120
ログインしてすぐに確認したこと。
それはヴォルフがちゃんと召喚できるかどうか。
出来ました。
うむ。
今日は出来るだけ一緒にいようか。
頭を撫でてやるとじゃれついてくるヴォルフ。
少しだけアデルの気持ちが分かる気がしていた。
続けて残月、ヘリックス、文楽を召喚していく。
朝食の用意を文楽にさせておこう。
肉はある。
が、野菜が少し足りないか。
ハンネスがいれば野菜を貰えるかな?
いつもの場所に行ってみるか。
臨時露店?
いいえ、朝市です。
ハンネスが田舎の物産館にいるおっさんに見える。
いや、やってる事は立派だとは思うのだが。
地産地消はいいことです。
物流費用を節約できますもんね。
違うって。
「あ、キースさん、おはようございます。いい野菜がありますよ!」
やはり田舎の物産館にいるおっさんである。
まあそれはいいか。
「おはようございます」
「まあ好きなだけ持っていっていいですよ」
「済みませんね」
適当に野菜を見繕ってもらう。
目新しい所ではジャガイモがあった。
無論、小麦粉は忘れてはいけない。
周囲を見渡すとミオと優香が何やらバーベキューみたいな事をしているが。
アデルとイリーナが慌てて駆けつけていた。
遅刻したようで、何やら謝っている。
まあ迷惑はかけないようにしようね。
文楽の元に戻ると野菜と小麦粉を渡してみる。
どんな選択をするのか、任せてみよう。
オレはオレで昨日の獲物を使って木工作業だ。
そう。
紋章蜂の針だ。
これを使って矢を作ってみよう。
【武器アイテム:矢】紋章蜂の矢+ 品質C+ レア度3
AP11 破壊力0+ 重量0+ 耐久値30 射程+25%
継続ダメージ[小]
紋章蜂の針を矢尻に利用した矢。
貫通力を高めて出血ダメージを狙ったもの。
毒の効果で傷口が塞がり難くなっている。
ほう。
矢羽に金鶏の翼の羽根を使ったから射程も長めだ。
これは量産すべき。
取り急ぎ、素材を揃えて文楽と護鬼の分を揃えておこう。
素材を揃えて短縮再現を使う。
思っていた以上にMPバーが減らないようだ。
出来もそう悪くない。
射程は+20%になったが品質Cでなんとか収まっている。
出来るだけ数を揃えておこう。
文楽の料理が出来たようだ。
なんとニョッキだ。
ソースはトマトベースか。
実に旨そうである。
いや、旨いに違いない。
うん。
旨かったです。
文楽の矢筒に新たな矢を補充すると帰還させた。
ヘザーを召喚する。
戦力をなるべく早めに底上げしたいのだが、同時召喚4匹でも足りない。
いや、5匹であっても厳しい気もする。
なんだか先が思いやられるな。
『こちらフィーナ、定例ミーティングを始めます。発言のある方は挙手をお願いします』
ユニオン状態を維持しながら報告を聞いていく。
今日は何が?
目新しい情報はいくつかあった。
まずは北のN1W2マップだが、新たなモンスターが確認されたようだ。
クモである。
しかも罠に嵌めるタイプだ。
あのマップには何箇所か、小規模の洞窟があって、そのいずれにもこのクモはいるらしい。
しかも死に戻りが2組、こいつのせいで発生したようだ。
別々の場所で、であるようだが。
スタブクロウラーも狩られたみたいである。
大して強くは無いようだ。
そして生産職にとっての朗報がある。
このイモ虫とクモからは繊維材料が得られるのだ。
特にファブリックファーマーにとっては福音だろう。
そしてS1W2マップへと抜ける洞窟は例の牛頭と馬頭を始めとした妖怪の報告もあった。
つかイリーナだったんだが。
アデルとイリーナが入った支道の先は建設途中の広間があったようだ。
そこでは鉄鉱石が取れるようである。
恐らくは鍛冶師の一団から歓声が沸いた。
オレもハチがいる事だけは報告した。
その針で邪蟻の矢の上位置換が出来る事も併せて、である。
例の金剛仁王像については伏せておく。
だってあれとは戦ってみたいし邪魔されたくない。
当然、今日は挑むつもりである。
あれは、オレの獲物だ。
「おはよー!」
「おはようございます」
アデルとイリーナだ。
彼女達の視線の先にはヘリックスがいる。
気付いたか?
