表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1240/1335

1240

 グリッド ???

 ??? ??? ???

 ???



 キュベレー ???

 ??? ??? ???

 ???



 デメテル ???

 ??? ??? ???

 ???



 イナンナ ???

 ??? ??? ???

 ???



 ダヌ ???

 ??? ??? ???

 ???



 出現したのは?

 共通するのは女神様って事だろう。

 いずれも妙齢のご婦人、いや美人さん達だ!


 グリッド。

 簡素な衣服を身に着け、どこか浮き世離れした雰囲気を纏う女神様だ。

 その様子は静謐そのもの。

 いや、かなり前にオレは見ているよな?

 そう、思い出したぞ!

 どこだったか、氷の中に閉じ込められていませんでしたっけ?


 キュベレー。

 既に何度か目にしているけど、相変わらず清楚でおとなしく優しい印象が強い。

 それなのに今回は凄まじい威圧感がある!

 その落差が半端じゃないぞ?


 デメテル。

 何度も写身や化身とは戦っているけど、こっちは本体だろう。

 武装はしておらず、キュベレーよりも更に柔和な印象かな?

 緑を基調とした衣装はシンプルだが闇の中でやけに目立って見えた。

 そして何かを手にしているけど、見覚えがある。

 コルヌー・コピアイだろう。

 闘技場に捧げるアイテムでお馴染み、但し今や指定危険物扱いだ。


 イナンナ。

 多分、未見の女神様だな。

 ドレスは扇情的で、体のラインが顕になってしまっている。

 スタイルそのものがモデルみたいに細い!

 美人さんなのは当然なんだが、どこか凜々しい。

 纏め上げた髪、その目付き、黒い縁の眼鏡を掛けたら理想の教師が出来上がりそうだぞ?


 ダヌ。

 これは分かり易い格好だ!

 インドの民族衣装、サリーか。

 その上で首飾りや腕輪、様々な装身具で全身を飾っていた。

 理由は分からないが目を閉じたままだ。

 どこか浮き世離れしている印象が強い。



『争いの時間はここまで。それとも妾達も敵に回すおつもりですか?』


『去れ! 汝等の役目はここでは無用であろうに!』


『それはどうでしょう?』


 オーディンの言葉にグリッドが応じる。

 笑っている?

 女神達が揃って右手を掲げる。

 その甲の上には白い何かが止まっているように見えた。

 小さいぞ?



(シンクロセンス!)


 ポータルガードの貴船の目を借りてみよう。

 ここに至ってまたしても別勢力?

 いや、どうだろうか。

 女神様達の意図が読めない



 カラドリウス ???

 ??? ??? ???



 その姿は鳥だ。

 白くて小さい。

 首回りだけが黒く、ネックレスをしているようにも見える。

 見覚えならある。

 でもどこで、どんな形で見たかな?

 覚えていない。

 つまりそれだけ印象が弱かったって事だ。

 オレ自身、重要と思っていなかった事をも意味している。



『むむっ?』


『それは!』


 転生煙晶竜、そしてエルダードラゴンの長老様が反応している。

 どうやらこの鳥がどのような存在であるのか、知っているようだ。

 これは年の功であるのかね?



『歪みもまた世界を支える力の一旦、加減を間違えると世界が滅び去るぞ!』


『良くご存じで、賢き竜よ』


『そして辺獄に対してもこの力は及びます』


『ここは互いに退く事です。誰にも益はありませんよ?』


 女神様達はどこまでも静かに応じていた。

 だが。

 デメテルの様子がちょっとおかしいぞ?

 ポセイドンに右手を掲げたまま歩み寄る。

 傲慢そのものとも思えたポセイドンだが、その態度は変わらなかった。

 表情も威厳たっぷり、デメテルを見る視線は挑発的ですらある。

 それがいきなり、激変した!

 苦痛に歪む。

 そればかりか、跪いただと?



『な、何だ!』


『ポセイドン。貴方の存在理由を消し去って差し上げても良いのですよ?』


『ひ、退け!』


 ハデスがポセイドンの腕を取る。

 そのまま両者の姿は半透明に、そして消えて行く。

 逃げの一手か。

 何が起きたのか、まるで理解出来ない!


 いや、待て。

 オシリス神達の勢力も消えて行くようだぞ?

 魔神達もなのだが、ちょっと待った!

 須佐之男命も一緒に消えてしまうのか?

