106
ある意味、狂乱の時間が過ぎると片付けが始まった。
もう時刻は午後8時を過ぎている。
文楽に片付け終えさせると、陣容を変更する。
黒曜はそのまま変更なし。
ヘリックス、ナインテイルは帰還させる。
文楽も弓に矢筒といった装備をさせたまま帰還させた。
よし。
これで少しは《アイテム・ボックス》に空きが出来ただろう。
続いて護鬼、無明を召喚して装備を与えた。
そしてジーンを召喚する。
これで陣容は良し。
ついでに装備も渡せたから多少ではあるが身軽になった。
おっと。
夜の狩りに行く前に確認しとくか。
「2人とも今日は夜の狩りに行くのか?」
「すみません。リアルで用事があるので」
「今日はこれでもう撤退ー」
そうか。
アデルもイリーナも昨日はこの時間でログアウトしてたっけ。
遅くまで粘る日も結構あるみたいだが。
「そうか。ではお疲れさん」
「お疲れ様です」
「またねー」
彼女達が天幕を設営してログアウトしていくのを確認すると移動する。
相談したいことが色々とあった。
サキさんはマルグリッドさんとヘルガ、優香と談笑していた。
コートを着込んで顔を隠している護鬼と無明に疑問の視線が飛んでくるが気にしない。
「すみません。追加で相談ですが」
「いいわよ、何かしら?」
「召喚モンスターの装備なんですが」
怖いかも知れませんよ?と前置きして護鬼と無明のコートを脱がせる。
一瞬、息を呑む雰囲気はあったが、敢えて気にしない。
「このスケルトンは初見ね。装備をさせたいのは鎧に兜って所かしら?」
「ええ。出来れば腕と脚にも欲しいですが。いいアイデアはないですかね?」
「こっちの装備、はぐれ馬シリーズよね?闘牛の皮がもう少し多くあればいいんでしょうけど」
「ダメですかね?」
「いえ。いくつか防具関係は持ち込んでいるし、見繕ってみましょうか?」
サキさんが無明のサイズをさくっと測り終えると工房の方に行ってしまった。
うん。
任せちゃっていいのかな?
「あとマルグリッドさん。これなんですが」
「琥珀が2つ。それに紫水晶ね」
彼女に見せたのは古代石から発掘した品だ。
どう評価するんだろうかね?
「琥珀は完全に観賞用と割り切った方がいいわ、紫水晶は呪文の封印とかで使える筈なんだけど」
おや?
何か難しい顔に見えるけど。
「単純だけど難しいのよね、水晶って。大きさを活かしながらカットしたいけど割れ易いから」
「そういう物ですか」
「ええ。今の私でも加工は請けないわね。もう少し技能が上がらないと」
「残念です」
「ごめんなさいね」
まあ今は保留って事にしておこう。
琥珀と紫水晶は《アイテム・ボックス》に放り込んでおいた。
「お待たせ!」
サキさんが戻ってくると、鎧兜にブーツや篭手を《アイテム・ボックス》から次々と出して机に並べていった。
傾向は3つに分かれる。
金属製、革製、硬革製になるだろう。
革製、硬革製のものは邪蟻の甲で強化されたものもあるが、奇妙な代物もある。
どう見ても蟹の甲羅です。
何だろう?
「まずは鎧から行ってみましょうか?」
スケルトンの無明をマネキンとしたファッションショーが始まっていた。
「これでどう?」
ガールズトークが頭上を行き交っていたようだが。
その間の記憶はオレにはない。
最初から処理能力の限界を越えていた。
「こうなりますか」
「多分、バランス的にこの組み合わせがいいと思うけど?」
「外見はどうなのよ?」
「それは無視」
オレの貧弱な理解力に従えば、2つの意見の対立があったように思う。
サキさんのスペック重視の意見。
マルグリッドさんの見た目も大切といった意見。
オレはどうかって?
怖くて意見なぞ言えるか!