「クラスチェンジ?いいなー」
「アデルちゃん、今日は時間がないわよ?」
「でも、いいなー」
時間がない?
「あ、今日は野暮用があるので対戦済ませたらログアウトです」
「負けないよ!」
「もちろん、こっちもそのつもりで戦うわよ?」
「もしかして、2人でやるのか?」
「「はい!」」
へえ。
見てみたいな。
だが待て。
あの金剛仁王像がオレを呼んでいる。
《アイテム・ボックス》を軽くしたらすぐに飛んでいきたい位なのだ。
「がんばれよ」
「もっちろん!」
「はい」
2人が早速、広場の中央に陣取った。
始めるようだが。
心惹かれるが用件は済ませておきたい。
フィーナさんはいなかった。
つかいつものメンバーがほぼいなかったりする。
まあリックと篠原がいるから大丈夫なのだろう。
「おはようございます。買取りはいいですか?」
「おはようさん、じゃあアイテムはここへどうぞ」
売る物は泥炭が主になる。
すぐに精算は終わった。
よし。
かなり身軽になったぞ?
あとは若樹にグロウ・プラントを掛けて村を出発するだけだ。
ああ、ハンネスにも確認は必要か。
広場は人で賑わっていた。
全部、プレイヤーだ。
つかフィーナさん達もいるじゃん!
サキさんとマルグリッドさんの姿は見えないが。
他にも与作もフェイもいる。
これ全員、ギャラリーか。
アデル対イリーナの戦いは円形のフィールドで行われていた。
闘技大会の時よりもかなり広い。
そこでは4対4での戦いが繰り広げられている。
いや、3匹と3匹が互いの主人を守りつつ、相手を牽制しあっているのだ。
互いに壁呪文も駆使している。
長期戦模様になっているようだな。
空中位置の召喚モンスターなしで戦っているようだから、お互い後衛にいる相手に攻撃が届かないでいる。
これはこれで見応えがありそうだが。
決着に時間が掛かるのが見て取れる。
ここは先を急ごう。
イリーナはヘビ、ウッドゴーレム、トラの布陣。
アデルはなんとオオカミ3匹の布陣だった。
どう言えばいいのか。
サモナーのパーティ同士だと当然、サモナー自身は最も後ろで戦いを指揮するのが定番ですよね?
確かに様になってる。
オレもああいった戦い方ができるのかな?
それにしてもエフェクトが派手過ぎて何が何やら。
まあ見てるだけなら楽しいだろうけどね。
村の縁からは残月に騎乗して草原を駆け続けた。
無論、ヴォルフと一緒に、である。
うん。
こうでなくちゃ。
南の洞窟へ向かう間にラプターの襲撃があった。
今までに無く楽勝です。
呵責の杖が凄い。
最初に頭を殴った感触でも違いが大きいのが分かる。
一撃でHPバーが半分近く削れているのだ。
攻撃力そのものも向上しているのもあるが、破壊力も増している。
手に持つ重さは変わらないのに、だ。
ヤバいな。
戦闘が楽になりすぎると困る。
呵責の捕物棒も試してみた。
まるで馬上槍です。
残月の影響も当然あるのだろうが、突くだけでラプターが吹っ飛んで瀕死になるのである。
これも凄い。
オレは槍技能はないし、取得する気もないが、これは便利だ。
取り回しにやや難がある。
だがそれを無視できるほどに強力な武器だろう。
まあ元々オレの好みの長さではないから、これは別の形に流用しよう。
メインとサブは呵責の杖と呵責のトンファーを使い分ける事で対応したい。
洞窟前の川を渡る前にダウジングを掛ける。
今日はサードニックスと黄水晶2個が採れた。
まあまあ?