 置いてけ。

 須佐之男命だけは置いてけぇ!

 そう叫びたかったけど、言葉が出ない。



『貴方はどうなのです? まつろわぬ魔神よ』


『我は何も変わらぬよ、恐ろしき女神達。そして我の望みを満たすには都合が悪いようだな』


『ええ。その通りですわね』


『いずれその望みは果たされるでありましょう。でも今ではありません』


『それでも尚、ここに留まりますか?』


『脅迫するのか?』


『必要とあれば』


 筋肉バカの魔神は忌々しげに女神達を見ているようだ。

 いや、より正確にはカラドリウスを見ていた。

 そして視線を転じる。

 オレと目が合う。

 おお、やるか?

 やるんだな?

 だが観客がここまで多いと邪魔されそうで不安だ!



『どうやら用件を済ませるには日が悪いようだ。ここは退かせて貰う』


「何? 逃げるのか?」


『戦いたくともこれでは戦えぬ。邪魔な存在が多過ぎるのでな』


 雲母竜が翼を展開、上空へ向けて伸ばしている?

 その先には夜の闇よりも暗い渦が生じていた。

 門だ!

 おい、まさか本当にここから去ってしまうのか?



『雲母竜! それに琥珀竜! 何故に魔神などに与するのか?』


『紫晶竜、貴方には分からぬよ』


『制約と誓約は既に無い。だが我等は我等の意思で動く。貴方には関係無い』


 雲母竜、それに琥珀竜は紫晶竜を相手に傲然と言い放つ。

 だが、その言葉にはどこか敬意も滲んでいるような?

 元々は同じドラゴンの一族、その長の中の長にはそれなりに思う所があるのかもしれない。


 それにエルダードラゴンの長老様に目礼を残して空中に舞う。

 おい、だから待て!

 雲母竜と琥珀竜は、いいのだ。

 筋肉バカの魔神は置いてけよ!

 でも言葉にはならない。

 何だってオレはこんなにも小心者なんだ?



『貴方はどうします、太陽神?』


『後始末があるからなあ。ここを放っておいたら立場が無い』


『貴方がそれを気にしますか? 相変わらず怠惰な。お仕置きは効いていますか?』


 デメテル女神の問いはアルテミス女神に向けられたものだったようだ。

 確かに。

 アポロン神は後始末をアルテミス女神に終始、押し付けていた筈だ。



『効いているように思えません!』


『そうでしょうね。ご褒美になってしまいそうですし』


『この役目、代わって頂けません?』


『貴女だからこそ適任なのです。私は太陽神の子まで設けるつもりはありませんよ?』


『見境がありませんものね』


『ええ。それは全能神たる立場の方も同様。直る見込みは無いですね』


 デメテルの視線が梱包され酒船に吊られたままのゼウスを射抜く。

 そして大きく溜息。

 逆海老に縛り上げられ、絶賛マゾプレイ中の有様なのだ。

 これが主神なのです。

 嘆きたくもなるだろうな。



『私が引き取ろうかと思いましたが、止めておきましょう』


『良いのかな、大地母神を継ぐ筈だった女神よ』


『プロメテウス、貴方に任せます。魔神に与した事を後悔させて差し上げて?』


『冷たい態度だな』


『当然でしょう? 愛する娘の父神ではありますが、それは庇う理由になりません』


『大地母神の資格を奪われたからか』


『その点は感謝しているのよ? 意外に思うかもしれませんが』


 そうか。

 デメテル女神もまたそう言う立場であるのか。

 もしかして、ここに集っている女神様達ってそういう括りなのかな?

 それはアルテミス女神もだ。



『分かっていようが大地母神の位置は空位のままだ。それが歪みの本質でもある』


『その通りですよ、賢き竜よ』


『確かに世界を支える事は出来よう。だが、実害も大きい』


『ええ。だからこそ私達は動き続ける事になりましょう』


『その考えは正しい。だが実践は至難。介入されるであろうに』


『ええ。実際に封印されたり、存在理由を消されそうになったりしましたものね』


 エルダードラゴンの長老様が前へと進み出る。

 女神様達はまるで動じない。

 いや、長老様もまた女神様達を前に動じていない。

 ドラゴン達の長は飽くまでも紫晶竜の筈。

 だが、この場での印象だけで言えば、全く違う。

 長老様がドラゴン達を代表しているようにしか見えない。

 そして女神達が語りかけているのもまた、長老様であるのだ。

 やはりこのドラゴンは何か重大な謎を秘めているぞ?



