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軽すぎる命

「集まれ!人間ども!」

その声と同時に”人間”と呼ばれる動物は声の主のもとへ集まる。

「番号!」

「1!」「2!」「3!」…



「今日の仕事は終わりだ!飯は寝床に用意してある!解散!」

”解散”という言葉を聞くと人間は「ありがとうございました」と言う決まりになっている。


解散後に集まるのは寝床と言われる薄い布が人数分重ねてあり、人数分のパンが用意された部屋だ。硬い木の床の上で人間は寝る。


「146!」

こそっと声をかけてきたのは人間番号148だ。

「どうしたの?」

「明日早く起きて門の前を掃除しなきゃいけないんだけど…手伝ってくれない?」

「いいよ。ただし、寝坊したら許さないからね」

「うん。ありがとう!」

同い年同士仲良くしなければこの世界ではやっていけないのだ。148がいなければ、話し相手がいなければ、私はとっくに精神が崩壊して”壊れていた”だろう。



〜次の日〜



「おはよう」

「うん!おはよう!早いね」

「待ってるより早く始めたほうが早く終わるからね」


雑談を交わしながら掃除を進めていく。

「問題!今日、どうしてこんな朝早くから掃除をしなければならないでしょうか!しかも門を!」

いきなり問題を出してきた。

「さぁ?偉い人が来るとか」

「せいかーい!どうやらとってもすごい人がここに来るんだって!」

「どうせ、魔人か悪魔でしょ」

「だろうね」


会話が途切れた。



この世界では魔人や悪魔が”普通”に生活している。人間は食料になるか労働させられるかだ。

この世界は魔王と呼ばれる一人の存在により統治されている。

魔王は魔力量、使用できる魔法の数、物理攻撃の威力、防御の強さ、知識量…といった例を出すときりがない、いわゆる最強なのだ。強すぎるだろ!


「さあ、終わったことだし帰ろうか。」

「う、うん!」


寝床へ帰ろうと小走りをしていると

「集合!」

という声が聞こえると管理者のところへ走って向かう。

「はあはあ。」


「番号!」

「1!」「2!」「3!」「4!」…

聞き慣れた番号が次々に言われていく。


「今日は偉大なるこの世界のトップに君臨する魔王様がここへいらっしゃる!作業はいつも通り進めてもらうが、失礼なことをしないように!解散!」

「ありがとうございました」


走って作業場所へ向かう。

私と148の作業は単純で木箱に入っている鉱物などの運搬作業だ。

作業中は喋っている暇などない。


「はぁはぁ。」

小走りで運搬するものを取りに行く。


バンッ

周りを見ておらず、ぶつかってしまった。

「すみません」

顔を上げると男性がいた。

「君は…」

腕に刻まれている番号を見る。

男は私の隣を通り過ぎた。足を止めたことに期待した私が馬鹿だったか。


そして何事もなく一日…二日…一週間…一ヶ月…が過ぎた。


ある日のこと

「146以外は解散!」

「ありがとうございました」

人間が作業場に行ったことを確認すると管理者は口を開いた。

「偉大なる魔王様が住まわれる城にお前を連れてこいと命令を仰せつかった。今から魔法を使って行く。五分後に門の前へ来い。」

「了解です。ありがとうございました」

おそらくあいつは魔法で一瞬で門の前へ行けるだろうが、こっち走って七分はかかるんだよ!

心のなかで叫びながらなんとか到着した。

「はぁはぁ」

「時間もない。いくぞ」

時間をなくしてるのはお前なんだよ。先に行っておけばいいものを。

と心の中でツッコむ。


転移魔法でついたのは大きな門の前だった。

「城に何のようだ。」

「陛下の側近から招待された。これが証拠だ。」

管理者は便箋を門番に見せた。

「入れ」


冷たい床を裸足で歩いていく。

「話は聞いている。入れ」

ドアが開けられると椅子に座っている男がいた。

「あの時の………!」

言葉を発しかけた瞬間に頭を抑えられ、頭を下げた。


「頭を上げろ。」

「はっ!」

「とりあえずそこに座れ。」

「失礼いたします」

管理者について行った146は管理者が人間のように見えた。


「単刀直入に言おう。146と呼ばれるお前を1日貸してもらいたい。構わないよな」

「仰せのままに。理由をお聞きしてもよろしいでしょうか」

「大した理由ではない。ただ、手綱が俺のものになるというだけだ。用はもうない。帰れ」

「はっ!失礼いたします!」


管理者は部屋から出ていった。数秒間目を合わせた。

「喋らないのか。利口な人間だ。理由は気にならないのか」

「」

「気にならないようだな。ではこちらから言おう。お前を陛下に会わせる。」

「え?」

「ようやく喋ったか。陛下には后がいない。そのために毎週数人世界中から后候補を集めて陛下か俺が選び陛下の部屋に呼ぶ、ということをしている。とりあえず今日からお前を后候補にする。」

