僕とツバキと変化の時 その②
「早速だけどアンタの見たものを話して貰おうか?」
楼主さんがそう促すと夕鞠さんは話し話し始める、
「先程、自室で聞こえたのは魂の震え、そうとしか例えようがありません取り敢えず『魂の声』としておきます」
「ちょっと待ってよ!何の話しなの?!」望月さんが困惑し口を挟んだ
「楼主様!今は黙って聞きましょう!!」「だけど!」相良さんがそれを止めるがどうやら説明の必要がと考えた花鳥の楼主は、ふうっと息をつき仕方無いという風に補足する
「ウチの夕鞠は昔ジンとダイチが連れて来た特殊な家系の産まれ、それが原因でここに流れ着いた娘なのさ・・・」
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「ダイチ〜!!今日はどんなお話ししてくれるの?」何度も通ううちにナギはすっかりダイチに馴染んでいた。
「急に飛び付いたら危ないだろ?今日は特別な土産もあるんだぜ?」
「やった!!アレでしょ?!」「・・・まだ秘密だ!」
「え〜絶対にアレだよ!ダイチってワンパターンなんだもんっ」
「じゃあいらないのか?」「欲しい!!」
「お〜い!ナギ!ダイチ君!!こっちおいで〜!!お茶淹れたから〜!!」
そう2人を呼んだのはナギの父親のスオウだ
「はあ〜い!!ダイチ行こう!!」そう言ってグイグイとダイチの後ろを押し始めるナギ
相変わらず複雑な気持ちでそんなやり取りを見守るスオウだったが、その瞳には少しばかり不安も滲んでいた。
「ダイチ君、今日ジンは一緒じゃ無いのかい?」
「ああ、準備があるとかで遅れて来るそうです・・・『今夜儀式をやる』と言ってましたが・・本気ですか?」
「本気だ、やらなければならない」
「俺は二十歳で彼女は12ですよ?ナギと俺はもう兄妹のようなもんで儀式なんてしなくてもアイツを守るつもりでいます。それでもですか?」
「君がそう思ってくれているのは分かっているよ、しかし相手はそれ位しないと諦めそうに無いんだ。謎が多く情報も少ないが君ならきっと奴を遠ざける事が出来る」
「・・・なら良いんですが」
今夜彼女の12の誕生日この日は数え年で13、大昔なら成人としての一歩を踏み出す年齢だが俺の用意したプレゼントの中を気にしている様子はあどけなさが強く残る普通の少女だ。しかし彼女は祖母の影響なのか水の気が非常に強く、産まれて直ぐから霊障に悩まされる生活をしていた。
彼女の祖母も産まれながらに霊媒体質で幼い頃より寺院で保護され修行した人物だったそうだ。その人から産まれた娘がナギの母親で彼女は全くといって良いほど普通だった。だが祖母譲りの体質を受け継ぐナギが産まれ。その頃には頼りの祖母は他界しており方々を周り土の気が多いと言われた土地で暮らし水の気を抑え何とか3歳になるまでは人並みの生活をする事が出来ていた、そんなある日ナギの母親が水辺で亡くなった。
目撃者によると隣街へ行く途中で何故かバスを降りた母親はそのまま橋の欄干から川へと飛び降りたそうだ。自殺と思われたが実際には霊障だった。
そしてその夜からナギの枕元へ母親の姿をした『何か』が現れるようになり以前も力になってくれたジンと再度連絡を取るようになったとの事。
ジンに持たされたお守りによって『何か』は現れなくなったものの日増しに水の気が強くなりまた不可思議な現象が起きるようになる。
そしてちょうどこの頃、ダイチとジンは孤児院で出会い養子に迎えられ仕事の手伝いと言う名目のハードな修行をダイチはさせられていた。
その一方で霊障の原因特定にスオウさんとジンが調べ分かった事は産まれてすぐにナギが【蛟】に魅入られたという事実だった。
【蛟】は神として崇められている場所もあるが元は妖怪だとも言われている。今回ナギに取り憑いているのは『龍に近しく遠いモノ』と言う認識らしく。ナギの魂を喰うか嫁として娶るかする事で自身の霊力を上げ神格を得ようとしている化物らしい。幼い頃には土の気の多い場所で抑えられていたナギ水の気が漏れてしまい母親の死はその影響による物だった。そしてその漏れは今も大きく広がりつつあり水の気をせき止める者としてダイチが選ばれた。
これほど水の気が強いと並程度では太刀打ち出来ないがダイチの土の気は潜在的にとても強く側に居るだけでその影響を与える事が証明されていた、だがナギが成長するにつれ【蛟】の影響がまた強くなった。
それは彼女が少女から大人の女性への変化の兆しでもあり、祖母を超える霊力が溢れる前兆だった。
彼女自身が霊力を抑える為に修行するにも時間が足りない、だからこその最終手段。
その儀式は『魂の婚儀』実質的な婚姻では無く『魂』を繋げお互いを抑え補う事を目的とした儀式だ。だが欠点もあった。一度繋げてしまえば解く事は出来ず一生物の絆となる。その影響とはどんな物なのかどんなに調べても出て来なかったのだ。よって片方が死ねばもう片方も死ぬという事も在り得る諸刃の剣でもあった。
ダイチはこの話しをされた時決めていた彼女が本当に望めば何でも叶えてやろうと、この時のダイチは初めての妹分の幸せを純粋に願っていた。
そしてその時は来た。
「ナギ、今夜俺達は儀式によって仮の夫婦になる。でもいつか本当に好きなヤツが出来たら言え、これはお前を守る為の儀式で俺は死ぬまでお前の味方だって証明でもある遠慮はするな分かったか?」
真っ白な着物を着たダイチが祭壇の前でそうナギに伝える
「ダイチこそ好きな人が出来るかもしれないじゃない!でも・・出来なかったら本当のお嫁さんになってあげても良いよ?」
同じく真っ白な着物姿のナギが恥ずかしそうにそう告げた。そんなやり取りを見ていたスオウは泣きそうな顔で2人を見つめている。
儀式の為の祭壇は地の気が一番強い畑、その畝をならした所に設えてありダイチが取りに行かされた神器が飾られている。【銅鏡】【水玉】【勾玉】【銅剣】【香炉】これらがどんな意味を持つ代物なのかは分からないがジンが言うには有名な『3種の神器』の代用だと言う




