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ログインしたら何やら美味そうな匂いが。
じゅるる。
「おはよう!」
「ああ、おはよう」
オレのテントの近くでアデルが料理をしているのが見えた。
クソッ。
いい匂いをさせてやがる。
オレも文楽を召喚して飯の用意をさせておこう。
道具と素材を渡して後はお任せだ。
「むむ?料理で負けるか!」
アデルが何やら対抗心を燃やしているようだ。
文楽はまるで動じない。
まあ当たり前なんですが。
「おはようございます、キースさん」
「おはようさん」
イリーナが桶に水を汲んできていた。
いや、他の水魔法の使い手がリキッド・ウォーターで作成したのかもしれない。
オレも文楽が並べた大き目の鍋にリキッド・ウォーターで水を溜めていく。
「キースさんがいるんだった。頼めば良かった」
「アデルちゃん、私達のどっちかが水魔法を取得した方が良くない?」
「時空魔法が取得できるまでは我慢する!」
イリーナも大変だな。
だがまあアデルの意見も分かる。
便利、という意味では時空魔法を優先すべきだと思うよ?
装備を整えてテントを撤収する。
あちこちで料理をしている様子だ。
ミオの所は明らかに大量の料理を作っているのが見える。
ここで商売ですか?
さて。
今日はどうするかな?
まあ最初はいつもの移動優先の布陣で行こう。
何処に向かうにしても便利だ。
残月、ヘリックス、黒曜を召喚する。
向かう方向はどうしようかね?
北に向かって例の蝶にリベンジするか。
南に向かって洞窟に潜ってみるか。
西に足を伸ばしてW3マップで狩りもいいだろう。
まあ出発するまで時間はある。
朝飯が出来上がる前にオレも出来る事を済ませておこう。
雪豹の爪は3つある。
【素材アイテム】雪豹の爪 原料 品質C レア度4 重量0+
ユキヒョウの爪。鋭いだけでなく丈夫で軽い。
念のため【鑑定】しておく。
3つとも品質Cだ。
全部隠し爪にしておく事も出来るが、疾風虎の隠し爪が既に2つあるしな。
雪豹の隠し爪も既に1つあるし十分とも思える。
そのまま雪豹の隠し爪を作るのも何だかつまらないよね?
そこで3本とも使ってみました。
木工スキルは使わない。
手持ちの黒曜石を全部使っていたので、黒曜石の矢をいくつか潰して流用する。
当然、使ったのは溶魔法の呪文、シェイプ・チェンジだ。
雪豹の爪を3つ並べて、その根元を変形させた黒曜石で連結する。
3分と掛からずその武器は出来上がっていた。
【武器アイテム:打撃】雪豹のバグナグ 品質C+ レア度4
AP+2 破壊力0+ 重量0+ 耐久値70
敏捷度阻害[小] 氷属性
暗器。引っ掻いて使う武器であり鎧兜などにはほぼ無力である。
ダメージを与えると敏捷度を下げる追加効果が低確率で発生する。
隠し爪から微妙に強化されたようだ。
しかも名称がバグナグとか。
バグナグの意味は『虎の爪』じゃなかったかな?
雪豹の虎の爪とはこれ如何に?
まあ気にしたら負けだ。
次に行こう。
古代石を取り出すと発掘作業を進めていく。
石ノミにエンチャンテッド・ウェポンを掛けて金槌を振るう。
でも1個目を終わらせる前にオレの目の前に飯が出されていた。
「お裾分けでーす!」
「お、おう」
好意を無にする訳にいくまい。
鶏肉の串焼き、いや、焼き鳥だな。
タレではなく塩だ。
鶏肉の間にネギが挟まれている。
ねぎま、だな。
地方によっては豚肉がデフォの場合もあるようだが。
作業を中断して頂く。
そんな合間にも文楽が料理を終えていた。
ブリッツの腿肉は全て使い切っている。
「アデル、イリーナ。この鍋の残りは君達で食べていい」
「むう?」
「ありがとうございます」
細かく切ったブリッツの腿肉と苦悶草で作った肉野菜炒めだ。
鍋で炒めたものだから蒸し焼きに近いようだが。
まあ食事が単調にならないのはいい事だ。
「むう、もう無くなってる?」
「あ、ミオちゃん!」
「最後の串ならありますよ」
ミオが持っているのは何かのサンドイッチのようだが。
イリーナの持つ焼き鳥とサンドイッチ半分が交換になったみたいだ。
そのついでではないようだが、文楽作の肉野菜炒めを一口食っていきやがった。
行儀が悪いぞ?
