113
ここまで進んできて気が付いた。
あの牛頭と馬頭と戦って以降、オークに遭遇していない。
連中の生息領域ではないって事か。
でも別の意味で面倒なのが続いている。
フロートボムだ。
百足鬼だ。
まあオークより戦い甲斐はあるんだろう。
今も百足鬼をジェリコが屠っているのだが、何か釈然としない。
そうだ。
オレ自身が暴れる機会があまりに少ない。
牛頭と馬頭と戦って以降、まともに戦ってねえ。
フロートボム相手だとウォーター・ニードルを撃ち込むだけで終わっているし。
そろそろ、来て欲しいな。
毒消しの奇陳散の影響はもう無い。
いつでも来ていいんですが。
またしても先刻と同じ罠だ。
通路がループしている。
センス・マジックは切れていたのに気がつかなかったオレも悪いのだが。
再度センス・マジックを掛けて周囲を調べていく。
やはり、扉があった。
アンロックで封印を解いてジェリコが岩を押していく。
中はまたしても広間か、と思ったが少し違うようだ。
対面には階段が見える。
そして階段の前で何か光が爆ぜた。
そこから現れたのは見慣れた奴等だ。
牛頭 Lv.2
妖怪 討伐対象 アクティブ
馬頭 Lv.2
妖怪 討伐対象 アクティブ
またお前等か。
だが今は感謝したい。
実に戦い甲斐のある事は分かっている。
今の気分には丁度いい。
「エンチャンテッド・ウェポン!」
4つ目のエンチャンテッド・ウェポンを掛けた所で馬頭が襲い掛かってきた。
こいつにはオレが迎え撃つ。
ジェリコを中心に無明、黒曜は牛頭に向かった。
ヘザーはオレの傍で支援させよう。
ムキムキの馬頭相手にどうする?
まともにやりあっては勝ち目は無い。
急所攻撃もこいつらにはあまり効かないのも分かっている。
オレの動きが速くなっているのを感じた。
ヘザーの仕業だろう。
ナイス。
振り回されてくる錫杖を悠々と避けると接近戦を挑む。
手首に右拳を当てると同時に引っ掻く。
その拳には雪豹のバグナグが握り込んである。
血は、出ない。
だが本命は次だ。
馬頭の腕に左腕を回して関節を極める。
そのまま体を反転させて投げた。
最初の目標は、錫杖。
あれがあるとリスクが高い。
馬頭はまだ錫杖を持っている。
その錫杖を踏んで馬頭の顔を蹴り付けた。
まだ、離さないのか。
手の甲にバグナグを突き立て引っ掻く。
立ち上がろうとした所で再度錫杖を踏みつける。
馬頭の顔を蹴り上げた。
錫杖をようやく手放したか。
錫杖を遠くに蹴って馬頭を相対する。
さあ。
どう戦ってくる?
「ガッ!」
短い威嚇音と共に馬頭が迫る。
速い。
だが本物の馬ほどではない。
そして格闘技術はさほどではない事が分かる。
パワーもスピードもかなりあるようだが。
脇を抜けながら腹にバグナグで引っ掻いて足の甲を踏んでおいた。
転ぶかな?と思ったが転ばなかった。
バランス感覚はいいらしい。
振り返る所で打つ。
胴を連続で。
魔物のHPバーはこれだけやっておいて1割も減ってないのだ。
これは。
楽しめそうだな。
無論、急所も攻撃している。
効かないのは分かっているんだが、つい攻撃してしまうんです。
咽喉を引っ掻いても胴体を殴るダメージと大して変わらないとか、こいつ凄い。
左拳には疾風虎の隠し爪も握り込んで打撃戦を続ける。
情勢は有利だ。
だが楽勝ペースではない。
存分に戦っていた。
実に楽しい時間だった。
満足である。
既に牛頭が片付いているのは分かっていた。
ジェリコ達をけしかけたら簡単に決着はつくだろう。
でも邪魔はさせない。
勿体無いです。
急所が効かないとは言っても物理法則には抗えないようだ。
関節技はちゃんとかかるし、投げ技も決まる。
痛がらないのが不気味なだけだ。
でもそれだけにいい相手だよな。
いくらでも向かって来てくれるし。
楽しくも危険な時間が過ぎていく。
さすがに長時間戦っていると、いくつか馬頭の攻撃も掠っていた。
凄いパワーを感じる。
でもそれ位の緊張感がないと、な。
馬頭を倒すのにかなり時間を要した。
