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『グガッ?』


「チッ!」


 盛大な舌打ちを発しつつ手にしていた羅喉刀を手放した。

 いや、既に感覚で分かっていた。

 羅喉刀が壊れて砕けた!

 その代償は英霊様の棍棒だ。

 真正面から両断は出来なかったから、削ってやったのだ!


 そう言いたいけど実情はまるで異なる。

 襲い来る棍棒を剣撃で凌いでいたら自然とそうなっただけだ。

 偶然の産物と言ってしまえばそれまで?

 まあ、アレだ。

 まだ生きている事に感謝しようかね!


 腰に差し込んであったのは神樹石のトンファー。

 左手に持ち、構えた。

 つもりだった。

 この英霊様ってば、オレを一瞬として落ち着かせてくれません!

 獣だって狩りであるならば間合いを取り、獲物の様子を窺うだろう。

 だが、この英霊様は容赦が無い。

 終始、体格とパワー、そしてスピードで押し切るつもりだ!



『ッ!』


「フッ!」


 前に出て間合いを潰す。

 棍棒は最初の太さはもうない。

 それでもオレの頭に直撃したら、トマトのように潰せそうです。

 例え色空竜の皮製の兜であってもだ!


 だからこそ、前に出る。

 手首を挫いたかに思えたオレの一撃は肉の鎧に弾かれる!

 おかしい。

 神樹石のトンファーを通じて受けた感触は人間とは思えない!

 やはり英霊様は英霊様であるのだ!

 あの筋肉バカの魔神に通じる。

 尋常じゃないぞ?



『シャァァァーーーーーッ!』


 棍棒が再び振り下ろされるが、どうやら限界だったみたいだ。

 オレが避けたの原因じゃ無い。

 結果的に言えば、唯の素振りで棍棒は根元から折れてしまう!

 羅喉刀の犠牲は無駄に終わらなかったらしい。

 僅かな満足感はあるが、味わっている場合じゃないぞ!



「ケヒャッ!」


 右腕を手繰り、ぶら下がるように投げる!

 腕返しなんだが、まるで通じていません!

 腕力だけで凌がれた?



「ッ!」


 右膝を蹴って一旦、離れた。

 体勢を崩しつつも英霊様はオレを追撃に出る!

 強引だ。

 強引過ぎるけど、これも正解のうちだろう。

 オレにこの怒濤の連続攻撃を凌げるのか?

 正直、自信なんて皆無だ!



『ゲヒッ!』


「チェィ!」


 不利な体格の差がこの場合は活きたか?

 頭突きが直撃したのは下腹部、男なら悶絶して当然だろう。

 だが、英霊様には通じていないように見えた。

 いや、効いているのか?

 動きが止まっている。



『フーーーーーーッ!』


 大きく呼吸をしている。

 全身の筋肉に浮かぶのは大量の汗。

 もしかして、痛いのを我慢してませんか?


 今なら呪文で強化も容易だろう。

 武技だって使える。

 その筈だ。

 力量差を考慮するならば、使うべきだ。

 目の前の英霊様の力量は筋肉バカの魔神に匹敵するか、それ以上かも?

 使っても尚、力量差があって当然に思える。


 だが、そうするには惜しい。

 オレは全身に奔る震えとも戦っていた。

 それは恐怖だった。

 そして歓喜だった。

 余りにも巨大な感情が膨らんでいて、受け止めるのに精一杯だった。


 一言で表現するならば?

 幸福感に満たされていた。



「ヌンッ!」


 動きが止まる英霊様の胃袋を掴むかのように掌底を放つ!

 当然のように直撃。

 英霊様の汗は止まる様子が無い。

 おい、動け。

 動け!

 念じるように打撃を加え、右肘を再び股間に直撃させる!

 位置がそこにあったから狙いましたが何か?



『ケァッ!』


「ッ?」


 頭突きが降って来る!

 トンファーで受け流したが、左腕全体が重たい!

 凌げるような破壊力ではないか?

 だが、頭の位置が低くなったのは僥倖だ!



「ッ!」


 顎の下に手刀を撃ち込みつつ回り込む。

 ついでに横腹を肩で押し込んで、腰布を掴んだ。

 そのまま回転しつつ裏投げに!

 だが、投げられません!

 転がしただけだよ!



『ケッ!』


 腕を取って関節を極めようと動いたんだが、足裏が飛んで来た!

 こっちの攻撃を捌くつもりは皆無だよ!

 どこまでも、強引だよ!

