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僕と繭とその変化 その②


タルトが用意されてる間、僕はツバキ(繭)へと近づき


「ただいまツバキ、大丈夫だった?」


そう声を掛けながら霧吹きで水やりする、心なしか動いたように見えた、スギさんがその僕らの様子をジッと見てる気配がするがあえて何も言わないでおく。


「そんな目で見ないの!何だか変態じみてるから止めなさいよ」

「イテッ!」


ペシッと何かを叩いてる音とそんなやり取りも聞こえた。何だかんで紫燕姐さんは世話好きだし任せて良かったと心から思った。眼の前のツバキは相変わらずで、でもちゃんと生きてはいるらしく僕がそっと触れると微かに繭の一部がポコンと動いて内側からノックしてるような弱い反応を示した。


「トシキこっちおいで〜タルトがきたわよ〜」


「は〜い」


呼ばれてお茶の準備を手伝おうと近付くが紫燕姐さんに付いている禿(かむろ)がそれを制してやってくれる。すごくシッカリした子だ。


「ありがとう」僕はそうお礼を伝えると彼女は


「いいえ・・」と俯いて恥ずかしげに返事をする。


「お茶の入れ方なんかも勉強の一部なのよ?ちゃんとやらせてあげてね?」


「そうなの!?邪魔してゴメンね?次は気をつける」


慌ててそう言うと彼女はブンブンと首を横に振り否定する。

僕より2〜3歳年下に見える彼女は禿の中では新参で名前を「エンジュ」と言った。人見知りなのか、まだちゃんと会話したことは無いがここ数日、紫燕姐さんと顔を合わせることが増えたため顔見知り位にはなっているはずだ。


紫燕姐さんが8当分にされたタルトの一切れは皿に移し替えもう二切れを別皿に乗せてとフォーク3本と共に楼主の部屋に届けるように禿(エンジュ)にお願いしていた。


部屋に残った僕達3人にそれぞれ1つづつタルトが配膳されると残りのタルトは2つ、一つは禿(エンジュ)にあげたとしても一つ残る計算だ。


「・・・ツバキも食べれたらなぁ」ポツリと僕の口からそんな言葉がこぼれた。


すると突然スギさんは立ち上がりタルト片手に繭へと向かい


「ツバキたんオヤツですよ〜?出ておいで〜?今出てきたら僕の分もあげちゃうよ〜?」とかやりだした。


ドン引きする僕と紫燕姐さん。

やや暫くは冷たい視線で見守っていたものの余りの見苦しさに姐さんが立ち上がるといつの間にか持っていたスリッパで『スパーンッッ!!』と辺りに良い音を響き渡らせ、首根っこを掴んでスギさんを引きずってくる。その様子見て僕は


(紫燕姐さんは怒らせないようにしょう)そう心に固く誓った。


禿の教育係でもある紫燕姐さんに断りを入れて1切れは戻ってきた禿(エンジュ)へご馳走し、残ったもう一切れは紫燕姐さんがペロリと平らげた。元々紫燕姐さんへのお土産だったし満足げな姐さんの様子を見てホッとする。




それから間もなくしてダイチが項垂(うなだ)れて戻ってくると


「酒くれ、酒なら何でもいい・・・」


そう言って僕達に背を向け分かりやすく落ち込んでいる。どうやら僕達の祈りは通じなかったようだ。

後片付けをしていた禿(エンジュ)も空気を読んだのかすぐに


「お酒の準備をして参ります」


と使い終わった皿とフォークなどを持って厨房に向かい、残った僕らであの状態のダイチをどうするかの話し合いが始まった。


『放おっておくのが一番よ』と紫燕姐さん

『いつもの事だ』とスギさん

『う〜ん様子見かなぁ』と僕


落ち着けば何があったとか喋るかもだし、今はそっとしておく。


紫燕姐さんは禿(エンジュ)が焼酎のボトルやピッチャー一式と乾き物を持ってきたタイミングで自室に戻ることにしたようだ。


『じゃあ悪いけどアレ頼んだわ、酒のんで寝たら明日には持ち直すと思うから』そう小声で話すと


「じゃあ私は戻るから!」紫燕姐さんはそうダイチに向かって声を掛け部屋を出た、お付きの禿(エンジュ)も勿論一緒だ。


「俺ももd・・・」「戻らないよね?!」スギさんが何か言いかけたが無視だ。


『俺が居たって何にも出来ないぞ?!』小声でそう訴えるスギさん

『酒の相手くらいは出来るでしょ?!』僕もそう小声で訴える。


スギさんは深い溜め息をつくと

『言っておくが俺、酒弱いから期待するなよ?』『ありがとうスギさん!』

こうしてスギさんの残留が決まった。


僕はスギさんには薄い水割り、ダイチには濃いめの水割りをせっせと作り途中で眠気に負けダウン。結局そのまま深夜3時近くまで付き合わされたらしいスギさんは昼過ぎまで起きれず目が覚めても二日酔いに悩まされていた。


ちなみにダイチは普通に寝坊はしたもののシッカリ朝ごはんも食べ元気に何処かへ出かかけて行き戻ったのは夕方だった。


一方のスギさんは夕方になっても具合が悪そうで僕はソっとしじみ汁を差し出す位しか出来なかった。



暗くなりツバキ(繭)の採取を済ませたスギさんはエルデに戻るつもりなのか帰り支度を始めていた。僕がもう一泊したらどうか勧めたが新たな発見もあったからもう少し詳しく調べたいと言いそれ以上引き止めはしなかった。


「ツバキたん、またすぐ来るからね!」


帰る前にツバキへの声掛けを忘れない所は気持ちわr・・・愛情深くはあるが・・・。


帰りがけに『窒素、リン酸、カリウム』をバランス良く配合したという原液を僕に渡して20倍に薄めて霧吹きでツバキに与えて欲しいと伝え帰ってしまった。


合わないようなら使用を取り止めて普通の水にしてくれとも言ってたが?以前点滴にも使用していたアレとは違うみたい、前のは薄いブルーっぽい透明な色だったけど今回渡されたのは明らかに濁っていて見た目は泥水みたいだ。保存方法も冷暗所で保管するように言い含められた。


僕が疑問に思っているとダイチが


「それ多分手作りだな、前のは科学肥料だったが今回は自分で作ったんだろきっと」


「ナニソレ愛が重い・・・まあツバキの身体に良い物なら良いんだけどね・・・」


若干の不安はありつつもツバキ(繭)に与えてみたら何となく喜んでる感じがしたので良しとした。


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