3話
イスに座ったタケルは、鏡の中の自分を見ていた。
まだ何も始まっていない。
でも、空気が違う。
床屋とは、何かが違う。
「では、シャンプー担当の者がご案内しますね」
え?担当?
タケルは、少しだけ驚いた。
(分担制なの?)
(俺、今、チームで磨かれるの?)
シャンプー台に案内される。
別のスタッフが笑顔で言う。
「お湯加減、いかがですか?」
「…はい、大丈夫です」
声が小さくなる。
耳の後ろにお湯が流れる。
泡の感触。
指先のリズム。
(これ、気持ちいい…)
(てか、俺、今、洗われてる…)
(男子校生、洗われるの、ちょっと照れる)
シャンプーが終わると、また別のスタッフが登場。
「カット担当の○○です。よろしくお願いします」
タケルは、心の中で叫んだ。
(俺、今、分担制の中で生きてる!)
(シャンプー→カット→仕上げって、なんか…すごい)
鏡の前で、カットが始まる。
ハサミの音。
髪が落ちる。
タケルは、少しだけ背筋を伸ばした。
(俺、今、チームで磨かれてる)
(男子校生、ちょっとだけオシャレになってる)