そういう事にしておこう。
で、洞窟へ突入する前に布陣を考えておこう。
ヴォルフは確定だ。
それに回避能力が高く、支援が出来るヘザーも確定。
戦鬼かジェリコか。
もしくはその両方か。
いや、空中位置もいて欲しいからそれはダメだな。
実に悩ましい。
結局、ジェリコを召喚する事にした。
そして4匹目は黒曜にする。
よし。
これで挑もう。
本日のメイン洞窟の担当はゴブリンのようである。
例の十字路がある場所までは、ゴブリンにしか遭遇しない。
不服であった。
何でかって?
呵責のトンファーの真価が分からないからだ。
一撃だ。
一撃だけで逝ってしまう。
逝って欲しくないのに。
比較できないじゃねえか。
ゴブリンサモナーでもいないのか?
つまらんぞ。
実際、カヤのトンファーをわざわざ《アイテム・ボックス》から取り出して使ってみた。
やはり一撃死だ。
せめてオークだったら良かったのに。
支道に突入する。
昨日ならばゴブリンの巣窟だったが。
そこは変わらないらしい。
石ころと石灰石しか得られないのも変わらない。
つまり、呵責のトンファーの真価が分からないのである。
だがその真価が問われる時が来た。
牛頭 Lv.1
妖怪 討伐対象 アクティブ
戦闘位置:地上 火属性
馬頭 Lv.1
妖怪 討伐対象 アクティブ
戦闘位置:地上 火属性
広間で待ち構えているのは例のコンビだ。
いいぞ。
そうでなくちゃ。
無論、フィジカルエンチャント系で強化はする。
勝つ事は最優先だ。
そこは変わりは無い。
召喚モンスター達はまとめて牛頭に当たらせた。
4対1だ。
安心して任せていい。
さて。
馬頭さん、来なさい!
結論から先に言おう。
呵責のトンファー、これは使える。
重さは変わらない。
気のせいでなく、与えているダメージが違うのだ。
数発当てても僅かしか減っていなかった馬頭のHPバーだが、一発だけで目に見えて減るのだ。
まあ一発で1割も削れてはいないのだが、今までが今までだったしその差は大きい。
気分もいい。
相手の動きを余裕を持って見ていられるから尚更攻撃も良く当たる。
蹴りも交えて攻撃を組み立てていく。
連続攻撃が面白いように決まってくれる。
全てがいい方向に回転できていた。
今まであまり使ってこなかった攻撃も付け加えてみた。
頭突き。
肩を使ってのタックル。
馬頭はオレよりも体格がいいし、パワーもあるから大したダメージではない。
それでも次の攻撃への繋ぎには十分であった。
呵責のトンファーを使った突き、肘打ちがいい感じで決まるからだ。
その逆もまた有効である。
呵責のトンファーを叩き込んだ後、僅かに出来る隙をついて馬頭の足を引っ掛けて転ばせる事も出来ている。
結構、簡単に転ぶものだから本当に驚いた。
最初に戦った馬頭と同じレベルとは思えない。
その位、違っていた。
気が付けば牛頭はもう倒れ伏してした。
召喚モンスター達は観戦モードに突入している。
少し待ってなさい。
もうすぐ、片付けますから。
それでも油断無く、馬頭の動きを観察しながら攻撃を継続していく。
関節技にも投げ技にも頼らず倒しきった。
完勝である。
ダメージも擦過傷程度で済んでいた。
召喚モンスターも牛頭とやりあったであろうジェリコが多少喰らっていたが、回復魔法1回で全快である。
文句なしだ。
この先、いい感じで戦えそうである。
そしてこいつ等は何も残さなかった。
次は少し強い相手になるものと思われる。
いいぞ。
実に、いい。
あの金剛仁王像まで、あと広間を1つ、通過しなければならない。
ここで試したい事が出来た。
馬頭相手には十分戦えた。
レベル2以降も互角以上に戦えるかも概ね想像できる。
では牛頭相手ならどうだ?
実に、興味深い。
だから、やってみた。
牛頭 Lv.2
妖怪 討伐対象 アクティブ
戦闘位置:地上 火属性
馬頭 Lv.2
妖怪 討伐対象 アクティブ
戦闘位置:地上 火属性
馬頭は召喚モンスター達に任せた。
ヴォルフなど先頭を駆けて突っ込んでいって、馬頭を翻弄し始めている。
それを横目にオレは牛頭に迫った。
フィジカルエンチャント系で強化はしている。
それでも牛頭のパワーに比べたら圧倒的に不利だ。
それだけにやり甲斐もある。
通じる。
通じるのだ。
ちゃんとダメージが通っている。
見た目には牛頭の表皮に擦過傷が付く程度にしか見えないが。
ちゃんと効いている、らしい。
破壊力が上がっている影響?
