105
ケンタウロスの小規模な群れがいくつか襲って来ていた。
撃退してはいるものの、微妙にダメージは受けている。
まあクラスチェンジした残月の騎乗者回復[微]のスキルを確認できたしいいか。
感覚としては確かに[微]です。
しかしその積み重ねは貴重なものになるだろう。
細かい積み重ねというのは馬鹿に出来ないのだ。
闘牛をトレインして仕留めるのはあと1回と決めている。
MPバーは十分に余っている。
アデルとイリーナも半分をやや割った程度、オレも6割を余裕でキープしている。
ここまで非常に効率的に狩りが進んでいる証拠だ。
ケンタウロスがいなければもっと余っていただろう。
そして10頭ほどの闘牛の群れをヘリックスが見つけていた。
さて、トレイントレイン。
闘牛50頭程度の予定でしたが、思わぬ事に。
どう見ても50頭を超えてます。
最後に合流した群れが存外大きかったようなのだ。
失敗か。
『キースさん!』
『いつでもいけるよー!』
『お、おう』
彼女達も慣れてしまったようだ。
迫ってくる闘牛の威圧感は半端ないんだが、怖がっている様子はない。
まだHPバーを十分余らせている個体も混じってる筈だが、トレインを続けすぎるのもリスクが高い。
呪文を選択して実行。
完成したが放たずに次の呪文を選択して実行する。
アデル達に目で合図を送った。
『ファイア・ウォール!』
「ファイア・ウォール!」
『ストーン・ウォール!』
「ダーク・エクスプロージョン!」
呪文を2つ放つと、直ぐに次の呪文を選択して実行する。
予想通りならまだHPバーを余らせている闘牛が10頭以上はいる筈なのだ。
土壁が途切れている両端から魔物が出てくる様子はない。
上空から見ているヘリックスの目には、2つの火の壁に挟まれて右往左往する魔物がいるようだ。
半数以上は既に事切れている。
壁向こうに向けて呪文を放つ。
「ライト・エクスプロージョン!」
少しでも状態異常を増やしたいからこその全体攻撃呪文だ。
効果の程は確認せずに土壁の端を迂回してみた。
地面には魔物の死体が散乱している。
それが邪魔になってまだ元気な魔物も思うように動けないでいたようだ。
状態異常を示すマーカーが多い。
ある魔物は暗闇状態のまま突っ走ろうとして足元の死体に躓いて転んでしまう。
ある魔物は混乱状態のまま、自らの頭を土壁に叩きつけている。
魔物同士が頭を突き合わせて押し合っているのも見えた。
カオス。
壁呪文の効力が消えていくのと同時に後片付けをしていく。
最もHPバーが残っていた個体にパラライズを叩き込んでおいて時間を稼ぐ。
唯一、状態異常になっていなかった奴がオレを襲ってきていた。
だがオレは余裕をもってグラビティ・バレットを至近距離から叩き込んでいる。
後は残月が踏み殺してしまった。
白い毛並みだと返り血が鮮やかに見えるから逆に怖いんだな。
そんな事を考えてました。
アデルとイリーナも、そして召喚モンスター達も、仕留めに参加し始めた。
数ではまだ魔物の方が圧倒的に多い。
だがこちらの優勢は覆る事はもうないだろう。
悪いが闘牛の姿の先に肉塊が見える気がしていた。
麻痺していた倒れ伏している闘牛に近寄ると残月を降りた。
角を使ってぐるりと回していく。
首が一回転したら息絶えていた。
単独攻撃呪文を数発当ててもHPバーを半分も削れないようなタフな魔物なのだが。
状態異常にかかればこんなものなのか。
こうして見ると、確実に状態異常に陥ってくれたら助かるんだけどなあ。
そこまでは甘くなさそうである。
《只今の戦闘勝利で【雷魔法】がレベルアップしました!》
《称号【呪文辞書】を得ました!》
《取得が可能な補助スキルに【魔法効果拡大】が追加されます》
《取得が可能な補助スキルに【魔法範囲拡大】が追加されます》
《只今の戦闘勝利で【高速詠唱】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で召喚モンスター『黒曜』がレベルアップしました!》
《任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》
色々なことが同時多発的に起きるのは如何なものか。
まあ優先すべきは黒曜なのは間違いない。
黒曜のステータス値で既に上昇しているのは器用値だ。
もう1点は精神力を指定した。
召喚モンスター 黒曜 フクロウLv6→Lv7(↑1)
器用値 13(↑1)
敏捷値 20
知力値 20
筋力値 12
生命力 12
精神力 18(↑1)
スキル
嘴撃 無音飛翔 遠視 夜目 奇襲 危険察知 天耳
これでいいか。
ヘリックスも黒曜もレベル7になった訳で、次のレベルアップが楽しみになってきた。
さて、称号はどうなってる?
