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僕と白のツバキと黒のアイツ その⑤


何キロか戻ったところでトロッコが止まり、僕から見えた限りではダイチはトンネルの空気循環用であろうパネルの蓋を取り外している所のようだった。


「おお、来たのか」


口に咥えていた小型のライトを手に持ち直し声を掛けてきたダイチ


「ちょうど良い手を貸してくれ」


そう言うとまたライトを咥え作業を再開する。ダイチに一番近かった相良さんが軽やかな足取りでダイチの傍に近づいた


「ん!」


とだけ言いダイチは相良さんにポイポイっとネジを次々に外しては渡していく


「あの・・」


「ん~?なんら?」


「こんなに簡単に外れるのっておかしくないですか?」


突然の相良さんの疑問にダイチは咥えたライトを手に持ち直し答える


「何にもおかしくねぇよ、前に一度外してるからな」


「前に?」


「ああ、俺が前にやらかした」


一度来たことがあると言っていたダイチの言葉を思い出す僕達


「だいぶ前だが喧嘩した勢いで家出しようとしてココを使ったんだよ、その時壊してバレないように修理はしたが子供だったからな、ちゃんと直すのは無理だったんだよ」


そう言いながら外れたパネルも相良さんに渡す、相良さんは持たされていたネジをズボンのポケットにいれパネルを受取り脇に立てかけると


「ではここはもしかして・・・」


「察しがいいな、そうだここは俺んちに繋がってる」


「ダイチ!それホント?!」


ダイチが()()()なんて言うのはきっと【エルデプラッツ】の事だと頭に浮かんだ僕は思わず叫んでしまう。そんなに長く住んで無いのに何だかひどく懐かしい気がした。


「花鳥へ戻るのは無理だがここなら何とかなるはずだ」


僕の反応にニヤリと笑いながらダイチは作業を続ける、相良さんにライトを預け照らして貰いながら上半身をポッカリと開いた換気口に突っ込むと中で何やらごそごそと探しているようだ。


ほんの1~2分もすると古びたロープらしき物が取り出されそれを引っ張るダイチ、少しホッとした表情で


「まだ使えそうだ」とつぶやいた。


「俺が一度上まで登って安全か確認してくる、それまであんたらは待機していてくれ大丈夫なら担架になりそうな物を降ろす」


そう言うと直角に近い通気口へと入り込みスルスルと登って行ってしまった。


それから何分経っただろうか、沈黙していた通気口の奥からガタガタと何かがぶつかる音が聞こえ始め、僕達に緊張が走り何が起きても対処出来るように身構える。


しかしそこから顔を出したのは毛布と細めの長いロープそして荒く縦に割られた戸板だった。それらと一緒に簡単なメモが添えられていて先に女子供、次に相良さんか文さんに来てもらいスギさんを戸板に(くく)り付けて引っ張り上げたいと書いてあった。


相談した結果一番先に紫燕姐さんとエンジュ、二番目に僕とツバキ、三番目はだいぶ揉めたが文さんが行きスギさんを引き上げ一番最後は相良さんとなった。


相良さんは文さんからしたらお客様という意識が強く、そんな人を危険かも知れない場所に最後まで一人で残らせるのはダメだと感じたらしい。しかし当の相良さんは人命を優先に考えスギさんを確実に上まで引き上げる為には文さんが先に行くべきだと譲らなかったのだ。


通気口の中は割られた戸板が何とか通れるほどの広さはあったが本当にギリギリだと感じた。しかし上に行くほどほんの少しではあるが広くなっており上るには足場は無いが何かを引き上げるだけなら何とかなりそうだった。


僕達は時間をかけ慎重に通気口からエルデへの移動を開始し全てが完了したのは深夜だった。


疲れ切っていた僕達はスギさんを診察室のパイプベッドへ寝かせると相良さんと文さんを入院用の大部屋へ、そして僕の部屋は紫燕姐さんとエンジュに使ってもらい僕はダイチの部屋で休むことになった。


しかしスギさんの容態といつもと違うツバキの様子が気になり僕は二人の居る診察室のすぐ隣の部屋である休憩室に残ることにした。


ツバキは何故かあの後スギさんから離れようとしないのでそのまま着替えだけさせ好きにさせている。


ダイチは点滴や必要そうな医療器具を準備すると言って僕には寝てて良いからと手伝う隙すら与えてくれない、仕方なく僕はダイチに眠気覚ましのコーヒーを淹れ一声かけるといつも食卓として使用している席へ腰かけ


(スギさんが今のツバキの様子を知ったら大変だろうな・・・)そんな事を考えていた。





「トシキ、トシキ!悪いが起きれるか?」


「んん?・・ダイチ?どうしたの?」


どうやら僕はうたた寝をしていたようだった、眠い目をこすりながらダイチへと返事をする


「悪いが少し留守を頼みたい。今の所スギの容態は驚くほど落ち着いているがあの傷を何とかしないとならない、そのための人を呼んで来るから」


「うん分かった!早く行って!」


僕はそう言って飛び起きた。


正直疲れて体中が痛かったけど全く寝ていないダイチよりはマシだし、スギさんのあの傷はそのままにしておけないのは確かだ。


手つかずのまま置いてあったコーヒーを一気に飲み干し僕は隣の部屋へとスギさんとツバキの様子を見に立ち上がる。


2人が寄り添うように眠っているのを確認すると僕は窓辺へと向かい外を見下ろす。そこからダイチが繁華街へと走って行くのが見えたそれを見送りながら今僕ができる事を考える。


「よおし!!まずは・・・!!」


僕は腕まくりをすると早速行動するべく動き出した。




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