『手にしているのが何であるのか、理解はしていような?』


『ええ、勿論』


『そして古き竜よ。貴方もまた私達と同じ役目を果たそうとしていませんか?』


『どうかな。我は不滅の存在ではない。神ではないのだから適任ではあるまい』


『それはどうでしょうね?』


『私達は私達にしか出来ない事を為す。そして貴方は貴方でしか出来ない事を為すでしょう』


『預言はお断りなのだがな』


『預言ではありません。事実を言ったまでの事です』


 やはり分からない。

 会話の内容がまるで頭の中に入って来ないよ!

 誰か翻訳してくれませんかね?



『さて、この森の有様ですがアルテミス。貴女に任せて良いですか?』


『勿論ですわ、叔母上!』


『プロメテウス。全能神たる方はお任せすると申しましたが、注意すべき事もあります』


『分かっている。殺しはしないし、出来ない。益無き事はしないとも』


『魔神と与した事で失った力がある事でしょう。ですが何かを得てもいる筈。熟慮を求めます』


『そうするとしよう。それこそが我の本分でもある』


 デメテルが目を閉じる。

 グリッドも、キュベレーも、イナンナもだ。

 逆に目を閉じていたダヌが両目を開く。

 エキゾティックな雰囲気が一気に増したぞ?

 おっと、忘れてた!

 女神様達のお姿をスクリーンショットにして保存しておかないと!

 何だってこういう肝心な所で抜けているんだ?


 小鳥達が一斉に飛び立った!

 そして酒船の元へ向かう。

 いや、ゼウスの元へかな?

 頭の上を止まり木の代わりにでもしているのかもしれない。



『プロメテウス、鳥達のお世話もお願いしますね?』


『世話になるのはこっちになりそうだ』


『我等は大地を通じて歪みを追い、収拾し続ける事になりましょう』


 そう言うとデメテルはアポロンを向く。

 目は閉じたままだ。

 まるで見えているかのように振る舞っている?

 目に頼らず自然に行動出来るような仕様であるのだろうか?



『叔母上も難儀な方だ。自ら苦難を背負うなんてねえ』


『太陽神よ。貴方の選択もまた苦難を背負う事になるでしょう』


『嫌な預言、しないで貰えますかね?』


『預言ではありませんよ? 事実を申したまで』


 女神様達が揃ってオレを見た。

 いや、目を見開いているのはダヌだけだけどさ。



『傍迷惑な事でしたね、キース』


『汝の望みは承知していた。それを断つ結果となった事は慚愧に堪えません』


『この地に関してであるが、妾達も出来るだけ配慮する事になりましょう』


『キースよ、汝の進む先に幸多からん事を』


『全能神を拘束するとは! お見事でした』


「は、はあ」



《称号【女神の祝福】を得ました!》


 オレとしては茫洋と答える事しか出来ない。

 もうね。

 オレが期待していた展開は?

 台無しにしたのは目の前の女神様達なのは間違いない。

 でもこれでは怒るに怒れません!

 称号まで増えてしまっている。

 この気持ちはどうしたらいいのよ?

 教えて欲しいものです!


 女神様達はいきなり消える。

 消えてしまう!

 一応、スクリーンショットは間に合っている。

 これはフォルダを分けておくべきかな?



『では、我等も一旦移動するか』


『兄上、この鳥も一緒に連れて行くので?』


『無論だ。それに慎重に扱うように。この鳥は歪みを体内に集約させて邪結晶を生む』


『何と!』


『しかも極めて高い密度になる筈だ』


 え?

 邪結晶?

 いや、それよりもだ。

 プロメテウスは酒船から梱包されたままのゼウスに触れる。

 グレイプニルが、一気に解けて落ちたぞ?

 えっと。

 いいのかな?



『この通りだ。頭上にこの鳥がいる限り如何なる力も使えぬ。全て吸い上げてしまうが故に』


『ほう』


『残念だったな、神々の王。何か言う事はあるか?』


 プロメテウスの掌の上でゼウスは浮き上がっていた。

 右手を掲げて何かをしようとしたようだが、何も起きない。

 そして驚愕の表情。

 続いて頭上の鳥達を払おうとしているようだが。

 何と、自らの頭に手が届かないみたいですよ?