呪文目録が消えて呪文辞書になっている。
上位置換らしい。
補助スキルの【魔法効果拡大】と【魔法範囲拡大】が気になるが、大量の闘牛の死体が目の前にあるのだ。
精肉を優先しよう。
いや、剥ぎ取りナイフを突き立てるだけなんですが。
思わぬ事態が起きました。
皮が3枚。
その重量は1つで10、3枚あるから30。
重たいって。
オレの《アイテム・ボックス》にもその余裕がなくなりそうになっていた。
まあそれだけ実入りが多かった訳で。
《これまでの行動経験で【解体】がレベルアップしました!》
補助スキルの【解体】も当然のように上がっていく。
確かに皮を2つとも剥いだのはオレで、いい仕事をしたと言いたいのだが。
どうせ仕事するなら皮はいいからサーロインが欲しかったのですよ。
じゅるる。
「時間は早いがW2に戻るぞ」
「ですね」
「戻ったらお肉でパーティ?」
「それはまあ戻ってからだな」
そうです。
村に辿り着いてログアウトするまでが正しく冒険なのです。
3騎が平原を疾駆する。
オレの肩には黒曜、オレが座る鞍の前にはナインテイルが鎮座していた。
上空は2羽の鷹が旋回しながら警戒を行っている。
さほど時間を置かずにW2マップに辿り着いていた。
まあトレインも東方向に走っていたから近くなっていて当然ではあるんだが。
W2マップに入ると早速フロートアイの歓迎を受けた。
13対1の勝負はあっという間に済む。
次にラプターにも遭遇する。
さすがにラプターはフロートアイよりも連続攻撃に耐えていたが、それでも簡単に屠られていった。
無残。
だが何も剥げなかったオレも無残である。
風霊の村に至るまでの帰路はそんな感じである。
村の縁に到着したのは午後4時前といった所だった。
それまでにフロートアイから水晶球を6個、ラプターからは3つの古代石を得ている。
水晶球と古代石は3人で山分けとした。
「これ、中に何かが入っているんですよね?」
「ああ。やり方は分かるか?」
「はい。レン=レンから聞いてます。道具もありますし」
うむ。
あれはいいぞ。
暇潰しに丁度いい。
無心で何かに打ち込むものは何かあると便利だぞ?
村の中心にまで来るとさすがにホッとする。
そしてフィーナさん達のアジトの周囲は賑わっている様子であった。
リック達が来ている。
どうやら生産職ギルドの追加メンバーが到着したようだ。
「やあ、戻ったみたいだね」
「ども」
リックと軽く挨拶を交わす。
机を囲んで会話を楽しんでいる中にはマルグリッドさんもいた。
レギアスでお世話になったメンバーが勢ぞろいだな。
「西W3マップから戻りました。獲物が多いんですけどいいですか?」
「お肉だよー!場所を空けてね!」
お肉と聞いてメンバーの雰囲気が一変した。
食欲の威力って凄いよね。
恐ろしい事にアデルとイリーナの分だけで2つの机の上は肉で埋まりかかっていた。
こうして見ると凄い量だよな。
「机、あったかしら?」
「さっきまでレイナが作ってたのがあったと思うわ」
「お願いします。キースさんの持ってる肉の分もあるんで余分にあれば助かります。」
イリーナの言葉に一同が息を呑む。
フィーナさんとサキさんが机を調達しに行っている合間にもミオが目を皿のようにして品定めをしている。
まだオレの分があるよ?