「うん、これもいける!」
「それ、キースさんの召喚モンスターが作った料理ですよ?」
「へ?」
イリーナが視線で文楽を見ている。
ミオも文楽を見る。
そしてサムズアップ。
「グッジョブ!」
いい笑顔だ。
文楽はまるで動じないんだが。
周囲でもプレイヤーの数が増えてきていた。
皆、食事を摂っているようである。
ミオが料理をしていた所ではレイナがサンドイッチを売っている。
「じゃあ私も戻るから。あと今日のミーティングは午前7時からだよ!」
「了解!」
レイナの元にミオが戻っていく。
全体ミーティング?
ああ、昨日サキさんが言ってた奴か。
現在の時刻は午前6時40分。
古代石の1つ位は余裕で発掘作業を終える事ができるだろう。
文楽には片付けをさせてオレは作業の続きを進める。
集中集中。
そして古代石から取り出したのはこんな石でした。
【素材アイテム】紫水晶 品質C+ レア度3 重量0+
紫色の水晶。別名アメジスト。
透明度が高く粒の大きなものは魔法封印によく使用されている。
うむ。
良く分からないが、何かに使えそうだ。
宝飾職人のマルグリッドさんあたりに相談かな?
まあ暫くは保留でいいだろう。
「7時から朝のミーティングをします!任意ですが是非ご参加くださーい!」
凄まじい音量で声掛けが行われていた。
見知らぬ男性プレイヤーだが、その声掛けの効果は確実であった。
なんとまあ。
恐らくは【大声】スキルなのだろう。
周囲のプレイヤーも慌しく動き出していた。
2個目の古代石に取り掛かるのはやめておこうか。
ミーティングにはオレも参加してみようと思う。
片付けを終えた文楽を帰還させるとナインテイルを召喚する。
今日はこいつのレベル上げも兼ねて冒険を進めたいからな。
「新しい召喚モンスターですね」
「おお!モフモフ追加だ!」
しまった。
オレの横にイリーナとアデルがまだいたのであった。
早速、ナインテイルを愛で始めるアデル。
手馴れたものだ。
しかも毛並みを撫でるよりも先に肉球を触ってるようなんだが。
「赤狐はここが弱いんです!」
何が弱いんだ何が。
だが弱いのは事実のようだ。
ナインテイルが目を細めている。
寝ちゃダメだぞ?