 筋肉バカの魔神とはここが決定的に異なる。

 テクニカルな面で見るべきものも学ぶべきものも無い!

 全く、無い!


 それでいて強敵だ。

 明らかな難敵だ!

 これをどう攻略する?

 蟻の一穴を見出せるとしたら?

 急所は人間と同じって事だけだ。



「うん?」


 再び動きが止まった英霊様。

 様子がおかしい。

 汗が止まったかと思ったら、震え出した?

 肌の色が赤く染まる。

 そして筋肉がより一層、膨らんでいるようだぞ?



『カァーーーーーーーッ!』


「アハハハハハハハハハハッ!」


 いかん!

 笑っているバカは誰だよ?

 それ所じゃないだろ?

 脳内で自らを叱り付けつつ、前に出る。

 ありがとう、弥勒菩薩様。

 これは間違いなく、ご褒美だよ!


 前蹴りを膝に放ちつつ、英霊様の視線を凝視し続けた。

 獣だ。

 人の形をした獣だ!

 狂気も極めればきっとこうなるだろう。

 憐憫の情が入り込む余地は無い。

 だからいいのだ。

 それが、いいのだ!


 丸太のような何かが頭上を掠める。

 まだ棍棒を持っていたのか?

 いや、その正体は英霊様の腕だ。

 拳だ。

 その破壊力は棍棒とどっちが上なんだろうね?

 両方と直撃してみたら分かるのだろう。

 それには命が少なくとも2つ、必要になりそうだ。

 試す気分にはなれない。



「フッ!」


 英霊様の右脇を左手で押し込む。

 相撲のハズ押しだが、パワーで英霊様に勝てる訳がない。

 体勢を崩すにも不足だろう。

 目的は別だ。

 オレ自身の体の軸をズラす為だ!



『ッ!』


 往復する形で今度は左腕が襲って来た!

 その下を潜って後方に回り込む。

 膝裏を蹴って腰を落とし、呼吸を整えた。

 こっちに振り返る、その一瞬が狙い目だ!



「ハッ!」


 撃ち上げた右掌底が顎を直撃!

 続けて左膝が股間に直撃する!

 これで3度目だ。

 当面、使い物にならないぞ?

 普通ならそうだ。


 蹴り足が着地するのと同時に左足を抱え込む。

 スパイラルガードの位置を確保しつつ、足首を確保!

 ヒールホールドに捉えた!

 体格の差があるから爪先が股間に押し当てられている。

 ついでだ。

 股間に4度目の直撃を喰らわせつつ、足首をより深く捉える。

 左踵を抱えると、思いっ切り捻り上げた!

 どうだ?


 普通なら膝と股関節に深刻なダメージがあった筈。

 なのに破壊した手応えがおかしい。

 捻ったと思ったのに、僅かに動かせただけ?

 英霊様、パワーあり過ぎ!



「フッ!」


 パワーがあろうがそこはテクニックでどうにかしよう。

 アキレス腱をトンファーで痛め付けつつ、再度捻る。

 今度はよりいい角度で捩れたか?

 骨伝導でいい感触が伝わる。

 股関節が悲鳴を上げている音だ!



『ガァァァァーーーーーーッ!』


 痛いですか?

 痛いでしょうね。

 そうじゃないとオレが困る。

 次は左膝も念入りに破壊したい所だが、その前に足裏が飛んで来た!

 回避も何も無い。

 ヒールホールドの体勢のままだったのだ。

 まともに顔に喰らってしまい、吹き飛ばされた!


 転がされつつもどうにか立ち上がって追撃に備える。

 不十分な体勢だ、まともに攻撃を喰らえば死ぬ。

 多分、死ねる。

 死なないのだとしても、深刻なダメージになるだろう。

 だが、追撃が無い。

 英霊様の左足はどうやらまともに動かなくなっていたようだ。



「アハッ!」


 ここはもう笑っていい。

 そして左手に持っていたトンファーを地面に落とした。

 もっとだ。

 お互いにもっと、楽しめる筈だ。

 英霊様の目にはまだ殺気が宿っている。

 いや、より研ぎ澄まされたかのように思える!

 そしてオレの脳内で危険を告げるサイレンが大音量で鳴り響いていた!


 これは、危険だ。

 目の前にいるのは手負いの野獣。

 一歩を踏み出せば、そこは死地。

 間違いない!


