隣の男の子
「恭介!」
「おう!おはよ!」
翔は恭介の隣についた。
「昨日のト○ビア見た?」
「見た!面白かった。」
翔と恭介は同じサッカー部ですぐ仲良くなった。くだらない話で盛り上がったり、二人で馬鹿なことをして遊んだり。そこら辺にいる普通の高校生と何も変わらない友達・・・だと思っていた。あんなことが起きるまでは。
放課後。
「今日、家寄る?ゲームやろうぜい。」
翔がそういうと、
「えっ。翔の部屋、上がっていいの?」
「うん。当たり前じゃん。何で?」
恭介の耳は赤くなっていた。
「どうした?熱でもあんのか?」
翔が額に手を当てようとしたとき、恭介は手を払った。
「いや。熱ないと思う・・・今日は帰る!」
「えっ・・・」
そう言って恭介は走り去っていった。
翔はベッドに横たわって考えていた。
(なんだあいつ?耳なんか赤くして・・・まさかあいつホモなのか?俺のことが好きなのか?)
翔はそんなことを考えながら眠りについた。
翌朝。
「昨日のドラマ見た?」
「おう!」
いつも通り恭介。翔は思い切って聞いてみた。
「お前、今好きな人いる?」
「えっ・・・?」
恭介は目を大きくしながらこっちを見た。
「なっなんで?」
「いや。なんとなく。」
「いないよ!!」
少し焦っていた様子だった。
部活の時間になり、恭介と歩いているとき翔が何気なく聞いた。
「なぁ、昨日のアレ何?」
「アレって?」
恭介は何かを思い出すかのように考えた。するとどんどん恭介の耳が赤くなっていった。昨日と同じ。翔はさらに問いかけた。
「昨日、俺がお前に触ろうとしたとき、手払ったじゃん?何で?」
「えっと・・・それは・・・」
「お前・・・俺が嫌いなの?」
「いや!そうじゃないんだけど・・・実は俺っ」
「おーい!何してるんだ?速く来ーい!!」
先輩が俺たちのことを呼んでいた。
「実は・・・なに?」
「いや。なんでもない。あのときの俺はどうかしてました。すみません。」
そっけない恭介の態度に翔はムッとした。
それから、二人はギクシャクしていった。話さないし、目も合わせなくなった。でも、恭介が教室や廊下で誰かと話していると、なぜか嫉妬した。
(いつも俺としか話さないくせに。何ほかの奴と話してんだよ!)
いつも翔の隣には恭介がいた。翔にとっては、とても退屈だった。翔は気がつくと恭介のことを考えていた。
(恭介・・・今何してんだろう。部活にも来ないし。本当に俺が嫌いなのか?)
そんなのが一週間も続いたある日の部活後。翔は部室の鍵を返し、下駄箱へ向かうと恭介が立っていた。シカトしようと思い、恭介の前を通り過ぎようとしたときだった。翔の腕をギュッと掴んで、キスをした。誰もいない下駄箱。何をされているのか理解ができず混乱していた。
「何ッ・・・すんだよ!」
翔は恭介を押した。
「ごめん。俺さ・・・何か、翔のこと好きみたい。男だってわかってる。でも何か知んないけど、俺・・・」
恭介は耳を赤くしながらさらに言った。
「翔はどう思ってるかわかんないけど・・・えっと・・・だから・・・その・・・そんだけだから!」
翔から目を逸らした。
(なっ・・・何だその顔は!!何か・・・すっげぇ可愛いぞ!!!)
「何か・・・言ってくれませんか?」
そんな恭介を愛しく思った翔は、恭介を抱きしめた。
「ごめんな。俺もなんか知んないけど、恭介が好きだよ。男だけど。」
翔は微笑みながら言った。恭介は翔を見つめた。
「俺、翔のこと好きでいていいの?」
「おう!」
翔は恭介の頭を撫でた。
二人は、一緒に帰った。
「一緒に帰るの久しぶりだな。」
「うん。」
変にぎこちない二人だった。
「なぁ・・・もう一度聞くけど、お前の好きな人誰?」
恭介は耳を赤くした。少し咳払いをし、答えた。
「隣の男の子です。」