村の中央でプレイヤー達が集まりつつあった。
その数は50名を軽く超えているであろう。
イリーナがサキさんの隣に座り込む。
その隣をミオ、そしてアデルが並んで座っていく。
彼女達の後ろにイリーナとアデルの召喚モンスター達がいた。
2頭の馬、鷹にフクロウ2匹、それに赤狐だ。
オレはアデルの隣で立ったまま周囲を見渡していた。
肩にヘリックス、左腕に黒曜を止まらせ、残月はオレの後方に控えている。
ヘリックスと黒曜は盛んに互いの位置を交代していた。
ショートレンジで追いかけっこをしているらしい。
ナインテイルはアデルに捕まったままである。
「ミーティング参加者はユニオン申請を!指定先はフィーナです!」
あのプレイヤーが大音声で指示をしている。
成る程。
ウィスパーで話し合いを進めるらしい。
オレも早速、ユニオン申請を出しておく。
『こちらフィーナ、早速ですがミーティングを始めます。発言のある方は挙手をお願いします』
『サブのサキです、発言を促されたプレイヤーは最初に名前をお願いします』
『まずは概況の確認からです。サキ、お願い』
ミーティングが始まった。
最初に報告が続いた。
どれも当たり障りのない事ばかりだと思う。
だが言葉にして確認しておかないと不安なのも事実だ。
攻略組からの意見も多かったし、その殆どが生産職の支援体制への不安であった。
生産職組からの回答は単純明快だ。
出来る事は出来る。
出来ない事は出来ない。
そして本日の夕刻には、生産職プレイヤーが追加でここに来る予定である事。
到着したらカバー出来る範囲が広がると同時に充実する事が告知されていた。
これには攻略組も全員、納得の様子である。
同時に現在の生産職が抱える問題点も浮き彫りになっていた。
NPCがいない現状、完全に人手が足りていないのだ。
その一方で朗報も多かった。
『北側の森で木材の確保は十分に可能、原木栽培も出来そうだ』
ランバージャックの与作の発言には重みがある。
なんと言っても闘技大会の優勝者だ。
さすがに有名人だな。
『村の中に材木の仮置き場があります。端材は自由に持って行って構いません。木材を入り用の方は私まで連絡を!』
レイナだ。
まあウッドワーカーだしな。
彼女に任せるのが適役だろう。
『北にある洞窟だが、支道の奥で良質の粘土が見つかっている。アントマンが邪魔だが確保できれば有難い』
その発言主は先程の大声の主だった。
彼の名前はルパート、セラミックワーカーのようだ。
ついでに彼の隣にはフェイと御剣のグラスワーカーのペアがいた。
どうやら彼らとは知り合い同士らしい。
『南の洞窟脇の山だが石材が採れる。現在は人手が足りないが、いずれはキャンプを作って採集場を作りたい』
発言主はストーンカッターのドワーフだった。
以前に会ってる気がするんだが。
東雲という名前にも聞き覚えがあった。
まあオレの記憶なんだし当てにはなるまい。
『南の河川敷からはそこそこ石英質の石が採れます。いずれはガラス工房もお願いしたい』
フェイが東雲の発言に付け加える。
つかここで工房?
色々と必要なものが多いと思うんだが。
『鍛冶、ガラス、陶芸用の作業炉手配はジルドレのギルドが協力してくれていますが、暫く日数が必要です』
フィーナさんが付け加えた。
協力、ね。
まあ何かしら交換条件はあったのだろう。
だがその言葉には重みがある。
攻略組から驚きの声が上がっていた。
鍛冶屋がここに出来る意味合いは大きいだろう。
『村の中、それに周囲で農作物の試験栽培を行ってます』
その発言主はサキさんでした。
サキさんってレザーワーカーですよね?
