4話
「眉、整えておきますね」
美容師がそう言った瞬間、タケルの心はざわついた。
(眉…眉って、整えるものなの?)
(俺、今まで放置してたけど…)
(てか、どこ見ればいいの?)
鏡の前。
美容師が近づく。
タケルの顔のすぐ前に、指先が来る。
眉の上に、ハサミ。
(目、開けてていいの?)
(でも、開けたら…目、合うよな?)
(それはそれで、なんか…照れる)
タケルは、そっと目を閉じた。
でも、すぐに不安になる。
(閉じると、寝てるみたいじゃない?)
(てか、眉カットって、寝るものなの?)
(俺、今、正解の顔してる?)
美容師が言う。
「ちょっとだけ、眉の形整えますね」
タケルは、目を半開きにした。
でも、それも変だった。
鏡に映る自分の顔が、妙に間抜けだった。
(俺、今、人生で一番“目のやり場”に困ってる)
(男子校生、眉カットに耐えるの、難易度高すぎ)
眉が整えられていく。
少しずつ、形が変わる。
タケルは、鏡の中の自分を見て思った。
(…なんか、ちょっとだけ、かっこよくなったかも)
(でも、照れる)
眉カットが終わり、タケルはそっと息を吐いた。
目のやり場は、まだ見つかっていない。
でも、心の中には、少しだけ風が吹いていた。