まあ打撃と蹴りだけで倒しきったようなものだ。
嬲り殺しとも言うが。
《只今の戦闘勝利で職業レベルがアップしました!》
《取得が可能な補助スキルに【手品】が追加されます》
《只今の戦闘勝利で【打撃】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【受け】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【闇魔法】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で召喚モンスター『無明』がレベルアップしました!》
《任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》
そして無明もレベルアップだ。
よし。
無明のステータス値で既に上昇しているのは器用値だ。
もう1点は知力値を指定した。
無明 スケルトンLv4→Lv5(↑1)
器用値 16(↑1)
敏捷値 15
知力値 12(↑1)
筋力値 12
生命力 12
精神力 11
スキル
槌 小盾 受け 物理抵抗[微] 自己修復[中] 闇属性
だがインフォはこれに留まらない。
《只今の戦闘勝利で召喚モンスター『ヘザー』がレベルアップしました!》
《任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》
上々である。
つかこの牛頭と馬頭、何気においしい?
ステータス値で既に上昇しているのは精神力だった。
任意ステータスアップは生命力を指定する。
ヘザー フェアリーLv2→Lv3(↑1)
器用値 6
敏捷値 19
知力値 20
筋力値 1
生命力 3(↑1)
精神力 23(↑1)
スキル
飛翔 浮揚 魔法抵抗[中] MP回復増加[小] 風属性
成長が早い、というべきか。
出てくる魔物の経験値が高い、と思うべきなのか。
またしても支道を進む。
こんどはやや登り坂になっているようだ。
出てくる魔物はフロートボムに百足鬼で変わらない。
1匹で襲ってくるうちは問題なく倒せる。
戦闘がつまらないけどね。
延々と登り続ける。
時刻はそろそろ午後6時だ。
どこかで夕飯をゆっくりと摂れる場所を確保したいものだが。
そこで広間に出ました。
小部屋が8つあるのが分かる。
2つの小部屋は扉が閉じたままだ。
広間の正面は出口なのだろう。
小部屋を1つ1つ覗いて行く。
開いたままの小部屋はどれも中に何もなかった。
では閉じたままの部屋はどうか?
閉じたままの小部屋も調べてみる。
どちらも、開かない。
センス・マジックを使って確認してみたら、どちらも魔法で封印されていた。
1つ目をアンロックで開けてみる。
他の小部屋と構造は一緒であるのだが。
部屋の中央に箱がある。
魔力は感じない。
宝箱?
いやいやいやいや。
罠だってあるかもよ?
とりあえずジェリコに開けさせたらすんなりと箱は開いた。
異常は感じられない。
そして中には意外なものが見つかっていた。
【素材アイテム】アクアマリン 品質B レア度4 重量0+
青色のベリル。藍玉、水宝玉とも呼ばれる。
ベリルの中では希少価値は高い。
海の水を意味する宝石でお守りとして人気がある。
【装飾アイテム:首飾り】ミスリル銀の首飾り+ 品質C+ レア度5
M・AP+12 重量1 耐久値150
ミスリル銀の鎖で作られた首飾り。
魔法発動用に強化されている。
[カスタム]
複数の真珠を首飾りの全てに嵌め込んで強化してある。
※水魔法強化[中]
アクアマリンの原石もいい品のようだが。
首飾りが凄い。
ただ、残念な事にオレにはサイズが合わない。
短すぎる。
それに全面に真珠が嵌め込まれていて、これ以上の強化は望めないようだ。
黒曜にどうだろうか?
試しに装備させてみたが、今度は長すぎる。
なんとか長さを調節して装備させる事ができた。
違和感はあるかな?