『木魔法で成長促進させてますが、収穫にはもう数日かかります。確認出来次第、ファーマーにより大規模化予定です』
ああ、そうか。
サキさんは木魔法が使えるのでした。
ファーマーを差し置いて発言しているのはそのせいか。
『いくつか追加で種も入手しました。いずれ追加で良いお知らせできるかもしれません』
サキさんはその発言で締めくくったのだが、質問が飛んでいた。
何を?という質問だ。
それには試験終了次第とだけ答えている。
まあ期待だけさせて失敗させたらたまんないからなあ。
『皮革装備は修理優先で対応中ですが、新規装備作成は人員が増え次第、開始します。服飾も同様です』
フィーナさんが更に付け加えた。
手回しがいいな。
『食材の確保ですが当面は携帯食も併用して繋いで頂きたい。本日の夕刻に商隊が到着すれば事態はより改善するでしょう』
周囲に噛んで含めるように説明を付け加えていく。
その言葉には相応の重みを感じる。
オーラが半端ないです、フィーナさん。
『では各方面の狩りの状況をお願いします』
そこからは攻略組の連絡が続いた。
まあオレにしてみたら既に戦闘済みの魔物の情報が多かったんだが。
ただオレの把握していない情報もあった。
例えば。
南の洞窟の奥はかなり立派な造りであり、ドワーフの元住居と思われる。
魔物の数は少ないが、オーク、コボルトがいるらしい。
南の川向こうの多数の穴はフロートアイの巣であるようだ。
昼も夜も現れるフロートアイだが、フィールドにいるのはどうやら極一部であるらしい。
中に攻撃呪文を試しに撃ったパーティがいたらしく、そのパーティは死に戻ったそうな。
それこそ目の前が赤のマーカーで真っ赤になったそうだ。
あの穴の数だけフロートアイがいるんか。
おっかねえ。
因みにフロートアイの群れのスクリーンショットも見せて貰った。
本当に真っ赤でした。
夜の狩りについてはイリーナが報告をした。
まあ任せていいかな?
彼女が大量のミスト相手に対策も提示してたのだが、幾つかの攻略パーティが不満気に見えた。
なんか良くない雰囲気だな。
どうやら掲示板にも既に書き込んでいたようなのだが、本当に可能なのか、疑念があるようだが。
しょうがない。
少し手助けするか。
発言したい旨、手を挙げるとその機会がオレに回ってきた。
『キースです。昨夜、彼女達とユニオンを組んで狩りをしているけど間違いなくあの対策でいいと思う』
どうにかそれで攻略組を黙らせる事に成功したようだ。
ま、これでいいか。
だがついでに情報の提供もしておこう。
『あと気になる所で格上のモンスターにも遭遇した』
例のサスカッチだ。
スクリーンショットを撮ってなかったのが悔やまれるが、なんとか説明できたと思う。
『場所はN1W1とN1W2の間にある山頂方面。元々はブリッツとユキヒョウがいた場所になる』
その発言が震源になったようだ。
ウィスパー以外で各所が意見交換をしているらしい。
代表してか、質問してきたのは与作だった。
『イベントモンスターの可能性はあると思うか?』
恐らくはその場にいたプレイヤーが確認したい事なのだろう。
つかそれはオレも知りたかった事なんだけどな。
『分からない。確信はないけど可能性は高いと思う』
『根拠は?』
『私見でよければ、ある。少し長くなるけどいいかな?』
冗長になったがまあいいか。
いくつかのピースからの推測。
そう前置きしての私見を述べた。
寒さの厳しい高山の存在。
防寒性の高い、といちいち説明の付いた毛皮がやたらと取れる事。
暴れギンケイの巣が樹上にあり、木登りで【登攀】スキルが鍛えられる事。
山に登れと言わんばかりの状況が揃っていた事。
そしてこのマップでも似た状況がある。
防寒性の高い毛皮がN1W2マップでも取れる事。
このW2マップでも暴れキンケイの巣が樹上にある事。
これらに加えて、イベントの影響か、魔物の発生と行動パターンが変わり、サスカッチに出会った。
無関係とは思えない。
話し終えたが、暫くは全員が無言のままであった。
『推測でいい。現状のキースのパーティでそのサスカッチを倒せるかな?』
その質問は与作から発せられた。
『現時点では無理だと思う。山頂に向かう途上で遭遇したら足場が悪すぎる、何より寒さが厳しくて不利になる』
あちこちで嘆息が聞こえていた。
『補助スキルの【耐寒】【登攀】、それに幾つかの登山装備が要る。特に毛皮で防寒着は必須だと思う』
いくつかの攻略組を煽って置く事もしておこうか。
突破口となる目標を提示すればいい。
分かりやすく行動してくれることだろう。
『他に質問はありますか?もしくは意見がまだありましたらどうぞ』
フィーナさんが確認するが、追加の質問はないようだ。
どう受け止められたんだか分かりゃしない。
そして言いたい事のあるプレイヤーもいないようだ。
『では攻略は各位の判断にお任せします。ミーティングは以上です』
そうして朝のミーティングは終了した。
さて、どうするかね?
