僕達の知らないスギさんとその友人 その②
『原因不明』なんて理由のわからないもので妹を失いたくない。
言いかえれば『原因』さえ分かれば治せるはずなんだ!俺が治す。その為に医者を目指したんだから。
妹がやっている事は男の俺には関係無い知る必要も無い事。
そう言われ続けてきた。
そんな俺でも知っている様な巫女の仕事だけでも色々あるが、そのうちのどれも体調に異常をきたす様な内容では無い。
どう考えても夜にやっている神事が関係していると思う。
以前、母親にしつこく聞いたら特別な神楽を舞うんだとは教えてもらえた。
見たいと言ってもそれは人に特に男にたとえ身内だったとしても見せたら神罰が下ると脅された記憶がある。
その舞いがどんな物なのか俺には見当もつかない。だが心当たりはある。
たまたま自室で練習していた妹をお手伝いさんが見てしまい内緒でそれが特別な舞いだと教えて貰ったそうだ。
きっとそれが鍵だと思う。
お手伝いさんは舞いの途中しか見て居ないが数年に一度の奉納舞いとは全く違うらしい。
少し話はズレるが呪術師は薬草を使い一心不乱に踊り狂いトランス状態を引き出し、その身体に神を降ろすとされている。
それに近い事がされてるとしたら?
俺はそう考えた。
しかし薬品、薬草の類なら何かしら影響が残るはず病院で調べた時には何も出なかった。
なら、煙、御香の類なら?それなら残らないかもしれない・・・
特別な御香?そんな物が簡単に入手出来るだろうか?
そこまで考えてヒラギを思い出す。
アイツの得意分野だったと・・・
だがアイツを巻き込む事になる。しかし・・・・
結局、俺はアイツを頼ることに決めた。
直ぐに連絡を取り、関連資料の提供を申し込んだ。
俺とヒラギの出会いの切っ掛けになった『継承された民間療法と薬草、その効能について』の論文の中には
【 香 】についての項目もあった。
「俺が出来る事ならやらせて下さい!やりたいんです!」
二つ返事だった。
「お前、分かってるのか?証拠は無いが犯罪まがいの事が起きてるのかもしれないんだ。半端に首を突っ込んで危険になったら『はい、サヨナラ』とは行かないんだぞ!資料だけでいい!!」
「構いません!!先輩、俺を巻き込んで下さいよ・・・お願いですから・・!!」
「・・・・・・・分かった(すまない)」
俺は巻き込みたくないと思いながらも追い込んで強制的にヒラギに酷い選択をさせたのかもしれない。
妹を助けたい、その一心で・・・。
結局それが俺の最大の間違いだった。
その日の夕方、何かしら手掛かりがありそうな【本殿】に向かう。
社は本殿、弊殿、拝殿の3つが合わさる造りだが、うちの社は【弊殿】と【拝殿】の2つが一つに合わさった造りで、その奥の別棟が【本殿】になっている。
入ってすぐが拝殿(参拝する場)、弊殿(神主が祝詞や供物を弊する場)、本殿(神がいる、又は降りる場)となる。
本殿に行くためには通常、弊殿に隠してある扉から渡り廊下を使用して向かう。
だが俺は扉と渡り廊下の存在は知っているが実際に行った事は無く、本殿も俺が知る限り開帳される事も無かったし窓も無い為、中がどうなっているのかも知らない。
本格的に神事を行うようになる前、渡り廊下にそれ以前には無かった家紋入りの白の垂れ幕がされるようになり更に中の様子を伺うのが難しくなっていた。
今夜にもまた神事があるかもしれない、神事は日が暮れ暫くしてから夜中まで続く。その前に何とか中の様子を知りたい。
人気が無くなるのは夕方の1時間ほどか神事が終わった深夜しか無い。
一時的に持ち直したとは言え後、数回繰り返したらこの先妹はどうなるのか・・・止めるなら早い方が良い。
早る気持ちを抑えながら人目を避け拝殿に・・・
「何してるんですか?」
「!!!」
ヒラギだった。
見付からないようにと以前、妹に教えて貰った杉林の抜け道を使いついさっき到着したそうだ。
「俺が来たアッチからだと丸見えでしたよ?」
そう言うと親指を立て自分の後ろをクイッと示す。
「コレ、俺の論文とそれに使った資料です。」
そう言って分厚い茶封筒を差し出し、
「で?何してたんですか?」
「・・・中を調べる所だ」
俺はそう言って茶封筒に手を掛ける。動かない。ヒラギを見上げると、
「じゃあ、行きましょうか?」
一緒に何かを見付けるまで帰ら(渡さ)無いつもりか・・・。
言い争う時間も無いと考えた俺は諦めヒラギの同行を許可した。




