僕と野菜と食いしん坊 その①
どれくらい経っったのか手漕ぎポンプの水くみは思ってたより重労働だった。
一度お婆さんと交代してみたけどバケツを瓶の口まで持ち上げられず断念し、結局ポンプ係に・・・。
身長と筋力が足りなかったのが敗因だ。
汗だくになった頃にストップがかかる。
お婆さんが何処からかゴザを出してきて僕を手招きする。
サビ臭くなった手を洗い促されるまま隣に座ると冷えたキュウリとナスの漬物を出してきた。僕は切られてない丸々1本のキュウリ漬けにかぶり付く。
程よく塩が効いてて凄く美味しい。ボリボリと半分食べた所で
「コレも食べぇ!」
おむすびも出てくる。ごま塩が付いたシンプルなおむすび、これも美味しい。
汗をかいた後だからか余計に美味しく感じたんだと思う。
少しボコボコになっているアルミカップで出された井戸水も冷たくて最高だった。
ごま塩おむすびの中には小ぶりの梅干し、これもお婆さんの手作りで酸っぱいけどそれが良い!
美味しい美味しいと食べる僕に
「あの梅の木の梅で作ったけぇ、特別にウマいんよ〜」
とお婆さんは機嫌良く畑の中ほどにある木を指差して言った。
「特別?」
「んだ、特別なんだぁ。神様が宿る大切な木だからなぁ・・・」
あまりに大きくてパッと見、梅の木だとは思わなかったが成程、良く良く見るとその枝は梅独特の枝の付き方だし木の幹には神社なんかで良く見る【しめ縄】が巻かれていた。
きっと【御神木】の類なんだろう。
そんな事を話しを聞きながら2人でおむすびを頬張ていると
「お〜い!トシキく〜ん!」
と呼ぶ声がした。スギさんだった。スッカリ忘れてた。
帰り際お婆さんにカボチャやナス、少し時期が過ぎて大きくなりすぎたピーマン等を貰い帰路についた。
お婆さんはスギさんとは顔見知りらしくダイチさんの事も良く知ってるらしい。頼みたい事があるから近いうちにダイチさんに来て欲しいと伝言を頼まれた。
頼みって何だろう?力仕事かな?
そんな事を考えつつ貰った野菜を見つめた。採れたてのコレどうするんだろう?茶色の惣菜ばかりだった昨夜の夕食を思い出し僕が一抹の不安を感じたのは仕方ないと思う。
スギさんの持ってくれてるカボチャだってかなり大きい、切るのも苦労しそうだ。
(それに、鍋とか大きいのあったっけ?)
僕はそんな小さな心配事で頭を悩ませ大切な事を忘れていた。
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ビルに戻ってくるとパイプベッドに寝ていたはずのダイチさんの姿は無かった。
「点滴は全部入れてから出たみたいだし大丈夫だろ」
と言うけど僕はその言葉を何処まで信じて良いのか?と思ってしまう・・
スギさんってほら(ヤブ)だから。
本気で心配していないらしいスギさんはカップラーメンを食べる終わると部屋の隅にあるソファーベッドで寝てしまった。
僕はやることも無くて急にひまになり取り敢えず給湯室に何があるのか見てみる事にした。
使えそうな器具等
【包丁(1本)】【ナイフ(1本)】【割り箸(複数)】【プラスチックスプーン&フォーク(2組)】【ティースプーン(1本)】【布巾(2枚)】【片手鍋(1つ)】【紙皿(5枚)】【中華鍋(1つ)】【マグカップ(1つ)】【コップ(2つ)】【紙コップ(複数)】【ハサミ(1本)】【サランラップ(1本)】【ビニール袋(複数)】【ゴミ袋(3枚)】
調味料類
【塩コショウ】【七味】【醤油】【砂糖】【マヨネーズ】【ラー油】【マーガリン】【苺ジャム(少々)】【オレンジマーマレード】
以上である。
男の1人(?)暮らし、というか給湯室としては物がある方ではある。
しかし中華鍋・・・何故、中華鍋が?とは思うが、取り敢えず今は置いておく。
僕イメージでは『給湯室=お茶淹れる所』なのにお茶要素がほぼ無い。湯呑みや急須も茶っ葉も無く、お茶類はインスタントコーヒーだけで飲み物は他に牛乳とオレンジジュースとコーラくらいだ。
小さいけど冷蔵庫と電子レンジはある。ガスコンロは1台だけ。
思い返しても料理が出来そうな場所はここだけなので何か作るならここで料理するしかない。