 恐怖と狂気、それと表裏に存在する歓喜と愉悦。

 矛盾する感情をコントロール出来る筈もない。

 体が揺れるように、自然に前に出る。

 そして加速する。

 英霊様の放つ獣の気配を感じつつ、オレは遠いどこかで何かが吼えているのを聞いていた。

 それは奇妙に頭の中で響いている。

 そして響き続けていた。






《只今の戦闘勝利で【大刀】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【杖】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【打撃】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【蹴り】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【関節技】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【投げ技】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【軽業】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【気配察知】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【暗殺術】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【限界突破】がレベルアップしました!》


 英霊様のHPバーが砕け散った次の瞬間。

 英霊様の姿は消えた。

 あれ?

 もう終わり?

 死体が残らないというのも味気ないな。

 仕留めたという実感が湧かない。


 おっと、今はすべき事がある。

 神樹石のトンファーを拾い、羅喉刀に嵌めてあったダイヤと計都眼も回収だ。

 呆けていられる場合じゃない。


 それにしても久々だ。

 剛力無双の英霊、ヘラクレスか。

 赤ん坊の時ですら、蛇を握り潰して殺したと言うだけの事はある。

 恐ろしい相手だった!

 だが、伝説で語られる強さはこんな程度で済むだろうか?

 もっと強くてもいいと思うのだが。


 どうもいけない。

 まだ終わっていないみたいだ。

 砂が鳴っていた。

 その音は小さいが、明らかにこっちに向かっている。

 嫌な予感しかしません。

 僅かな光に照らされて出現したのは?

 やっぱりだよ!



 ??? ???

 英霊 待機中

 ??? ???



 全身鎧兜で身を固め、幅広で巨大な直剣を手にしている。

 何者であるのかはもう知っていた。

 竜殺剣士の英霊様だ。

 見掛ける機会は剛力無双の英霊、ヘラクレスと同様に数える程でしかない。

 それでも見間違える筈もない。


 その正体は恐らく、竜殺しのシグルド。

 ああ、ダメだ!

 これはもうご褒美が過ぎる!

 飽食も過ぎれば毒になりそうだが大丈夫か?

 消化しきれる量であればいいんだが。


 腰の後ろから神鋼鳥のククリ刀を抜く。

 金剛杵があればそっちを使っていただろう。

 その代わりに神樹石のトンファーを選択していたのだから仕方ない。


 だが。

 竜殺剣士の英霊様は何故かオレを襲って来る様子を見せなかった。

 手にした剣の先端を地面に刺し、両手で柄を握って動かない。

 何だ?

 オレに時間を与えるつもりなのか?


 いかん。

 冷静になれ!

 オレの中に何かが爆ぜているのが分かる。

 純粋な怒りだ。

 この英霊様、オレを軽く見ているのか?

 いや、それはそうだ謙虚に受け止めるべきだろうけどさ。

 納得出来ない。

 例え格下の獲物が相手であっても、全力で仕留めに行くのは礼儀だと思うのだ。


 《アイテム・ボックス》から布都御魂を取り出しつつ、思う。

 どうしてくれようか?

 愚弄された気分を払拭するには並の事では鎮まりそうにない。

 もうね、オレの中の恐怖は狂気に呑み込まれて消えてしまいそうだ!

 ついでに歓喜も愉悦も消えた。

 残ったのは破壊衝動のみ。


 相手は英霊様だ。

 英霊様なのだ。

 礼儀は最低限、弁えないと失礼。

 そう、礼を失すると書いて失礼。

 失敬なのも人間としてどうかと思うよ?



 もうね、知るか!

 何もかも投げ出して、この怒りに身を任せよう。

 英霊様が相手?

 だから、何?

 剣を、刀を、何よりも殺意を向ける相手に礼儀だって?



「フッ!」


 気迫が声と共に漏れている。

 未熟。

 それは自覚出来ていた。

 殺意が鎮まっておらず、抑制がまるで効いていない証左でもあった。

 構わん。

 怒りを上乗せするのも一興。

 オレの狂気を怒りと共に、発散するのだ!

 いや、いっそ研ぎ澄ませてしまえ!


 布都御魂の感覚は掴んである。

 この体が覚えてくれている。

 任せてしまえばいい。


 剣先を徐々に浮かせて英霊様に近寄る。

 英霊様が大剣を目の前で掲げ、祈りを捧げる様子だが。

 オレには付き合うつもりは無い。

 無いったら無いぞ!



「シャァァァァァーーーーーーッ!」


 一気に駆け寄る。

 さあ、オレと戦え!

