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僕と種と その③


バイクを走らせながら俺は昨夜のことを思い返していた。


大鴉(おおがらす)の逃げた先が気になった俺は花鳥の周辺を調べると以前も見た事のある『黒い何か』が転々と落ちているのを発見した。途中で途切れてはいたが捜索範囲を広げると何処に向かったのかは明白だった。

あの研究施設だ。まあ予想はしていたが足取りが掴めたのは今回が初めてな事もあり慎重に調べることにした。


見た目、施設の入口は一つしか無いが絶対とは言い切れない。見回りの警備の隙をみては周囲をくまなく調べ抜け道が無いか見てまわり一つの事が判明した。


抜け道はある。が、普通の人間なら入れない場所、だから見付からないし入れない。(からす)だからこそ入れる場所だ。


コンクリートで出来た施設は地上4階建程で窓は一つも無い。外側に換気口はあるがそのどれもに丈夫な鉄格子が付いておりそこから入るにはガスバーナーで焼き切らなければ無理そうな作りだった。


そして建物の中央には巨大な鉄塔、そしてそれに絡みつくように【枯れ(もり)】と同じ木と思われる幹が複雑に絡まり上へ上へと伸びていた。


施設の周り、特にその上方は砂埃のせいか何時も霞んで見えて視界が悪いため今回調べるまで気づかなかったが展望台らしき部分があった。


それはまるで巨大な鳥の巣のように展望台を包み込み異様な(さま)だった。調べるまでアレに気が付かなかったなんてと軽くショックを受けるがそれも仕方無いのかもしれない。例え()()があったとしても長く攻撃され続ければ鈍感にもなる。そう自分を慰めつつ携帯していた暗視望遠鏡で観察するとその展望台の手すりに例の黒い何かがベットリと付いているのが見えた。


間違いなくそこがもう一つの入口だろう、(からす)のように飛べれば簡単に侵入できるだろうがそれは現実的に無理だ。中で何が行われているのか調べるためには入るしか無いがさてどうするか・・・。



そんな事を考えながらエルデに到着した俺がバイクを降りると丁度そこへキヨ婆さんがエレベーターから降りて来る所だった。


「よお!婆さんスギの様子見に来てくれたのか?」ヘルメットを脱いで声を掛ける


「んだ、おめえはどさ行ってただ?アレほっぽらかしてトシキの坊主もとんと見ねえし・・元気なんだべか?」


どうやら本当の目的はトシキようだ。

毎日のように顔を合わせていたのにすでに10日近くエルデに戻っていないのだから当然と言えば当然な話だ。


「あぁ元気だよトシキも会いたがってた。もう少ししたら戻るさ」


「なら良いんだども・・んだ、あの梅の実なんとした?今年は季節ハズレに実がなったさけ中身腐っとらんかったか?」


「ん?そのまま食ってたから大丈夫だと思うよ?」


「・・・生で??焼酎か何さ漬けねば食えるわけあるめぇ?!おめぇそれを生で食ったのけ?!」


「俺じゃ無く・・・大丈夫、とにかく大丈夫だって!」


「ほんに突拍子もねぇ事ばっかりするでねぇぞ!トシキが心配なるでよ」そう呆れられた


「ゴメンって、それと何時(いつ)もありがとな婆さん」


「おめぇにお礼言われる筋はねぇよ、わっしがあのジジィに返せなかった借りを返したいわっしの都合じゃ」


「そう言えばジンとも長い付き合いだっけ?」


「んだよ〜あの施設さジジィが投資する前からさけ・・」「ちょっと待て!投資って?!」初耳だ。


「おめぇ知らんかったんけ?花鳥んとこの婆さんも知ってるはずだで?」呆れた様子でそう言う。


「・・・・マジか・・」(あのババア隠してやがったな!)


「なんだ、ダイチ戻ってたのか?」


そこへスギが黄色い桶と真っ赤なタオルを持って姿を現した、銭湯へ行くつもりだったのだろう。


「スギ!早く行くぞ!準備しろ!」


「は?!ええ?!何なんだよいきなり?!」


「ツバキに変化があったから迎えに来たんだ!」


「!!!分かった!3分くれ!!」そう言うとスギは階段を駆け上がって行った。


「ありがとな婆さん、それと借りなんて気にしなくていいと思うぜ?貸し作ったなんてジンは思いもして無い、そういう奴だ」そう言ってニヤリと笑った。


キヨ婆さんは少し笑うと「そうかもしんねぇなぁ」と言った。

スギは3分も掛からず階段を降りてきて俺が投げたヘルメットを受け取るとそれを被りながらバイクの後ろにまたがる。俺もメットを被り


「じゃあまたな婆さん!」


そう言ってバイクを走らせる。

戻ったらあのババアに聞きたい事が出来た、後はどうやって吐かせるか・・・そんな考えを巡らせながら花鳥へと俺は急いだ。





************


「文さん、もうちょっと右にもお願い!」


「・・・ここですか?」


そう言って移動する文さん、大きくなったツバキにも慣れてきたようで今は良い具合に霧吹きしてくれている。ほんの30分前にはあまりの大きさにビクビクしていたが、てっぺんは僕には無理だったので大助かりだ。


「トシキ居るかい?」


入口の外から声を掛けられた、あの声は楼主さんだ。マズい、連日お説教を食らっている僕達としては今のツバキ(大)を見られるのは避けたい。何せ畳にめり込んでるのだから。


「は、はあ〜い!今行きまあ〜す!」


そう言ってツバキの居る奥に繋がる襖を閉める。結構ギリギリで閉めることが出来た。


「どどぞう・・どうぞ」


僕はどもってしまったが言い直して廊下に続く引き戸を開くと思った通りそこには楼主さんが立っていた。

その隣には何度か見た事のある楼主付きの禿がおおきな籠に入った柿を持って立っている、どうやら頼んでいた柿が届いたようだ。


「ちゃんと居たね、柿を持って来たんだが・・・またダイチは居ないのか?全く何してんだあの馬鹿は・・」


そう言うと止める間もなくズカズカと座敷に上がり込む。僕は仕方なしにその後へと続いた。









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