俺と烏(からす)と大鴉(おおがらす) その①
「世話になってる花鳥に貢献したいけど私はまだお酒飲めないし、話もダメ出しされてるから殆ど聞き役、兼、看板役?・・・実質的に私の仕事は『客寄せパンダ』ね」
「それで『占い』なの?」
「そう。元々、そう云う家系の出なの、良く当たるのよ?でも特別な人にしかやらない」
「じゃあ僕、得しちゃったね?」
「ふふ、事情は聞いてたし力になりたかったから・・・でもゴメンね?残念だけどトシキは良く見えない、不思議なんだけど他の人と違う」
「?違う???」
「う〜ん、常に運命が変わってる感じ?」
「ん???」
「私の占いは『過去の行いが未来に反映される』反映された結果『一番強く引き寄せられる未来』を読むの」
「・・・?一番強く?じゃ二番も三番もあるってこと?」
「その解釈で間違って無いわ、私が関わる事で二番、三番に変化させる事もあれば、頑張っても変わらない時もある。」
「難しいんだね」
「フフフッそうね所詮、占い。そう思うことも大切。占いで聞いた事は頭の片隅に置いておくだけで良いの。それだけでも自分の欲しい未来を引き寄せる切っ掛けくらいにはなる。占いに頼り切りじゃあ自分が無くなるわ」
「それでね、さっきも言ったけどトシキは常に変わってる、こんなの初めて感じた。ハッキリ見えたのは『足りないパーツ』があるってこと」
(足りない?何だろ?全然わからないし難しい、けど僕の記憶が欠けてるのと関係があるのかも・・・?)
こんな会話をしてるうちにも夜は益々更けていく。
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用意された座敷にトシキを寝かせ、興奮してハシャギまくったツバキをやっと寝かしつけたと思ったら呼び出しをくらい、行こうとして戸を開けた所で夕鞠と鉢合わせ、文句を言われた挙げ句にビンタを喰らった俺。
今、俺はすこぶる機嫌が悪い。
「それで?婆さん、何の用だよ?」
つい言い方が多少キツくなる、どうでも良い話だったらすぐ戻ろうと立ったまま切り出した。
そんな俺を横目に見て溜め息を付く楼主。
「・・・前に夕鞠に入れ込んでた男が居たろ?」
「何人か居たな、それがどうした?」珍しい話じゃ無い。
「一人ヤバいのが居るのさ。今夜は大事な日だ、騒ぎを起こされちゃたまらない。それで暫くウチの若い衆を張らせてたんだけどね、居なくなったのさ」
「最近出禁くらった奴か?諦めて帰ったんじゃないのか?」
「あぁソイツだ。他でしばらく酒のんで管巻いてたらしいがねぇ、段々と様子が変わってフラフラ立ち上がったと思ったら『消えた』そうだ。闇に溶けるようにね?」
「どう言う事だ?」
「あたしが知る訳無いだろ?!とにかく知らせたよ?どうせ夕鞠はアンタんトコ行くだろうから、今夜はそのまま泊めてやっとくれ。」
「ああ、分かった。・・・それで何か手掛かりは?」
「真っ黒な羽が落ちてたそうだ、アンタ達、烏に目を付けられたかもね?」
「烏ね・・・」
「何だい?心当たりがあるなら言いな!!」
俺は昼にあった事をかいつまんで教えた。
「はあ〜、間違いなく目を付けられてる・・・全く、また面倒事を・・」
「意味が分からない、俺からは何もしてないぜ?襲われて自衛はしたが?」
「このっ馬鹿!どっちにしろ夕鞠は『とばっちり』じゃないか!」
「ああっ!!」ポンと手を叩く。
「合点がいったみたいな顔してんじゃ無いよ!!」
俺は力いっぱい扇子で殴られた。全く酷いババアだ。
一般的に烏は昔から不吉の象徴だとか言われてるが、この街では少し意味が違ってくる。
烏は見張りで密告者、多く姿を表すと変化の前触れ、異常行動すると大量に死人が出ると言われている。
烏を1〜2羽見かけた程度では害は無いが、集まり異常行動すれば必ず災いが起きるのがこの街での常識になっている。それを防ぐには、烏と目を合わせず追い払い、散らす位しか手立てが無い。
そう言えば烏を殺せば親玉が出てくる・・・そんな噂もあったと思い出した。
その存在は【大鴉】と呼ばれているが目撃者は殆ど無く。見た奴はいつの間にか姿を消すか、気が狂ってしまうらしい。
その狂った男を調査した事がある。
目の焦点が合わず延々と何かを呟き徘徊、人に殴り掛かる事もあった為、拘束しスギさんに色々検査してもらい何らかの薬が使われた形跡があるのが判明した。しかしそれ以上は何も出て来ず、どこで薬を盛られたかも不明だった。
外部の病院への移送を確保しようとしていたが、ある晩、忽然と男は姿を消した。
鍵の掛かった個室に拘束具を付け、ベッドに縛られていたのにも関わらずだ。
その後、スギさんと俺は楼主のババアに呼び出され『烏には関わるな』とお叱りを受けた。
ババアは何か知っている。俺はそう確信しているが、どんなに聞いても教えてはくれないだろう。
俺の育ての親、エルデプラッツの元オーナー【ジン】もそうだった。