「では妥協案。どうせなら全身を統一した方がいいんじゃない?」
「むう。盾はレイナ作のものでいい品なんだけど」
「統一された美しさもいいと思わない?」
無明の全身を覆う装備は盾を除いて蟹の甲羅で覆われてしまっていた。
なんぞこれ。
サキさんもどうやら妥協したらしく、蟹の甲羅で出来た盾を無明に持たせていた。
これで完全に蟹尽くしだ。
「何ですか?この装備って」
「うちのギルドの鍛冶屋が面白がって作った防具一式なんだけど。性能はいいのに売れなくて」
「売れなくて当然だって。悪目立ちするでしょ?まあネタ装備よね」
「ネタって言うな!」
何やら揉めてる間に【鑑定】してみる。
【防具アイテム:兜】軍装蟹の兜 品質C+ レア度3
Def+5 重量0+ 耐久値110
軍装蟹の甲を加工した兜。軽くて丈夫。
内装に野生馬の革を張り合わせてあり耐久性も良い。
【防具アイテム:鎧】軍装蟹の鎧 品質C+ レア度3
Def+9 重量3 耐久値140
軍装蟹の甲を加工した鎧。軽くて丈夫。
内装に野生馬の革を張り合わせてあり耐久性も良い。
【防具アイテム:垂帯】軍装蟹の垂帯 品質C+ レア度3
Def+2 重量0+ 耐久値70
軍装蟹の甲を加工した垂帯。軽くて丈夫。
【防具アイテム:ブーツ】軍装蟹のブーツ 品質C+ レア度3
AP+1 Def+2 重量0+ 耐久値80
軍装蟹の甲を加工したブーツ。軽くて丈夫。
内装に野生馬の革を張り合わせてあり耐久性も良い。
【防具アイテム:篭手】軍装蟹の篭手 品質C+ レア度3
AP+1 Def+2 重量0+ 耐久値90
軍装蟹の甲を加工した篭手。軽くて丈夫。
手先を用いる行動に対するペナルティもなく使いやすい。
内装に野生馬の革を張り合わせてあり耐久性も良い。
【防具アイテム:小盾】軍装蟹胴の小盾 品質C+ レア度4
AP+2 Def+8 重量1 耐久値180
軍装蟹の胴甲をそのまま盾にしたもの。軽くて非常に丈夫。
殴るのにも便利。やや大きいが軽いため小盾扱いである。
凄い。
何が凄いって頭から爪先まで蟹なのが凄い。
その統一されたデザインは確かにある種の美しさを感じる。
目立つのも納得。
動く看板かよ!と言いたくなりますな。
甲羅は殆どの部分が真っ赤であり、縁が乳白色になっている。
確かにプレイヤーでこれを装備するのは勇気が要るだろう。
「不良在庫を押し付けているんじゃないでしょうね?」
「失礼な。かなりいい品物だと思うけど?」
まだやってるし。
まあそれは置いておくとして。
確かにスペックはいい。
何よりも軽いのが素晴らしい。
敏捷性を損なわない所はポイントが高いだろう。
問題はその外観が派手な事なのだが。
うん。
いいんじゃないかな?
「いいと思います。これで行きます」
「良かった。お代は要らないから持って行っていいわ」
「やっぱり不良在庫の処分に聞こえるわ」
サキさんとマルグリッドさんがまたもや口論を始めたようだ。
ヘルガと優香も2人の間をとりなしているようだが効果は薄い。
自然に収まるのを待つことになった。
「ああそうだ、これも結構いい代物だと思うけど持って行って」
サキさんが追加で渡してくれたのは鉈であった。
【武器アイテム:手斧】響音の鉈 品質C+ レア度3
AP+6 破壊力3 重量2+ 耐久値130 投擲可、射程10
攻撃命中率上昇[微]
切れ味よりも重量で叩き割る事に便利な武器。
柄に雪猿の骨が使われている。
与えたダメージが大きいほど綺麗な音が響く。
何これ。
かなりいいじゃないの。
「雪猿の骨は鍛冶方面で需要があると思ってましたが」
「今もそうよ?でもスノーエイプの居場所は分かってるし、骨もそこそこに出回っているなら使わない手はないでしょ?」
おお。
有難く貰っておこうか。
護鬼の持っている鈍鉄の鉈と交換だな。
鈍鉄の鉈は予備として暫くは持っておこう。
「では早速、夜の狩りに行ってきます」
「ミストが相手だとあまり新しい装備の有難さが分からないかもよ?」
「まあ大丈夫でしょう。スケルトンラプターやフロートアイもいますし」
深く一礼を残してその場を辞去した。
新しい装備は確かめておくのも重要だ。
メインはホーンテッドミストなのは変わらないけどね。
あの魔物だと手ごたえがないから良く分からないだろう。
まあやってみたら分かる事だ。
夜の世界に行ってみようか。
風霊の村の外にはいくつかのパーティが待機しているのも見える。
村を背後にして迎撃する構えだな。
上手く狩り続けたら得られるものも大きい。
頑張って欲しいものだ。
さて。
呼ぶか。
最初に確認だ。
スケルトンラプターを相手に新装備の確認である。
コール・モンスターで呼び寄せ、5対1で集中攻撃を加えた。
その過程で護鬼と無明も多少はダメージを喰らいはしたが、新装備による戦力向上は確認できたと思う。
やはり無明の戦力向上は素晴らしい。
HPバーが多少削れても早々に回復するとはいえ、削れ過ぎてしまいHPバーが0となる心配が減るだけで有難い。
実際、あのスケルトンラプターの振り回す尻尾を盾で受けきった所など感動ものだった。
