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僕と逞しいオネエさん その③


羽渡(うと)さん?!」


僕は思わず声を掛けてしまう。


「え?・・えっと、先日は助けて頂いて有難うござい・・マシタ?」


「あ・・・」「トシキお前・・・」


助けたのが僕だって羽渡さんは気付いて無いんでしたっけ?


「アレ?やっぱりトシキ君?僕を助けたのってトシキ君だったのカイ?でもその格好は・・えっと君は()()()()なのカナ?」


「僕は()()()()()()()だよ!今はちょっと事情があって・・・スミマセン」


「悪い、騙すつもりは無かったんだが。コッチの都合ってヤツだ(しばら)くは口裏を合わせて貰えるか?」


「ふふふ、分かりました。では何てお呼びしたら良いデスカ?お嬢サン?」


「え?!あっと・・万季(まき)と呼んでクダサイ」


「本当に女の子だったらお嫁さんに欲しかったヨ、残念・・」


羽渡はトシキに近づくと耳元でそう囁いた。驚いて羽渡さんを見るとほんのり頬を染めていてやけに色っぽい、僕は思わず赤面してしまう。(イケメンって怖い!!)


「・・・いざとなったら嫁に行くのも手かもな?」


「ダイチ()()()?」


そう言って僕はダイチを思い切り()()()

油断していたダイチは床に着いていた足を蹴られてバランスを崩し思い切りソファーに転がり僕はその上に座ってやった、僕の下敷きになってグエっとか言ってたけどあえて無視する。


「ふふふっあっとスミマセン実は、うちの楼主は支度に時間がかかりそうナノデお先にお料理をお出しするように申し使っておりマス。お持ちして宜しいでしょうか?」


僕達のやり取りに笑いを堪えながら聞いてきた羽渡さんに


「待ちます」と僕。「出してくれ」とダイチ。


「ちょっとダイチ!こんな時は待つのが礼儀じゃないの?」


「え〜早く食って帰るのが一番だろ普通。」


「お食事は召し上がって大丈夫デスヨ。でもすぐに帰るのは無しでお願いしマス・・・」


「何かあるの?」


「はい実は僕からのお礼があるので・・・何なのかは秘密ダヨ」


そんな風にはぐらかされた僕達は話し合いの末、先に食事をゆっくり楽しみ羽渡さんのお礼を受け取ってから帰ることにした。ダイチは最後まで不機嫌だったが納得はしてくれたみたいだ。

そして羽渡さんは一度退室し少しすると料理が次々に運ばれて来る。


料理は洋風の中に和のテイストが入ったフルコースで、食器は青い色合いが美しい和食器が主に使われ食材もさり気なく和が取り入れられていた。


前菜のブルスケッタに紫蘇(しそ)山葵(わさび)が忍ばせてあったり、何処か懐かしい味わいの丸ごと玉ねぎのコンソメスープには玉ねぎの中にお()とチーズが入っていたり、魚料理のホタテとサーモンのレモンバターソテーには日本酒と山椒(さんしょう)が使われ、肉料理の牛肉の赤ワイン煮には隠し味に赤味噌、口直しにみかんソルベ、チーズの盛り合わせは桜と(なら)のチップで香り付けした食べやすいスモークチーズ数種が並び。


デザートの季節のフルーツタルトは柿、無花果(いちじく)、マスカット、巨峰がたっぷり盛り付けられキラキラと美しく食べたいけれどお腹が一杯で食べられず丸ごとお土産として持ち帰る事になった。


どの料理も味だけでなく見た目も一つ一つが美しくとても楽しく食事が出来た。

結局、僕達が食べ終えても楼主の望月さんどころか相良さんまで現れず、コーヒータイム(僕は紅茶)に突入しそうだ。


そしてとうとう食後の飲み物が出される。すると給餌をしてくれていた数人がソファー正面の(ふすま)を開き始め、照明が落とされる。


テーブルには小さな蝋燭(ろうそく)が灯され、襖があり今は開け放たれたこには上限の月に照らされた大きな銀杏(いちょう)の樹が現れた、その下には低めの舞台が設置され3つの人影が浮かび上がる。


ほんのり照らされたその中央に立つのは羽渡さん、左奥に望月さんが正座し、右奥には相良さんが横笛を構えて立っている。


やがて横笛の演奏が始まり、薄い羽衣(はごろも)を両手に舞う羽渡さん、それは舞い落ちる銀杏(いちょう)の葉のように(はかな)げで時折月に照らされた羽渡さんの表情は悲しげにも見え、とても幻想的な舞いだった。


そして徐々にゆったりした舞から吹き荒れる(かぜ)に舞う様な激しいものに変わっていく、そこに突如として乱入する望月さん何処までも激しく荒々しい望月さんのその踊りに羽渡さんが翻弄(ほんろう)される様な舞に変わっていきラストは一際高い笛の音とともに2人が倒れ込みほんのり灯っていた照明が落とされた。


しんと静まり返ったそこに銀杏の葉だけがヒラリヒラリと舞い落ち余韻を残す。


僕は知らず知らず立ち上がり拍手を送る。長い物語を見ていた様な感覚で訳も分からず涙がでそうになり隣ではダイチも姿勢を正し拍手を送っていた。


3人は舞台を降りる僕達に近づいてお辞儀をすると


「楽しんで頂けたでしょうか?」と相良さんが一言。僕はかぶせるように


「スゴい!!スゴかったよ!!相良さんの笛も!羽渡さんの舞いも綺麗で!望月さんのは格好良くてスゴかった!!」


と言って飛びつかんばかりの勢いで3人の側まで走り寄る。


「・・・アリガト」


本当に嬉しそうにそう言った羽渡さんは照れて少し顔を赤くしている。


「ダイチは?どうだったかしら?」そう言って流し目を送る望月さん。


「・・・まあ良かったよ」渋々と言った風に返事をするダイチ。


「もう!素直じゃ無いダイチも好き!!」


そう言ってダイチに走り寄る望月さんと逃げるダイチは放おって置いて僕は相良さん羽渡さんに感動と感謝を伝えていた。


実は舞いの後半は殆ど即興だと聞いて驚き、その理由が楼主の望月さんの提案・・・と言うか大幅に着替えに時間をかけ過ぎ、僕達と合流するタイミングを逃した(ゆえ)の苦肉の策だったらしい。


それに付き合わされた相良さんとしてはとても出来が良いとは思えないとの事・・・完璧主義なのかな?


「全然そんな風に見えなかった!また見たいし聞きたい!」


僕が心からそう言うと


「では次までにもっと練習しておきます」


そう言って優しく微笑んでくれた。





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