 オレの怒りと狂気を知れ!

 そしてオレに挑むがいい!

 オレも挑もう。

 加減など、どこにも介在させない。

 英霊様にもだ!






《只今の戦闘勝利で【両手剣】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【剣】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【精密操作】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【跳躍】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【平衡】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【魔力察知】がレベルアップしました!》


 竜殺剣士の英霊様は?

 消えたか。

 やはり違和感がある。

 確かに強いのだが、こんなものだろうか?

 仮にも英雄とされる英霊、オレ如きに敗北するような力量とは思えない。

 だが、そんな疑念も吹き飛びそうだ!


 砂の鳴る音は無かった筈。

 いきなり生じた殺気は研ぎ澄まされた形を伴ってオレの後頭部に迫っていた!

 避ける事が出来たのは偶然?

 スキルの恩恵か?

 いや、そんな事はどうでもいい。


 オレに攻撃を仕掛けた男が振り返る。

 口元に不敵な笑みを浮かべた伊達男だ。

 やはりその姿は見ている。

 海魔襲来の英霊様。

 恐らくその正体はフランシス・ドレイク。

 悪魔の竜と恐れられた海賊。

 事実上、スペインの無敵艦隊を壊滅させた張本人。

 手にしているのはやや湾曲した片手剣。

 海賊らしい衣装と併せて、妙に似合っている。



『ッ!』


「ッ?」


 ほぼ無言で撃ち込んで来た!

 一足飛びで間合いを潰すその速さに対応出来たのは奇跡?

 いや、そういう攻撃を体が知っていたからこそ避けられたのだ!

 反射的に足を払ってやったのだが、不発に終わる。

 英霊様は跳躍して悠々と回避しやがった!


 布都御魂を手放す。

 左手に神樹石のトンファーを持ち、右手で神鋼鳥のククリ刀を抜いた。

 目の前の英霊様の特性は?

 身軽だ。

 そして速い。

 だが、それ以上に危険な香りが漂っている。


 汚い。

 そして不意打ちも辞さない非情さが素敵だ。

 好意に値する!


 無言のまま半身の構えを取る英霊様。

 どこか小刀術に通じる。

 要するに理に適っている!

 剣先は片手下段、膝を狙う形だが果たしてどうかな?

 変化は幾通りもあありそうだ。

 その全てを予測して対抗するのは不可能だろう。

 そもそも、スピードが違い過ぎる!


 ククリ刀を前に突き出す形でオレも右半身の構えに。

 英霊様の目が細くなった。

 同時に殺気が浮かんで、消えた。

 目の前に見えているのに気配が希薄になった?

 口元の笑みは張り付いたままだ。

 いい感じはしません。



「ッ!」


『ッ!』


 同時に前に跳び、お互いに距離を潰す!

 右肩に衝撃?

 装備を新調して以降、初めて味わうような痛みが走るがこれは好機!

 目の前に伊達男の顔があるのだ!



「フッ!」


 口に含んだ唾を飛ばして剣を持つ右腕を抱える。

 手品ではない。

 左前に構えをスイッチしただけだ。



『ッ?』


 英霊様の笑みが消える。

 右肘を極めつつ腰を落として両脚で右膝を挟み込んだ。

 ついでに右手のククリ刀が股間に吸い込まれる。

 無残?

 多分、無残だ。

 でもね、最初から汚くて素敵な攻撃を仕掛けるのもいけないのだ。

 オレの意識もギアが切り替わってしまっていた。



「ッ!」


 右腕を強引に折り、肩を押し込んで右脚も極めに行く!

 逃がさん。

 それに英霊様、左手で何かしようとしてるだろ?

 読めてるぞ?



『ッ!』


 ダメージを受けつつも無言で短剣を繰り出す英霊様。

 目を抉ろうとするなんて!

 あんた、最高だよ!



「フンッ!」


 でもね。こっちにもククリ刀がる。

 目前で薙ぎ払うとククリ刀を左太腿に突き刺した!

 悲鳴は?

 聞こえない。

 英霊様は未だに無言のまま、こっちに視線を向けている。

 まだだ。

 まだ、オレを殺そうと狙っている目だ!

 そこに宿るのは殺気ばかりではない。

 狂気も宿っている!

 これは危険だ!


 脇を差し込んで今度は背後を狙う。

 この英霊様のパワーはそんなに感じない。

 だが、その脅威は剛力無双の英霊様とも竜殺剣士の英霊様にも匹敵する!