「はい?」


146は腕を引っ張られ強引に浴室に連れて行かれた。

「風呂に入れ。話はそれからだ」

浴室内には1人のメイドがいた。

「私が体を洗わせていただきます。」

「お願いします……?」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ほかほかだった。初めてお風呂に浸かった。

用意されていた服を着て靴を履き外へ出た。

浴室のドアの前で男が待っていた。

「よう。」

ペコリと頭を下げた。

「ついてこい」


コツコツと歩いていると

「そういえば俺の名前を教えていなかったな。俺の名前はサーバントだ。

お前の名前はどうするか……

そうだな…」

男は頭を天に向ける

「アミッシオだ。お前の名はアミッシオだ」

「了解です。」

コツコツコツコツ

歩き進めているとドアの前で立ち止まった。

「着いたぞ。この部屋で待機だ。といっても数分後には迎えに来る」

「了解です。」


ギィィィィィィ


中に入ると他にも女性がいた。


これが…外の世界の姿!


部屋の隅に置いてあるきらびやかな椅子に腰を下ろす。

きらびやかな装飾の部屋を見渡し、目を閉じる。

「いるだけでこの部屋は疲れるな…」

ボソッというと

「悪かったですね」

と男がすぐ隣にいた。

「陛下がお待ちだ。案内する」


開けられたドアの先にはベットで寝ている長髪で黒髪の頭から角が生えているやつがいた。


スウウウゥゥ

「魔王様!!!!起きてください!」

男は叫んだ。

「くそが…なんだよ…」

「業務はどうしたのでしょうか。この散らばっている紙はなんですか」

「あぁぁぁ…?なんのことだろうか?」

「早く!ベッドの上から降りてください!」

サーバントと魔王と呼ばれるものの言い合いだ。

ガヤガヤガヤしている。

「わかった。わーかったよ………」

「じゃあ!」

「そのまえに、そいつは…飯か?」

女を見て言った。


「あなた次第です。俺は出ていきますから!」

男は部屋から出て行った。

「お前、人間だろう。ここは家畜の来るところではない、帰れ。しっし」

あからさまに近づきたくないような眼を向けられた。

「それでは、さようなら」

ドアを開けようとすると鍵がかかっている。

「あいつ……女ばっかり連れて来るなよ…気まずいんだよ…」

ため息が聞こえる。

「あの…」

「そこら辺で座っとけ。人間には床がお似合いだ」


カキカキカキカキカキ

「お前って人間なんだろう?」

こくり

「よく俺の前にいれるな。」

「不思議ですよね。人間なのに、ここに連れてこられて魔王様と同じ部屋にいて」


「本当にな」

男が笑ったような気がした。


「暇だろう。そこら辺にある本でも読んでおけ」

本を手に取った。

ペラペラとページをめくる


「文字が…読めません…」

はぁとため息が聞こえた。

「こっち来い。俺が読み聞かせてやる。」

魔王はソファに座って、アミッシオはソファの前に正座をした。


「むかしのこと…〜」



「わかったか?」

「少しは…」

はぁぁぁ。

「わかってないな。とりあえず今日はこれを見ててくれ。」

こくり


ペラペラとページをめくる。

ふあぁあぁぁ

ページをめくる速さが遅くなっていく。視野も狭くなっていく。


がたん。

本が膝から落ちた。

そこからの記憶はない。


「いった…」

目が覚め、顔を上げようとすると首が痛かった。

「あぁ、起きたのか」

低い声で喋りかけてくる

「おはよう御座います…」

男はニヤリと笑った。

「そろそろサーバントがお前を迎えに来る。それまで待っておけ。俺は寝る」

魔王は立ち上がるとベッドへ向かった。


ガチャ

「おはようございます。魔王さ…ま?」

「おはようございますサーバント様。魔王様はついさっきお休みになられました。」

サーバントは横になっている魔王を見て一瞬驚いた表情になった。

「来い。お前の元いた居場所に帰るぞ」

手を引っ張られた。


魔王様が誰かの前で寝ている姿を見せるとはめずらしい。後でまた行ってみるか。


〜〜〜〜〜〜〜〜

私は146に戻った。

「146!作業場に戻れ!」

戻ってきてすぐ長年聴き続けた声に叫ばれた。走って作業場へ向かう。

「あいつの担当はお前か、話がある。少し話せないか」

「もちろんでございます!談話室にご案内します。」

管理者はにこっと笑って話した。

「いや、ここで良い。146のことだが…また使うことがあるかもしれない。そのときはよろしく頼む。」

「承知いたしました!」

管理者は頭を深々と下げた。サーバントはその場から消えた。

ーーーーーーーーーー

コツコツコツ

魔王の部屋へ行く。

ガチャ

魔王のベッドの前に行く。

「珍しいですね。寝ている姿を見せるなんて。しかも人間の前で」

「なんでだろうな」

魔王は寝返りを打ってサーバントの目を見て

「あの女だったら連れてきても問題ない。名はなんと言う」

サーバントは左胸に右手を当てて

「アミッシオといいます。」

と言った。

ーーーーーーーーーー

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