にしているのはより凶悪かな?

 円形の盾は突起だらけ、格闘戦に持ち込むには明らかに邪魔だ。

 腰に下げているのはメイス、やはり突起だらけだ。

 手にしているのは斧か。

 ドワーフらしい姿だな!

 兜は装備していないから、狙うのであれば延髄かな?

 でも簡単に殺せるとは思わない方がいい。

 いや、この面々の中では格闘戦をすべき最有力候補だ!

 次点で元法騎士ドラゴーネの魔神になる。

 他の連中は大穴にすらならないぞ?


 最後に狩人姿の魔神、こいつは空中に浮いて周囲を睥睨する形で監視しているようだ。

 得物は相変わらず弓矢か。

 装備そのものは大きく変わっていない。

 だが、片目には眼帯を装備していた。

 戦闘の結果として、負傷でもしたのだろうか?

 視界が効かない、というのは狩人にとって致命傷と思えるのだが。

 戦闘力の低下は免れないだろう。

 だが、その視線がこっちを向いている。

 まさか、察知されたのか?



「そこに、いるな? 姿を見せろ!」


 あ、やっぱり。

 察知されていたのか!

 黒のローブも、それにインジブル・ブラインドも完璧じゃないって事だろう。

 こうなると魔人ステンテレッロに偽装しているのも看破される事を覚悟せねばならないか?



「どうした?」


「侵入者だ。姿を消しているぞ!」


「何だと? 何者だ?」


 黒のローブの下で魔人の仮面を外す。

 色空竜の革兜を被ろう。

 左手から魔人の指輪も外して籠手を装着だ!



『キース?』


「戦闘の準備を始めて下さい!」


 小声でフィーナさんに答える。

 ユニオンを組んでいるから、小声ではあるけど指示が飛び交い呪文詠唱の声も聞こえる。

 さあ、ここからだ。

 今のオレはもう魔人ステンテレッロではない。

 纏っている黒のローブを外してしまえば?

 インジブル・ブラインドの効果が残るだけだ。

 正直、魔神相手に誤魔化せるとは思えない。



「神降魔闘法!」「金剛法!」「エンチャントブレーカー!」

「リミッターカット!」「ゴッズブレス!」


(フィジカルエンチャント・ファイア!)

(フィジカルブースト・ファイア!)

(フィジカルエンチャント・アース!)

(フィジカルブースト・アース!)

(フィジカルエンチャント・ウィンド!)

(フィジカルブースト・ウィンド!)

(フィジカルエンチャント・アクア!)

(フィジカルブースト・アクア!)

(メンタルエンチャント・ライト!)

(メンタルブースト・ライト!)

(メンタルエンチャント・ダーク!)

(メンタルブースト・ダーク!)

(クロスドミナンス!)

(アクロバティック・フライト!)

(グラビティ・メイル!)

(サイコ・ポッド!)

(アクティベイション!)

(リジェネレート!)

(ボイド・スフィア!)

(ダーク・シールド!)

(ファイア・ヒール!)

(エンチャンテッド・アイス!)

(レジスト・ファイア!)

(十二神将封印!)

(ミラーリング!)



『我は儀式はまだ続けねばならぬ。我を護れ!』


 小声で武技を使い、呪文の強化を進める。

 上空から飛んで来た矢はオレの頭を掠めて地面に突き刺さる!

 危なかった?

 多分だけど、危なかった。

 どうやら狩人の魔神も正確な位置を把握していないようだぞ?

 でもこの後は期待出来ない。

 黒のロープのフードは矢で切り裂かれてしまっている!


 そして老人姿の魔神の声に応えてドワーフの魔神が動く。

 元法騎士ドラゴーネの魔神も駆け寄るが、これはマズい!

 奇襲の機会を失いかねないぞ?



(ショート・ジャンプ!)


 跳んだ先は?

 ドワーフの魔神の背後だ!

 こいつの動きを先に止める。

 次は当然、老人姿の魔神だぞ!



((オフェンス・フォール!))

((ディフェンス・フォール!))

((フォースド・メルト!))

((スロウ!))

((ディレイ!))

((パラライズ!))

((イビル・アイ!))

((グラビティ・プリズン!))

((ダーク・プリズン!))

((ホーリー・プリズン!))

((アイヴィー・ウィップ!))

((ブラックベルト・ラッピング!))

((レインボー・チェイン!))

((コラプト!))

