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僕とツバキの冒険? その③


翌朝、早くに目が覚めた僕はまだ寝ているツバキを起こさないようにソっとベッドを抜け出し身支度をしに洗面台へ向かう。


寝癖には毎回苦労させられるがドライヤーとヘアブラシを買ってもらったので前よりは手早く済ませることが出来ている。


しかし今日はツバキが居るのでドライヤーは止めておいた。

跳ねまくる髪の毛を何とか抑えトイレに行くと『にいに?どこ?』と微かに聞こえた。


「ツバキ!いるよー!ちょっと待ってて」そう言ってトイレを済ませ慌てて水を流してドアを開けた。


僕を見つけた途端ツバキは起き抜けとは思えないほどの跳躍で僕の顔に張り付いた。ツバキはそのままイヤイヤするみたいに僕の頭にスリスリして離れない。


とても息苦しい。


『ツバキさんや、トシキにいに、前見えないよ。息も苦しいよ。』くぐもった声でそう訴えるとやっと顔から離れてくれた。


ツバキは朝イチの運動とばかりに僕の身体を高速徘徊し満足すると肩車の体勢で落ち着いた。


「ツバキ、おはよう」見上げて挨拶する。

「トシキにいに、おはよ!」覗き込むようにしてツバキが返してくれる。


うん、すごく元気だ。

濡れタオルとブラシを準備しツバキを一度ベッドに下ろすとタオルで顔を拭いてあげ髪をブラッシングする。


腰の辺りまである髪は真っ黒で艶があり癖もない・・・・あれ?真っ黒?昨日は黒に近い深緑だったはず・・・?


僕は陽の光に当てて見たり、透かして見たりしたがやはり真っ黒だった。

変化した?それとも・・・


僕はツバキを抱きかかえブラシから今抜けたばかりの髪の毛を数本取るとスギさんの所へ向かった。


スギさんは丁度コーヒーを入れに休憩室に来ていた。

ツバキの視界にスギさんが入らないよう僕の胸に顔を向けて抱きもう一方の手で髪を差し出す。


カップ片手に面食らったようなスギさんは


「・・・髪?」


「ツバキの髪の毛です、さっき気付いたんですが前と違うんです真っ黒です!」


「調べてみよう・・・」


そう言って髪の毛を受け取るとカップを置いて診察室へと向かうスギさん僕もそれに付いて行った。


デスクの他には診察台と椅子、薬品棚くらいしか無かった殺風景な部屋が今は長机が用意され、そこには顕微鏡やポイントライト、シャーレ、ピンセット様々な薬剤が並び部屋の一角に簡易的にビニールが掛けられた培養棚らしき物まで設置されていた。


あまりの変わり様に僕が呆気に取られているとスギさんはポイントライトを点け小さなガラス板に髪の毛を乗せると顕微鏡を覗きピントを合わせている。


それが終わると『スッスッスー』とガラス板に乗せた髪の毛を顕微鏡の台の上で前後左右に移動させ観察しているようだ。


「うん、確かに変化しているね」そう言って僕達を近くに呼び見るように促した。


僕は好奇心に勝てず顕微鏡を覗いてみた。はじめは真っ暗で何も見えずスギさんの助けを借りて覗きグチ、その目の当たる部分の幅を調整してもらい・・見えた。


全体的にツルンとしているが所々に小さな穴が空いてるように見える。


「昨夜の糸状のがコレだ」と別のガラス板を顕微鏡にセットする。


こちらは沢山の細胞壁がある細胞の集合体に見えた。


「そしてコレが普通の髪の毛だ」比較対象として自分の髪を1本抜いてガラス板に乗せセットする。


こちらは良くCMか何かで見るキューティクルという物がハッキリ見えた。素人で子供の僕にもハッキリ分かる程違っている。


「何でこんなに違うの?」言葉が口をついて出た。


「分からん、しかし人間に似た別物なのは確かだ」スギさんはそう言うと


「こんなに可愛いのにな・・・」と、撫でようとして威嚇されていた。


(どさくさに紛れて何をやってるんだか・・・)


「スギさん無理やりとか止めてね。本格的に嫌われますよ?」


「・・はい・・・」そう言ってスギさんは手を引っ込めてススっと僕達から離れる。


引き続き調べると言うスギさんに頼まれ僕はツバキの唾液や爪などの採取を手伝った。



気がつけば結構な時間が経っていて朝食は食パンで軽く済ませ、スギさんはまた【元】診察室にこもってしまい僕とツバキは昨日やり損ねた掃除をすることにした。


まずは掃除用具を取りに1階へと向かう。


ツバキは学習したのか移動の際には大人しく僕に肩車されている。とても賢い。

思えば言葉を初めから理解していたように思う。


1階に着いてスグ僕達はエルデプラッツ裏の通用口へと向かう、昨日洗っておいた掃除用具と何故かT字箒とモップ、それ用のバケツも増えていた。


これはダイチのダイイングメセージ・・・では無く。【1階ホールの掃除も頼んだぜ☆】と言う無言のメッセージである。そう理解した僕は黙って1階の掃除もすることにした居候の辛い所だ。


ホールには特に物が多く無いから掃除は思ったより早く終わった。ツバキは元々軽くて肩車したままでも平気だったし僕が掃除してる間アトラクションにでも乗ってる感覚なのかずっとご機嫌だった。


2階の休憩室の掃除はどうするか悩むところである。


(あそこは物も多いしガタガタ、バタバタしてしまうとスギさんの集中の妨げになるかも・・・)


外の蛇口でモップを洗いながら考えているとガレージのドアが開いた。


「え?」出てきた人物はダイチだった。


ダイチも少し驚いた顔をしてたがモップを洗っている僕を見ると直ぐに、ニヤリと笑い「おつかれさん!」と近づいてきた。


作業用のツナギだろうか?上半身は脱いで腰に巻き、袖を前で結んでいてズボン部分もTシャツもアチコチ油で汚れてる。


「ずっとガレージに居たの??」


「いんや今朝早くに帰ってからだ。部品が入手出来たから直せるか試してた」


「直ったの?!」


ダイチはニヤリと笑い「見るか?」と聞いた。


シャッターを開ける、とそこには以前より格段に磨きがかかったバイク。どこをどう直したとか分からない程ピカピカ。細かい傷が沢山あった所もツルピカである。塗装もし直したらしい。


「スゴい!!前よりカッコいいかも!!」


「だろ?!」そう言ってニカっと笑うダイチはいつもより格好良く見えた。



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