軽いから半ば吹き飛ばされてはいたけどね。
護鬼も鉈で攻撃を何度か当てている。
新しい鉈の使い勝手は良さそうだ。
1度だけ、高く透き通るような音がしたのだが、それがクリティカルだったらしい。
結構な量のダメージを与えていたのも確認できた。
分かり易い特徴だな。
更に確認のために2匹のスケルトンラプターを倒しておく。
戦力アップを確信できた所で本番と行こう。
ホーンテッドミストを呼ぶのだ。
だが昨日と様相が少し変わってしまっていた。
ホーンテッドミストの群れの規模だ。
大集団と言い切れる群れはなくなっている。
昨日は100匹単位と思える群れもあったのだが、多くの群れが半分以下の規模になっているようだ。
やり過ぎたか。
あまりに多く狩り尽くしたので一時的に減ったとか?
運営が調整して減らしたとか?
まあどっちでもいい。
どうせやる事は変わらないのであった。
《只今の戦闘勝利で【土魔法】がレベルアップしました!》
ホーンテッドミストの群れを一蹴すると土魔法がレベルアップしていた。
土魔法の呪文は使っていない。
使ったのは共通付与呪文のエンチャンテッド・ウェポンだけだ。
取得している魔法技能に振り分けられて経験値が入るとはいえ、不思議な感覚である。
まあそれはいいか。
新しい装備の恩恵だが、僅かながらもあったようだ。
無明の攻撃だが、僅かだが手数が増えているようなのである。
それに元々、無明はホーンテッドミストの攻撃を喰らってもMPバーは大して減らない。
吸い上げるMPが少ないので、ホーンテッドミストは攻撃呪文に相当する特殊能力を発揮できないのだ。
エンチャンテッド・ウェポンがなければ互いにいつまでもダメージを与えられずに格闘しかねない関係になる。
安心できる壁役がいるから、呪文を唱えるのにも余裕が出来るし、観察も出来る。
補助スキルとして取得した【魔法効果拡大】はどうか。
体感的には良く分からない。
そもそも、今までだってエンチャンテッド・ウェポンの効果がどれほど継続するのか、測定などしていないのだ。
比較したくとも出来なかった。
なんとなくだが、有効時間が延びている気はする。
これだって補助スキルがレベルアップしなければ分かり難いだろう。
効果があると思っておこうか。
魔石を2個回収すると今後の予定をどうするか、少し悩んだ。
まあこのまま経験値稼ぎ、というのもいいが。
単調だとつまらない、よね?
だから北に向かうことにした。
レギアス周辺の森だと、イビルアントやブランチゴーレムが出たものだ。
夜の森がどうなるのか、確かめに行くとしよう。
ただ移動速度だけは如何ともし難いのだが。
恐らく、森に辿り着くにしても午後11時近くまでかかるだろう。
それだけ時間をかけて移動する間にも魔物に襲われる訳で。
夜の森で活動できる時間はそんなにないだろうな。
魔物の襲撃は続いた。
無論、厄介なのはホーンテッドミストなのだが、群れの規模は小さいままだ。
せいぜいが30匹といった所だろう。
エンチャンテッド・ウェポンの効果がまだ余っていると勿体無いと感じる矛盾。
移動優先なのに貧乏性な考えが鎌首をもたげてくるのだ。
コール・モンスターを使いたい。
ああ、勿体無い。
なんとか衝動を抑えて北に向かうしかなかった。
《只今の戦闘勝利で召喚モンスター『無明』がレベルアップしました!》
《任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》
フロートアイ3匹を仕留めた直後に無明がレベルアップしていた。
早いって。
いや、大活躍してますけどね。
無明のステータス値で既に上昇しているのは筋力値だ。
もう1点は生命力を指定した。
無明 スケルトンLv3→Lv4(↑1)
器用値 15
敏捷値 15
知力値 11
筋力値 12(↑1)
生命力 12(↑1)
精神力 11
スキル
槌 小盾 受け 物理抵抗[微] 自己修復[中] 闇属性
《只今の戦闘勝利で召喚モンスター『護鬼』がレベルアップしました!》
《任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》
護鬼も同時にレベルアップしてました。
何気にパワーファイター化してるんだよなあ。
後衛メインがいつのまにか前衛で戦う機会が増えている。
フロートアイ相手にはちゃんと弓矢を使っているのだが、そのイメージが薄い。
おっと、ステータス画面に集中しろ。
ステータス値で既に上昇しているのは器用値だ。
もう1点のステータスアップは知力値を指定する。
護鬼 鬼Lv5→Lv6(↑1)
器用値 19(↑1)
敏捷値 14
知力値 12(↑1)
筋力値 18
生命力 18
精神力 11
スキル
弓 手斧 小盾 受け 回避 隠蔽
こっちも順調と言えよう。
でも数字の並びとしては崩れてきたが。
その後も魔物の襲来はあったが、なんとか撃退しながら進んだ。
無明に回復呪文が必要ない分、MP消費もポーションの消費も少なくて済んでいる。
森に到着した頃、オレのMPバーは7割を超えていた。
余力は十分。
さて、夜の森に挑もうか。
最初の獲物は?