((オートクレーブ!))

(ドラウト・ゾーン!)

(ヘルズ・フレイム!)

(レゾナンス!)

(スウォーム!)

(カーズド・ワーム!)

((ペトリファクション!))

((アイアン・メイデン!))

(ミラーリング!)


 鉄の棺桶にドワーフの魔神を閉じ込めておく。

 もうオレの姿は魔神達の目にも顕になっている事だろう。

 全力で、戦え! 



『何だ?』


「やあ」


 軽く挨拶をして老人姿の魔神の肩に手を置く。

 ウトガルド・ロキを使って戦力増強をしているみたいだけどね。

 ここで退場して貰うぞ?

 今のオレはきっと、笑っている事だろう。

 オレの背後、影の中からは与作達が飛び出しているに違いない!

 そんな光景を老人姿の魔神はどんな気持ちで見ているのかな?



「殴り込みだよ!」


 老人姿の魔神に裸絞めを仕掛ける。

 そのまま体を反転、背中にウトガルド・ロキの巨躯を背負った!

 悪いが盾の代わりにさせて貰おう。

 遠距離から矢で攻撃されてはいけませんからね!



(カタストロフィ!)


『『『『『『精霊召喚!』』』』』』『獅子吶喊!』『緋炎聖女!』

『太公釣魚!』『竜殺剣士!』『圧殺蹂躙!』『剛力無双!』

『弓馬武威!』『剣豪降臨!』『夢幻放浪!』『尽忠報国!』


 迫っていた元法騎士ドラゴーネは誰かと激突、突進を阻止されていた。

 シェルヴィかな?

 続けてその両翼に東雲達ドワーフが続く。

 あっという間に前衛による防壁が築かれたぞ!

 フィーナさんの指示でもあるのだろう。

 そして投入された【英霊召喚】と【精霊召喚】の数々!

 これもフィーナさんの指示だろうけど、やり過ぎ!

 いや、そうすべきだというのは頭では分かっている。

 でもね、オレの獲物は残ってくれますか?



『ッ?』


「何も言わなくていい。このまま、死ね!」


 裸絞めは怒炎蛇竜神の小剣も手にしたまま、仕掛けていた。

 その裸絞めをやや解いて、剣先を延髄に押し当てる。

 そして、押し込む。

 マーカーは?

 HPバーは一気に減ったけど、僅かに残っているようだ!

 そうか。

 でも苦しませるのはオレの本意ではない。

 怒炎蛇竜神の小剣を更に深く突き入れて、捻りも入れる。

 頭そのものには捻りも加えました!

 それでどうにか、沈んだようだ。


 呆気ない。

 だが、これで終わりじゃないぞ?

 次はドワーフの魔神からかな?

 鉄の棺桶の表面にヒビが入っている。

 楽しめそうな相手なのは確かだ。

 問題があるとしたら、邪魔しそうな奴が多い事だろう。

 敵も、味方も、多過ぎる!



(((((((メテオ・クラッシュ!)))))))

(((((((ミーティア・ストリーム!)))))))

(((((((クェーサー!)))))))

((((((ダークマター!))))))

((((((ソーラー・ウィンド!))))))

((((((マイクロ・ブラックホール!))))))

(ミラーリング!)


 周囲の光景がカタストロフィのエフェクトで歪んで行く。

 その上で攻撃呪文の詰め合わせを追加だ!

 序盤だ。

 数の上では圧倒されているけど、序盤に打つべき手を打っておけば勝てる!

 いや、勝つ!

 問題は獲物を独占出来ない事だが、こればかりは仕方ない。



『前衛、戦列揃いました!』


『平行突撃せよ!』


 さあ、ここからが本番だ!

 獲物はきっと早い者勝ち、特に魔神は最優先で狙わねばならない。

 英霊のご老人の支援だけじゃなく、他の英霊の支援もある。

 いや、そもそもその英霊様達が最大の競争相手になるぞ!