フィーナさんとサキさんはレイナと与作を加えて何やら話し込んでいるようだ。
うん。
村の周囲は他のプレイヤーに任せるとして、遠出しよう。
残月がいるしな。
そう思うと行き先も自ずと定まってくる。
西に行こう。
何か用事が残っているような気もするが、戻ってからでもいいだろうし。
「アデル、ナインテイルを返してくれないか?」
「いい名前!」
そういうと素直にオレに返してくれた。
随分と素直だな。
「キースさんはこれから狩りですか?」
「勿論」
「この周囲でお肉ってブラウンベアの掌はあるんですけど。他に心当たりはあります?」
「あるよ」
と言うかこれから行く所にいます。
お肉が。
いや、牛肉が。
相手は闘牛ですけどね。
「一緒に行くか?遠出になるが」
「行く!」
「大丈夫です」
「お肉!」
うん。
欲望と言うものは極めて良好なモチベーションを生むものらしい。
行き過ぎると暴食になりかねないが。
だが覚悟するといい。
スパルタで行くからな?
アデルは乗り気であるのだが、イリーナの表情は複雑な感じである。
もう諦めているらしい。
「ではユニオンを組んで行こうか」
「キースさんに不利になりませんか?」
「組んでおいた方がいいと思うぞ?それに5対4対4なら大して不利にならないよ」
村の外に出ると何を忘れていたのかを思い出した。
サキさんだ。
木魔法の呪文、グロウ・プラントを掛けて、農作物を成長させるのに協力するって話だったよな?
まあ戻ってからでもいいか。
もう出発するんだし。
「では西へ向かうぞ」
「「はい!」」
昨夜に続いて彼女達と狩りをする事になったか。
状況に流されるままに冒険を進めてるようなものだし、これもまた良し。
オレにしても都合が良い。
あの闘牛は単独でも手強い魔物なのだ。
W2マップからW3マップに突入した。
風霊の村を出て1時間ほどしか掛かっていない。
パッシブの魔物は無視しているとはいえ速い。
途中、フロートアイ3匹にラプター4匹を屠っているのだが、問題にならない。
1匹ずつでは相手にならなかった。
召喚モンスターだけで始末してしまえるからだ。
数の暴力は恐ろしい。
オレにとって刮目に値するのはアデルとその召喚モンスターのきーちゃんだ。
光属性って何?と思ったものだが、どうやら狐火のような物を発して攻撃するのだとか。
負うた子に教えられて浅瀬を渡る、とも言うからな。
おとなしくアデルとき-ちゃんの戦いぶりを参考にさせて貰いました。
この狐火攻撃、ダメージは大したものではないが、高確率で対象を混乱状態に陥れるようなのだ。
それにHPを回復させる光を発する事も出来る。
回復量が少なく範囲も狭いが、回復呪文と同じ特殊効果も持っている意味は大きい。
しかもMP回復増加[微]もあってMPの回復が速い所もいい。
使える。
赤狐は支援で力を発揮するタイプだ。
それに素早いのもいい。
噛み付き攻撃の方がおまけらしい。
アデルは移動中、きーちゃんを馬上に乗せたままであったのだ。
オレもそれに倣う事にした。
それにしても今まで召喚してこなかったのが悔やまれる。
便利すぎる。
W3マップに突入する。
ヘリックスの目には闘牛の姿がハッキリと捕らえられていた。
他にも馬群もいるようだが。
とりあえず、エリアポータルの霧の泉に向かおう。
逃げ込める場所は確保した方がいい。
だが魔物の方が待ってくれませんでした。
襲ってきたのは9頭の闘牛である。
さて、どうなる?