恐らくは、そうだろう。
牛頭は馬頭よりも動きが鈍い。
但しタフだ。
こいつのHPバーを減らすには馬頭の倍近くの手数が必要だった。
最初のうちに得物の刺又を叩き落してあったし、リスクそのものは馬頭よりも低い。
捕まらなければ、であるが。
突進する事、多数。
大抵は単に避けるだけだが、転ばせる事も出来た。
パワーがあるからタイミングを外す訳にいかないけどね。
馬頭はどうなってる?
やはり馬頭の方が先に召喚モンスター達に屠られていた。
早いよ乙。
そしてやはり観戦モードだ。
いい子にして待ってなさい。
ヘザーはまたしても黒曜の背中に乗ってズルしてやがるし。
緊張感なさすぎ。
おっと。
もっと真面目にやろう。
今度は集中攻撃を試す。
トンファーで肘辺りを狙い、連続して撃ち込んでいった。
こいつらは痛みは感じていないようだが、破壊された箇所はちゃんと機能不全に陥る。
時間はかかったが左肘を破壊する。
次は右肘を破壊。
まだ牛頭のHPバーは余裕がある。
頭突きで攻撃してくる牛頭の膝にも攻撃を集中させていく。
ついには突進も出来なくなった。
事実上、攻撃の手を全て封じた事になる。
もう、いいかな?
ジェリコ、ヴォルフ、黒曜に参戦させる。
ヘザーは見学で。
HPバーは3割ほど余らせていた牛頭だが、あっという間に屠られてしまっていた。
《只今の戦闘勝利で召喚モンスター『ヘザー』がレベルアップしました!》
《任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》
おいおい。
見た目だけなら戦闘に参加もせずに余裕をかましていたヘザーがレベルアップとな?
だがオレが見てない所で活躍していたのだろう。
その証拠にヘザーのMPバーはちゃんと減っていた。
さて。
ステータス値で既に上昇しているのは敏捷値だ。
任意ステータスアップは生命力を指定しようとして。
出来ません。
《生命力はこの種族の成長上限に達しています。他のステータスを指定して下さい!》
なんと。
上限値があるのですか?
ふむ、それは困った。
だがそれも仕様であるなら従うしかあるまい。
もう1点は筋力値にするとしよう。
フェアリーに筋力が必要か?
いや、まるで必要とも思えないが、筋力値を3にする意味はある。
ヘザー フェアリーLv3→Lv4(↑1)
器用値 6
敏捷値 20(↑1)
知力値 20
筋力値 2(↑1)
生命力 3
精神力 23
スキル
飛翔 浮揚 魔法抵抗[中] MP回復増加[小] 風属性
まあ筋力値が3になれば生命力と数が揃う。
その後から他のステータスに振ればいいだけの話だ。
これでいいだろう。
今回も牛頭と馬頭は何も残さなかった。
まあそれもいい。
本命は次だしな。
例の金剛仁王像の前にオレ達は佇んでいる。
考え得る準備は前もってしておいた。
センス・マジック。
フィジカルエンチャント各種。
そしてオレの手には呵責のトンファー。
どうせ、両隣の金剛仁王像は動くんだろ?
今は魔力をまるで感じないのだが。
目の前の扉からは魔力を感じ取れる。
封印されているのだ。
さあ、何がトリガー?
まあいい。
先に進もうとしたら分かるだろう。
「アンロック!」
同時に両隣の像から魔力が感じ取れた。
来た。
来ましたよ?
金剛力士・阿形 Lv.2
天将 討伐対象 アクティブ
戦闘位置:地上 火属性
金剛力士・吽形 Lv.2
天将 討伐対象 アクティブ
戦闘位置:地上 土属性
金剛仁王じゃなくて金剛力士?
まあ一緒か。
それに天将?