黒曜からは特に嫌悪感は感じない。
うむ。
暫くは様子を見ておこう。
黒曜のステータスを見ても変化は無い。
まあ強化されていると思いたい。
では次だ。
もう1つの部屋もアンロックを掛けてみる。
封印、解除、と。
扉を開けるとそこには何が?
目の前が真っ赤です。
赤いマーカーで視野が染まってました。
フロートボムが部屋一杯になっている。
またこれかよ。
思わず扉を閉めた。
だが封印を解かれた影響はあったようである。
扉が、粉々になって吹き飛んできた。
広間に次々とフロートボムが雪崩のように現れて来る。
迷う暇などない。
呪文を選択して実行する。
だが魔物の方が速かった。
炎の弾がいくつも目の前に迫っている。
ヤバい。
だがその攻撃は喰らわなかった。
水の盾の前に炎が四散している。
無論、オレではない。
黒曜だ。
MPバーを見ると目に見えて減っているのも分かった。
「アクア・スラッシュ!」
水魔法の全体攻撃呪文が間に合った。
いや、これも黒曜の支援の成果だな。
広間にいた魔物は次々と地面近くに落ちてくる。
それでも油断できない。
攻撃呪文の範囲を外れている魔物もいるのだ。
黒曜がまだ元気な魔物に向けて飛ぶ。
今の黒曜には水属性がある。
フロートボム単体が相手だと完全に任せられるのだが。
どう見ても数十匹はいますよ?
心配無用でした。
黒曜の次の攻撃は先刻の水の盾ではない。
部屋の中にアクア・スラッシュと同様の現象が起きていた。
空中を自在に飛んでいた魔物は2匹にまで減ってしまう。
黒曜はその2匹を追いかけ始めている。
「アクア・スラッシュ!」
既に実行済みだった呪文を地面でのたうつ魔物共に放つ。
次々と魔物が減っていく。
生き残ってはいても瀕死であった。
健気にも攻撃しようと目を瞑る奴に止めを刺していきながら、黒曜の様子を見る。
既に1匹は屠られ、もう1匹も瀕死であった。
あれは任せていいか。
ジェリコ、無明と瀕死の魔物に止めを刺して回る。
そこからは楽勝であった。
魔物に止めを刺すだけの簡単なお仕事です。
《只今の戦闘勝利で【識別】がレベルアップしました!》
全滅させると識別が上がってました。
順調ですな。
だが問題がない訳ではない。
泥炭が得られるのはいいが、重すぎる。
1個目の《アイテム・ボックス》が埋まってしまいそうだ。
まあ運べるうちは持っていていいだろう。
《これまでの行動経験で【解体】がレベルアップしました!》
解体もレベルアップだ。
お願いですから仕事してね?
そしてフロートボムがいた小部屋には何があるのか?
何もありませんでした。
無念。
さて。
場所がアレだが食事にしたい。
あの呪文を使ってみようか。
「インスタント・ポータル!」
広間の一角で使ってみました。
さて、使い心地は如何なものか?
そこは不思議な空間であった。
半透明で周囲の様子が見えるのである。
何これ。
魔物は襲ってこないと信じておこう。
陣容は迷ったが、ヘザーを帰還させて文楽を召喚する。
再びサーロインの時間だ。
あの量であれば、もう数日は楽しめるだろう。
うひょー!
食事をしていたら奇妙な光景が見えた。
魔物だ。
フロートボムだ。
オレの目の前を悠然と通り過ぎていく。
だがマーカーは見えない。
その体は半透明である。
触ろうとしても、できない。
そういうものらしい。
このインスタント・ポータル、空間を切り取って別空間を作っている、という理解でいいのかね?
ちょっと怪しい不思議空間に思えるのだが。
ついでにログアウトできるか、試してみようか?
いや、召喚モンスター達を再度召喚しなきゃいけない筈だ。
MPが勿体無い。
いやいやいやいや。
ここは試してみたらいいんじゃね?
