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僕とツバキの冒険? その⑥


そのお婆さんは最初の印象より気さくで楽しい人だった。


話の中で楼主(ろうしゅ)つまりここの経営者だと紹介された。実は僕とツバキの着替えを手配してくれたのがこの人だと知り驚いた。


改めてお礼を言うと僕が来てからダイチの食生活など以前とは比べ物にならないくらい改善され、楼主さんとの交流も増えて良いことばかりだと逆に感謝された。


「そんなに酷かったんですか?」と僕が質問すると


「おい!婆さん余計なこと言うな!」とダイチ、どうやらあまり聞かれたくないらしい。


「はいはい、それで?今日はそれだけじゃ無いんだろ?」


「ああ、この後、夕鞠(ゆうぎく)にも会わせようと」「お待ち!今日、夕鞠はダメだよ!」食い気味で止められた。


「はあ?何でだよ」


「道中の準備だよ!忙しいに決まっているだろ?!」


「夕鞠出るのか?前に来た時は出ないって・・・」


「さあね?気が変わったんだとさ」


僕には良く分からない会話だ。


「まあ明日なら時間は取れるかも知れないが?どうする?」


「・・・・・・はぁ〜出直すか・・」


「アンタまさか帰るつもりかい?」


「仕方無いだろアイツが主役だ。邪魔出来ない・・・」


「馬鹿だねアンタこのまま帰ったらあの子がキレる。とばっちりはゴメンだよ!」


「そりゃ俺だって夕鞠の晴れ姿は見たいが・・・」「何ならそのままお前が水揚げしたって良いんだよ?」


「なっっ・・なに言ってんだババア!」ダイチは焦って顔が真っ赤になっている。


「フン!いっちょ前に色づいちまってさ!世話が焼けるよ!アンタが帰るってんならトシキらだけ泊まって行くと良いさ。夕鞠にはあたしが紹介しとくから安心しな?」


「安心出来るか!!良いかトシキ油断してるとババアに【風月(ふうげつ)】に売り飛ばされるぞ?!」


「え〜っと???」僕は2人の会話の殆どが理解出来ず返事に困る。


要約すると【今日は面会は無理、明日ならOK、今日の道中って言うのを見ないとダイチがピンチになって楼主さんにも何か迷惑ががかる、それでも帰るなら僕とツバキは泊まれ、それにはダイチが反対?】と言う事かな?


「花魁道中な。夕鞠はここ花鳥(かちょう)の看板遊女って言うか看板娘だな実質的には。」


「花魁とか遊女って・・・?なんか綺麗な着物のお姉さん?ホステスさんみたいな?」


「・・・・・まあ、間違ってない。」とダイチ。


「まだ色々知らなくて良いこともあるから・・・詳しく説明しないで済んで良かったねぇ?」


楼主さんが何か含みのある言い方をしてるけど僕は良く分からない。でも看板娘とかなら分かる。

遊女は男の人を癒やす仕事でお酒の相手とかするって聞いた・・・・・・気がする・・?誰に?

僕がそこまで考えた時、


「トシキにいに!おにゃかすいた!」ツバキだ。


「ゴメンねツバキ!そっかお腹空いちゃったか・・そうだグミ食べる?」


我に返った僕はポケットにある袋からグミを数個か取り出すとツバキの口に1個入れてあげる。


「美味しい?」ツバキはコクコクと頷き自分の頬を抑えてニコニコする。


「俺にもくれ」ダイチがそう言うと『あ〜ん』と口を開ける。たまに料理の味見でやってた僕は何の迷いも無くその口にグミを入れた。


「・・・案外悪く無いかもねぇ・・・トシキ、そいつの所が嫌になったら風月に紹介してやるから言いなね?」


楼主さんがちょっと悪い顔でそう言った。


「っおい!ババア!!」


「冗談さ冗談。ああ怖い!」


「風月???良く分からないけど遠慮しておきます」ちょっとだけ寒気を感じた僕はお断りしておいた。




結局その日はみんなで楼主さんの所に泊まることになった。


楼主さんは残してきたスギさんへの言伝や部屋など手配してくれるらしい。花魁道中がある夜までまだ時間があるため、僕達は近くの出店に歩いて行くことにした。


出店は少し先の広い通りでやっていて花魁道中もここでやるようだ。

別の通りで遭遇した乱闘騒ぎを思い出し不安になる。そんな僕の様子を見てダイチは


「ここら辺は花鳥の縄張りだ騒ぎを起こせば自分の首を締める事になる。だから他よりは格段に安全だ、心配すんな!」


「・・・それ信じて大丈夫?(前科があるし)イマイチ信じられない。」


「いや、マジだって!それとその深紫色は花鳥の関係者の印だ手出し無用の印でもある。何か困れば同じ色を付けたヤツに言えば対処してくれる優れモノだぞ?」


コレにそんな意味があったとは思わなかった、


「じゃあ、ツバキのコレも?」ツバキのあたまの(かんざし)を見る「そういう事。」と得意げなダイチ。


「ふ〜ん・・・」辺りを見渡すと確かに関係者と思われる人がチラホラ見える。大抵は鉢巻やバンダナの長い紐状らしく。ダイチは番頭さん達が着ていたような羽織をジャンパーの上に着ている。

原色に近い色が溢れる人々の中で一際目立っている。他にも目立った色があるが・・・


「アレも何処かの関係者なの?」と僕が指さした所には濃紺と薄い黄色のツートーンカラー。


バンダナタイプで頭に被ったり首に巻いたりしている。他で見ないカラーだ。


「あぁ、アレは【風月(ふうげつ)】の身内だな。道中の()()だから準備しに来てるんだろう・・・」


「何度か話に出てたけど・・・風月って?」


「・・・・遊女に似た仕事だが・・ちょっと逆?反対?な仕事・・?かな?」すごく言いづらそう。


「逆で反対?・・・・ホスト的な?」僕にはソレくらいしか思いつかなかった。


「・・うん、そんな認識で良い・・・」ダイチには珍しく歯切れが悪い。


そこには深く触れずにまた辺りを見渡す僕もお腹が空いてきた。何か食べたいが美味しそうな匂いがあちこちから漂い目移りする。


朝にパンを食べたきりで今は昼は過ぎてるはず『そろそろ限界です』とお腹の虫も訴えている。


「ほら食え!」いつの間に買ったのかダイチは大きな焼き鳥を咥えながら僕にも同じ物を差し出した。そして串に刺さった肉を一切れ取りツバキに『あ〜ん』させてた。


ツバキは相変わらず植物に近いのか虫に近いのか謎だが食事は人間と同じ物でも大丈夫そうだ。


今はダイチにおんぶ?背中に張り付いて?ダイチから色々な物を食べさせて貰っている。

周りにいる人はこの様子を見て『良く落ちないな』とか『食べ過ぎじゃないか?』とか言いたそうな顔をしていた。

僕はさっき貰った焼鳥とたこ焼きを食べデザートにチョコバナナを食べてフィニッシュ。しかし、ダイチ、ツバキペアはまだまだ食べる気マンマンである。


ダイチは兎も角ツバキの胃袋はどうなってるのか?


また新たな謎が産まれた。






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