 いや、何を仕掛けて来るのか分からない恐怖が上乗せされているかな?


 背後に回り込むと裸絞めにしたのだが。

 手首に噛み付くとか、どこまでオレ好みなんだよ!

 素敵過ぎる!

 次に【英霊召喚】で呪文を追加出来るようになったらどうしよう?

 海魔襲来を選択しよう。

 機会があれば対戦を申し込みたい。

 戦闘スタイルがかなり違うけど、誰かを彷彿とさせてくれる。

 剣豪降臨でたまにいるけど、戦国武将にも通じるだろう。

 勝つ為であればあらゆる手段を講じる、苛烈とも言える凄まじさがあるぞ?

 戦っている間は勘弁して欲しくなるけど、そこはお互い様だと思うのだ。

 悪くない。

 そして好ましくすらあった。







《只今の戦闘勝利で【小刀】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【刀】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【杖】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【掴み】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【二刀流】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【ダッシュ】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【気配遮断】がレベルアップしました!》


 これで3連戦、段々と何がお題であるのかが読めてきた。

 次は、何が相手になる?

 獅子吶喊の英霊様だろうか?

 尽忠報国、それとも弓馬武威かな?

 どうやらオレが使えない【英霊召喚】の英霊様が相手になっている。


 ここの難易度を判断するとなれば尽忠報国が好ましい。

 以前、対戦をしているからだ。

 当時のレベルと今のレベルはかなり違うが、それでも判断材料にはなってくれるだろう。



(アポーツ!)


 布都御魂を回収。

 さて、得物は本当にこれでいいんだろうか?

 弓馬武威の場合、弓矢で一方的に射掛けられる可能性がある。

 その場合はテレポートの呪文を使う事になってしまうだろう。

 出来れば使いたくないけど。

 安全策ならある。

 レーヴァテインに切り替える事だ。

 投槍であればある程度、弓矢にだって対抗出来る。

 但し弓馬武威の英霊様の正体はあの源為朝公だ。

 戦略兵器を相手に投槍だけで大丈夫?


 僅かに砂を踏む音が耳に届いた。

 隠す意図は無いようだな。

 しかもオレの周囲で同時に砂が鳴っていた。

 マズい。

 これは、マズい!

 軍勢か何かに囲まれている!


 オレの周囲に輪となって現れたのは軽装の兵士達。

 どの顔も武骨で得物も統一されているように見えて統一されていない。

 見覚えならあった。

 尽忠報国の英霊様に付き従う兵士達だ。

 全員でオレの相手をするのかね?

 それもいいけど、数が数だ。

 遺憾ではあるが、攻撃呪文を使う事になるだろう。

 だが、様子がおかしい。

 オレを襲う様子を見せない。

 何かを待っているのか?


 包囲の輪の中から進み出たのは?

 これもまた見覚えがある。

 尽忠報国の英霊様だ。

 岳飛。

 報われずに終わった悲劇の英雄。

 その戦闘スタイルは一種独特と言っていい。

 知っているだけに戦慄する!


 以前の対戦は木剣だった。

 今は違う。

 だから戦慄している訳ではない。

 厳めしい姿から漏れる殺気は尋常ではないからだ。

 死を予感させる威圧感は恐るべきものであった。


 ここまで連戦して来た英霊様達と共通する。

 オレを殺しに来ている。

 そう、目の前にいるのは紛れもなくオレの敵だ!






《只今の戦闘勝利で【両手剣】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【刀】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【杖】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【召喚魔法】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【二刀流】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【耐久走】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【追跡】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で職業レベルがアップしました!》

《只今の戦闘勝利で種族レベルがアップしました!任意のステータス値2つに1ポイントを加算して下さい》



 オレは考えるのを止めていた。

 何だか久々に意識を取り戻したような気がする。

 最初に思ったのは、ある疑問。

 召喚モンスターは周囲にいない。

 なのに何で【召喚魔法】がレベルアップするんだ?


 それは今はいい。

 英霊様は?

 先刻まで見事な戦い振りであったようだが、どうやら仕留めたらしい。

 オレの目の前から霞となって消えてしまう。

 同様に周囲で輪になっていた兵士達も消える。

 ついでに戦闘当初に持っていた布都御魂も砕けて消えてます。


 今、オレが手にしていたのは神樹石のトンファー。

 英霊様の喉に押し当てて絞め上げてるのに便利だった、気がする。

 そして神鋼鳥のククリ刀。

 これで英霊様の胸元を貫いた筈。

 それがもう何だか夢の中の出来事でったかのようだ。


 以前の稽古との比較検証?

