7.討伐対象
夜も更けてきた頃、私は家にあった書斎に籠っていた。理由は至極単純。明日から始まる魔法について予習するためだ。
生きていた時は、勉強は死ぬほど嫌いだったが、今は『デートの時に何を着てこうか』と考えてるみたいな感覚。
なぜかって?理由ははっきりしている。これが生存戦略そのものだからだ。
しかし、転生者は転生者だ。モチベーションだけはあるが、言語が読めない。
私は200種類以上あるという自分の適性の引き出しから、【言語理解】の魔法を引っ張り出し、指先を本にかざしてみた。
「えいっ」
じわじわと文字が形を変え、日本語として脳に飛び込んでくる。……けど、読み進めるうちに私の顔はどんどん引きつっていった。
「なになに……『ゴブリン:繁殖力のみに特化した、最弱かつ最下層の種族。知能は低く、人里を襲う害獣として指定。見つけ次第、冒険者ギルドによる討伐が推奨される』……はぁ?害獣?私が?」
そう、この世界での私は歩いているだけで『経験値』やら『お小遣い』目当てでぶち殺される種族なのだ。
死ぬのは嫌だ。せっかく最強の魔力を貰ったのに冒険者に殺されて換金されるなんて、JKとしてのプライドが許さない。
勉強すればするほど、死ぬ確率が減り、理想の自分に近付ける。そう思うと、このミミズがダンスしているような文字でさえ、可愛く思えてくる。
私も元は人間だ。人間のまま転生していたらきっとゴブリンも討伐対象になっていたと思うが、現実は違う。
「よし。殺しに来たやつは返り討ちにしてやる」
私は【言語理解】の魔法をフル回転させ、猛烈な勢いで羊皮紙をめくり始めた。
……現世でこの集中力があれば、もしかしたら死ななかったし、東大生になっていたかもしれない。
「まずは、この『200の属性』を全部把握して、私が一番かわいく、かつ最強に盛れる魔法の組み合わせを見つける!」
夜が明けるまで、残り数時間。
私の『ガチ勉』は、まだ始まったばかりだ。
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