5話
美容院の帰り道、タケルは紙袋を持っていた。
中には、勧められたリンスと整髪料。
「これ、使うと髪がまとまりやすくなりますよ」
美容師の言葉が、まだ耳に残っていた。
(俺、今までリンスって使ったことない)
(てか、整髪料って…男子校で使ってるやつ、いたっけ?)
家に帰って、風呂場へ。
リンスのボトルを手に取る。
裏の説明を読む。
「シャンプー後、髪になじませて…」
(なじませるって、どのくらい?)
(てか、俺の髪、なじむのか?)
おそるおそる使ってみる。
ぬるっとした感触。
流した後、髪が少しだけ柔らかくなった気がした。
(…これが、リンスの力?)
(俺、今、ちょっとだけオシャレになったかも)
翌朝。
整髪料を手に取る。
少しだけ指に出す。
髪に塗る。
鏡を見る。
(…なんか、前髪が、ふわっとしてる)
(昨日の美容院の髪型、ちょっとだけ再現できてる?)
制服を着て、靴を履いて、鏡の前に立つ。
タケルは、ほんの少しだけ笑った。
(俺、今、オシャレになったかも)
(でも、照れる)
その日、男子校の友人に言われた。
「なんか今日、髪、違うな」
「…そう?」
タケルは、照れながら答えた。
でも、心の中では叫んでいた。
(よし!気づかれた!)
(俺、今、ちょっとだけ成功してる!)