それは決めてある。
樹上に登ってキンケイの巣から卵を頂くとしよう。
肉も野菜も十分にある。
卵があったらすき焼きにしたいよね?
樹上の巣には当然ながら暴れキンケイ(メス)もいる訳で、叩き落すと戦闘になる。
暴れキンケイ(メス)は暴れギンケイ(メス)よりも遥かに強い。
その強さは暴れギンケイ(オス)に匹敵するだろう。
だがそんなに強い魔物に思えなくなってきている。
以前に戦った時と比べると、色々と強くなったからだろう。
それでも油断はするべきではない。
巣から卵を2個、強奪すると、地面に落ちたキンケイ(メス)の攻撃の輪に加わる。
蹴り一発しか攻撃できなかったけどね。
そんな事を繰り返していたらやはり来ました。
オスの登場です。
暴れキンケイ(オス) Lv.5
魔物 討伐対象 激高状態
怒ってます。
当然だな。
ギンケイもそうだったが、メスの数に比べるとオスの数は少ない。
ハーレムを荒らされて怒っている、と考えるべきか?
済みませんでした。
撤収したいがそうはいかない。
一戦は覚悟の上なのですよ。
前衛を受け持つ無明のHPバーがいきなり2割ほど吹き飛んだ。
魔物の嘴による攻撃は確かに鋭いものだったが、暴れギンケイ(オス)の攻撃とそう変わってないように見える。
その評価は次の一瞬で一変した。
あっという間にオレの腹に蹴り込んできやがった。
速い。
それに重い。
この魔物の大きさは鶏にしては大きいが、人間サイズまでは大きくはない。
それなのにこの威力。
体の軸がズレましたよ?
ついでにオレのHPバーも2割近く削れてます。
「ギッ!」
護鬼の放った矢が魔物に命中する。
魔物の動きが一瞬、止まった。
逃すか。
ロッドは手放して魔物の首を掴んで地面に押さえ込む。
できませんでした。
なにこいつ、無茶苦茶パワーあるじゃん。
方針変更だ。
両手に暗器を持つ。
左拳に雪豹のバグナグを握り込む。
右拳には疾風虎の隠し爪だ。
魔物が襲ってくる所をカウンターで殴り付けた。
黒曜とジーンも牽制攻撃を仕掛けるのだが、この魔物ってば半分以上は回避してしまう。
護鬼の放つ矢も半分も当たっていない。
だが徐々に戦況がこちらに傾いてきていた。
動きが鈍っている。
魔物の赤いマーカーに状態異常を示す小さなマーカーが重なっている。
雪豹のバグナグで何回か傷つけていたのが功を奏してきたようだ。
「ディレイ!」
追撃で氷魔法の呪文を叩き込んだ。
更に魔物の動きは鈍っていく。
召喚モンスター達の攻撃も外れる事が少なくなってきていた。
一旦傾いた戦況はもう逆転の目はないだろう。
それでも魔物は暴れまくる。
暴れキンケイの名前に恥じない暴れっぷりだった。
止めを刺すその直前までダメージを与えようとしてやがった。
事切れる直前、嘴でオレの目を狙ってたのだ。
何こいつ。
おっかない。
だが称えておきたい。
ここまで苦戦するとは思わなかった。
暴れキンケイ(オス)からは翼が取れた。
だがもう1つ別のものも取れている。
良く分かりません。
【素材アイテム】金鶏の極彩翼 原料 品質C+ レア度3 重量1
暴れキンケイ(オス)の翼。一般的には矢羽根に加工されている素材。
色彩も鮮やかなので飾りとして使われることも多い。
【素材アイテム】雄金鶏の腿肉 原料 品質C レア度3 重量1