MPバーは7割近く、あるんだし。
悩んだら実行せよ。
召喚モンスター達を全て帰還させる。
テントは使わずともログアウトの確認画面が出て来たので、そのままログアウトしてみた。
即、ログインしてみました。
先刻と同じ風景のままである。
まあ当たり前だよな。
さて。
再度ログアウト、出来るかな?
出来ません。
連続使用不可、とは本当らしい。
まあクーリングタイムは約5時間だっけか?
リターン・ホームで風霊の村に戻れば済む事だし、困る事もないだろう。
では出発しようか。
いや。
食事に気を取られてポーションの補充を忘れていた。
まあ空き瓶の数は少ないのではあるが。
急ぎたいので錬金術の短縮再現を使う。
準備はいいかな?
忘れ物は無い?
目の前にいるフロートボムと戦う準備は?
召喚モンスターがいません。
おバカさん。
もう夕刻であるし、夜向けの布陣で行こうか。
黒曜、ジーン、無明を召喚する。
もう1匹は悩んだ挙句、ヴォルフにした。
よし。
では、先に進んでみるか。
天幕のように区切られた領域を出ようとすると、インフォが来た。
《インスタント・ポータル外に全ての利用者が出ると効力を失います。宜しいですか?》
この場合、当然Yesなのだが、《Yes》《No》の選択肢は出てこない。
行動で示すべきなのだろう。
そのまま区切られた領域を出る。
当然、そこにはフロートボムがいる訳で。
フロートボム Lv.3
魔物 討伐対象 アクティブ
戦闘位置:空中 火属性
あれ?
【識別】してみたら項目が増えているようだが。
とは言え黒曜の敵ではない。
あっさりと片がついた。
いやはや、黒曜ってば強くなったな。
広間の先も同様の支道が続いた。
現れる魔物も一緒であろ。
またしても広間。
だが今までのものと比べると狭い。
出口がなかったので、センス・マジックを使って調べてみる。
何も無いようだ。
小部屋は4つあって、そのうちの1つに封じられた別の扉があった。
アンロックで空けて先を進む。
だがそこから先はまたしても様相が違っていたのであった。
オークだ。
オークなのだ。
出てくる魔物が弱体化してる!
オークリーダーもいないとかマジ勘弁。
一応、こいつ等も【識別】してみるか。
オーク Lv.3
魔物 討伐対象 アクティブ
戦闘位置:地上
まあ属性はないというのは分かってはいました。
あまりオークで【識別】しても得られる情報に重要なものはなさそうだ。
オークを蹴散らして進む。
数が少ないからあまり格闘戦も楽しめない。
つまらん。
実に、つまらん。
馬頭と比べたら痛がるあたり、可愛げはあるんだが。
すぐに耐え切れずに死んでしまう。
オーク共よ。
少しは根性出せ!
そして宝石も落とさないオーク。
おのれ。
いいオークは宝石を落とすオークだけだ。
支道を進みながら呪詛のように呟いていたようである。
不意に開けた場所に出た。
天井が高い。
風が心地よかった。
何のことは無い、外に出ていたのだ。
星空が見え、月も確認できた。
広域マップを見る。
どうやらS1W2マップの中央付近にまで到達していたようである。
しかも、夜の時間に、である。
大いに警戒すべきだろう。
出てきた場所を確認しておこう。
それは蟻塚のような形状をしていた。
なんとまあ。
こんな場所に抜け道があるとはね。
そして黒曜の目はある存在を捉えていた。
古びた塔のようなものが見えていたのだ。
まさか。
もうエリアポータル?
その塔はいつ崩れてもおかしくない様相である。
組まれた石材は明らかに風化していた。
おっと。
センス・マジックを使っておく。
何が起きてもおかしくはない。
塔の入り口も崩れかけている。
元々は立派な塔だった様だが、その面影はその規模だけにしか認められない。
魔力は何も感じる事が出来ない。
それでもこのパターンは油断ならないのだ。
塔の中の様子は?