まあそれもいい。
問題はそのサイズだ。
改めて近くで見るとさすがに威圧感がある。
馬頭と比べると頭一つ大きい。
そしてその体つきは牛頭にも劣らない。
強いのだろうな。
だがインフォがない辺り、イベント的なモンスターじゃないのかな?
そうであれば有難いが。
《亡者であれば十王の審理を経よ》
《生者であれば立ち去れ》
《経典を望むならば証を見せよ》
《経典を盗まんとするならば滅するのみ》
《力を見せるや?》
《立ち去るや?》
《返答は如何に》
ちゃんとインフォがありました。
なんだ。
それに返答も何もなかった。
いきなり襲ってきたのだ。
阿形は召喚モンスター達に任せた。
オレは吽形を相手にする。
こいつは馬頭よりも頭一つ、大きいだけだ。
だがその頭一つがまたデカい。
もっと大きく感じる。
体格差って奴は僅かであっても侮れない。
「ディフェンス・フォール!」
阿形の方も近くにいたので、そっちから掛けてみた。
頭上の赤いマーカーに小さなマーカーが重なる。
どうやら効いたか。
目の前の吽形が手にする武器を振り下ろしてくる。
スピードもある。
パワーもある。
だが驚くべきはその武器だ。
独鈷杵、というのは分かる。
短い柄の両端に槍状の刃があるからな。
その片方が長く伸びて直剣状となっていた。
その刃は黒光りしている。
まるで黒曜石のように。
それに強烈な魔力も刃から迸っていた。
「ディフェンス・フォール!」
吽形の攻撃をなんとか避けてこいつにも呪文を掛けておく。
頭上の赤いマーカーに小さなマーカーが重なった。
次の呪文を急いで選択して実行する。
今現在、ヤバい状況なのは?
ジェリコだ。
案の定であった。
既にジェリコのHPバーは3割ほど減っている。
一旦、ジェリコを下げてオレの近くにまで後退させた。
「レジスト・ファイア!」
同時にヘザーから魔力がジェリコに放たれたようだ。
フィジカルエンチャント・ウィンドで敏捷値を底上げ済みのジェリコが更に速く動くようになっていた。
いい支援だ。
次の呪文が間に合えばいい。
オレも吽形の攻撃を気にしなきゃいけないのではあるが。
吽形が横に薙いでくる所を姿勢を低くして避ける。
同時に足の甲にトンファーを叩き付けた。
もう一方のトンファーで膝の皿を割りに行く。
普通の相手なら片足の自由を完全に奪える攻撃だ。
だがこいつは普通じゃない。
平気で歩いていやがる。
「ファイア・ヒール!」
ジェリコには回復魔法は効き難い傾向がある。
ポーションに至ってはまるで効果が無い。
つか飲めないし、ぶっかけても意味はないのは承知しているが。
だからこそ回復呪文をかけておく必要がある。
壁役をこなしてきたジェリコだが、ここまでHPバーが削られるのも久しぶりだ。
阿形の方も独鈷杵を振り回そうとしていた。
ジェリコがその独鈷杵を持つ拳を捕まえて振らせないようにしているのだが。
独鈷杵から伸びる刃からは炎が吹き出ていた。
明らかに高い攻撃力がありそうだ。
なんとか拮抗している合間にヴォルフと黒曜が攻撃を加えてくれている。
そうだ。
それでいい。
「ディレイ!」
阿形に呪文を掛けると同時にヘザーがオレの肩に止まった。
そして魔力が注ぎ込まれる。
体が少し軽くなった気がした。
いいぞ。
目の前にいる吽形に集中する。
さっきまでの攻撃はちゃんと効いていたみたいだ。
HPバーが1割近く減っている。
たった1割?
だがそれでも十分。
減っているという事実があればいい。
今度は突いて来た。
直剣であれば最も警戒すべき攻撃だ。
それだけに好機でもある。
独鈷杵を持つ腕をトンファーで払った。
そのままもう一方のトンファーで股間を痛打。
懐に入った所で足を払いに行った。
動かない。
さっきダメージを加えた方の足の筈なんだが。
さすがに手強い。
今度は振りかぶって一撃を加えに来た。
オレは体を横へと捌いて回避する。
同時に独鈷杵を持つ手首にトンファーを撃ち下ろす。
独鈷杵はまだ離してくれない。
「オフェンス・フォール!」
この呪文も効いたようだ。
吽形は再び突いてくる。
またか。
上段から切り下ろす。
横に薙ぐ。
突く。
これしかして来ない。
もっと工夫できないのか?
