僕と街と怪しい2人 その①
僕は浅い意識の中でユラユラ・・・。
たまに激しい振動はあっても目を開ける気にはなれず。誰かの背中に身体を預けたままその温かさも相まって瞼が重い。
意識は途切れ途切れに浮いたり沈んだりを繰り返す。
そのうち真っ暗闇に包まれ意識は深く沈んでいった・・・。
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「お前なぁ怪我して帰って来るのは仕方ないにしても何でも拾って来るなよ!」
「え~っと・・・何となく流れで?」
「流れって下手すりゃ誘拐案件だぞ!俺は誘拐の片棒は担がないからな!?」
「分かってるってコイツの怪我は大したこと無いんだろ?明日には外部の交番にでも置いてくるさ。」
「・・・なら良いが」
嫌な予感しかしないコイツはいつもいつもトラブルを持ち込む。そして毎度俺が巻き込まれ・・・しかし最終的には丸く収まるまでがお決まりのパターンだ。
サビの浮いたパイプベッドでスヤスヤ眠る子供。何となく誰かに似ている気がするが?
「う〜ん・・・誰だっけ?」
まぁ良いかと机に向かう。
古いイスが俺の体重でギシギシと悲鳴をあげるがいつものこと。
集中して少年のカルテを書き進める、大した怪我はしておらず少しの打ち身と擦り傷程度。
後分かっているのは名前だけ。
情報が少なく書けることは少しだ、まだ幼いのにとんでもない目に遭った後だ。
(おまけにこの子に関する突拍子も無い話を聞いた後だし)
そんな子供を無理に起こすのも気が引ける。
ふとこの子の持ち物だというリュックが目に入る。
(フム、悪いが調べさせてもらうか・・・)
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「おーい!飯適当に買ってきたぞ!」
「・・ん、おぉサンキュ・・・」
「おい!何だよ飯前にお菓子はダメって教えらんなかったんか?」
山積みの菓子の前で腕組した白衣の男に声をかける。
「違うよ、あの子の持ち物・・・ちょっと調べてた」
「ふぅん?で?何か分かったんか?」
「分からん、むしろ謎が深まった・・・」
「は?」
「基本的に食品には賞味期限が付いている。が、だ。」
そう言って板チョコを差し出す。
「ん?ま、そうだなあ・・・へぇ、チョコの賞味期限って長いんだな・・15年も保つの?」
「そんな訳ないだろ!普通、長くて2〜3年だ!」
「たまたま記載間違いが紛れてた、とか?」
「他の菓子も全部だ有り得ない」
そう返しながらリュックから出した物を入れ直し代わりに今夜の夕食を並べていく白衣の男。
「・・・まぁ考えても分からない物は分からん!で、トシキまだ寝てんの?」
そう言うと男は隣の部屋へ向かった
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(頭痛い・・・ここドコ?)
上半身を起こし頭を抑えながら辺りを見回す。
粗末なパイプベッドに薄い掛け布団、そこに僕は寝かされてたようだ。
元は白かったのだろう壁は所々ひび割れ木で出来た白いドアは開け放たれておりそれも塗料がアチコチ剥げかけている。
窓にはカーテンが無く、外は真っ暗だった。
(僕、どうしたんだっけ?)
頭痛は酷いし何だかモヤがかかったみたいに思い出せない。
「目ぇ覚めたか?」
空いてたドアからヒョッコリ顔を出した男、見覚えがある。
「ぁ・・・うん。あの、ここどこですか?」
「俺の住処、お前の家わかんなかったから取りあえず連れてきた・・・飯、食えそうか?」
グルルル〜キュ〜
僕のお腹が派手に鳴る
「はい、食べれます・・・」(は、はずかしぃぃ〜!!)
真っ赤になっているであろう顔を両手で隠し返事をすると
「飯こっちな!」
男は隣の部屋へ引っ込んだようだ。
まだ恥ずかしさを引きずったままだけどお腹はグウグウと主張し続けている。何かお腹に入れないと止まらなそうだ。
ベッドの下には僕のスニーカーは無く緑のスリッパが用意されていたのでソレを履いた。
ちょっと大きくて歩くと嫌でもペタペタ鳴る。
コッソリ様子を伺うと先程の男ともう1人(こちらも男性)居た。こちらに背を向け先に食事してるようだ。
僕に気付いた男が手招きする、そして先に食事中だったもう1人が焼きそばを頬張りながら振り向いた。
モグモグゴクンと焼きそばを飲み込み
「遠慮せずに来たまえ」
と声を掛けてきた。
その人は身長はあまり高くなく、でっぷりとした体格に白衣を着ていて通称『スギさん』で開業医らしい。
助けてくれた黒髪タレ目の男は思っていたより背が高い何センチあるんだろ?とか考えていたら空いてる椅子に座るように促しつつ自分の名前は『ダイチ』だと教えてくれた。
テーブルには『焼きそば』『たこ焼き』『唐揚げ』『ピザ』『焼き鳥』『ポテトフライ』などが並んでいた。
「好きなの食べな!大人はビールだが、トシキ用にジュースもあるぞ?」
見事にジャンキーな食事である。
野菜がほとんど無い。
僕はふとリュックに入れてたサンドイッチを思い出した。丸一日は経っているが・・・
取り出してみると大丈夫そう。最近だいぶ涼しくなってきたからそのおかげだろう。
テーブルに並んだ数々のジャンクフードは魅力的だけど、このサンドイッチを食べずに腐らせるのは何となく嫌だった。
ダイチさんが用意してくれたご馳走とサンドイッチ、どちらもは食べられず(胃袋の大きさ的に)迷っていると
「なぁ、ソレって手作り?」
ダイチさんが聞いてきた。
「え?う、うん・・・」
「いいなぁ・・半分くれないか?無理にとは言わないが」
「作ってから時間経ってるからあんまり美味しくないかも。それで良ければ・・・」
「マジ!?やった!」
すると直ぐに、側にある給湯室からナイフを持って戻ると紙皿の上にサンドイッチを乗せ切り分けた。
三角に切られた断面からハンバーグのソースがはみ出る。
「・・・うんまっ!!コレすげぇ美味いよ!!」
食べて第一声がコレ、それを見ていたスギさんが紙皿の残り半分に視線を移す。
「えっと・・・スギさんも食べます?」
「良いのかい!?」
ちょっと食い気味に聞いてきたので僕は「どうぞ」っと紙皿ごと差し出した。