 そんなの途中で放棄だ放棄!

 まともな戦いにならない!

 途中で追い掛けっこの様相にすらなっていたのだ!

 身軽過ぎる相手も難儀だな!



 基礎ステータス

 器用値  72

 敏捷値  72

 知力値 110

 筋力値  72(↑1)

 生命力  72(↑1)

 精神力 110



《ボーナスポイントに2ポイント加算されます。合計で28ポイントになりました》


 稽古となった対戦とは全く違うな。

 あの時と戦闘スタイルがかなり違う。

 徹底的に翻弄するような剣技は見た目が派手なようでありながら、狡猾。

 その上、正統派の剣にも切り替わる!


 それでも尚、これが真の実力とは思えない。

 殺気と狂気は本物であるようにしか思えないのだが。

 それなのに、何故か違和感。


 単にオレを殺すだけなら英霊様全員で来るんじゃないかな?

 そう、それが合理的だ。


 だが、今は急げ!

 尽忠報国の英霊様に布都御魂は砕かれている。

 竜殺剣士の英霊様との戦闘で散々に撃ち合っていたのも影響しただろう。

 次は?

 獅子吶喊の英霊様か。

 弓馬武威の英霊様か。

 いずれにしても神樹石のトンファーと神鋼鳥のククリ刀で対抗するのは惜しい。

 レーヴァテインにしようか?

 いや、それよりもオレが最も好む得物にしよう。

 羅喉刀だ。

 改めて柄元と柄頭にダイヤと計都眼を嵌め込んでいるうちに次の足音が聞こえていた。

 1人だけじゃないだろう。

 だが1人だけ、異様な足音なのがいるぞ?


 存在感を示すかのように、やたらと大きく響くのは重量級の証か?

 重武装の方かもしれないな。

 そして身を隠す事すらもしない、大胆不敵な相手なのだろう。

 もう何となく読める。

 獅子吶喊の英霊様だ!


 音がしていた後方を見る。

 やはりだ。

 従者を連れた重戦士。

 鎧兜で身を固め、盾を片手に持つその姿は王者の風格がある。

 手にしているのは片手剣。

 普通に見えるが、アレが凄まじい攻撃力を備えているのは知っている。

 それは剣がいいのか?

 英霊様の力量がいいのか?

 きっと両方であるのだろう。


 盾がある分、タフな戦いになるだろう。

 そうなって欲しい。

 防御に徹してくれるような甘い相手ではあるまい。

 あの盾もまた、恐るべき兵器と化してオレを襲う筈だ。

 それがもう読める。


 獅子吶喊の英霊様が剣を目の前で掲げて佇んでいる。

 従者達が戦闘に介入する様子は無い。

 この英霊様、その正体は恐らくウィリアム1世。

 庶子公ギヨームかもだが。

 意匠で見分けられるのかもだが、そこまでオレは博識じゃない。



「チェァァァァァァーーーーーーーッ!」


 悪いけど礼儀は無用。

 先制で撃ち込ませて貰うぞ!

 無礼?

 無礼ですが、何か?


 英霊様は盾を前面に構えてやや半身に。

 盾か。

 盾があるなら、どう戦う?

 最上なのは盾共々、叩き割るように斬る。

 出来るかどうかなんて話は別だ。

 そのつもりで攻勢に出る!

 分かり易い構図にすべきだね!



『ムンッ?』


 オレの放った一撃は盾に弾かれた?

 いや僅かだが英霊様の方に押し込んだ感触がある。

 それにこれで終わらせませんよ?



「フッ!」


『ッ?』


 足の甲を跳ね上げる。

 蹴りを直撃させる為ではない。

 砂を蹴り上げ、顔面に叩き付ける為だよ!

 オレの攻撃を凌いだ次の瞬間、攻撃に転じるのは常道だ。

 そこが狙い目なのです。



「シャッ!」


 次の斬撃は足首を狙って薙いだ。

 盾が地面に叩き付けられ完璧にブロックされる。

 そこに肩から突っ込んだ!

 押し込んでしまえ!

 下がっていたのでは勝機は薄い。

 いや、無いぞ!

 英霊様が攻撃に転じるその一瞬に合わせて、こっちも攻撃する。

 それでいて押し込み続ける。

 難儀なのは確かだ。

 この英霊様、恐らく受けに回ったら隙なんて皆無だよ!