「なんか牛を一頭買いにして解体したらこんな感じ?」
「肉屋が開けそう」
「とりあえずは焼肉パーティでいく?」
周囲からは様々な声が飛んでくる。
まあそんな声を聞きながらオレは別の事を考えていた。
さっき取得可能になった補助スキルである。
【魔法効果拡大】と【魔法範囲拡大】だ。
説明を読んでみた。
【魔法効果拡大】は文字通り魔法技能を補助するスキルで、呪文の効果を増強する働きをする。
攻撃呪文であればダメージを増やす。
フィジカルエンチャント系の支援呪文であればその効果を増やす。
パラライズのような呪文であれば状態異常の麻痺が起きる確率が増大する。
ヒール系ならば回復量が増える。
壁呪文は効果時間が延びると同時により強固になるし、壁により与えられるダメージも増加する。
その他、お役立ち呪文でも継続時間が延びたりするようである。
【魔法範囲拡大】も同様だ。
単体攻撃呪文であれば最大射程が延びていく。
おまけなのか、最大射程にまで到達する時間は一定らしく、副次効果的にだが呪文の速度は向上するようだ。
つまり命中率も若干だが向上するという事だ。
全体攻撃呪文に至っては更に単純で、攻撃範囲が拡がるようだ。
壁呪文も離れた場所で展開が可能だ。
そして壁の高さも幅も広がってくれるらしい、
その他の呪文も同様に広範囲で運用できるようになるようだ。
但し、ダーク・ヒールのように接触が条件となっている呪文にはその恩恵はない。
そこは残念ですな。
ところで取得に必要なボーナスポイントは?
【魔法効果拡大】は10、【魔法範囲拡大】は4である。
現在のオレが持つポイントは14で両方取得できる訳だが。
2つとも取れる、よね。
既にオレのボーナスポイントは残り0になってますが何か?
「机を持ってきたわ!」
レイナとサキさんが2人で長机を運んでいた。
結構大きいな。
その後ろから同じ長机を篠原と不動が運んでいる。
最後にフィーナさんとヘルガがもう1つ同じ長机を運んできている。
話しこんでいた一同も場所を空けて机を並べていった。
「アデルちゃん、部位ごとに仕分けるわよ?」
「おっけ」
「ミオも一緒に手伝ってね?」
「おうよ!」
イリーナがアデルとミオと一緒に新たに並べられた机へと部位ごとに運んでいく。
オレは机の空いたスペースに《アイテム・ボックス》から取り出した肉塊を積んでいった。
まさに肉の山だ。
仕分け作業はスムーズに進んだが、改めて見ると凄い量だ。
100人いたら何日分かね?
いや、そういう想像の範疇になるのだが、正直、良く分かりません。
肉を全て放出すると次は革だ。
3枚ある。
1つでもオレが持ち運べるギリギリの重さだ。
机が軋んでいるように聞こえたのだが気のせいだと思いたい。
「キースさん、個人的に取っておきたい部位はありますか?」
「サーロインを1つ。それと腿肉を1つだな。あとはいい」
「アデルちゃんは?」
「イリーナとサーロイン半分こ!」
イリーナはアデルの声にサムズアップする。
了解ってか?
手に持った包丁で切り分けると別にした。
これでサーロインは売切れである。
ミオがあからさまに残念そうな顔をする。
「これ、算定に時間が掛かりすぎますが」
「手分けしましょ」
フィーナさんとリックが算定の手筈を確認しあっている。
他にも3名ほどマーチャントが来ているらしく、彼らはモツ関係の算定を始めていた。
【鑑定】祭りだな。
「ちょっと時間がかかりそうです。私達が持ち込んだ品もあるんで欲しいものがあったらどうぞ。お安くしときます」
「それはどうも」
リックの持ち込んだ品、というのはレイナの号令でログハウスに収納されている最中であった。
露店から臨時の販売所に格上げか。
ログハウスの裏手には大き目の天幕があり、そこにも荷物が搬入されていく。
その隣にも天幕が並ぶ。
拠点と化していた。
「いらっしゃい!とは言ってもまだ開店してないけどね!」
「ども。もう商売ができそうな感じですね」
レイナは得意気である。
そこはフィーナさんの所の生産職ギルドの特色が現れているようであった。
かなりのアイテムを網羅しているようである。
木工、鍛冶、皮革、服飾、ガラス類、陶器、いや本当に幅広いな。
なんと彫金済の宝石が嵌まった杖まである。