中は空洞になっていた。
内部の壁沿いに階段があるものの、登れそうになかった。
そして中央に達する。
イベントが始まった。
声が塔の中に響いてくる。
《咎人よ》
《我らは断罪せし者》
《我等は救済せし者》
《我等は絶対なる判事》
《魂の休息を得るためには裁きを受けねばならぬ》
《審判を受けるが良い》
《我らが天秤は示す。汝らの魂と心の臓は断罪するや否や?》
いやなインフォだな。
でも《Yes》を選択してイベントを進める。
覚悟完了なんだぜ?
急に上から砂が落ちてきた。
思わず後ろに下がっていく。
既に呪文を選択して実行してある。
「エンチャンテッド・ウェポン!」
最初の魔力付与はヴォルフに与えた。
すぐに次の呪文を選択して実行する。
落ちてきた砂はかなりの量になっていた。
何かの形をとりつつある。
何だ?
サンドゴーレム Lv.1
使役魔法生物 討伐対象 アクティブ
戦闘位置:地上 魔法抵抗[微] 自己修復[微]
火耐性[微] 土耐性[微] 風耐性[微]
なんじゃ、これって。
そしてこいつだけではないようだ
処刑する塵精霊ハブーヴァ Lv.3
イベントモンスター ???
戦闘位置:空中 塵属性 火耐性[微] 風耐性[微]
こっちは空を飛ぶ砂の塊みたいな奴だ。
ガスクラウドみたいだな。
イベントモンスター、とあるのだからこっちを優先して倒さないといけないようだ。
「エンチャンテッド・ウェポン!」
次はジーンに魔力を付与する。
まだ敵手は動こうとしない。
戦端は黒曜に切らせた。
水の針の束がまるで膜の様になって襲い掛かっていった。
複数の耐性を持つ相手だ。
だが分かり易い布陣である。
相手の情報を前もって得られるのであれば、方針は自然と定まる。
水魔法で押して行けばいい。
今までと違って、多少は楽な戦い方が出来るだろう。
全然、楽じゃないって。
サンドゴーレムが面倒です。
確かに水魔法でダメージは与えているのだが。
だがそこはゴーレム、かなりタフな相手のようだ。
しかもヴォルフの攻撃は透過してしまう。
砂が一瞬のうちに広がってしまうのだ。
ダメージはそれでもある。
あるのだが、微々たるものなのだ。
ハブーヴァの方が簡単に行きそうか、と言えばそうでもない。
水魔法でダメージを与えられるのは間違いないのだが、サンド・ゴーレムを盾に上手く使ってくる。
そして特殊攻撃がまた面倒。
恐らくはサーマル・エクスパンションと同等の攻撃だろう。
あのヴォルフに、黒曜に、ジーンに、簡単に命中してしまう。
無明も当然喰らっている。
本当、どうにかしないと。
全員にエンチャンテッド・ウェポンを掛ける前にレジスト・ディグレードを優先して掛けていく。
それでもダメージは積みあがるのだ。
無明以外に回復丸を与える。
オレも回復丸を口にした。
こうなったら長期戦も覚悟してやろうじゃないの。
戦闘開始から慌しい時間が過ぎた。
なんとかダメージの蓄積を回復魔法で賄いながら、である。
不測の事態もあった。
さすがに無明のダメージも自己回復が間に合わなかったようだ。
ファイア・ヒールをかけても僅かな回復量に留まっていた。
闇属性と言う事なら回復する筈。
そう願ってダーク・ヒールを掛けたらちゃんと回復してくれた。
気がついたのが今更とかどうなのよ?
おっと。
こいつらをどうにかしないと。
水魔法で押し切るのはどうか?
MPが先に枯渇するのではないか?
黒曜のMPバーも半分残っていない。
行動パターンから分かる事は?
サンドゴーレムは人型になるのと、砂塵に変化するのとを繰り返している。
どうも一定間隔の気がするんだが。
人型になると攻撃力は高いようだが、その動きは鈍い。
無明でも楽に攻撃を回避できている。
そしてこっちが与える攻撃は喰らってはくれるが、その蓄積は芳しくない。
ようやく4割を減らした所か。
砂塵に変わると厄介だ。
物理攻撃は全て透過するかのようだ。
与えているダメージは僅か。
何より砂塵にまみれて目を開けていられない。
その代わり、こっちが受けるダメージも大した事がなくなるのだが。
ハブーヴァはようやくMPバーが枯渇し始めた。
サンドゴーレムの後ろでコソコソと動き回るだけになるか?