 それはもう分かっている。

 だからこそ、色々と汚い手だって使うべきであるのだ。

 手段を選んでいられる余裕はオレには無い。



「ヒャホウッ!」


 英霊様の剣先がオレの顔面を襲う所で妙な声が出ちゃったよ!

 まるで楽しそうに聞こえるよね?

 うん。

 楽しい。

 これが楽しいというのも事実だ!

 何をやってもこの英霊様は受け止めてくれる。

 最高!

 それでいて一方的に受けに回ってくれそうにない。


 これは長くなりそうだ。

 それでも呪文も武技も、使う気になれない。

 業の深さを感じるのはこういう所だな!





《只今の戦闘勝利で【大刀】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【回避】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【受け】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【魔力遮断】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【身体強化】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【精神強化】がレベルアップしました!》


 体の各所が軋んでいるかのようだ。

 何度も体当たりを敢行していたのだから仕方ない。

 その反動って事でもないが、意図的に脱力。

 体に震えが残っているのが分かる。


 熱狂的に膨れ上がっていた恐怖と狂気は鎮まっていた。

 同時に歓喜と愉悦も鎮まっている。

 破壊衝動も今は無い。

 どこまでも、空虚。

 そしてその時を待つ。

 もう確信していた。

 次に遭遇するのは?

 弓馬武威の英霊様だろう。 


 騎乗戦で挑まれたらオレに勝ち目はあるまい。

 配下は28騎がいると思うが、これらが介入せずとも同様だ。

 オレにパナールがいるのであれば話はまるで違うのだが。

 しかも相手は源為朝公だ。

 比較可能な存在が項籍とか呂布になってしまう戦略兵器だ。

 そう、戦術兵器ですらない。

 武名だけで戦えるしな。


 どうやら、時間だ。

 オレの背後から聞こえる砂を踏み鳴らす音は確実に複数。

 多分、馬だな。

 見なくても分かる。

 分かってしまう!


 騎乗戦であれば勝機は?

 騎乗馬をどうにか出来れば或いは互角の勝負になるかもしれない。

 いや、それでようやく不利な状況が解消するだけに過ぎない。

 相手は弓矢を使う。

 近寄ってくれるかどうかすら怪しいものだ。


 振り向いたら案の定、騎馬集団が迫っていた。

 その先頭にいるのが源為朝公。

 体格がいいから装備の差を見なくてもすぐに分かるよ!



 ??? ???

 英霊 待機中

 ??? ???


 理由は分からないが、英霊様は馬から降りている。

 鞍に矢筒と弓を置くと、付き従う騎馬兵から何かを受け取ったようだ。

 それが何であるのか?

 分かる。

 分かってしまう!


 日本刀?

 そう表現してもいいんだろう。

 だが、英霊様の体格はオレよりも遥かに大きい。

 身長は7フィート程、2メートル10センチを超えていそうだし。

 そんな体格であって尚、刀身が長い。

 斬馬刀だな。

 オレが手にしている羅喉刀よりも確実に、間合いは長いよね?


 英霊様は手にした刀を片手で振ると、ようやくこっちを向いた。

 あ、ダメだ。

 この人、笑っている。

 但し、獣の笑みじゃない。

 朗らかとすら言っていい。

 殺気は皆無。

 狂気も皆無。

 おかしい、ここで連戦している英霊様達とかなり雰囲気が違うぞ?


 ま、表情がどうであれ戦う事は既定路線だ。

 オレが感じ取っている違和感はいずれ解消するかもしれない。

 戦っているうちに変わる事に期待しよう。

 どうやら騎乗戦にならなくて良かった。

 これなら呪文を使わずに済む。


 さあ、殺ろう。

 お互いに得物は大刀サイズ、体格に見合った大物になる。

 稽古になるとは思わないが、大いに参考になってくれたらいい。

 あ、そうだ。

 動画にして記録出来るのかな?

