僕と綺麗なオニイサン
すでにお腹いっぱいな僕は食べ物の出店より他の小物や骨董品の店を見ることにした。
髪留めや櫛かと思えば組木細工、良く分からないツボ和風や洋風の服だけで無く何処かの民族衣装が店先にズラッと旗のように掛けて売ってたり様々なハーブが並んでたり、とにかく様々な物がある。
驚いたのは金魚すくいは無くて錦鯉が売られてたり、かと思えばヒヨコじゃなく鶏が囲いに入られて売られてたり僕にとっては驚く事が多かった。
焼きとうもろこしに夢中になってる2人を横目に見つつ通りを散策していると匂いに誘われたのかカラスが1羽、屋根の上から此方を見ている。
先程売られていたような動物以外のこの街で見かける動物No.1だ。僕も何度か見かけた事があるが異様に大きい。
そのカラスは何か一点を見つめているように感じる・・・視線の先を辿って行くと・・・
(ツバキを見てる?)そう感じた次の瞬間カラスは飛び立ちツバキへ向かう。
僕は咄嗟にツバキをかばおうと前に出るが背の高いダイチの背中にいるツバキの防波堤には成れず。
僕の動きに気付いたダイチがカラスをとうもろこしの芯で叩き落とした。
「なんだ?コイツ?腹減ってたのか?」
ダイチは叩き落され地面でピクピクしているカラスを見下ろしながら呟いた。
突然の出来事に周りが注目する中カラスをそのままにして僕達はその場を離れる。
しかし時間が経つにつれ、僕達の周りにカラスが集まってきていた。
ダイチを警戒してか一定の距離を保ちながら出店の屋根やビル、ベランダの手すり、電線など様々な場所から僕達を見下ろしている。周囲の人達はそれに気付いていない。
カラスは頭が良いと言うから仲間の仇を討とうと集まったのか?僕はそう考えた。
カラスの様子が可怪しい事にダイチも気付いてるようだ。
「①逃げる②開けた所で返り討ち③餌をあげて勘弁してもらうどれが良い?」なんて聞いてきた。
「逃げても付いて来るんじゃない?」と僕が言うと、
「じゃあ②か③で行くか?」
「・・・暴力反対。」
「なら③かぁ・・・カラスって何喰うんだっけ?」
「・・・う〜ん?色々?」
僕達がそんなやり取りをしている間にもカラスは増えて行く。
12〜13羽を超えた頃、周りも異変に気付き始めた。
まずはじめに食べ物を扱う店の人が追い払おうと棒を使い追い払いにかかった。
それに続く様に光り物を扱う商人が乾物の豆なども扱うスパイス屋の店番が壊れやすい商品を並べた店主がそれぞれカラス達を追い立てる。そうして通りは軽いパニックになり僕達は①の逃げるを選択した。
ツバキを肩車したダイチは片手でツバキの足を、もう一方の手で僕の手を掴み人混みを縫うように走り抜ける。
後半、僕はほとんど引きずられてたけど何とか無事に花鳥の近くまで戻って来れた。
もう大丈夫だと判断したのかダイチは走るのを止め振り向くと「大丈夫か?」と聞いてきた。僕は息切れしながらも大丈夫だと伝える。
すぐ近くの店でダイチが良く冷えたラムネを買って来てくれ。
僕達はその露店裏に作られた休憩スペースを借り、イス代わりの空き箱に腰を下ろしラムネを流し込む、とんでもなく美味しく感じたが勢い良く飲んだせいでむせてしまう。
「取りあえずここに居れば大丈夫だ。ゆっくり飲め」とダイチ、
この休憩スペースには両サイドに幕がされていて屋根もあり、上からも横からも見えない作りだ。
それを確認すると僕はホッと息を付きお礼を言ってラムネを飲んだ。
そして気が付いた『財布』が無い事に・・・僕の全財産・・・嘘でしょ・・・
財布を無くした事をダイチに話すとその特徴や中に入っていた金額などを聞かれた。
「少し待ってろ」
ダイチはそう言うと近くの深紫の紐を腕に付けた人を呼び止め何か指示をしたようだった。
僕はラムネのビー玉を取ろうと頑張っているツバキを膝に抱いてその様子を見守る。
(持って来なきゃ良かった・・・)凄く後悔してた。
「ねぇ、どうしたのサ?」
急に声を掛けられ驚いて振り向くと壁代わりの幕を避けて知らない男?の人が居た。
「そんなに目に涙溜めてサ。何かあったのかナ?」
特徴的な喋り方のその人の登場に驚き目を見開いたせいで『ポロ』っと涙が一粒こぼれ落ちた。
それを見たその人は慌てて
「ごめんネ!驚かせたネ!ごめんネ!これあげるヨ!」
そう言って僕に棒付きキャンディーを差し出したその人はアーモンドみたいな形のクッキリ二重と、ピンクの薄い唇サラサラの真っ黒な髪は背中まであって後ろで濃紺と薄黄のバンダナで軽く結んでいる、妙に色気がある人。僕が見とれていると膝に座るツバキに気付き、棒付きキャンディーをもう1本差し出した。そして、
「泣かせちゃってごめんネ!」とまた謝罪した。
「あんた・・・風月の?」僕達に気が付いて戻って来たダイチがそう聞くとその人は
「ウン。ぼく、風月の羽渡っていうヨ!どうしたのかナ?ってきになって来たのヨ!」
(風月?じゃあ男の人なんだ・・・)びっくりして涙も引っ込んだ。
その後、事情を聞いた羽渡さんも協力してくれて財布は見つかった。驚いた事に中身も無事で被害は少し汚れてるくらいで済んだ。
僕達が協力してくれた人達にお礼を告げて花鳥に一度引き返そうとした間際、
「またイツカ会おうネ・・」羽渡さんはソっと僕の耳元で囁いた。
その言葉に何だか僕は凄くイケナイ事をしているような妙な気持ちになってドキドキした。
こんなの誰にも言えないヨ・・・
僕は激しく動揺しているようだった。