手伝いにきているギルドメンバーは品出しを一通り終えたのか、休憩中のようだ。
「裏手が各種工房になる予定地!まあ今は木工と皮革くらいしかないけどね!」
「へえ」
完全に直販所ですな。
見事です。
「レイナ!皮を運び込むから場所を空けてくれる?」
「了解!」
入り口でサキさんがいた。
後方では2人1組で例の闘牛の革を運んでいる。
面白そうなので付いて行ってみる事にした。
臨時の工房、と言うか、大き目の天幕の中が作業場になっているようだ。
端にいくつもの樽が並んでいる。
かなり大き目の机の上が作業台なのだろう。
そこに闘牛の皮が4つ並べられた。
「これでどんな装備を作りたい?」
「え?」
「キース、それにアデルちゃんとイリーナちゃんの獲物でしょ?少なくとも1つは貴方の取り分と思うけど?」
「いや、考えてませんでしたね」
「単に売るんじゃ勿体無いわよ?」
そうは言っても本当に何も考えてませんでしたから。
他の事に気をとられてましたし。
「まあ今から下処理は進めておくけど。貴方の意向優先だから考えておいてね?」
「後で相談でいいですか?」
「いいわよ?あ、そうだ。私も色々とお願いもあるし」
なんでしたっけ。
あ、思い出した。
グロウ・プラントですね。
忘れてました。
フィーナさんの所に戻ってみると肉塊とホルモンが仕分けされてました。
壮観です。
「暫定で計算中だけど、ちょっと相談があるの」
「何でしょう?」
「通貨で支払うと手持ちの貨幣が極端に少なくなるのよ。代わりと言っては何だけどうちの商品のいくつかでどう?」
「例えばどんな物になりますか?」
「武器に防具、マジックアイテム、さっきの皮の加工費、ここでの飲食代もあり?」
フィーナさんも困惑気味だ。
これほどの物量を一気に持ち込まれた事がないのかも知れないが。
「少し私も考えたいので時間はいいですか?」
「いいわよ?明日の朝に精算するわね」
今度はアデルとイリーナに声を掛ける。
「皮はどうしようか?」
「分配ですか?」
「各人1枚は確実だが、残り1枚で何か装備を作るのもいいかな」
「装備、それもいいなー」
ふむ。
配分には依存はないか。
「いい機会だし、皮4枚を使って革装備一式を作るのはどうかな?」
「革鎧ですか?」
「うむ。鎧だけじゃなく兜にブーツ、腕カバーまで一式、作れるんじゃないかな?」
製造ロットは大きい方が色々と都合がいい。
依頼する方、作る方の両方にメリットがある。
細かい説明はしなかったが。
はぐれ馬の皮から作った装備も悪くはない。
だが闘牛の皮の厚みははぐれ馬のそれをかなり上回っている。
かなり期待できるだろう。
「いいですね、それ」
「賛成!」
「後でサキさんの所に行こう。後は色々と売り払ってしまって平気かな?」
「お肉の一番いい所はもう確保済みですから」
「サーロイン楽しみ!」
色気より食い気なのが良く分かります。
オレも楽しみだよ、サーロイン。
サキさんのいる工房で鎧兜その他一式の発注をしておくと手が空いてしまった。
アデルとイリーナはミオと一緒に料理をするらしい。
オレは?
古代石の発掘だ。
その一方で残月を帰還させている。
鞍などの装備込みだ。
そして文楽を召喚して料理をさせていた。
メニューはモツ煮込みである。
下処理したモツをブツ切りにして水で煮込み続けるだけの料理だ。
そのくせオレがやると何故か失敗するんだよな。
古代石から掘り当てたのは琥珀でした。
ちょっとだけ残念。
少しだけ手を止めて、モツ煮込みの味見をさせて貰う。
旨い事は旨いのだが、やはり味の奥行きが足りない。
継ぎ足して何年も煮込んだ代物と比べる方が間違いではあるのだが。
少し悪戯をしてみる事にした。
塵魔法の呪文、エイジングだ。
《対象を28日分、これに魔法効果拡大で更に5.6日分を反応促進します》
《Yes》《No》
へえ。
こんな感じでインフォがあるのか。
日数は減らす事も出来るらしいが、ここは最大日数で行こう。
「エイジング!」
煮込んでいた鍋の上に手をかざして呪文を放つ。
焦げないか心配であったが、そんな事はなかった。
味はどうだ?
うむ。
さっきのより旨いな。
だがまだ足りない気がする。
もう1回、と思って呪文を使ってみたのだが、ファンブルとなってしまった。
なんだ?