 ここまで試してなかったな。

 ならばついでだ。

 今、試そう。

 後で見返すに値するようであれば有り難い。


主人公 キース


種族 人間 男 種族Lv193(↑1)

職業 サモンメンターLv82(召喚魔法導師)(↑1)

ボーナスポイント残 28


セットスキル

小剣Lv152 剣Lv155(↑1)両手剣Lv154(↑1)

両手槍Lv156

馬上槍Lv158 棍棒Lv154 重棍Lv151 小刀Lv154(↑1)

刀Lv160(↑2)大刀Lv160(↑2)手斧Lv150 両手斧Lv151

刺突剣Lv154 捕縄術Lv154 投槍Lv158

ポールウェポンLv160

杖Lv177(↑3)打撃Lv184(↑1)蹴りLv184(↑1)

関節技Lv184(↑1)投げ技Lv184(↑1)回避Lv191(↑1)

受けLv191(↑1)

召喚魔法Lv193(↑1)時空魔法Lv178 封印術Lv177 

光魔法Lv176 風魔法Lv176 土魔法Lv176

水魔法Lv176 火魔法Lv176 闇魔法Lv176

氷魔法Lv176 雷魔法Lv176 木魔法Lv176

塵魔法Lv176 溶魔法Lv176 灼魔法Lv176

英霊召喚Lv6 禁呪Lv177

錬金術Lv160 薬師Lv43 ガラス工Lv45

木工Lv81 連携Lv166 鑑定Lv137 識別Lv157

看破Lv126 保護Lv19 耐寒Lv148

掴みLv168(↑1)馬術Lv166 精密操作Lv168(↑1)

ロープワークLv100e 跳躍Lv169(↑1)軽業Lv170(↑1)

耐暑Lv80e 登攀Lv60e 平衡Lv168(↑1)

二刀流Lv164(↑2)解体Lv137 水泳Lv132

潜水Lv132 投擲Lv167

ダッシュLv167(↑1)耐久走Lv167(↑1)追跡Lv160(↑1)

隠蔽Lv144 気配察知Lv166(↑1)気配遮断Lv165(↑1)

魔力察知Lv165(↑1)魔力遮断Lv149(↑1)暗殺術Lv166(↑1)

身体強化Lv166(↑1)精神強化Lv166(↑1)高速詠唱Lv50e

無音詠唱Lv60e 詠唱破棄Lv60e 武技強化Lv165

魔法効果拡大Lv162 魔法範囲拡大Lv162

呪文融合Lv162

耐石化Lv80e 耐睡眠Lv80e 耐麻痺Lv80e 耐混乱Lv80e

耐暗闇Lv80e 耐気絶Lv80e 耐魅了Lv80e 耐毒Lv80e

耐沈黙Lv80e 耐即死Lv80e 全耐性Lv105

限界突破Lv54(↑1)獣魔化Lv80


装備

金剛杵×16 降魔秘剣×16 天羽々斬×16

生大刀×8 迦楼羅剣×13 布都御魂×15(↓1)

火焔光輪刀×16 七星刀×14 羅喉刀×15(↓1)

護霊樹の杖×1 神樹石の杖+×2

如意輪錫杖×14 神樹石のトンファー+×2

亜氷雪竜の投槍+×2

双角猛蛇神の長槍+×1 グングニル×2

亜氷飛竜の騎士槍+×1 双角猛蛇神の騎士槍+×1

亜氷飛竜のパイク+×1 天沼矛×13

蛇王のメイス+×1 ミョルニル×1

転生獅子のレイピア+×1 亜氷飛竜のエストック+×1

神鋼鳥の小刀+×2 神鋼鳥の刀+×2

神鋼鳥の斬馬刀+×2 神鋼鳥のコラ+×2

神鋼鳥のククリ刀+×4 神鋼鳥のデスサイズ+×2

虚無竜のデスサイズ+×2

怒炎蛇竜神の小剣+×2 蛇王の双杵+×1 蛇王の戟+×1

妙見秘鎚×16 星天弓×16 生弓矢×6

ダイダロスのペレクス×9 ダイダロスのラブランデス×10

冥府の槌×9 天魔の琵琶×16 天詔琴×5

怒りのツルハシ+×2 オリハルコンの首飾り+×1

老蠍獅子神の隠し爪+×2 老蠍獅子神のバグナグ+×2

色空竜の革鎧ほか 金毛羊革のコート×1

黒のローブ×5

蘇芳羂索×16 グレイプニル×2 レーヴァテイン×3

千宝法輪×1 千宝相輪×1 色空竜のベルト

背負袋 アイテムボックス


基礎ステータス

 器用値  72

 敏捷値  72

 知力値 110

 筋力値  72(↑1)

 生命力  72(↑1)

 精神力 110

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― 新着の感想 ―
この主人公ゲームなかったら絶対犯罪犯してるよね
[一言] 作者は主人公を狂気が宿ったヤバイ奴として書きたかったんだろうけど… よくて癇癪持ちの糞ガキっていう なんか言動が軽くてちっさいんだよなぁ
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