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僕と犯罪者の楽園 その①


本気(まじ)な話さ。だけど勘違いしちゃいけないよ?街の人間は犯罪者だけってわけじゃ無い、少ないけど本物の一般人もいる、畑やってるキヨ婆もそうだしスギの奴もそうさ。ダイチは・・・その中間ってところかねぇ?」


僕はそれを聞いてすごくホッとした、中間と言うのが気になるけど・・・。


「もともと臍帯村(さいたいむら)はかなりの過疎地域で、そこに目を付けた国と研究者が【犯罪者特別収容所】を誘致って名目で作っちまったのさ、それがこの楽園の始まり。なんて言ったかねぇ?確か・・・『抑圧(よくあつ)よりも解放を(うなが)し、その精神を浄化する』とか何とか?馬鹿馬鹿しい(うた)い文句でさ、歓楽街・・ウチみたいな商売人なんかも誘致して街にした。」


そう楼主さんは続けて教えてくれた。


「ちょっと待って!それじゃ治安とか酷い事になるんじゃない?!」


「そうさね、治安は悪い。だけどね本気(まじ)もんの犯罪はむしろ少ないんだよ。ケンカで怪我させたの怪我したのは日常茶飯事だけど、殺し、略奪、誘拐、性犯罪なんかの手合はほぼ皆無さ。」


「嘘でしょ?!そんなのあり得るの?!」


「実際に出来ちまってる。だから今も街として成り立ってるじゃないか。」


僕は色々な情報が頭の中でぐちゃぐちゃして考えがまとまらない。


「どんな研究をして、どんな手段で凶悪犯罪者を管理してるのかなんて聞かないでおくれよ?アタシも知りたいくらいなんだ。ただここで商売して分かったのは『()()()()()()()()()()()()()()』は一部の記憶を無くしてるって事くらいかねぇ?」


「後ろめたい事・・・・」


その一言が僕自身に対する疑念を産んだ。


(僕もそうなんだろうか?何か後ろめたい事があるから記憶を?なら僕は何をしたの?)


「・・・アンタねぇ、自分も。なんて考えてるんじゃないか?」


「?!っ」


「そんなこったろうと思ったよ、アンタの場合は後悔ってヤツだ。()()と後ろめたいってのは違うもんだろ?そもそもここの犯罪者どもは後悔なんてする奴は居ない、アンタとは根本的に違うのさ」


「そう、かな?」


「ゴチャゴチャ考え過ぎなんだよアンタは!人間なんて特にここの住人はアンタが思ってるよりシンプルなもんさ!」


「そっか、でも何でみんな逃げたりしないの?壁も牢屋も無いのに?」


「知らんね、ただ血気盛んなバカもこの街の住人になる前に研究所に連れて行かれてるから、あそこで何かやってんのは確かだろ、暴れて手が付けられなかった奴でも出て来ると大人しくなって始めはボーッとしてるが徐々に普通の(マシな)奴になる」


「それが浄化?」


「さあ?だけどまた元に戻る奴も多い、元に戻っても問題起こすと即『処分』だそうだし、その前に研究所に連れてかれて戻らない。監視の目を誤魔化すのだって並大抵の事じゃないんだろうさ。」


「警備の人は四角い建物で見かけたけど・・・警察とか’見たこと無いよ?」


「何も分かっちゃ居ないね・・・元から警官なんて居ないんだ!(からす)が監視で大鴉(おおがらす)がその親玉さ、アンタ達はヤバいのに目を付けれたって事!忘れるんじゃないよ?!」


楼主さんの言葉が本当なら何で僕らは目を付けられたのか?わけが分からない、もっと話が聞きたかったけど忙しいとの理由で僕は追い出されてしまった。






************


「ねえダイチ、ココの人達は何で逃げないの?」直球で聞いてみた。


ツバキ(繭)に霧吹きで水をかけてたダイチはその手を止め、少し悩んだ後に、


「・・・・・・満足してるから・・じゃないか?」そう答えた。


「満足?」


「この街はよそ者に寛容だ、仕事も探せばそこそこ稼げるのがあるし?どうした?いきなりそんな事聞いて?」


「楼主さんに街のこと聞いたんだ」


「・・・あのっババア!」


「ダイチに聞いても誤魔化しそうだったから楼主さんは悪くないよ」


「そうか・・・」


「ダイチはさ、他の人と違うよね?」


「それは・・・答えに困るな・・・この街での俺はある意味で中立、ここの楼主と近い立場だと思う。多分だが・・・言っておくが本当のことだぞ?」


「楼主さんと?商売人とかと同じってこと?」


「う〜ん、近いが遠いとしか・・・」


「もういい、ダイチはいっつもそうだ!」


いつも煮え切らない様な返事ばかりで少しイラっとしてしまう。


「少し頭冷やして来る」


そう言って僕は部屋を飛び出した。そのまま花鳥の一階まで降りたが行き場がなく途方に暮れる。


「坊や、どうしたんだい?」


声を掛けられ振り向くと綺麗な女の人が立っていた。

目元がキリッとしたその人は腕に包帯をしていて頬にも大きめのガーゼが貼付けられ痛々しい。


「何でも無いです」


この人には悪いけど今は何も話したく無い気分だったので少し冷たい言い方をしてしまう。


「何でも無いって顔じゃないけど?坊やはダイチのツレだね?ちょっとおいで?」


そう言うと下足番を呼び履物を準備させた。


何の用かと思いながらも後ろを黙って付いて行く。彼女は紫燕(しえん)と名乗り、夕鞠(ゆうぎく)さんとダイチとは昔馴染みで僕の事も聞いてたと言う。


中庭を散策しながらぼつぼつとお互いの事を話し、ダイチとの事も話しに出た。


「アイツさぁ、たまにイラっとしない?ハッキリ言わないっての?たまにバシッと叩きたくなるんだよね!特に夕鞠の事とか!!」


(めっちゃ共感する!ん?でも何故?夕鞠さん???)


「あ!!コレも秘密にしてたのかしら?うーん、実は・・・あの2人って両想いなのよ?」


「え?」


「両想い!2人共好きあってるの、ダイチさえハッキリ伝えれば簡単な話なのに煮え切らないと言うか何と言うか・・・傍から見ててイライラと言うかムズムズと言うか・・・気をもんでる私が馬鹿みたいなくらいよ」


「あぁ〜、そうかな?とは思ってたけどヤッパリそうなんだ」


「・・そうだ!アンタに頼みがあるんだけど聞いてくれるかい?」


「う〜ん、僕に出来ること?」


「ああ、勿論さ!」


そう言った紫燕さんは悪戯っ子みたいに笑っていた。








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