再び手首をトンファーで痛打。
そして膝蹴りを当てに行く。
肘打ちも同時に、である。
交差法で手首が完全に砕かれたようだ。
独鈷杵を手放してくれた。
やっとか。
落とした独鈷杵を蹴って遠くに転がすと、吽形と正対する。
「ディレイ!」
この呪文も掛かったようだ。
順調か?
だが吽形の動きは明らかに変化していた。
四股を、踏んだ。
繰り返す。
四股を繰り返す。
まるで相撲取りのように。
今度は攻守交替になった。
オレの方から吽形に迫る。
吽形もそれに応じた。
仕切りのように腰を落としてから突っ込んでくる。
相撲の立会いのように、だ。
ヘザーから風の刃が吽形に向けて放たれた。
そしてオレも足を飛ばす。
蹴手繰りだ。
勢いがあった分、見事に決まった。
それにしてもこの吽形ってば重たいのな。
蹴りを放った足が痺れそうになっている。
相撲ならばそこで決着なのだろうが、生憎とそうはならない。
まだこいつのHPバーはたっぷりと残っている。
背筋に戦慄が走った。
恐れ?
歓喜?
多分、両方だろう。
阿形の方はジェリコとパワー勝負で拮抗しているのが見えていた。
あの形のままであれば問題あるまい。
ヴォルフと黒曜が攻撃を積み重ねたらいずれ詰む。
実際、阿形のHPバーは6割ほどにまで減っている。
ではこの吽形はどうか?
そこはオレ次第だろう。
当たり前だが。
そう。
どう戦ってもいい相手だ。
何を使ってもいい。
武器も、呪文も、この肉体の持つ全ての技を。
そう思うと楽しくなってきた。
いかん。
きっと、オレは笑っているに違いない。
きっと、嫌な笑い方をしているに違いない。
きっと、ケダモノのような笑い方をしているに違いない。
間違いなく、笑いながら吽形を痛めつけているに違いない。
吽形は善戦した、と思う。
阿形が倒れた後もオレ相手に奮戦し続けていた。
両手の手首は破壊されていた筈だが、腕ごと叩き付けに来てたし。
最後の方は頭からのぶちかましだけで勝負を挑んできていた。
無論、正面から受ける勇気など無い。
避けるだけだ。
いや、カウンターで横からトンファーを頭に叩き付けたりしてました。
それも3回ほど繰り返した後に吽形も倒れて動かなくなる。
倒れた2体1対の金剛力士はそのまま消えていった。
独鈷杵も消えていく。
いや。
元の像の姿に戻った、というのが正しいか。
扉の両脇に変わらず像の姿で金剛力士は存在していた。
まるで先刻の戦闘は無かったかのように。
《亡者であれば汝らに告ぐ、ここに救いはない》
《生者であれば汝らに告ぐ、ここには欲しかない》
《罪を貪る者であれば六道輪廻のいずれにも進む道は無し》
《再び我らは罪を問う》
《再び我らは法を説く》
《再び我らは問いかけるであろう》
ようやく終わった、のか?
終わったようだな。
しかし疲れた。
心地良い疲れでもあるけどね。
《只今の戦闘勝利で【召喚魔法】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【土魔法】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【水魔法】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【二刀流】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【身体強化】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【魔法効果拡大】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【魔法範囲拡大】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で種族レベルがアップしました!任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》
さすがに上がり方が半端ないな。
数を倒してはいないが、強敵は結構倒してきている。
それだけ実入りが良かった、という事にしておこう。
召喚モンスターも更に追加が出来るのも楽しみだ。
おっと。
オレ自身のステータスはどうする?
