激戦決着、即興祭り開催
「・・・」
風の音さえ止む。
音はなく暗闇の中、月明かりに照らされた「レイドボス」からただ殺気が伝わる。
静かな墓地で、俺とレイドボスさんは向かい合っていた。
俺とレイドボスさんの間に会話はない・・・正確には俺が会話をできる状態ではない。
ただ、レイドボスさんを天誅することに全意識を集中させているから、会話などできない。
全く、話しながら斬り合えるようになるには実力が足らないか。
首を何度も狙ったが、未だ首を断つことはできていない・・・短期決戦が得意な俺としてはこのまま長期戦になるのは望ましくない、つまり直感が弾き出した結論は・・・
次の一撃で仕留める。
刀を両手で強く握り、腰を落とした下段の構えをとる。
レイドボスさんもこちらの意図を察して「斬星竿」を握り締める。
だらりと切先の下がった刀身は一見無防備にも見えるが、下手に突撃すれば下から振り上げられる刀身によって瞬時に両断されるだろう。
が、それを承知で俺は、レイドボスさんに向かって一直線に走り出す。
一閃。射程圏内に入った獲物を両断すべく長い刀身が振り上げられる。
それを刀で受け流しさらに前へ。首を突き刺すべく刀身を水平にする。
レイドボスさんは上へと受け流された「斬星竿」を両手で握る。
「斬星竿」による剣筋は俺を斜めに両断すべく最高速度で振り下ろされる。
俺は体を傾け、レイドボスさんの首へ向けて素早く突きを繰り出す。
「天誅!!」
「天誅」
二人の声が響くと同時に俺の左肩が感知もできない程の速度で断たれる。
しかし、レイドボスさんの首に俺の刀が突き刺さった。
すぐさま突き刺した刀を右に一閃。
「斬星竿」が地に落ち実感する
遂に、レイドボスさんを天誅できたと。
達成感と喜びが込み上げると同時に疲労感が一気に襲いかかる。
斬り合いに夢中で気づかなかったが、脳がかなり疲労しているようだ。
「喜びたいが、疲れてそれどころじゃないか」
肩の付け根から断ち切られた左肩に目をやる。激戦による勝利の証であり、レイドボスさんの本気の一撃に対応できなかった証拠でもある。
・・・考えはあったが、できるかは運任せに近かった。正直、最後の一撃はまぐれで生き残ったようなものだ。
突きを繰り出した刀の鍔に「斬星竿」の刀身を当てることで軌道をズラし、体の一部と引き換えに首を貫く。
だが、流石に何度も成功できるようなことではない。あの速度で斬られるのであれば、見てからの反応は、俺にはほぼ不可能だろう。
「次はあの一撃をどう対処すべきか」
レイドボスさんは次に会うときにはより強くなっているかもしれない。どうにか対処方法を考えなければ。
思考を巡らせていると、少し離れた場所から足音がした。
数は数十、しかし気配から人数は他にも百はいる。
「「余韻天誅だぁ!!」」
幕末は余韻などくれない。
周囲から数人のプレイヤーが斬りかかってくる。それに続きゾロゾロと人が走り出す。
その中には裏切る者やイベント武器を狙うために周りの仲間であろうプレイヤーを天誅する者もおり、
さっきまで静寂を保っていた夜の墓地に、一瞬にして喧騒と無数の剣戟の音が響く。
「・・・やっぱこれが幕末だよなァ!」
斬りかかってきたプレイヤー達を体術を混ぜながら斬り、天誅する。
目の前で行われる即興の祭りに参加するために、疲労した脳をもう一度稼働させ争いに混ざる。
片腕だろうが祭りには参加したいからな!!
この集団の元の狙いは、一騎討ちの勝者だったため多くのプレイヤーから狙われる灰狼。
最終的に30人近くを斬った後天誅された。
後にあの祭りに「斬星竿」を取り戻すために戻ってきたレイドボスさんが参加し、無事全員天誅された。




