僕とダイチとスギさんと繭
「ダイチ、スギさん気を失ってますが?事前に連絡したんだよね?」僕がそう問いかけると、
「え?あぁ・・うん・・・言伝したよ?」歯切れが悪い返事が返ってくる。
「なんて?」問う。
「え〜っと?なんて書いたっけなあ〜?」誤魔化し。
「ダ・イ・チ・さ・ん?」再度問う。
「ゴメンナサイ!!」即謝罪。確信犯、自供。
「とにかく、スギさん白目剥いちゃってるから寝かさないと・・・」「・・ウッス・・・」
僕は通り掛かりの若い衆に頼んで。布団をもう一組用意して貰い、そこにスギさんを寝かせた。何日も寝てなかったのかスギさんは中々目覚めず起きたのは翌日の昼近くだった。
起きてすぐから黒い玉の前で座り込みボーゼンとするスギさんに、僕が事のあらましを伝える事にする。
僕が気を失った後の事はダイチが補足し、伝え、僕らが語り終える頃にはスギさんの目に光が戻ってきた。
「そうか、なら俺が出来る事をやるだけだ。サンプルを採ったら一度エルデに戻る。」
そう言うと顔を洗い行き、戻ると持ってきた大きなリュックからピンセットやジッパー付き保存袋などテーブルの上に並べ始めた。
僕とダイチはスギさんの採取を手伝い夕方にはスギさんを送り出す事となった。楼主さんの量らいで食事が準備されたがスギさんは遠慮するとの事で急遽お弁当をもたせて・・僕は少し心配になった。
「じゃあトシキもスギと一緒に一度戻るか?」とのダイチの問いかけに一瞬迷ったが、残る選択をした。
スギさんは大人なんだし、戻っても僕が出来ることは少ない。
それはここでも同じだけどツバキ(繭)の事がどうしても気になるし出来るだけ側に居てやりたいってのもあるが。
実はそれ以外にも気になることがある。
採取の時スギさんが声を掛けながら採取すると、明らかに嫌がる素振りを見せたのだ。繭なのに・・・。
スギさんが側に寄っただけの時も同様の反応があった。繭なのに・・・。
まあ、スギさんの声の掛け方とかハタから聞いててもちょっと・・いや、だいぶ気持ち悪い感じだったので無理もないような・・・『ツバキたん大丈夫だからね☆』とか・・・うん、思い出すのは止めておこう。
とにかく、繭に喜怒哀楽ってあった?と確かめたくなる程の変化があるのにスギさんは採取に一生懸命で全く気付いて居ないようだった。研究者なのに。
スギさんが万が一この事実に気付いたらまた無駄に凹むのが目に見えてる。
ダイチもこのツバキ(繭)の反応に気付いてたようだし。
僕かダイチが一緒に帰って何かの弾みでその事をウッカリ話したら研究どころでは無くなる危険がある。
それにスギさんに反応するって事は僕とダイチにも反応するのでは?それを確認したいってのもあった。
(それを確かめるためにも残らないと・・・!)
僕とダイチはスギさんを見送り、その姿が見えなくなるとすぐに顔を見合わせツバキ(繭)の元へと向かう。
部屋に入り少し離れた所からツバキ(繭)の全体を見て思う。(何となく少し疲れてる?)
「ねえ、ダイチにはどう見える?」一応聞いてみる。
「なんかダラッとしてるか?疲れた?とか?」
「うん、僕にもそんな風に見えるよ・・繭なのに。」
「だよな?繭なのに・・・。」
取りあえず声を掛ける前に、近付いた時の反応も見ようと少しづつ近付いてみた。反応は無い。
更に近づき繭以外の所に触ってみるが、ここも無反応だ。次は繭本体に触ってみる。無反応・・・。
僕達の勘違いだったのだろうか?
「ツバキ、聞こえる?トシキだよ?分かる?」・・・ほんの少しだが反応した気がする。
「腹減ってないか?水とか必要か?」ダイチも繭に触れて呼び掛けてみる。
「・・・どう?」「う〜ん、わかんねぇ・・・」どうも僕には多少反応してるようだ。
「中がどうなってるのか気になるトコだけど・・・」「こじ開けるとかは無しだぞ?」
「分かってるよ!」
スギさんの見解を元に暫定的に【繭】とは読んでいるが実際の所は分かっていない。
超音波を試してみたが中心部は確認出来ず、天井と壁に張り付いているし設備的にも難しいとレントゲンは断念。
もし繭では無く【蛹】だった場合、こじ開けてしまうとツバキの命は無いし、その上とんでもないトラウマになる事間違い無しだ。(お勧めしないが何故なのか分からない人は自己責任で検索を・・)
本当にこの現象が何なのか理由が分からない。
僕は僕自身の事も分からないのに、もっと分からない現象が次々と起こっている。それに僕の周りの大人達は皆で何か隠してる気がする。
その隠し事がヒントになるかも?
だから僕は知らないでいた事を知る為の行動を起こそうと決意した。
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「それで?何が聞きたいんだい?」
僕は忙しい楼主さんに何とか時間を作って貰い、話しを聞きに来た。
色々知っていて聞けば教えてくれそうな人、そう考えた時、教えてくれそうなのは楼主さんしか思いつかなかったからだ。
「ダイチ達が隠してる事を知りたいんです。」
「具体的には?」
「・・・この街の名前とか、何で街と外なんて表現されてるの?とか」
楼主さんは少し渋い顔をした後、
「臍帯村それが昔の地名さ、意味はあたしも知らないね。今の呼び名は出来れば言いたくないね・・・」
「・・・ダメですか?」
「ダメでは無いけどさ、聞いたら今までの様には暮らせなくなるかもしれないよ?良いのかい?」
「はい・・・教えて下さい!」
「はぁ〜・・・俗称だけどさ【犯罪者の楽園】そう呼ばれてる、その名の通り犯罪者ばかりの寄せ集め。それがこの街さ」
「・・・え?」
「え?って何だい?だから街の人間の・・そうさねぇ・・・約8割より少し多いかもしれないが、この街のそれだけの人間が何かしらの罪を犯してるのさ」
思ってもない事だった。
色んな事が頭を巡るが思い当たる事が無くもない。
銭湯で見た、やけにカラフルな入れ墨とかガラの悪い言葉使いの人も多かったような?!・・・じゃあ、ダイチやスギさんも?そうなの?
僕の頭の中はますます混乱して目眩がする。
「・・・本気で?」
やっと絞り出した言葉はそれだけだった。