『一旦逃げろ!』
ウィスパーで指示すると逃げ始める。
魔物は?
凄い勢いで追いかけてくる。
さすがにその迫力は凄まじいものであった。
呪文を選択して実行。
使うのはスチーム・ミストとウィンド・シールドの合せ技だ。
『アデルはファイア・ストーム、イリーナはグラベル・ブラスト!壁から出て来た所を攻撃!』
『壁、ですね?』
『おう!』
まあ大体分かっている事だろう。
追ってくる牛の群れに呪文を放っていく。
「スチーム・ミスト!」
「ウィンド・シールド!」
牛達は風の壁を突っ切って現れた。
与えているダメージは2割にもならない。
だが体勢は崩れていて隙だらけだ。
そこに魔法が叩き込まれていった。
「ファイア・ストーム!」
「グラベル・ブラスト!」
連続で全体攻撃呪文が叩き込まれた。
ダメージは?と確認する前に召喚モンスター達が襲い掛かっていた。
鷹2羽にフクロウ3羽が合間を置かずに攻撃を加えていく。
牛の群れは立て続けにダメージを喰らい、混乱状態に陥ってしまっていた。
オレも牛の群れの周囲を巡りながらロッドを振るう。
狂乱状態のまま転がってきた牛を残月が踏み潰す。
赤狐のきーちゃんとナインテイルが放つ光を喰らった牛は更なる混乱に陥ってしまい、攻撃どころではなくなる。
アデルとイリーナも弓矢で支援を続けていく。
魔物は混乱状態から抜け出せないまま、次々と屠られていった。
さすがに終盤では混乱状態から3頭が立ち直ったのだがもう遅い。
一番HPバーが残っていた個体はグラビティ・バレットで吹き飛ばす。
倒れた所を残月が踏み潰していった。
他の2頭もヘリックス達に集られて屠られていく。
まるでホラーだ。
あの闘牛を、しかも9頭の群れをノーダメージで倒しきってしまった。
オレとその召喚モンスター達だけではこうはいかなかっただろう。
《只今の戦闘勝利で【識別】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で召喚モンスター『ナインテイル』がレベルアップしました!》
《任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》
早くもナインテイルがレベルアップしてしまった。
早過ぎでしょ?
それだけここの魔物から得られる経験値が多いって事なのだろう。
ナインテイルのステータス値で既に上昇しているのは知力値だ。
もう1点は器用値を指定した。
ナインテイル 赤狐Lv1→Lv2(↑1)
器用値 9(↑1)
敏捷値 20
知力値 19(↑1)
筋力値 8
生命力 8
精神力 18
スキル
噛付き 回避 疾駆 危険予知 MP回復増加[微] 光属性
では剥ぎ取りと行こう。
剥ぎ取りナイフを突き立てたら、以前にも見た肉が取れた。
【素材アイテム】闘牛の外腿肉 原料 品質C+ レア度2 重量3
闘牛の外腿肉。肥育した肉ではないので脂身は少ない。
その分、肌理が細かく肉本来の旨味があって美味である。
だが他の部位も取れるようである。
次の個体から取れたのは別の部位だった。
しかも2箇所である。
【素材アイテム】闘牛のバラ肉 原料 品質C+ レア度2 重量4
闘牛のバラ肉。赤身と脂肪が交互に重なっており、三枚肉とも呼ばれる部位。
肋骨周りの肉であり、煮込み料理や炒め物にすると良い。
【素材アイテム】闘牛のレバー 原料 品質C レア度2 重量3
闘牛のレバー。肝臓部位。栄養価が非常に高い。
新鮮なものは生食でも食べられるが自己責任で。
うん。
生レバーですか。
ビールがあればいいんですがねえ。
3頭目からは再びバラ肉、そしてスネ肉が取れた。
【素材アイテム】闘牛の前すね肉 原料 品質C レア度2 重量2
闘牛の前すね肉。筋や腱が多く脂肪は極端に少ない。
煮込み料理にどうぞ。
おいおい。
全部位がありそうな勢いだな。
アデルとイリーナは何を剥いだんだ?