暴れキンケイ(オス)の腿肉。メスの腿肉よりも硬く脂身が少ないのでヘルシー。
ヘルシーって。
まあ食えって事なんだろうけどさ。
オレと黒曜はポーションで回復する。
黒曜は全快したがオレはそこまでいかなかった。
まあクーリングタイムが過ぎたらもう1本飲んでおこう。
ジーンもダメージを喰らっていた筈だが全快している。
魔物の血はさぞや旨かった事だろう。
頼もしいけど何気に怖いです。
そして無明はジリジリと自動回復している。
ゴーレムのジェリコに比べると間違いなく速い。
ポーションは不要だな。
いや、そもそもゴーレムと同様にポーションが効くとは思えないんだが。
さて。
探索を更に進めていったのですが。
キンケイの卵は7つゲット。
無論、キンケイの巣を4つ強襲して奪ったものだ。
暴れキンケイ(メス)も4羽を屠り、金鶏の翼も剥いでいる。
4羽目からアイテムを剥ぎ終えた瞬間。
黒曜とジーンが気がついた。
何かがこっちに迫ってきている。
初見の魔物か?
いや違った。
かつて見た魔物である。
だがここで見た奴ではない。
こいつ等、洞窟の奥から這い出してきたのか。
アントマンだ。
洞窟では天井や壁も足場にして襲って来る厄介なアントマンだが、森の中ではどうか?
多少は楽に戦えると有り難いが。
樹上にもいやがります。
枝を伝って移動しているのもいます。
地面にいるだけじゃなかった。
これまた厄介な。
しかもこっちに迫ってくるのが凄く速い。
「フォレスト・ウォーク!」
機動力で対抗するにはこれだな。
森林内における機動力向上を図る。
それでも魔物共の槍衾を避けるのはギリギリであった。
護鬼にも呪文を、と思ったが既に鉈を片手に樹上へ駆け登り、幹にいた魔物を蹴落としていた。
樹上は任せておいていいか。
「フォレスト・ウォーク!」
無明に呪文を掛けておいて状況を見る。
半ば包囲されつつあった。
その輪の中を黒曜とジーンが飛び回っている。
牽制が効いているうちに仕留めねばなるまい。
無明と肩を並べて確実に1体ずつ片付けながら進んだ。
ロッドはもう手放して、魔物の頭を捻りながら戦い続ける。
そして気付く。
このアントマンの群れはポーンしかいない。
それが救いになっている。
それにしても樹木が邪魔だ。
視界を遮って戦況が掴み難い。
なんとか半数ほどを片付けたか?と思った所でジーンが別の群れの接近を知らせてくる。
鬱陶しいな、おい。
魔物が合流した。
その群れの頭上にアントマンの死体が投げつけられる。
護鬼の仕業だ。
続いてアントマンの群れの真ん中に護鬼が飛び降りた。
アントマンの攻撃を盾で弾き返し、鉈を胴体に食い込ませる。
乱戦の中、アントマンは得物の槍を上手く使いきれていない。
アントマンの群れは明らかに混乱状態に陥っていた。
オレもアントマン共に次々と接近しては頭を狙って攻撃を加えた。
捻る、挫く、挟むの連続だった。
こいつ等はイビルアントと違って交差法が使い難い。
大きいからな。
その代わりではないが、樹木の幹に叩き付けて、胴体の節を狙って肘や膝を叩き込んでみた。
これは良かった。
比較的簡単に体の節を分断できる。
それでも暫くの間は生きてたりするんですが。
アントマンもまた昆虫の端くれらしく、頭、胸、腹の3つからなる節足動物で、胸から6本の手足が伸びている。
おっと。
観察してたら気持ち悪くなってきたよ!
