番外編 大胡 宗綱の生前話
一旦、祖父:大胡 宗綱の晩年を
VRが平仮名なのは宗綱さんが現代のものに疎いからです。(英語系)
ある剣道場。
「爺ちゃんはあの龍宮院 富嶽と試合したことあるんだろ?」
「・・・あぁ」
「どうだった?」
「・・・宜信。稽古に集中しろ」
私は今、小学生の孫に剣道を教えている。今まで独りで、極みを求めていたが、間違いなくこの子には才能がある。
私や富嶽と並ぶ程の才能が。近いうちに剣術も教えるとしよう。
目の前の孫相手に、手加減なく一本を取る。取った数は既に100を超えただろう。
・・・それにしても富嶽か。近頃「VRの教材を監修する」と言っていたな。全く「ぶいあーる」などには興味がないと思っていたが・・・近々、会いに行くか。
「爺ちゃん・・・手加減してくれないか?」
「・・・無理だ」
「鬼が」
恨み言は息子にもよく言われたな。恨み言を言われようがこの子の才能は開花させたい。
夜まで竹刀の音は鳴っていた。
龍宮院家の屋敷。
「富嶽。久しく会いにきた」
「・・・信綱か」
「ぶいあーる教材を監修していると聞き、何故監修したのか、聞きたくてな」
「のちに続く者が、儂のようになってほしくないのでな」
「・・・そうか」
一度。富嶽と60代になってから公式戦で試合をしたことがある。
・・・その時の富嶽は私の知っている富嶽ではなかった。剛剣に加え獣のような勘と嗅覚を持つ富嶽では。
その時、私が感じたことをインタビューされ、そのまま感じたことを話した。「幽霊と戦っているようだ」と。
理由は二つ。一つ目ははその避けの上手さ。二つ目は、私と試合をしているのに、私を見ていないようだった。
「・・・あぁ富嶽、確か孫娘が剣道をし始めた、と聞いたが」
「向こうで素振りしている子だ。京極という」
「女の子の名前に京極?・・・名付けは富嶽か?」
「そうだが?良い名だろう」
「・・・そうだな」
ネーミングセンスは相変わらずか。酒に溺れてるなんて聞いていたが・・・立ち直っているか。
少しの間、老人の談笑をした後、富嶽は孫娘の相手をしに行き、私は龍宮院家の屋敷を後にした。
ある道場。
「宜信。なぜ、すぐ辞める」
「飽きたから」
孫には剣道より剣術の方が向いている。ここまでは予想通りだった・・・が、すぐに飽きてしまうのは予想外だった。合う流派を見つけようと、数々の流派の道場へ行かせたが、技を会得するだけして、すぐさま帰ってくる。
しかし、才能はやはりある。「一度見ただけで、技を真似し会得した」とある流派の師範から言われた。
最後に私の流派も教えてみたが、やはりほとんどの技を会得した・・・私の抜刀術は完璧には真似できないようで、悔しがっていたが。
そして、教えてみて孫の剣を理解した。その剣は・・・間違いなく殺人剣。現実では使ってはいけない剣だ。
中学生に殺人剣なんてものを教えるわけにはいかない。
「そうか。宜信よ、剣を教えるのはこれで終いとする」
「やっと?」
「あぁ。自由にして良い」
その後、宜信は本格的に死にゲーにハマっていく。
少し前に友から送られた人生初のぶいあーるゲームの中。
「・・・衰えたな」
トレースえーあいを抜刀術で斬り、勝利した。これの元となった人物を私は知っているからこそ分かる。
こんな負け方はしないと。この相手は私の抜刀術に反応できず、負けた。このゲームは剣道であって剣術の技には対応できなかったのかもしれない。
なんであれ、友との最後の勝負と思っていたトレースえーあいとの勝負は呆気なく終わった。
「富嶽。お前の思い、孫娘に届くことを願う」
人生最初で最後のぶいあーるゲームを終える。今は亡き友の思いが叶うこと願って。
富嶽の亡くなった数ヶ月後、大胡 宗綱も亡くなった。




