1.学園生活
「あー、彼氏に会いたいよ〜」
彼氏が尽きたこともなく、年上のイケメン彼氏と現在進行形で付き合っている私──伊藤菜都──は呟く。
「ニヤニヤしやがってきもちわりーな」
「何それ?ひどくない?彼氏いないからってさぁ」
「お前は彼氏作りすぎなんだよ、この前別れたばっかじゃなかったか?」
「あー……あいつはちょっとね……。ご飯食べに行く時も割り勘だし、それは許すとしても1円単位で請求してくるし、有り得なくない?それに対して今の彼氏は声もいいし顔もいいしご飯も全額奢ってくれる!はぁ〜最高の彼氏だなぁ〜」
「うっせ惚気んな」
「おやおやぁ?嫉妬ですかぁ?」
私はクラスメイトである田中夜美を茶化してみる。
あ、今眉にシワが寄った。
「あたしは年下で可愛くて守りがいのある男がいいんだよ!」
教室中に夜美の怒号が飛ぶ。
「お前ら、授業中だぞ」
あ、そうだった。
先生に注意されたことで話し相手がいなくなり、手持ち無沙汰になる。つまらない。なんで学校なんて行く必要があるんだろうか?
彼氏とは違う学校だから休み時間中に会うこともできない。
出来ることといえば、隣の席の夜美とだべるぐらいしかない。こいつが彼氏ならな〜、と何度考えたことか。
「はぁ〜」
授業に集中できるはずもなくでかいため息をつき、私は眠りについた。
◇ ◇ ◇
目が覚めた時、昼休憩の半分が過ぎていた。
「ちょっと、なんで起こしてくれないんだよ」
「え?気持ちよさそうに寝てたか……ら……っぷぷ」
私の顔を見て、夜美が笑う。
「えっなに急に」
「お前鏡見てみろって!おでこ!おでこ真っ赤!!」
普通に笑うどころか大爆笑を始めた夜美。失礼じゃないですかねぇ、彼氏もいないのに。
「ちょっなにこれ!?」
眠った代償だろう。長時間腕に押された額には、あたかも『授業中寝てやりました〜』と言わんばかりの印がついていた。
「夜美!コンシーラー持ってない?」
「はぁ、消すのか?勿体ないな……あるけど」
「貸して!!!消してくる!!」
恥ずかしすぎる。なんだこれ、鎌倉時代の犯罪者かよ。
いや、それは江戸時代だったっけ?
──なんて馬鹿みたいな考えを頭によぎらせながら、トイレに突っ走る。なんで今日に限って教室の近くのトイレは工事中なんだ。恥ずかしい。
百歩譲って、同じ学年の人に見られるのは許す。私が馬鹿ってことは知ってるし。でも、違う学年の人に見られるのは何か違う。
階段を駆け下りながら、色々なことを考える。考えていたからだろうか。
「あ」
私は下から数えて、多分15段目で足を引っ掛けてしまった。
「やべっ」
窮地を脱しようとするが、遅かった。
天と地がひっくり返る。私、もしかして死ぬ?
そのままの勢いで、落ちていく。
最後に聞いた音は、ドンでもガタンでもない、形容しがたい音だった。
あー、私死ぬんだ。
身体の節々に痛みが遅れてやってくる。
「おい、誰か階段から落ちたぞ!」
「先生呼んでこい!」
「──!!───!!!」
徐々に意識が遠のいていく。
ああ、最後に彼氏に会いたかったなぁ……。
「───!!なつ!!」
最後に聞いた声は、どこか、彼氏の声に似ていた……気がした。
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