いや、オレに向けて接近してきやがった。
ダメージを無視してオレに絡みつくように貼り付くと。
オレのMPバーが1割程度、減っている。
ハブーヴァのMPバーは7割ほどになっている。
それだけではない。
状態異常のマーカーがオレのマーカーに重なっていた。
こいつ。
何をしやがった?
そしてオレのMPバーは残り3割を切った。
この代償は与えねば。
先にハブーヴァに集中砲火を与える。
空中から黒曜、ジーンが急襲する。
オレも拳で何度も攻撃を加えた。
ヴォルフと無明が囲んで攻撃し続けた。
サンドゴーレムの後ろから出てきた今しかない。
ハブーヴァがオレから離れるのと入れ替わりに実体化したサンドゴーレムが殴りかかってくる。
クソッ!
ハブーヴァのHPバーをもう少しで削りきれそうだったのだが。
再び距離を置くハブーヴァ。
ヴォルフ、黒曜、ジーンに追撃させた。
サンドゴーレムが砂塵と化してハブーヴァの元に移動し始める。
こいつは砂塵の間は攻撃が透過する筈だ。
構わず攻撃を続行させた。
サンドゴーレムが再び実体化する前にヴォルフが間に合った。
ハブーヴァのHPバーが消えていく。
オレから吸い取ったMPと共に。
ようやく1匹。
まだサンドゴーレムがいる。
「グラビティ・バレット!」
実体化した所に呪文を叩き付けた。
効果は、ない。
サンドゴーレムのHPバーはまるで減っていなかった?
あれ?
呪文が直撃した場所は吹き飛んだものの、その部分が砂に変化しただけのようだ。
大穴が空いているのにダメージなしとは。
何この理不尽。
移動しようとして足を何かにとられる。
オレの足元に砂が大量に流れてきていた。
しまった。
一瞬、動きを止めてしまった。
サンドゴーレムはいつの間にかオレの傍にまで迫っている。
その拳がオレに向けられていた。
恐るべき拳が目の前に。
下に、オレに向けて、振り下ろされる。
死だ。
死んだ。
これは死んだな。
だがその拳はオレに届かない。
その場から吹き飛ばされていた。
オレに体当たりをしていたのはヴォルフだった。
そして。
ヴォルフのHPバーは一瞬のうちに無くなってしまった。
信じられない。
でもヴォルフの死体は確かに目の前にある。
怒りが湧き起こっていた。
誰にぶつけたらいいのか?
選択して実行済みだった呪文を叩き込んでやる。
「ウォーター・ニードル!」
実体化していた魔物に外れることなく命中。
それでようやくHPバーが3割になっていた。
黒曜も残ったMPを絞りきるかのように水の針を撃ち込んでいく。
オレも続く。
「ウォーター・ニードル!」
ようやくHPバーは2割を切った。
次の瞬間にはまたしても砂塵と化す。
抑えろ。
抑えるんだ。
この状態で殴ってみた所で効果は望めない。
待っていればいずれ実体化する筈だ。
いや。
抑えきれるかコノヤロウ!
「アクア・スラッシュ!」
怒りを込めて全体攻撃呪文を放った。
本当にオレはバカだ。
黒曜が最初のうちに仕掛けた攻撃が最も有効だったのに気がつかなかったのか?