「三角バラ、ともずね、肩ロースにセンマイとシマチョウですね」
「ヒレ、タン、内腿、ランプ肉にテール!」
おお。
大猟ではないか。
今日は牛肉祭りじゃ。
じゅる。
おっと。
想像してしまってはいけない。
さっさと移動しないと。
本音を言えば闘牛の方から襲って来るのを待たずにコール・モンスターを使ってでも狩っておきたかったのだが。
安全優先で移動する。
このマップも魔物が闘牛だけというのも考え難い。
以前来た時は幸運にも闘牛としか戦闘をしていない。
ここは慎重に行こう。
霧の泉までもう少し、といった所でヘリックスが何かを見つけていた。
馬群のように見えるようなのだが。
霧の泉に向かうのを邪魔するように迫ってきている。
視認できる距離になるとその正体が分かった。
馬、と見えたが馬じゃない。
半分だけ馬だ。
ケンタウロス Lv.4
魔物 討伐対象 アクティブ
半人半馬の魔物である。
ケンタウロスだ。
得物は短槍が半分、弓矢を構えているのが半分か。
数は6頭。
いや、6人と言うべきか?
まあどっちでもいいんだが。
問題は連中が持っている弓だ。
どれ程の戦力なのか、知れたものではない。
さて、どうしようか?
主人公 キース
種族 人間 男 種族Lv12
職業 サモナー(召喚術師)Lv11
ボーナスポイント残14
セットスキル
杖Lv10 打撃Lv6 蹴りLv7 関節技Lv6 投げ技Lv6
回避Lv7 受けLv6 召喚魔法Lv12 時空魔法Lv5
光魔法Lv6 風魔法Lv7 土魔法Lv6 水魔法Lv6
火魔法Lv6 闇魔法Lv6 氷魔法Lv4 雷魔法Lv4
木魔法Lv4 塵魔法Lv4 溶魔法Lv4 灼魔法Lv4
錬金術Lv6 薬師Lv5 ガラス工Lv3 木工Lv4
連携Lv9 鑑定Lv8 識別Lv9(↑1)看破Lv3 耐寒Lv5
掴みLv7 馬術Lv7 精密操作Lv9 跳躍Lv4
耐暑Lv4 登攀Lv4 二刀流Lv6 解体Lv4
身体強化Lv4 精神強化Lv5 高速詠唱Lv6
装備 カヤのロッド×1 カヤのトンファー×2 怒りのツルハシ+×2
白銀の首飾り+ 雪豹の隠し爪×1 疾風虎の隠し爪×2
雪豹のバグナグ×1(New!)
野生馬の革鎧+ 雪猿の腕カバー 野生馬のブーツ+
雪猿の革兜 暴れ馬のベルト+ 背負袋 アイテムボックス×2
所持アイテム 剥ぎ取りナイフ 木工道具一式
称号 老召喚術師の弟子、森守の紋章 中庸を望む者
呪文目録
召喚モンスター
ヴォルフ グレイウルフLv2
残月 ホースLv7
ヘリックス ホークLv6
黒曜 フクロウLv6
ジーン バットLv6
ジェリコ ウッドゴーレムLv5
護鬼 鬼Lv5
戦鬼 ビーストエイプLv6
リグ スライムLv4
文楽 ウッドパペットLv4
無明 スケルトンLv3
ナインテイル 赤狐Lv1→Lv2(↑1)
器用値 9(↑1)
敏捷値 20
知力値 19(↑1)
筋力値 8
生命力 8
精神力 18
スキル
噛付き 回避 疾駆 危険予知 MP回復増加[微] 光属性
同行者 アデル&イリーナ