『こ、これは何じゃ!』


『知らぬか。だがいずれ、知る事になる。その御身でだ!』


『こ、こんな事が許されると思うのか!』


『許しを乞うつもりはありませんな』


 絶句するゼウス。

 焦った様子で周囲に視線を巡らせていた。

 そしてオレとも目が合う。

 合ってしまう!

 まあそれはそれとして、グレイプニルは回収しておこうか。

 今回は大いに役立ってくれた。

 しかも確かな実績を残してくれています!

 神をも縛るとはね。

 分かってはいたけど、これって相当なチート武器だな!


 ついでにゼウスが使っていた槍を拾うのだが。

 触れたの同時に消えてしまった!

 何で?

 化身や写身も持っている槍も残らないのだから合理的ではあるけどさ。

 強力な雷撃を伴う投槍なのだ。

 グングニルと使い勝手を比べる事は出来そうも無いようです。



『神殺しめ! 汝の罪は消えぬぞ!』


『無駄な事だ。呪詛もまたこの鳥が吸い上げる』


『移動するか?』


『そうだな。新たに結界を用意しよう』


『迎撃の準備も要る』


『当然だな。奪い返す事を諦めるとは思えん』


 ヘイムダルが、そして思兼神がオレに目礼を残して行く。

 それに目礼で応えつつ、背中がゾクゾクする感覚が収まらない!

 カーリー女神が迫っているからだ。

 まさに黒い鬼神。

 確かに笑っているのだが、オレを喰い殺しに来ているような錯覚に陥りそうだ!

 目礼だけで済ませて頂けませんかね?



『キース、であったな。次の機会があるようなら、妾の夫を拘束してくれると嬉しい』


「は、はあ」


『さすれば汝の望みを叶える為、我等が助力を惜しむ事もあるまい』


 カーリー女神の言葉をドゥルガー女神が継ぐ。

 出来れば迫って来るのはドゥルガー女神の方でお願いします!

 それでも相当に剣呑な感覚なんだけどな!

 かなりマシだ。

 そう、さっさと離れてくれませんかね?

 筋肉バカの魔神や須佐之男命とまともに戦えなくてウズウズしているのだ。

 目の前に佇むこの両女神様は間違いなく、強い。

 挑んでしまいそうになっている!

 それをどうにか抑え込むのに必死ですよ?


 そして神々がオレの目の前から消えて行く。

 ゼウスもだ。

 但し、アポロン神一行はまだいる。

 紫晶竜を筆頭とした、ドラゴン達もだ!

 終わっていない。

 そう、まだ終わっていないようですよ?






『優雅じゃないわー』


『何を言う! 生命が溢れるこの様、魔物をも許容する森とはこういうものだ!』


『違うわよ! 精霊達が宿る美しい森こそが理想じゃないの!』


『汝の価値感をキースに押し付けるつもりか? まるで分かっておらぬ!』


『あら、やる気なのかしら?』


『必要とあれば』


「あ、あの。や、止めませんか?」


 焼け野原はあっという間に元の森の姿を取り戻していた。

 アルテミス女神だけの手腕では無い。

 翠玉竜も森の再生に力を注いでくれたのだ。

 うん。

 そこまでは、良かった。


 だがこの両者の間で緊張感が高まっている。

 お互いが再生した森の出来映えに不満があるらしい。

 傍目では唯の口喧嘩であるのだろう。

 だが、片方はドラゴン種の長。

 もう片方は女神様。

 口喧嘩も当事者がとんでもない存在であるだけに不安だ。

 感情のぶつかり合いでオレの全身は何度も叩かれていて、正直気が気じゃない!

 戦争でも始めるかのような感覚に何度も陥っているのです。



『ねえ、キース。貴方はどう思う?』


『問うまでも無い。より強い魔物が棲む森が好ましいに決まっている!』


「え、えっと」


 ヤバい。

 翠玉竜が言う通り、オレがここの森に望むのは何よりも狩りだ。

 より強力な魔物が出現し、高い難易度を維持してくれたらいい。

 だが、正直にそれを言っていいのだろうか?


 アルテミス女神が笑顔で答えを迫っている。

 オレに覆い被さる勢いで翠玉竜の頭部も迫る。

 ああ、どうしたらいいんだ?

 どう答えても被害が及びそうです!



「わ、私としては狩りが優先なので。強い魔物が棲んでくれる方が好ましいですかね?」


『そうであろうな!』


 こういう時は己を偽らない事だ。

 自分に正直に!

