僕と犯罪者の楽園 その⑥
「それで夕鞠さん喜んでくれたの?」
僕は夕飯を食べ終えてデザートの柿とヨーグルトのアイスに舌鼓を打ちながら聞く。
ダイチは米櫃から2回目のお代りを山盛りよそうと、すき焼きの残ったタレにウドンと春菊を足した物をおかずにご飯を掻き込み
「・・・喜んでた。まあその後また説教食らって追い出されたんだが・・・」不満げだ。
(何したんだよダイチ・・・)口には出さずにジト目の視線を送る僕。
「小箱渡して夕鞠が中を確認して喜んで・・・んで良い感じだったから中のを一粒取り出して・・」
「ふ〜ん、それから?」(そこまでは良い感じだよね?)
「夕鞠の口に入れてやって」
「ふんふん、それから?」(すっっごいラブラブじゃん!)
「美味しいか?って聞いたら『美味しい』って言うから」
「うんうん、それからそれから?」(めちゃくちゃ良いじゃん!!)
「俺にも味見させろって夕鞠のくちBi・」「ちょっと待って!!」
「え?なに?」「なに?じゃないでしょ?!そこまで言っちゃって大丈夫なの?!いや!ダメでしょ!!」
「えぇ〜トシキが聞いたくせに〜?」
「ぃゃ、そうだけどそうじゃなく・・・えっとプライベート?な事だし?」
「あぁ!それなら大丈夫だ、外の奴らから見える窓辺んとこでだったから結構な人数に見られてたし?」
「エ゙?!・・・・・馬鹿なの?ダイチって本当に馬鹿なの?」自分でも驚くくらい低い声が出てた
「そこまで言われると流石の俺でも傷つくぞ?」
手形の残る頬に米粒を付けたダイチがそう答える。
花鳥を大切に思ってる夕鞠さんが看板として仕事してるのにお客さん達から見える場所でチュウとか・・・うん、やっぱり馬鹿だった。
ちなみに小箱の中身は『金平糖』。
でも普通のと違っていて東区のあの店オリジナルで『金木犀』の香りがするオレンジ色の限定品だそうだ。
それには僕も興味があるので機会があれば食べてみたい。
って・・・それよりもコレって絶対に協力してくれた紫燕姐さんの耳にも入るよね、もちろん楼主さんにも・・・あ、うん僕は知らない関わっちゃイケナイ案件だ。
「うん、頑張って成仏してね?」
「・・・俺、見捨てられた?って言うかあからさまな死亡フラグ止めて?ははっ」
そんなやり取りをした矢先、ダイチは怒鳴り込んできた楼主さんに耳を掴まれ連れて行かれた。
そんな2人を見送りながら(骨は拾うつもり無いから自分で何とかしてね?)そう心の中で呟き拝んでおいた。
「トシキ、あんたもうここにずっと居た方が良くない?」
いつから居たのか紫燕姐さんが開けたままだった戸口からそう声を掛けてきた、どうやら楼主さんに先を越されたらしい。僕は折角なので紫燕姐さんを部屋に招き入れお茶を出す。
僕達の夕食の後片付けは紫燕姐さんのお付の禿がしてくれたのでお礼を言うと『いいえお気になさらないで下さい』と恥ずかしげに言い退室した。
「アンタ才能あるわよ。本当になんでダイチなんかと一緒に居るのやら」
「才能って?とゆうかダイチと居るのは僕がこの街へ来る切っ掛けがダイチ絡みだからですかね?」
「ふ〜ん、まあ大余所は聞いたけど『庇護』って意味ならここでも出来る。覚えておきな?」
(ここで言う庇護がどこまでなのか僕には判断がつかないよ・・・)そう思い、湯呑みに映る自分の顔を見つめた。
「それよりも才能の話さ!アンタは向いてると思う接客向きってやつだね」
「接客?」
「そうさ、物腰も柔らかいし言葉も丁寧で聞き上手。子供なんだから子供っぽい所があるのは仕方無いにしても何と言うか・・・話しやすい雰囲気、空気感っての?あの文ちゃんでさえアンタを気に入ってるみたいだし」
「文三さんが?」
大柄で見た目の怖い(だけの)見張り番の姿を思い出す。
「あぁ、自分から進んで誰かと関わろうとしたのなんて私が知る限りアンタが初めてだ。あれほど行きたがら無かった東区への付き添いしたのにも驚いたけどさ」
「僕、知らなかった」
「ついさっきなんて『風月の楼主がまた来いと言っていたが心配だ』なんてわざわざ私に言ってきたんだよ?」
(そう言えば帰り際に言われたかも・・・)
「一応はアンタに事の経緯は聞いてたし楼主同士の絡みがある以上はウチのに話は通しておかないとね」
「そっか、向こうの楼主さんは花鳥の人間に助けられたと思ってるからココの楼主さんに話が行くって事?何か大事になってる?」
「それは大丈夫だよ、むしろ恩を売れたって喜ぶんじゃない?」
「だと良いけど・・ダイチの事でプラマイゼロになってそうだよ〜」
「ふふっアンタはアンタさ、アイツのアレは自業自得」
今夜はもうやることが無く暇だと言う紫燕姐さんとそんな話しをして夜は更けていった。
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「この落とし前はどうやって付ける気なんだい?!」
「落とし前って・・・夕鞠は俺のだし?」
「アンタね!!夕鞠もアタシも商売してんだ!その邪魔すんなら叩き出すよ?!」
「スミマセンデシタ調子にノリマシタ・・・」
「アンタらが『魂の契』ってので繋がってるは聞いてるし身体売らせる事はさせない約束だ。だけどね心も身体も繋げるには足りないんだ!アンタも!夕鞠も!」
忌々しげにダイチを睨むとタバコに火を付け勢い良く紫煙を吐き出す。
「全く、ケツの青いガキの色恋沙汰にこの歳になって頭悩ますとは思わなかったよ!とんだ貧乏くじさ!」
まだまだ怒りは収まりそうに無い、今夜は長くなりそうだと観念した。
「失礼致します」
襖の向こうから声が掛かり使用人が顔を出した、
「なんだい?急ぎじゃ無いなら後にしな!」
「いえ、実は文が届きましてそれが風月の楼主からでして・・・」
「あの若造楼主から?」
すぐに手紙を受取り読み始める、そのやり取りで一山越えたと安堵した俺は足を崩し成り行きを見守る。
楼主のババアは手紙を読み終わるとチラリと俺に視線を送り溜め息を付いた。
「数日後、アンタには風月に行って貰うよ?返事は『はい』しか認めないからね!それと当日はトシキも一緒だ。そう伝えときな!」
(マジか・・・)俺は軽い目眩に襲われた。