主人公 キース


種族 人間 男 種族Lv266

職業 サモンメンターLv155(召喚魔法導師)

ボーナスポイント残 48


セットスキル

小剣Lv213 剣Lv214 両手剣Lv211 両手槍Lv216

馬上槍Lv216 棍棒LvLv212 重棍Lv213 小刀Lv212

刀Lv210 大刀Lv209 手斧Lv210 両手斧Lv212

刺突剣Lv209 捕縄術Lv220 投槍Lv218

ポールウェポンLv218

杖Lv240 打撃Lv250 蹴りLv250 関節技Lv250

投げ技Lv250 回避Lv261 受けLv261

召喚魔法Lv266 時空魔法Lv263 封印術Lv260

光魔法Lv257 風魔法Lv257 土魔法Lv257

水魔法Lv257 火魔法Lv257 闇魔法Lv257

氷魔法Lv257 雷魔法Lv258 木魔法Lv257

塵魔法Lv257 溶魔法Lv257 灼魔法Lv257

英霊召喚Lv7 禁呪Lv261

錬金術Lv219 薬師Lv59 ガラス工Lv55

木工Lv113 連携Lv221 鑑定Lv171(↑1)

識別Lv238(↑1)

看破Lv220 保護Lv90 耐寒Lv230

掴みLv229 馬術Lv230 精密操作Lv232

ロープワークLv220 跳躍Lv234 軽業Lv240

耐暑Lv221 登攀Lv218 平衡Lv228

二刀流Lv222 解体Lv167 水泳Lv220

潜水Lv220 投擲Lv230

ダッシュLv228 耐久走Lv227 追跡Lv227

隠蔽Lv225 気配察知Lv228 気配遮断Lv228

魔力察知Lv227 魔力遮断Lv227 暗殺術Lv229

身体強化Lv229 精神強化Lv229 高速詠唱Lv246

無音詠唱Lv245 詠唱破棄Lv249 武技強化Lv240

魔法効果拡大Lv230 魔法範囲拡大Lv230

呪文融合Lv230

耐石化Lv80e 耐睡眠Lv80e 耐麻痺Lv171

耐混乱Lv80e 耐暗闇Lv234 耐気絶Lv230

耐魅了Lv80e 耐毒Lv80e 耐沈黙Lv225

耐即死Lv136 全耐性Lv169

限界突破Lv129 獣魔化Lv135


装備

金剛杵×15 降魔秘剣×16 天羽々斬×17

生大刀×15 迦楼羅剣×16 布都御魂×15

火焔光輪刀×15 七星刀×14 羅喉刀×17

護霊樹の杖×1 如意輪錫杖×11

涅槃の杖×2 涅槃のトンファー×2

虚無竜の投槍+×2 双角猛蛇神の長槍+×1

グングニル×11 オリハルコンランス×1

天沼矛×14 ミョルニル×12 オリハルコンメイス×1

転生獅子のレイピア+×1

神鋼鳥の小刀+×2 神鋼鳥の刀+×1

神鋼鳥の斬馬刀+×1 神鋼鳥のコラ+×2

神鋼鳥のククリ刀+×2 虚無竜のデスサイズ+×2

怒炎蛇竜神の小剣+×2 蛇王の双杵+×1 蛇王の戟+×1

妙見秘鎚×11 星天弓×12 生弓矢×12

オリハルコンペレクス×1 オリハルコンラブランデス×2

冥府の槌×12 天魔の琵琶×11 天詔琴×11

オリハルコンピッケル×2 オリハルコンの首飾り+×1

老蠍獅子神の隠し爪+×2 老蠍獅子神のバグナグ+×2

色空竜の革鎧ほか 金毛羊革のコート×1

黒のローブ×4(↓1)蘇芳羂索×10

グレイプニル×12 レーヴァテイン×13

千宝法輪×19 千宝相輪×20 色空竜のベルト

背負袋 アイテムボックス


召魔の森 ポータルガード

ジェリコ、リグ、テイラー、クーチュリエ、ペプチド

守屋、スーラジ、久重、テフラ、岩鉄、虎斑、蝶丸

網代、スパーク、クラック、オーロ、プラータ、ムレータ

酒船、コールサック、シュカブラ、シルフラ、葛切

スコヴィル、デミタス、白磁、マラカイト、十六夜

貴船、エジリオ、パイリン、エルミタージュ、ナーダム


海魔の島 ポータルガード

ナイアス、アプネア、アウターリーフ、バンドル

ロジット、プリプレグ、出水、エルニド、アチザリット

アモルファス、魂振、セノーテ、呼子、明石

ヴェルツァスカ、プリトヴィッチェ


召魔の森に駐留

翠玉竜、エルダードラゴン、他ドラゴン2編隊分


海魔の島に駐留

蒼玉竜、エルダードラゴン、他ドラゴン2編隊分


同行者

フィーナさん以下多数

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