 そうしたら答えもブレる事は無い。


 翠玉竜が満足そうな様子なのはいい。

 アルテミス女神は?

 まだ、笑顔だ。

 だが、その笑顔が固まったままだけど纏っている空気が違う。

 もしかして、怒ってます?

 いや、女神様の森もいいんですよ?

 一種独特な美しさがあり、居心地の良さでは明らかに女神様造成の森の方が上回っている。

 人の好みは千差万別だが、一般的には女神様の森に軍配を上げる人の方が多いだろう。



『キースーぅ?』


「あ、あの。落ち着いて!」


『称号を与えられているからって贔屓した? そうなの? そうなんでしょ!』


「いや、どっちの森もいい出来だと思いますよ?」


『何が気に入らないのよ! 貴方の美的センスは、おかしい!』


「ッ?」


 裸絞め?

 いや、弓が喉に来てる!

 気道が潰れる程じゃないけど、これはマズい。

 女神様がオレの背後に密着、いい匂いが鼻の奥を衝く。

 それに背中に微かな感触、革鎧越しに胸が押し付けられているのが分かる。

 苦しい?

 まだまだ耐えられる。

 苦しいかもだがこれはご褒美、耐えてみせるぞ!

 これは事故だ。

 事故だよな?



『あー、楽しんでいる所を申し訳ないけど、いいかな?』


『楽しくないっ!』


『そろそろお暇するよー』


『待ちなさいっ! 納得出来ないわっ!』


 アルテミス女神をアルセイド達が引き剥がす。

 ありゃ。

 もうちょっと長く感触を確かめていたかったんだが。

 いや、呼吸も相当に困難な状況が続いていたのだ。

 助かった、と思わねばならない。

 下手したら気を失っていたかも?

 そうでなければイケない世界に目覚めてしまっていただろう。



『申し訳ない。大丈夫ですか?』


「ま、まあどうにか」


 アルセイド達のうちの何名かがアルテミス女神を宥めている。

 そして倒れ込みそうになったオレを支えてくれたアルセイドが謝っていた。

 余計な事を!

 心の中でそう呟く一方、アルセイドもいい匂いをさせているのに気付く。


 でもいいのかな?

 アルテミス女神もアルセイド達も、狩人の筈だ。

 こんな匂いさせていては狩りをするには不利だろうに。

 魔物に居場所を悟られたりしないのかな?



『太陽神よ。汝が意図する事は頓挫したのではないかな?』


『別にいいんだ。より良い選択肢が実現出来るならそれに越した事はないんだし』


『だが神殺しを教唆した事実は消えない。我には看過出来んぞ』


『剣呑だねえ、ドラゴンの王。でもそれでいい。ドラゴンは世界の武威を体現すべきだ』


『その武威が汝に向かうとは思わんのか?』


『さて、どうかな?』


 紫晶竜の問いに対するアポロン神の答えは行動で示されたようだ。

 アポロン神がアルテミス女神の肩に触れると、いきなり消える。

 アルセイド達も、アルゴス達も、アンタイオスもです!

 まるで今までの出来事が夢だったかのようだ。



『キースよ、汝にとっては大変な夜になったようだな』


「ええ、本当に」


 転生煙晶竜の言葉には同意するしかない。

 大変な出来事が次々と生じてしまい、今も整理出来ていないのだ。

 オレの脳の処理能力の拙さを呪うしかありません。

 何か手立てがあったと思う。

 結局、まともな格闘戦が出来ないまま終わってしまったようだ。

 切ない。

 ゼウスを梱包したのは殊勲であるのかもだが、それだけとも言える。

 そもそも、あれでは格闘戦を楽しめたとは言えません!

 一方的に過ぎるぞ!



 ビーコン エルダードラゴンLv7

 器用値 63

 敏捷値 64

 知力値 81

 筋力値 63

 生命力 63

 精神力 81


 スキル

 噛付き 引裂き 体当たり 飛翔 受け 回避

 跳躍 疾駆 夜目 水棲 水中機動 連携

 自己回復[中] 物理抵抗[中] 魔法抵抗[中]

 MP回復増加[中] 捕食吸収 ブレス 時空属性

 光属性 闇属性 火属性 風属性 土属性

 水属性 氷属性 溶属性 毒耐性 耐即死

 耐魅了 加護



《これまでの行動経験で【識別】がレベルアップしました!》

《これまでの行動経験で【看破】がレベルアップしました!》



 転生水晶竜はまた1つ、レベルアップしていたらしい。

 そして今回もまた見抜けなかったか。

 手強い。

 いや、それよりもこれからどうする?