呪文の説明をもう1回、注意深く読んで見たら、1日に1回が限度であったようだ。
基本、どうなっているのだろう?
先程の呪文により、オレの保有する塵魔法レベル4に7日を掛けた28日間分の反応促進が起きた事になる。
これに効果拡大で5.6日分が加算されていた、という事か。
魔法効果拡大の技能レベルはまだ1なのだが、20%ほどの加算がされているようだ。
懸念していた現象は起きなかった。
水分が全部蒸発するとか、焦げ付くとか、そういった事を予想してたのだが杞憂であったらしい。
まあその辺りは魔法ですから、という事なのだろう。
どうやらこの法則はグロウ・プラントも同様のようだ。
オレの場合は木魔法レベル5に7日を掛けた35日間分の成長を促す事ができるらしい。
これに効果拡大もあるとしたら、7日分が加算されるものと予想される。
へえ。
面白そうだ。
試して見たいよね?
「何度もすみません。サキさん、いいですか?」
仮工房でサキさんは何名かのプレイヤーに指示をしていた所でした。
「いいわよ?」
「グロウ・プラントです。前に話してた件ですが」
「あら!大歓迎よ!少し待ってて」
慌てた様子で指示をして回っている。
珍しい事もあるものだ。
「ファーマーのハンネスです。宜しく」
「こちらこそ。サモナーのキースです」
「早速で申し訳ない。キースさんの木魔法はどこまで成長しているんですか?」
「レベル5ですね」
「素晴らしい」
そのファーマーは純朴そうに見えはするが、恐るべき体躯をした偉丈夫であった。
戦闘時は間違いなく前衛だろう。
腰にぶら下がっているのはメイスだ。
それに円形の盾を背負っている。
間違えようがない。
「現在、木魔法の使い手は6名って事になります。ちょっとした野菜なら1日で収穫できるものも多いですね」
「もうそんなにですか?」
「ええ。でも本命は小麦でして。さすがに半年以上を1日で、という所までいきませんね」
「私が加わっても35日分だけですが?」
「十分過ぎます。私にサキさん、他の3名までを含めても木魔法レベルは12なんですから」
「ええっと」
計算してみよう。
17週間分になるのだから1日で4ヶ月分の成長促進が出来る事になるのか。
小麦なら2日あれば収穫まで持っていける事になる。
ブースト凄いな。
「樹木もあるのよね」
「樹木?」
「そうです。キースさんが持ち込んだ実もテストを開始してますので。案内しましょう」
もう育て始めてたのか。
仕事が早いな。
「収穫ができるまで普通なら年単位のものもありますが、継続したら凄い事ができそうですよ」
ハンネスは自信があるようだ。
野菜で既に実績があるからなのだろう。
「ここです」
案内されたのはフィーナさん達が拠点にしている石造りの建物裏でした。
「グロウ・プラントの効果は視認できる範囲になります。まあ呪文を唱えて見ていただければ」
「やってみましょう」
グロウ・プラントの呪文を選択して実行する。
範囲は目で見える範囲になるみたいだ。
まだ若木しかない木々だがどうなるのだろう?
