僕の初冒険は初飛行?
痛!・・くは無かった。
そっと目を開けると僕の周りに風が優しくうず巻くように吹いていた。
反射的に自身を守ろうと縮こまっていた手足を伸ばす、すると自然に地面に降り立つ事もできた。
何が起きた?
え?
ドオユウコトデスカ?
頭の中は『?』でイッパイ、思考停止になりかけた時お隣さんの明かりが点いた。
『やばっ!ヤヴァイ、YABAIIIIーーー!!』
心の中で叫ぶと同時にその場にしゃがみ込む、物音に気付かれたのか?!
今、移動すると枯れ葉の音で僕が居るのがバレちゃうよ!そう思った僕は左手で口を覆い息を殺してやり過ごす。
さほど経たずに、ジャーっと水の流れる音が聞こえてきた。
トイレに起きただけだったようだ。
明かりが消えてから少し待ち、立ち上がる。ホッと息をつくと右手に何か持ってることに気がついた。
すごく小さな松ぼっくり?薄く紅葉した葉、紅葉だろうか?それとさっき落ちかけた時に掴んだ葉っぱだ。(しゃがんだ時に無意識に掴んだのかな?)
何となく捨てずにジャケットのポケットにそれらを突っ込む。まあ記念だ初旅記念?
後は自転車を裏道に出すだけだが、ひざ丈ほどの囲いの向こう側は軽い傾斜になっており更に雑草で滑りやすくなっている。モタモタしている場合では無かった。
自転車を出そうと黒のズボンに付いた砂やホコリを両手ではらい、ジャケットの肩についてた枯葉もはらう。
『ひらり』
と、肩から落ちたそれは地面に付く前に再び舞い上がって僕の眼前に浮かび上がった。
「え・・?か、風?」
その葉は浮いたままソコにある、まるでホバリングしてるみたいだ。
「な・・・何これ・・・」
そっと葉っぱを摘まんでみる。
普通の葉っぱだった。裏返してみたり月明かりにかざしてみたがやはり何の変哲も無く何の仕掛けもない葉。
その時、唐突に風が吹き飛ばされた。木の葉と共に。
僕が
『ひいいいいいいいいー・・・・・・』
声にならない声が僕の頭の中にこだまする。
僕の体は軽く上空へ持ち上げられたと思ったら直ぐにまた地面スレスレまで下降しまたフワリと浮き上がり安定しない。
「僕そんなに軽くないのにぃ〜!!荷物だって背負ってるのにい〜!!!なぁんでぇぇぇ〜??!!」
当然のようにパニックに陥る僕。
そのまま風に流され、
あっちへこっちへ風の向くまま流されて・・・そうするうちに冷静になった僕。
どうも手の向きや頭の向きに合わせて多少は流される方向をコントロール出来るようだと気付く。
何度か電柱や壁に激突しそうになったが、ヒラリヒラリと自動回避され。更にラッキーな事にこれから向かうつもりだった方向に流されているので今のとこは良しとする。
何時間経ったのかは分からないが民家のそばを抜ける時も、いつもなら多少交通量が多い場所も今のところすんなりクリアしてるし。
目下の問題はどうやって地面に降り立つのか・・・。
そして、
『降りたところでどうするん?』
で、ある。
現在、自転車無し。僕の唯一の有効な移動手段なのに、勿論、いきなり風にさらわれたから・・・。
ここらは都会と違い車社会で、子供の僕は基本的に自転車か徒歩移動だ。
他の街に行くには車かバス移動となる。
そのバスも日に何本かある程度で、正直あてにならない。
電車は無い。十数年前に廃線となり、以降は【情報規制なんちゃら交通規制法】によって新たに線路を作ることが出来なくなってしまった。(ちなみに『なんちゃら』の部分は長くて忘れた)
学校へはスクールバスが出てるから良いけど、この辺は過疎化が進む一方だ。
こんもりとした木々の上を漂いながら、つらつらとそんなどうでも良いことを考えつつ僕は空を飛ぶ。
月明かりに照らされた木々その葉擦れの音がサワサワと心地よい。
僕は体をそっとひねり体制を仰向けにしてみる。
満月に近かった月が今は少し欠けていた。
僕は目を閉じて深呼吸。
澄んだ空気が心地よく何だか・・・・・
僕はそのまま眠りに落ちていた。