エンチャンテッド・ウェポンを掛けて物理攻撃を続ける事に拘り過ぎた。
いや、今までの成功体験があるが故にオレは失敗したのだ。
その結果がヴォルフの死である。
デスペナルティを受けるだけとは承知しているが、それでも責めねばなるまい。
これは、オレのミスだ。
ヴォルフの死体が消えていく。
まるでそこにいなかったかのように。
HPバーが消滅したサンドゴーレムは唯の砂に戻っていった。
それがまるで幻であったかのように。
《咎人よ》
《我らは断罪せし者》
《我等は救済せし者》
《我等は絶対なる判事》
《汝らの罪は不問としよう》
《よくぞ試練を勝ち抜いた》
《汝らもいずれ悔い改めるであろう》
《だが更なる呵責があるものと知るがよい》
そしてイベントは終わったようだ。
《S1W2のエリアポータルを開放しました!》
《ボーナスポイント4点が加算されます。合計で10ポイントになりました》
《只今の戦闘勝利で【高速詠唱】がレベルアップしました!》
インフォも上の空だったように思う。
達成感は半減どころではない。
まるでなかった。
さっきまでの激闘の跡はもうない。
まるで幻だったように消えていた。
生き残ってはいるが、黒曜もジーンも酷い有様だ。
無明だって自己修復中で、ダメージから回復し切れていない。
今日はもう早いが、ここまでにしよう。
仕切り直しだ。
そのままエリアポータルの外に出ると、リターン・ホームの呪文を使った。
なけなしのMPバーは真に残り僅かになって、風霊の村に転移する。
何も考えずに適当に空いた場所でテントを設営し、召喚モンスター達を帰還させていった。
毛布に潜り込むと、さっさとログアウトする。
明日になれば今日の事は忘れられるだろうか?
主人公 キース
種族 人間 男 種族Lv13
職業 サモナー(召喚術師)Lv13(↑1)
ボーナスポイント残 10
セットスキル
杖Lv11 打撃Lv8(↑1)蹴りLv8 関節技Lv7 投げ技Lv7
回避Lv7 受けLv8(↑1)召喚魔法Lv13 時空魔法Lv6
光魔法Lv6 風魔法Lv7 土魔法Lv7 水魔法Lv7
火魔法Lv7 闇魔法Lv7(↑1)氷魔法Lv5 雷魔法Lv5
木魔法Lv5 塵魔法Lv5 溶魔法Lv5 灼魔法Lv5
錬金術Lv6 薬師Lv5 ガラス工Lv3 木工Lv4
連携Lv10 鑑定Lv9 識別Lv10(↑1)看破Lv3 耐寒Lv5
掴みLv7 馬術Lv7 精密操作Lv9 跳躍Lv4
耐暑Lv4 登攀Lv4 二刀流Lv7 解体Lv6(↑1)
身体強化Lv5 精神強化Lv6 高速詠唱Lv8(↑1)
魔法効果拡大Lv3 魔法範囲拡大Lv3
装備 カヤのロッド×1 カヤのトンファー×2 怒りのツルハシ+×2
白銀の首飾り+ 雪豹の隠し爪×1 疾風虎の隠し爪×2
雪豹のバグナグ×1
野生馬の革鎧+ 雪猿の腕カバー 野生馬のブーツ+
雪猿の革兜 暴れ馬のベルト+ 背負袋 アイテムボックス×2
所持アイテム 剥ぎ取りナイフ 木工道具一式
称号 老召喚術師の弟子、森守の紋章 中庸を望む者
呪文辞書
召喚モンスター
ヴォルフ グレイウルフLv2 デスペナルティ対象
残月 ホワイトホースLv1
ヘリックス ホークLv7
黒曜 ミスティックアイLv1
ジーン バットLv7
ジェリコ ウッドゴーレムLv6
護鬼 鬼Lv6
戦鬼 ビーストエイプLv6
リグ スライムLv5
文楽 ウッドパペットLv4
無明 スケルトンLv4→Lv5(↑1)
器用値 16(↑1)
敏捷値 15
知力値 12(↑1)
筋力値 12
生命力 12
精神力 11
スキル
槌 小盾 受け 物理抵抗[微] 自己修復[中] 闇属性
ナインテイル 赤狐Lv3
ヘザー フェアリーLv2→Lv3(↑1)
器用値 6
敏捷値 19
知力値 20
筋力値 1
生命力 3(↑1)
精神力 23(↑1)
スキル
飛翔 浮揚 魔法抵抗[中] MP回復増加[小] 風属性