グロウ・プラントの呪文を選択して実行する。
《対象を35日分、これに魔法効果拡大で更に7日分を成長促進します》
《Yes》《No》
「グロウ・プラント!」
《Yes》を選択して呪文を放つ。
オレのMPバーは僅かに減ったようだ。
若木の幾つかは僅かに成長しているように見える。
だが幾つかはまるで変わっていないようにも見える。
これはちょっと達成感がないな。
だがハンネスの反応は良好のようであった。
若木に手を触れると嬉しそうな顔をしている。
「凄い。1か月分以上、間違いなく成長してますね」
「分かるのですか?」
「ええ。そういう職業ですから。ファーマーだけじゃなくランバージャックでも分かるんですよ」
「ほう」
そう言えば奇妙な所で技能が被ったりするんだよな、このゲームって。
次に案内されたのは村の外だ。
小麦畑が2つ。
牧草地が1つ。
野菜畑が4つだ。
とはいえ野菜畑はもう青々としており、実りを迎えているものすらある。
「野菜畑は細々としてますから省きます。手伝って頂きたいのは何と言っても小麦です」
「主食ですしね」
「ええ。あと分かり難いでしょうけど綿花と椿、トチの実をお願いしたいですね」
「それもテストですか?」
「はい。数は少ないのでまとめてます。特にトチの木は丈が高くなりそうなので別枠ですね」
「綿花は水がなくても平気ですか?」
「ええ。呪文は便利ですねえ」
そうだよな。
綿花の栽培にはどうしても水が大目に要る。
どうしても必要なら水魔法のリキッド・ウォーターを使えばいい。
「紡績用の道具もそのうち必要になるでしょう。そこから先は服飾職人の領分ですが」
「なるほど」
オレも次々とグロウ・プラントの呪文を掛けて行く。
綿花、椿、トチの3箇所だ。
「椿も実が出来たら油が取れますし。先が楽しみですね」
「オリーブは栽培しないんですか?」
「手配中ですね。いずれは大規模栽培を目指します」
「順調にいきそうですね」
「そうも言っていられません。収穫にはどうしても人が必要ですし。NPCが居付いてくれないと難しいでしょう」
うん。
それもそうか。
生産職もここでずっと居付く訳にもいかないだろうし。
「協力ありがとう、キース。このお礼分も精算には乗っけておくから」
「いや、そこまでしなくとも」
「好意は受け取っておいていいと思うわよ?それに野菜も現物支給してもいいでしょうし」
「うちの野菜は是非味わって欲しいですねえ」
「そういう事でいいから、ね?」
なんか丼勘定な予感もしますが。
まあこれも気にしたら負けだ。
夕方には村に戻ってきた攻略組も加わり始まってしまった。
焼肉パーティだ。
酒がないのに何このテンション。
半端ないです。
焼肉を楽しみながら、文楽の作った煮込みに舌鼓を打つ。
ミオが焼肉のお裾分けを持ってきたついでに残りの煮込みも持って行かせる。
夕食はかなり充実したものになったと思う。
美味しいのですよ?
でもお腹いっぱいなのです。
午後8時近くまで宴のような時間は続いていた。
主人公 キース
種族 人間 男 種族Lv12
職業 サモナー(召喚術師)Lv12
ボーナスポイント残 0
セットスキル
杖Lv10 打撃Lv6 蹴りLv7 関節技Lv6 投げ技Lv6
回避Lv7 受けLv6 召喚魔法Lv12 時空魔法Lv5
光魔法Lv6 風魔法Lv7 土魔法Lv6 水魔法Lv6
火魔法Lv6 闇魔法Lv6 氷魔法Lv4 雷魔法Lv5(↑1)
木魔法Lv5 塵魔法Lv4 溶魔法Lv4 灼魔法Lv4
錬金術Lv6 薬師Lv5 ガラス工Lv3 木工Lv4
連携Lv9 鑑定Lv9 識別Lv9 看破Lv3 耐寒Lv5
掴みLv7 馬術Lv7 精密操作Lv9 跳躍Lv4
耐暑Lv4 登攀Lv4 二刀流Lv6 解体Lv5(↑1)
身体強化Lv4 精神強化Lv5 高速詠唱Lv7(↑1)
魔法効果拡大Lv1(New!)魔法範囲拡大Lv1(New!)
装備 カヤのロッド×1 カヤのトンファー×2 怒りのツルハシ+×2
白銀の首飾り+ 雪豹の隠し爪×1 疾風虎の隠し爪×2
雪豹のバグナグ×1
野生馬の革鎧+ 雪猿の腕カバー 野生馬のブーツ+
雪猿の革兜 暴れ馬のベルト+ 背負袋 アイテムボックス×2
所持アイテム 剥ぎ取りナイフ 木工道具一式
称号 老召喚術師の弟子、森守の紋章 中庸を望む者
呪文辞書(New!)
召喚モンスター
ヴォルフ グレイウルフLv2
残月 ホワイトホースLv1
ヘリックス ホークLv7
黒曜 フクロウLv6→Lv7(↑1)
器用値 13(↑1)
敏捷値 20
知力値 20
筋力値 12
生命力 12
精神力 18(↑1)
スキル
嘴撃 無音飛翔 遠視 夜目 奇襲 危険察知 天耳
ジーン バットLv6
ジェリコ ウッドゴーレムLv5
護鬼 鬼Lv5
戦鬼 ビーストエイプLv6
リグ スライムLv4
文楽 ウッドパペットLv4
無明 スケルトンLv3
ナインテイル 赤狐Lv3
 