 時刻は午前4時30分だ。

 夜明けが近い。

 召魔の森に戻ろう。

 ポータルガードの面々には朝の定常業務だってある。

 それに装備の修復だ。

 オレだけの問題じゃないぞ?

 パーティだけでなく、ポータルガードの面々の装備だってあるのだ。

 そのポータルガードの枠なのだが、また増えている。

 これもまた悩ましい。

 配備をどうするのかは、一旦ログアウトしてからにしよう。

 レベルアップの確認もしておきたい。

 その上で配備を決めないと戦力の底上げになりそうもありません!







《これまでの行動経験で【錬金術】がレベルアップしました!》

《これまでの行動経験で【精密操作】がレベルアップしました!》


 どうにか装備の修復を終えたのは、いい。

 もうすぐ夜明けだ。

 作業所を出るともう夜明けが近い事が分かる。

 昨夜は色々とあった。

 そして明日は最後の黒い球体の封印があるのだ。

 いや、考え方を変えよう。

 封印作業と重ならなかった事を喜ぶべきだ!


 今、召魔の森は大変な事になっている。

 8つある塔の上にドラゴン達が鎮座していて、周囲の森を監視しているのだ!

 転生煙晶竜だけじゃない。

 紫晶竜、柘榴竜、翠玉竜もいる。

 そしてエルダードラゴンの長老様もいるのだが、その向こう側には黄晶竜だ!

 いたのね?

 海魔の島に置き去りになっていたのかと思ってたよ!

 残る3つの塔の上にはフロストドラゴン、ブルードラゴン、ブロンズドラゴン。

 他にも3頭1組の編隊が3つ、上空を旋回している筈だ。

 鉄壁の警戒網です。

 森に何か異変があれば即座に撃滅しに行くつもりなのだろう。



「おはよ!」


「おはようございます、キースさん。ところで何かあったんですか?」


「ああ、おはようさん」


 そんな厳戒網の中、レイナの様子は変わらない。

 一方で同行している篠原は不安そうな様子が明らかだ。



「ちょっと、ね。まあ気にしなくても大丈夫だと思うよ?」


「そうなんですか? やけに雰囲気が殺伐としているような」


「ドラゴン達もイベントを前に殺気立っているんじゃないかな?」


「明日だしね!」


「ところで今日はここで作業かな?」


「そ! 依頼分の菩提の杖を仕上げるわよ!」


「自分の装備はどうするんだ?」


「そこは内緒! 出来上がったら見せたげる!」


 そうか。

 レイナがサブウェポンで杖を使うつもりかと思っていたんだが、違うのかな?



「そっちもか」


「ええ。僕は菩提の杖、短めの物にする予定です」


 篠原は普通に杖か。

 まあ、それが無難な選択なのだろう。


 時刻は午前5時40分か。

 朝食の時間も迫っている。

 さっさとログアウトしよう。

 ログインした後の予定は?

 朝食を摂りつつ、ポータルガードの配備をどうするか悩もう。


 昨夜、色々とあった事は忘れ去る事は出来ない。

 それでいて、何が起きていたのかを思い返す事も不可能だ。

 動画にして記録する事も失念していたから、頼りになるのは己の記憶だけが頼りになる。

 そんな中で鮮烈に記憶しているのは?

 アルテミス女神のいい匂いと、あの胸の感触だったりする。

 ダメだな、オレって。

 どこまでも煩悩に振り回されてしまう運命にあるようです。

主人公 キース


種族 人間 男 種族Lv263

職業 サモンメンターLv152(召喚魔法導師)

ボーナスポイント残 17


セットスキル

小剣Lv211 剣Lv214 両手剣Lv211 両手槍Lv208

馬上槍Lv214 棍棒LvLv212 重棍Lv213 小刀Lv212

刀Lv210 大刀Lv209 手斧Lv210 両手斧Lv212

刺突剣Lv209 捕縄術Lv219 投槍Lv214

ポールウェポンLv214

杖Lv238 打撃Lv246 蹴りLv247 関節技Lv246

投げ技Lv246 回避Lv257 受けLv257

召喚魔法Lv263 時空魔法Lv258 封印術Lv256

光魔法Lv254 風魔法Lv254 土魔法Lv254

水魔法Lv254 火魔法Lv254 闇魔法Lv254

氷魔法Lv254 雷魔法Lv254 木魔法Lv254

塵魔法Lv254 溶魔法Lv254 灼魔法Lv254

英霊召喚Lv7 禁呪Lv256

錬金術Lv218(↑2)薬師Lv59 ガラス工Lv55

木工Lv113 連携Lv220 鑑定Lv169 識別Lv233(↑1)