決まっている、知力値でいいだろう。
基礎ステータス
器用値 16
敏捷値 16
知力値 22(↑1)
筋力値 16
生命力 16
精神力 21
次は精神力だな。
それは間違いない。
《ボーナスポイントに2ポイント加算されます。合計で12ポイントになりました》
だが。
これで止まらなかった。
《只今の戦闘勝利で召喚モンスター『ジェリコ』がレベルアップしました!》
《任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》
まあ確かに今回一番の功労者はジェリコだしな。
上がってくれて有難う。
本当に助かってます。
ジェリコのステータス値で既に上昇しているのはなんと精神力だった。
珍しいな。
もう1ポイントは敏捷値にしておく。
今日の戦いでも分かるが、手数は多い方が当然いいよね?
ジェリコ ウッドゴーレムLv6→Lv7(↑1)
器用値 5
敏捷値 6(↑1)
知力値 5
筋力値 35
生命力 35
精神力 5(↑1)
スキル
打撃 蹴り 魔法抵抗[微] 自己修復[微] 受け
これでジェリコもリーチ?
この所、戦っている相手が強いせいか、レベルアップのペースが早いような。
まあ文句のある筋合いではないが。
イベントモンスターでもアイテムを残す魔物は過去にいた。
期待はして当然。
だが金剛力士達は奇妙な物を残していた。
こんな代物である。
【素材アイテム】変性岩塩(聖) 品質C レア度3 重量0+
清めの儀式を経ている聖なる岩塩。
普通の塩としても使える。
最後まで相撲ネタかよ!
主人公 キース
種族 人間 男 種族Lv14(↑1)
職業 サモナー(召喚術師)Lv13
ボーナスポイント残 12
セットスキル
杖Lv11 打撃Lv8 蹴りLv8 関節技Lv8 投げ技Lv8
回避Lv8 受けLv8 召喚魔法Lv14(↑1)時空魔法Lv6
光魔法Lv7 風魔法Lv8 土魔法Lv8(↑1)水魔法Lv8(↑1)
火魔法Lv7 闇魔法Lv7 氷魔法Lv5 雷魔法Lv5
木魔法Lv6 塵魔法Lv5 溶魔法Lv5 灼魔法Lv5
錬金術Lv6 薬師Lv5 ガラス工Lv3 木工Lv5
連携Lv10 鑑定Lv10 識別Lv10 看破Lv3 耐寒Lv5
掴みLv8 馬術Lv8 精密操作Lv10 跳躍Lv4
耐暑Lv4 登攀Lv4 二刀流Lv8(↑1)解体Lv6
身体強化Lv6(↑1)精神強化Lv6 高速詠唱Lv8
魔法効果拡大Lv5(↑1)魔法範囲拡大Lv5(↑1)
装備 呵責の杖×1 呵責のトンファー×2
呵責の捕物棒×1 怒りのツルハシ+×2 白銀の首飾り+
雪豹の隠し爪×1 疾風虎の隠し爪×2 雪豹のバグナグ×1
野生馬の革鎧+ 雪猿の腕カバー 野生馬のブーツ+
雪猿の革兜 暴れ馬のベルト+ 背負袋 アイテムボックス×2
所持アイテム 剥ぎ取りナイフ 木工道具一式
称号 老召喚術師の弟子、森守の紋章 中庸を望む者
呪文辞書
ステータス
器用値 16
敏捷値 16
知力値 22(↑1)
筋力値 16
生命力 16
精神力 21
召喚モンスター
ヴォルフ グレイウルフLv2
残月 ホワイトホースLv1
ヘリックス ファイティングファルコンLv1
黒曜 ミスティックアイLv1
ジーン ブラックバットLv1
ジェリコ ウッドゴーレムLv6→Lv7(↑1)
器用値 5
敏捷値 6(↑1)
知力値 5
筋力値 35
生命力 35
精神力 5(↑1)
スキル
打撃 蹴り 魔法抵抗[微] 自己修復[微] 受け
護鬼 鬼Lv6
戦鬼 ビーストエイプLv7
リグ スライムLv5
文楽 ウッドパペットLv5
無明 スケルトンLv5
ナインテイル 赤狐Lv4
ヘザー フェアリーLv3→Lv4(↑1)
器用値 6
敏捷値 20(↑1)
知力値 20
筋力値 2(↑1)
生命力 3
精神力 23
スキル
飛翔 浮揚 魔法抵抗[中] MP回復増加[小] 風属性