単体攻撃呪文をショートカットのリスト順に使っていく。
MPバーには余裕がある。
出し惜しみなしだ。
ヴォルカニック・シュートやスチーム・ショットとか、普段あまり使わない攻撃呪文も使う。
意外に効く呪文、効かない呪文があったりする。
魔物の数が減ってくると、やや冷静になってきていたようだ。
そんな事を考えながら戦ってました。
もうちょっとまじめにやるべきだよな。
《只今の戦闘勝利で【打撃】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で召喚モンスター『ジーン』がレベルアップしました!》
《任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》
ジーンもまたレベル7に到達である。
次のレベルアップが楽しみです。
ジーンのステータス値で既に上昇しているのは敏捷値だ。
もう1点のステータスアップは筋力値を指定しておく。
召喚モンスター ジーン バットLv6→Lv7(↑1)
器用値 15
敏捷値 19(↑1)
知力値 12
筋力値 12(↑1)
生命力 11
精神力 12
スキル
噛付き 飛翔 反響定位 回避 奇襲 吸血
うむ。
では次だ。
さすがにジーンも多少はダメージを喰らっていたようで、HPバーは1割ほど削れていた。
アントマン相手では吸血が効かないみたいだし。
ポーションで回復する事も考えたが、もう時刻は午後11時をかなり過ぎている。
後で回復呪文を使おう。
アイテムを剥いだらリターン・ホームで戻ればいいのだ。
蟻人の蜜蝋は3つ取れていた。
成績が良いのか悪いのか、微妙な所だな。
まあ今日はこれで終いでいいだろう。
周囲を警戒しながら呪文を選択して実行する。
「リターン・ホーム!」
明日はまたアントマン相手に戦うのもいいだろう。
ホーンテッドミストの群れの方が間違いなく経験値が稼げそうなのだが、ぶん殴る感触があるのがいい。
気色悪いけど。
それに洞窟の先にいるであろう蝶にもリベンジを果たす事も考えておかないと。
避けて通れない試練だよな。
主人公 キース
種族 人間 男 種族Lv12
職業 サモナー(召喚術師)Lv12
ボーナスポイント残 0
セットスキル
杖Lv10 打撃Lv7(↑1)蹴りLv7 関節技Lv6 投げ技Lv6
回避Lv7 受けLv6 召喚魔法Lv12 時空魔法Lv5
光魔法Lv6 風魔法Lv7 土魔法Lv7(↑1)水魔法Lv6
火魔法Lv6 闇魔法Lv6 氷魔法Lv4 雷魔法Lv5
木魔法Lv5 塵魔法Lv4 溶魔法Lv4 灼魔法Lv4
錬金術Lv6 薬師Lv5 ガラス工Lv3 木工Lv4
連携Lv9 鑑定Lv9 識別Lv9 看破Lv3 耐寒Lv5
掴みLv7 馬術Lv7 精密操作Lv9 跳躍Lv4
耐暑Lv4 登攀Lv4 二刀流Lv6 解体Lv5
身体強化Lv4 精神強化Lv5 高速詠唱Lv7
魔法効果拡大Lv1 魔法範囲拡大Lv1
装備 カヤのロッド×1 カヤのトンファー×2 怒りのツルハシ+×2
白銀の首飾り+ 雪豹の隠し爪×1 疾風虎の隠し爪×2
雪豹のバグナグ×1
野生馬の革鎧+ 雪猿の腕カバー 野生馬のブーツ+
雪猿の革兜 暴れ馬のベルト+ 背負袋 アイテムボックス×2
所持アイテム 剥ぎ取りナイフ 木工道具一式
称号 老召喚術師の弟子、森守の紋章 中庸を望む者
呪文辞書
召喚モンスター
ヴォルフ グレイウルフLv2
残月 ホワイトホースLv1
ヘリックス ホークLv7
黒曜 フクロウLv7
ジーン バットLv6→Lv7(↑1)
器用値 15
敏捷値 19(↑1)
知力値 12
筋力値 12(↑1)
生命力 11
精神力 12
スキル
噛付き 飛翔 反響定位 回避 奇襲 吸血
ジェリコ ウッドゴーレムLv5
護鬼 鬼Lv5→Lv6(↑1)
器用値 19(↑1)
敏捷値 14
知力値 12(↑1)
筋力値 18
生命力 18
精神力 11
スキル
弓 手斧 小盾 受け 回避 隠蔽
戦鬼 ビーストエイプLv6
リグ スライムLv4
文楽 ウッドパペットLv4
無明 スケルトンLv3→Lv4(↑1)
器用値 15
敏捷値 15
知力値 11
筋力値 12(↑1)
生命力 12(↑1)
精神力 11
スキル
槌 小盾 受け 物理抵抗[微] 自己修復[中] 闇属性
ナインテイル 赤狐Lv3