看破Lv215(↑1)保護Lv88 耐寒Lv228

掴みLv225 馬術Lv224 精密操作Lv230(↑1)

ロープワークLv219 跳躍Lv231 軽業Lv236

耐暑Lv218 登攀Lv218 平衡Lv225

二刀流Lv222 解体Lv167 水泳Lv218

潜水Lv218 投擲Lv227

ダッシュLv225 耐久走Lv225 追跡Lv225

隠蔽Lv222 気配察知Lv225 気配遮断Lv225

魔力察知Lv225 魔力遮断Lv225 暗殺術Lv225

身体強化Lv225 精神強化Lv225 高速詠唱Lv242

無音詠唱Lv242 詠唱破棄Lv245 武技強化Lv235

魔法効果拡大Lv227 魔法範囲拡大Lv227

呪文融合Lv227

耐石化Lv80e 耐睡眠Lv80e 耐麻痺Lv147

耐混乱Lv80e 耐暗闇Lv233 耐気絶Lv223

耐魅了Lv80e 耐毒Lv80e 耐沈黙Lv223

耐即死Lv133 全耐性Lv166

限界突破Lv124 獣魔化Lv132


称号

老召喚術師の後継者 老死霊術師の誓約

森守の紋章 中庸を貫く者 王家の剣指南者

海魔討伐者 鍾乳洞踏破の証 墓守の紋章

魔神討伐者 氷雪竜討伐者 巨人王の謎掛け

巨神掃滅者 ドラゴンメンター

スライムメンター 聖獣の守護者

金紅竜の盟約 翡翠竜の誓約 柘榴竜の誓約

蒼玉竜の誓約 白金竜の誓約 黒曜竜の誓約

翠玉竜の誓約 水晶竜の誓約 煙晶竜の隠遁

百眼巨神の瞳 琥珀竜の約定 雲母竜の約定

紫晶竜の誓約 瑠璃光の守護者 神殺し

女神の祝福(New!)

除蓋障院への通行証 冥界門の通行証

天界の破壊者 修羅道への通行証

魔導神 拳神 ファイナルウェポン

一騎当千 耐え忍びし者


召喚モンスター

ビーコン エルダードラゴンLv7

 器用値 63

 敏捷値 64

 知力値 81

 筋力値 63

 生命力 63

 精神力 81

 スキル

 噛付き 引裂き 体当たり 飛翔 受け 回避

 跳躍 疾駆 夜目 水棲 水中機動 連携

 自己回復[中] 物理抵抗[中] 魔法抵抗[中]

 MP回復増加[中] 捕食吸収 ブレス 時空属性

 光属性 闇属性 火属性 風属性 土属性

 水属性 氷属性 溶属性 毒耐性 耐即死

 耐魅了 加護


召魔の森 ポータルガード

ジェリコ、リグ、クーチュリエ、獅子吼、守屋、スーラジ

久重、テフラ、岩鉄、虎斑、蝶丸、網代、スパーク

クラック、オーロ、プラータ、イソシアネート、ムレータ

酒船、コールサック、シュカブラ、シルフラ、葛切

スコヴィル、デミタス、白磁、マラカイト、パティオ

貴船、エジリオ、エルミタージュ、ナーダム


海魔の島 ポータルガード

ナイアス、テイラー、ストランド、ペプチド

ロジット、エルニド、ロッソ、雪白、濡羽

アチザリット、クォーク、アモルファス、明石

オリアナ、ヴェルツァスカ、プリトヴィッチェ


召魔の森に駐留

ビーコン(転生煙晶竜)、長老様、柘榴竜、翠玉竜

紫晶竜、黄晶竜、他ドラゴン4編隊分

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
カラドリウスは天空マップ絶海の迷宮島でサモナーさんが一度見かけてますね。 そしてかの鳥は神の使いと言われ徳の高い人から病を吸い取るとされています。 今回の役目はゼウスの能力を封じ邪心や煩悩を吸い取って…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